2002年11月後半

2002/11/19(TUE)・・・ヤマナ
少年少女ロマンス/裏庭

ジョージ朝倉「少年少女ロマンス(1)」(KCフレンド・講談社/2002)

王子様を夢見る女の子蘭と、王子様になりたいともがく男の子右京。今!この現代日本において!夢見ることすら困難な理想を追いかけて!ときどき冷めそうになりながら!ときに相手をぶんなぐりながら!君たちは一体何処へ行く!何処へいっちまうんだ〜〜!

そんな少女漫画です。とりこ感想文の「恋のパンチでノックアウツ!ただし、急所を間違えた!」って素晴らしいキャッチフレーズだと思うわ…。(ジョージ朝倉にはズバリ「ハートを打ちのめせ!」という作品もあってこれも素晴らしいです。)

君たち間違ってる!間違ってるよ!とツッコミを入れたくなるんだけど、あまりにも無心に一直線に激しく間違ってくれる彼らが非常にいとおしく、なんだか私とても心打たれてしまいました。やつらには覚悟がある…!!純情でいるための覚悟が…!!

とりこと電話で「この漫画の主人公は実は右京だよねー」と話したのですが、しかし、蘭も充分魅力的だと思う。
なんかねー、わたし自分の十代の頃とか振り返るとつくづく「イタイ女子」だったなーと切なくなるのですが(蘭には負けますが夢見がちの視野狭窄だったですよ…)、蘭のパワフルぶりとか迷いっぷりとか勘違いしつつの成長っぷりとかを見ると、なんか可愛らしくてね、その頃の自分を成仏させられそうな気がするですよ。

夢見るイタタな女の子の成長物語と言う意味では21世紀型「バナナブレッドのプティング」(もしくは生身で頑張る「F式蘭丸」…)という印象もあります。今風のビビッドな絵柄にびびられる向きもおられるかもしれませんが、大島弓子とかその辺のオールド少女漫画ファンにも是非読んで頂きたいな。ちなみに王子様がなかなか王子様たりえないあたりが21世紀。

しかし「蘭」と「右京」というネーミングは最高だと思う。それでこれだけ今!!の漫画なんだもの。まいりました。

「裏庭」座談会

あ、しまった浮気された!(笑)じゃなくって。

労作ですね。おもしろく読ませてもらいました。私も「裏庭」は現実パートの方が魅力的と思います。ららさん・たまちゃんに意見が近いのかな。お母さんの成長物語って感じがあります。お母さんが「ごめんなさい」を手に入れるまでのおはなしちゅーか。まあ、もちょっとお母さんに厚みを与えて欲しかったのも確かなんだけど。

ファンタジーパートはやっぱり比喩がすけすけすぎて鼻白んでしまうとこがいくつかありました。理が勝ちすぎてイマイチ酔いきれないのだった。その堅さがいとしい部分もあるんだけど。

「照美=tell me」とか、あちら側に引き込まれていくあたりの描写は素敵だったな。スナッフも魅力的だった。

ちなみにわたしの梨木香歩ベストは「西の魔女が死んだ」です。

2002/11/25(Mon) ・・・とりこ
S-Fマガジン12月号

●「S‐Fマガジン 2002年12月号」/早川書房

秋のファンタジイ特集。副題は「幻想の回廊から」。FT短篇が5本掲載でした。
ところで、中野善夫氏による特集解説に、思わず「!」「!!」と、無言で暴れたワタクシでした。以下、本文抜粋。

スティーブン・ミルハウザーの"The Disappearrance of Elanie Coleman" という短篇があって、これを収録したかった。(略)ミルハウザーらしい語り口の、ちょっと怖い短篇。いつかミルハウザーの作品を本誌の特集で紹介したいものである。
SFMで、ミルハウザー!

スミマセン。取り乱しました。…あのう、ワタクシなんかが言うのもアレですが、SFMなんて今まで読んだ事がないって人が振り向くかも。掲載すると。そういうチャンスがあると思う。うああ、今後、モノスゴク期待します。

◆ピーター・S・ビーグル「ゴッテスマン教授とインドサイ」…+2

姪のおもりで動物園を訪れた哲学教授が、口を利くインドサイと交流を持つように……てのを芯に、形に至る必要のない関係、というのかな。が、もう一本通してあります。
会社の昼休みに、喫茶店で、まるで油断して読み出したのですが……食べたサンドイッチどこに飲み込んだかよくわかんなくなりました。泣かす(泣かされた)。
安易な泣かせには結構反抗心燃やしちゃうんですが、これはイカちゃんも気に入るよ。この教授、もろイカジジイ(イカちゃんの好みのタイプのジジイ)だし。予言。

某方によると「ワルキューレの変形版」だとか。そのご意見にも、ナルホド納得。

◆ジェイン・ヨーレン「七天使のいる家」…+0

イディッシュもの。エキゾチックでステキです。そろそろハヌカが近い季節となりました。

◆ジェフリイ・フォード「ファンタジイ作家のアシスタント」…+0

タイトル通り、FT作家のアシスタントをする女の子の話。既視感のあるネタ、という印象ですが、主人公の女のコのキャラが立ってて、ワリといい具合。

◆グレアム・ジョイス「部分食」…+1

J・フィニィやF・ブラウンを思い出させる、懐かしく柔らかい雰囲気です。こちらもネタ的には既出な気もしますが、SFMのファンタジー特集にとても似つかわしい印象です。
わーい、おがわさとしさんの挿絵っ。

◆マイクル・スワンウィック「クロウ」…+1

トラック野郎が助手席に美女を乗せ、追っ手から逃げる場面から始まります。上記と逆で「ファンタジー色の強いSF」といった印象かも。カラスの挿絵、カッコエエ。(挿絵:加藤俊章)

◆ショーン・ウィリアムズ&サイモン・ブラウン「アガメムノンの仮面舞踏会」…+0

古代ギリシャの英雄たちが、宇宙で「ホメロス」を再現しようとするのでした。英雄達がもっともっと不気味だったら、もっと面白かったかも、なんて思いました。
ところでこれ、「STAR ●●●●」へのオマージュ……ですよね??

◆挽祷(ことのはの海、カタシロノ庭)草上仁/藤原ヨウコウ…-1

まさかそんなオチじゃないよね? と思ってたら……1P目で、オチ読めてしまいました。ワタクシ、自分はそんなにカンいい方じゃないと思うのですが……。
挿絵の画面は、白くて、キレイでした。



2002/11/27(Wed) ・・・とりこ
「ホシスミレ」/「京都SFフェスティバル2002」参加レポート

●山名沢湖「ホシスミレ」/月刊少年エース2002年1月号掲載/角川書店

我らがイカちゃん、こと少女漫画家・山名沢湖、青年誌(?)の次は、少年誌に登場かあ。しかし、激しく「少女漫画」っぽいぞ今回。どうなっておるのだ…
表紙(カラー)もかわいくて、ワタクシ、これとてもスキです。

ところで、商業誌掲載では、過去最長なのでは。画面、でかっ。絵、でかっ。大ゴマがいっぱいだ! バストアップとかぶち抜きとか……女子の学園風景マンガなので(・だよね?)、もう、オンナノコがたっぷりだ!

制服は、袖が膨らんでて、襟が高くてロングスカート。そしてレース。かわええ!
オトコなんて、担任のセンセイ(へなちょこメガネ君)位しか出てこなくて、蔦の絡まる校舎で、女子高で、ひらひらで、ティータイムで、きゃあきゃあきゃらきゃらと夢が、女子が、暴走するのでありました。花びらの嵐が、旋風が、竜巻が、くるくると…(いや、ホントにくるくるするのだ)。目が回るー!

イカちゃんの奇想(奇想だよ。「奇」、だわよ。)を「世間的」(?)な「萌え」と結びつけると(??)、そうか・こんな風になるのかあ…(???)。
しかし主役の三人娘、全っ然、勉強してないな……世間はそろそろ受験シーズンだというのに。

ちなみにワタクシは、メガネの委員長がお気にです。あと、pink houseなファッションでハードボイルド感の漂う、サトウ先生もイカスです。こう、ぬいぐるみの熊とか抱いて、もう片手で機関銃とかぶっ放して欲しい。(言いたい放題だな…)

シリーズ化するといいなあ。次回掲載が楽しみです。


■「京都SFフェスティバル2002」参加レポート

先日、「京都SFフェスティバル2002」に参加して参りました。
当日の様子をカンタンに纏めてみました。 → こちら

あまり遅くなっても、と思って。まだ暫定版なんですがUPしちゃいました。(近頃、毎度手抜きで、申し訳ないです……)

目次としては、こんな具合です。

【本会企画】
◆本会企画…(1) 「新人SF作家鼎談」
◆本会企画…(2) 「アブノーマルSF」
◆本会企画…(3) 「明智抄インタビュー」
◆本会企画…(4) 「非英語圏SFの現在」
◆夕ご飯

【合宿企画】
◆オープニング
◆合宿企画…(1) 「ジェンダー研の部屋」
◆合宿企画…(2) 「解説ワールドコン」
◆合宿企画…(3) 「Jコレクションの部屋」
◆合宿企画…(4) 「ライトノベルの部屋」
◆エンディング 他

◆非公式リンク集(@湯川さま)→ こちら

2002/11/28(Thr) ・・・とりこ
「太陽の簒奪者」

●野尻抱介「太陽の簒奪者」/ハヤカワJコレクション/2002年

もしも・太陽が・なかったら?
ちきゅうは・たちまち・凍りつく。
花は枯れ・鳥は・そらを捨て
ひとは微笑み・なくすだろう。

冒頭、地球はこういうピンチに陥ります。いや、冗談じゃなくて。まさにタイトル通り、太陽は簒奪されちゃうのであります。

太陽を奪う? どうやって? →それは読んでのお楽しみ。けど、確かにこの小説のようなやり方で、太陽が我々から簒奪されてしまうことは可能。(※1)ま、スケールはでかいけどさ。

大評判の作品です。ワタクシもたいへん面白く拝読しました。SF苦手、とか考えずに読んで、平気だと思います。読みやすいです。何しろ、中学一年生が一晩で読んじゃったしなあ。(←読ませたのか/当然でしょう)。(※2)

「初めに言いたい事を書いてしまったので、あとがラクになりましたね」という講評(その昔、作文の授業で貰った)を思い出しました。この作品も、最大のインパクトは冒頭の数ページにあります。このキレ。ここ読んじゃったら読み終わるまで
−−「GOかNOGOか?」「GO!」
もう一直線に行くしかない、のであります。

王道中の王道。でも、ちゃんと現代のテクノロジーも反映されてます。
主人公の白石亜紀は、実直な女性科学者さん。キャラ立ちは必要最小限しかないカンジではあります。短編「太陽の簒奪者」に続編2本を加えた構成で、第1話での亜紀さんは、殆ど記号的存在なのでした。
彼女のニンゲンらしさは、後半2本の方に濃く出てます。てか、第1話と後半ではトーンが違うかも。でもまあ、どちらも面白く読みました。いずれにせよこの本は、とにかく人を「宇宙かぶれ」にさせます。ホントに。

具体的粗筋。=「太陽を簒奪」するのは、地球外知的生命体?? コンタクトは取れるのか? 人類の存亡は? 地球は危機を回避できるのか? 

(…いーよ。もう自分が「恐竜属性」でも「宇宙(人)属性」でも何でも。)

淡いロマンスが色を添えています。ここに「ニンゲンらしさ」が宿っているようです。ロマンスが、物語の主軸に対し従であることに基本的に迷いがない。でも、ふとさざなみが立つ。物語から受ける「健全」な印象は、そんな有様から導かれるのかも、とも思いました。

ところで、この作品の「かぶれさせ」パワーは、むしろ筋の起伏以外の場所に散りばめられている気がしてならない。簡潔な文章から、まるで巨大宇宙船が建造されていくように、なんかもう、t(トン)単位ってカンジのスケールが立ち上げられていくのでした。

「宇宙船」という言葉は、いまではちっとも新しくない。もう喚起されなくなってしまったかつてのカリスマが、しかしここで、枯れた植物が水を得たかのように勢いよく伸び上がり、感動を伴って再認識されるのでした。絵なんかないのに絵が見えるよ。宇宙へ旅立つ巨大建造物(原子力エンジン! を搭載した怪物!)の誇る、圧倒的な威容。
「でけえっ。」「速ええっ。」「怖えっ」「危ねっ」そして「カッコエエ…」 もしかして、実物を漫然と眺めるよりずっと強いインパクトかも。

圧倒されて、そしてかぶれる。宇宙って、宇宙船って、カッコイイ。京フェスで「太陽の簒奪者」、英訳出版が進行中、とお伺いしました。たいへん楽しみ。このワクワク、NASAがあるあちらさんでは、もっと大勢に待たれていそうな気もします。

先日、品川アイマックスシアターで「SPACE STATION」を観ました。日頃、宇宙開発に全然興味なんてなさそうな方にお誘いを受けたので、たいへん意外だったのですが。…そうか。

だって当日「あの本読んだ?」って聞かれたもん。
……鈍っ。さっさと気づけ。>自分

※1…たぶんね。
※2…読み出したら読み通すまで、寝られなかったらしい。オトコのコとして当然の反応だと思う。でも、中学生でこれを読むって、羨ましい。


2002/11/30(Sat) ・・・とりこ
「西の魔女が死んだ」

●梨木香歩「西の魔女が死んだ」/新潮文庫/2001年

やっとこさ、読みました。(遅くなってスミマセン……)

まずは粗筋。主人公の中学2年生の少女、まいは、ある日突然、学校に行くのをやめてしまう。
どうしても、学校に、行きたくない。
理由はある。新学期のクラス替の時、グループに入るのに上手く立ちまわらなかったせい。その結果がこれ。ちゃんと判ってる。でもそういう一切に、まいはもう、うんざりしたのだ。だからグループに入らなかった。仕方ない。でも、今、誰も味方がいないあの教室には、絶対、入りたくない。そんなことでどうしてこんなにも負けてしまわなくてはならないんだろう。

お母さんが「そういう子だから」と電話で単身赴任中のお父さんに話しているのを聞く。ショックを受ける。そんなふうに思われるのは嫌。ダメな、できない子だ、とがっかりされていたら、どうしよう。
不安なまま、大好きなおばあちゃんのところへ預けられる。学校へ行かない、長い長い、夏休みのような生活が始まる。お婆ちゃんは自分のことを魔女だという。そんな日々の中、あちこちに不安や引っ掛かりを抱いていたまいの心が、ゆっくり、少しずつ、ほぐれていく。

綺麗に纏まっていて美しかったです。お婆ちゃん、キャラ立ってるー。ウチのお婆ちゃん(※一応、存命中)にちょっと似てるかも・なんて、つい思っちゃいます。

大好きな人との不和が幾度か描かれます。解決されきらないあたり、現実のそれに近くて良かったです。特にラスト。
泣かされてしまいました。

ただ、どうも全体に「綺麗ごと」「お行儀が良いなあ」という印象でした。もう少しアクがあって構わないから、インパクト強い方が個人的には好みかも……古典的な児童文学のスタイルです! といった臭みも、やや感じました(早い話が、ちょっと「説教臭え」とか思っちゃったわけです)。
「私の中にいるかもしれない私」が「不登校」になってしまうまでの過程がもう少し濃く描かれていて、そのあたりに入れ込んで読めれば、また印象違ったかな。なんて思いました。

でも、泣かされちゃうのですが。

野苺ジャム美味しそうでした。自然の中で季節に触れていくの情景も美しくステキです。いい空気を吸いたくなります。
隣人のおっさんは怖かった。一応「オトナ」であるワタクシから見ても、怖い。こんな不気味な隣人がいたらまいちゃんが怯えるのは仕方ないよ…

巻末に併録の、短い番外編が面白かったです。



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