2002年12月前半

2002/12/1(Sun) ・・・とりこ
バリー・ユアグロー自作朗読&トークショー・ミニレポート

バリー・ユアグロー自作朗読&トークショー
(ゲスト:柴田元幸) 2002年12月1日・於:青山ブックセンター

ユアグロー氏の自作朗読の後、柴田氏が同作品の邦訳を日本語で朗読、という交互の形式でした。

ユアグロー氏は、くっきり眉毛がひょいひょい動く、表情豊かな方でした。声色巧みに聴衆を惹きつけ、身振り手振りも熱が入り、自在で、楽しそうな朗読……いえ、ご自分でも仰っておいでのとおり、朗読というよりパフォーマンスでした。誰よりもご自分が一番楽しんでおいでなのだなあ、という印象。

座ると椅子から長い脚が余ってしまう、体の大きな方でした。(日本の椅子が小さいのかも)あとねえ、おでこも広かった。というか、ほぼ頭頂部までがおでこ。というかタマゴ。そして口ひげなので、ワタクシは「ちょっと『おやつ神様』に似ている。」なんて思ったことです。

対する柴田元幸氏は、思っていたよりずっと小柄な方(ユアグロー氏と並ぶので、余計小柄に見えたかも?)でした。
日頃のご講義の鍛錬か、人前でのお話にたいへん長けておいでで、というか、照れる構えを見せつつも、実に思い入れたっぷりにご朗読下さるので、ショートショートのラジオドラマを日英交互にライブで聴くような感覚。
しかも、英語版の直後に日本語版を聞けるので、なんかヒアリングのベンキョーみたい……(答えあわせがあるぞ、というか)
インタビュー内容も色々興味深かったです。折角なので、少々ご紹介してみます。

Q:たいへん短く、1ページに満たない作品もある、シュールともファンタジーとも言いきれない、時には通常の起承転結すら伴わない独特の作品スタイルは、どのように生み出されたのでしょうか?

A:ごく若い頃は、長い(そして、今イチたるい)ものも書いていました。20代になってから、どこかの文芸誌で夢を模倣した形式の作品を読み、こういうやり方もあるのか、と思ったのです。
卒業後、新聞社に就職してね。(新聞記事という性質上)意識的に、短く視覚に訴える文章を書かなきゃならなくて(short and intensity under control)、これはとてもいい訓練になりました。

Q:次作は、どのようになっているのでしょう?

「最新作は、"Haunted travelers"(邦題「憑かれた男」。柴田元幸訳で、新潮社「波」誌上連載中。近いうちに刊行予定だとか)。
それからコドモ(ヤングアダルト)たちに向けたものが2作。"My curious ancle Daddly"、(※1)と、"Nasty stories for nasty boys and girls"(※2)で、どちらも、既に書きあがっています。
「憑かれた男」は、「トワイライト・ゾーン」といわゆる旅行文学を一緒にしたようなもの、と自分では考えています。」

※1…2004年に米国で出版されることが決まっているそうです。
※2…初の、イラスト付き短編集だそうです。

「コンマの位置がキマらなくて、そんなことが気になって、夜、眠れなくなったりもします。でも、そうやって一生懸命直したものが、それでホントに良くなってるのか、それもまた、ホントのとこ、よく判らないんだよね。」

「オリエンタリズムという言葉には、ネガティブな含意もありますが、自分の作品は、世界に対する自分のオリエンタリズムとそのギャップを描くもの、とも言えると思います。」

「僕はクリーシェをよく用いますが、それらは、ただ道具に過ぎないものです。
なのに、その表面だけを捉え「政治的にどうこう」といった批判を受けることがあり、これには、いつもたいへん困惑してしまいます。」

Q:「ユアグロー作品を訳す上で、なにか特徴的なことはありますか?」(翻訳者の柴田氏に向けた質問)

「じろじろ、ひたひた、ずるずる、ひそひそ、のような擬音を多用しないよう気をつけています。ユアグロー作品の場合、特に動詞に顕著ですが、例えば、ただ「見る」というシンプルな動詞ではなく、表情を伴う動詞が多いのです(ex:lookやseeでなく、stareやgazeであるとか)。」

たいへん充実の2時間でした。面白かったです。あっという間でした。「セックスの哀しみ」に、柴田、ユアグロー、両氏のサインをゲットしましたよ。イエイ。(ミーハー)


2002/12/3(Thu) ・・・とりこ
地球礁

●R・A・ラファティ「地球礁」柳下毅一郎訳/河出書房新社/2002年

没後刊行ですが、ホントは1967年発行、ラファティのデビュー作だとか。 ※3作同時刊行、という派手なデビューだったそうです。「トマス・モアの大冒険」と、コレと、もう1作(未邦訳のようです)。

河出から出てますが、晶文社っぽいなあ(コラコラ)。例えばコクトーの「恐るべき子供たち」、ただしラストに退廃と絶望でなく明るい光が拓けていました。そんな印象です。

2つの家族が主役です。2組の両親と7人の従兄弟たち。ただの家族じゃないよ。宇宙から来たプーカ人です。(また宇宙人かよ……)
先行き不透明な21世紀、明日へのエネルギーを担うのは、ズバリ、宇宙人だ!!(もうなんでもいいよ。面白いんだから。)

魂の在処はカワ(見てくれや社会的位置付け)では、ない。という主張が濃い(と思う)ので、ブコウスキーや笙野頼子がお好きな向きは、きっと気が合うと思います。
タマシイさえ不敵であれば、アナタ達は世界に耐え得るか、ではなく、世界はアナタ達に耐え得るか、という倒置が起こりうる。そんなお話。

オトナ抜きで子供たちが広い海へ乗り出していく、という構図に「ツバメ号」シリーズ(A・ランサム)がかぶるので、余計嬉しいのかも。でも、「船出」ってものは、誰が見たって、心踊る光景かも。とも思います。

「私は卵を割ってしまった! ドラゴンは孵った!」
「お母さん、それ、地球の比喩でしょ。」

子供たちは、タフでエネルギッシュで、輝く魔法の緑の目を持っている。7対の目が夜明けの海で緑に光る。これから出会う全てを食ってやろうと思ってる。

カッコイイ!

プーカ人は「バガーバッハ詩」という万能の呪文を使いこなすという設定。「詩」として「どう」なのかワタクシにはよく判らないのですが、この「魔法」なら、知ってる。と思いました。

例えば「この山はカンチェンジュンガ」と名づけてしまえば、誰がなんと言おうとそこはカンチェンジュンガだし、敵をギッタンギッタンにして、血の海が流された。て認識があれば、それはもう「真実」としてそこにある。
「実際」に血を見たかどうかは勿論重要。でも、ある意味「真実」なんかに囚われはしない。両者の認識がそこで一致するならば。 (例:バガーバッハ詩で呪文をかける。「大人なんか死んじゃえ!」しかし大人はこう言う。「それを見越して前もって防御の呪文をかけたから、俺たちは死ななかったのさ」「そういうことなら、話が判るわよ。」
そんな風な。)

「訳者後書き」にて、「プーカ」はアイルランド語でゴブリンを指す、等アイルランド移民の開拓史とも読める旨などの解説があります。ナルホドう。ビブリオグラフィを含む、判りやすく読み易い、簡単なラファティの手引きとなっています。
ラファティ入門として、相当なオススメかも。版組みも読み易いし、表紙もナイスだし。

解説に「これはメタファーではない」とあります。ワタクシもそう思う。SFというより、FTかもしれません。ブラッドベリ好きはお気に召しそう、これは請け合い。

物語構造として、「共同体に新規参入するマイノリティーが、どうやってその世界と関わっていくか」という物語にカンタンに置換されうるので、「世界に対して絶対的な不安感とか孤立感とかを、時々、味わってしまう」タイプのニンゲンは、気分が暗いとき読むと、きっとタイヘン元気が出ますよ。

子ども同士、コドモ×親、親たち同士の関係性、拮抗具合がスバラシかった。
あと、中盤の脱獄劇も痛快だったなあ。

……って、ついつい長くなりまする。いやはや。


2002/12/8(Sun) ・・・とりこ
「国内SFファン度調査」

「国内SFファン度調査」(@V林田日記さま)

例の如く「*」のついてるヤツは、サイト内のどこかに感想があります。

・『傀儡后』(02) 牧野修
・*『太陽の簒奪者』(02) 野尻抱介
・*『グラン・ヴァカンス』(02) 飛浩隆
・『海を見る人』(02) 小林泰三
・『どーなつ』(02) 北野勇作
・*『蚊-か-コレクション』(02) 飯野文彦/小林泰三/田中哲弥/田中啓文/牧野修/森奈津子
・*『サムライ・レンズマン』(01) 古橋秀行
・『アラビアの夜の種族』(01) 古川日出夫
・*『ふわふわの泉』(01) 野尻抱介
・*『銀河帝国の弘法も筆の誤り』(01) 田中啓文
・『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』(01) 滝本竜彦
・『ぬかるんでから』(01) 佐藤哲也
・*『かめくん』(01) 北野勇作
・*『鳥類学者のファンタジア』(01) 奥泉光
・*『三人のゴーストハンター 国枝特殊警備ファイル』(01)
我孫子武丸/牧野修/田中啓文
・*『イリヤの空、UFOの夏』(01) 秋山瑞人
・*『西城秀樹のおかげです』(00) 森奈津子
・『病の世紀』(00) 牧野修
・『タツモリ家の食卓』(00) 古橋秀行
・*『2001』(00) 日本SF作家クラブ編
・*『異形家の食卓』(00) 田中啓文
・*『八月の博物館』(00) 瀬名秀明
・『永遠の森 博物館惑星』(00) 菅浩江
・*『月の裏側』(00) 恩田陸
・『オルファクトグラム』(00) 井上夢人
・*『猫の地球儀』(00) 秋山瑞人
・『偏執の芳香 アロマパラノイド』(99) 牧野修
・『スカーレット・ウィザード』(99) 茅田砂胡
・*『チグリスとユーフラテス』(99) 新井素子
・『クロスファイア』(98) 宮部みゆき
・『BRAIN VALLEY』(98) 瀬名秀明
・『天使の囀り』(98) 貴志祐介
・『ブギーポップは笑わない』(98) 上遠野浩平
・*『鍋が笑う』(98) 岡本賢一
・『E.G.コンバット』(98) 秋山瑞人(原作:☆よしみる)
・『蒲生邸事件』(97) 宮部みゆき
・『星のパイロット』(97) 笹本祐一
・『百鬼譚の夜』(97) 倉阪鬼一郎
・『敵は海賊・A級の敵』(97) 神林長平
・『ちほう・の・じだい』(97) 梶尾真治
・*『光の帝国 常野物語』(97) 恩田陸
・『西の善き魔女』(97) 荻原規子
・『ステーシー』(97) 大槻ケンヂ
・『異形コレクション』(97) 井上雅彦監修
・『MOUSE』(96) 牧野修
・『ブラックロッド』(96) 古橋秀行
・『みるなの木』(96) 椎名誠
・*『玩具修理者』(96) 小林泰三
・『東京開化えれきのからくり』(96) 草上仁
・『OKAGE』(96) 梶尾真治
・『「吾輩は猫である」殺人事件』(96) 奥泉光
・『SFバカ本』(96) 大原まり子・岬兄悟編
・『パワー・オフ』(96) 井上夢人
・『ロケットガール』(95) 野尻抱介
・『タイム・リープ』(95) 高畑京一郎
・『ムジカ・マキーナ』(95) 高野史緒
・『パラサイト・イヴ』(95) 瀬名秀明
・『夏の災厄』(95) 篠田節子
・『スキップ』(95) 北村薫
・『仮想年代記』(95) 大原まり子・堀晃他
・『ねじまき鳥クロニクル』(94) 村上春樹
・『聖域』(94) 篠田節子
・『姑獲鳥の夏』(94) 京極夏彦
・*『クラゲの海に浮かぶ船』(94) 北野勇作
・『クロノス・ジョウンターの伝説』(94) 梶尾真治
・『日本SFの大逆襲!』(94) 鏡明編
・『東亰異聞』(94) 小野不由美
・『くるぐる使い』(94) 大槻ケンヂ
・『ガダラの豚』(93) 中島らも
・『雨の檻』(93) 菅浩江
・『硝子生命論』(93) 笙野頼子
・『ドグマ マ=グロ』(93) 梶尾真治
・『新興宗教オモイデ教』(93) 大槻ケンヂ
・『家畜人ヤプー 完結編』(92) 沼正三
・『朝のガスパール』(92) 筒井康隆
・『昔、火星のあった場所』(92) 北野勇作
・『さすらいエマノン』(92) 梶尾真治
・*『十二国記』(92) 小野不由美
・『おしまいの日』(92) 新井素子
・『竜は眠る』(91) 宮部みゆき
・『天才えりちゃん金魚を食べた』(91) 竹下龍之介
・『リング』(91) 鈴木光司
・『絹の変容』(91) 篠田節子
・『よろずお直し業』(91) 草上仁
・『奇妙劇場』(91) 梶尾真治・森下一仁他
・『恐竜ラウレンティスの幻視』(91) 梶尾真治
・『ワールズ・エンド・ガーデン』(91) いとうせいこう
・『幻奇行 中村春吉秘境探検記』(90) 横田順彌
・『楽園』(90) 鈴木光司
・*『アド・バード』(90) 椎名誠
・『武装島田倉庫』(90) 椎名誠
・『サラマンダー殲滅』(90) 梶尾真治
・『英雄ラファシ伝』(90) 岡崎弘明
・*『月のしずく100%ジュース』(90) 岡崎弘明
・『星虫』(90) 岩本隆雄
・『アクアリウムの夜』(90) 稲生平太郎
・『時の幻影館』(89) 横田順彌
・『宇宙船〔スロッピイ号〕の冒険』(89) 横田順彌
・『山の上の交響楽』(89) 中井紀夫
・『残像に口紅を』(89) 筒井康隆
・『竜の柩』(89) 高橋克彦
・『金鯱の夢』(89) 清水義範
・『チョコレート・パフェ浄土』(89) 梶尾真治
・『クラインの壺』(89) 岡嶋二人
・『火星人類の逆襲』(88) 横田順彌
・『遠い海から来たCOO』(88) 景山民夫

300作品中106作品読了 見直して「『エリコ』(99) 谷甲州」に入れ損ねたと気づいた。ま・いっか。

ところでこのリスト、「そのうち、感想書きたいなあ」と思ってた本、多いです。例えば「竜の棺」。高校時代ハマりました。ナニャドヤラ〜。おかげでデニケンまで読んだわよ。もう、土偶は全部エイリアンだから。特に遮光器土偶!

あと、リストに笙野頼子が。嬉しー!(笑)
でも、「硝子生命論」は、SFというより「幻想」かも……? あ、でも山尾悠子が入ってるリストだから、いいのか。

そうそう、「天才えりちゃん」は、とりこ家にあります。
しかし嗚呼、「SF」というジャンルの懐の深さよ……(詠嘆)。


2002/12/17(Tue) ・・・とりこ
アラビアの夜の種族

●古川日出男「アラビアの夜の種族」/角川書店/2001年

そう。千夜一夜なのです。ので、神秘的な美女が、実にナイスな口ぶりで、物語って下さいます。「語り」の快楽って、原点なんだわー。ホン、というかお話好きの原点に立ち返るキモチ。

「虚構」の快楽なのよ。「あ、そっか、お話なのだった」と度々認識させられるのです。絶対、コレ、わざとやってる。膝を乗り出して熱心に聞くトコをひょいと掴まえて「これはお話だから」と引き戻される。
そう。お話。「だからもう何でもアリなんだよ。」というエクスキューズ。やられた。そうか、何でもアリなんだね。
……スバラシイ……!!

千夜一夜てのは「続き物」でもあります。つまり、ヒキがある。これがまた、いいトコで切る。そして山場で逸らさない。読者の予想を大幅に超えたでっかいお楽しみが、広がり、謎が解け、また出会う、キモチよさ。
この本、カナリぶ厚いですが、いやあ、もうこの厚みが頼もしくて。あとこれだけお楽しみがあるのか、ってもうウハウハでした。マジで。

うねり流れる語りを支える要素の一つに、独特のルビ(=二重言語)があります。同じ熟語に同じルビ、という整合性にはむしろ無頓着で(逆に「そうか、言葉なんて文脈毎に違うもんだし」なんて思わされてしまう)、ひたすら「いい得て妙」が最優先。絶妙な言い当てや節回し、「うまいこと言いやがる」って、ニヤリとしたりスカっとしたり。
そしてこの作者氏、タフなのです。とにかくサービスが安定供給。なので安心してリズムに身を委ねててよいのです。うわあ。ウレシー。

初の「推理作家協会賞」「日本SF大賞」ダブルクラウンだとか。でもホント言えば、どちらの賞もイマイチしっくりこないかも。てか、選定委員がよってたかって好きな本に票を入れちゃったんでは。という気も。しかし選者諸氏、シュミいいな……てか、両賞選者のスゲエやる気を感じますよワタクシは。

字の密度高い? 漢字多そう? それただのカワ。絶対へーき。まあ、人によってはエンジンかかるまで多少辛抱要るのかな……身近の、厚さに萎えがちな人物の場合、150Pあたりでやっとこバーストが来たらしいです。ちなみにその人物は、その後6時間、そしてちょっと寝てからまた6時間、計12時間ぶっ続けで残り一気読みしたとか(うらやましいぞ……)。

「こんな分厚いの読むんか」て思った。ワタクシも。しかし苦じゃなかった。てかニンゲン、キモチいいことはするなと言われてもしますわ。逆に時間足りないって。マジで。読んでる間、毎日が飛ぶようでした(仕事時間はすごーく長い日々でしたが)。

アラビアンナイトの異国情緒、豪華絢爛な絵巻物が紐解かれ、あれよあれよと物語が立ちあがる。
そして物語は、大団円(ハッピーエンド)で幕を閉じ……

それだけでは終わらない。この「騙り手」、更にウソをつく。短くも鮮烈なこの「後書き」。やんなっちゃう。短い文章から立ちあがる砂埃、喧騒、現代イスラムの臭い。最後まで気を抜くことなくお楽しみ!

入れ子式構造で、内も外も魅力的で、更にもう一枚あって、どれも手を抜いてなくて、とか「幻詩狩り」(※)なとことか、読みドコロは色々です。でもまあ、読んでのお楽しみ、てことで。

一見クラシックな面してますが、実のトコ(特に後半)は、ライトノベルなノリ。本音言うと、デュマっぽいかも……でも、デュマって、中世期におけるライトノベルみたいなもんかとも思うし。
てわけで、年配層にもお楽しみいただけそう。実は、年末年始に父に読ませようと計画練り中なのでした。でも、父には、ちょいとノリ軽すぎかしらん?? まあ、未読の方は年末年始って、一気読みのチャンスかも(コレ、中断するのホント苦痛なのよー)。

荒唐無稽、イロゴトもあり。下世話もここまで突き抜けりゃ爽快です。しっかし、節操ねえなあ……んなアホな! とか、そんな奴いるか! とか、顔歪むこと必至。不二子ちゃんでドロンジョさまな蛇神様……ラブ! あと、やっぱ善玉はこの位とことん、アホでなきゃいかん。陰のあるダークヒーロー、マンセー! しかしちゃっかりモノだなアンタ。とかとか。
そんな面々が絡み合う楽しさといったら!

相当支離滅裂になってますが、要は、オススメであります。まあ、いいから読んでみるヨロシ。そしてワクワクしたまい。そうそう、あと、ある方のご意見によると、持ち歩いて多少ボロくする方が、この装丁はムードが出てよいらしい。成程。

※…川又千秋「幻詩狩り」。第5回日本SF大賞。大変おもろい。ドゥバド。


2002/12/18(Wed) ・・・とりこ
マイノリティ・リポート

●S・スピルバーグ監督「マイノリティ・リポート」/公開中/公式HP

舞台は、近未来の米国。
3人の予知能力者(プレコグ)の予知夢により、犯罪を事前に防ぐシステムが確立されてから6年。刑事アンダートン(トム・クルーズ)は、犯人検挙に心血を注いできたが、ふとしたきっかけでシステムに疑問を抱く。予知能力者たちは、別々の夢を見ることがある? 未来は一つではないのか??

そんな折、アンダートンは自分の犯す殺人を予知されてしまう。彼の逃亡と、予知された殺人への謎解きが始まる。何故自分は、まったく見知らぬ人物を殺す破目になるのだろう。予知された未来から逃れることは、出来ないのか。未来は絶対不変のものなのだろうか?

青くザラついた画面は、硬質でうす寒く、ディックの世界観にたいそう似つかわしい。暗くいかがわしく、カッコイイです。
一見シャープ&クールですが、スピルバーグって、米国における宮崎駿みたいなものかも。なんて思いました。小ネタがファミリーなのです。刺客ロボの「スパイダー」、色こそ銀色だけど、「千と千尋」のススワタリってな印象だし。

プレコグの予知するガイシャとホシの名前は、フクザツなシステムにより、ビリヤード球みたいなカラフルな木の玉に刻印され、パイプからコロコロと転がり出てくるのでした。殺人事件だと赤玉。計画殺人だと茶玉が出てくるんだって……って、福引じゃないんだから! パンフによるとスピルバーグのアイデアらしい。うーむ。ハイテクなんだかアナログなんだか。

警官の無能さ。逃げ込む先はナゾの工場。なんか「ザ・ワン」を思い出す……SW2といい、モンスターズ・インクといい、工場ってお約束なのかしら。
しかし、自動車工場の機械に縫いこまれ、死んだ? と思いきや、完成した車(真紅)に無傷で収まってて、そのまま新車でばびゅーんと走り去る、てどうよ。そんなのばっかりなのよ(嘘じゃないよー)。

結構小ネタがほっぽらかしで、手作りサンドの行く末がやたら気になるワタクシでした。美味しそうなのに……未来のミルクって、腐るとあんな色になるの?(てっきり、ヨーグルト化するもんだと…)まあ、未来だから、合成ミルクかもね(ホントどうでもいいツッコミだな…)。

途中、●玉がコロコロ転がる場面に、内心「左目を忘れた男!」とツッコミ入れたワタクシでした。浅暮魂、スピルバーグと通じ合った…? 
そして「スパイダー」には、当然、飛浩隆「蜘蛛の王」を髣髴。スピルバーグ、SFMの読者かも!(ウソつけ) 

女性プレコグのアガサちゃんは、腰が抜けた酔っ払いの仔猫ちゃん、てな風情で可愛かった(違?)。お気に入り。髪の毛は生えてない方が可愛いと思うなあ。

ラストに吃驚でした。ハッピーエンド、になってることが肝心なんでしょうか……だって、あの3人、あれでいいの??? 失ったら再生産(つーか)すればいいてもんでもないと思うしなあ……人魚姫をハッピーエンドにしちゃうお国柄だけはある。てことかしら???

2時間半の長尺、結構消耗しました。もちょっと枝葉落としたシンプルな方が嬉しかったかも。と、ちょっと思いました。

2002/12/19(Thr) ・・・とりこ
フィリップ・K・ディック・リポート

●早川書房編集部編「フィリップ・K・ディック・リポート」
ハヤカワ文庫/2002年

ディックの生涯って、こんなに酷かったのか……
サンリオやハヤカワ青背を読み始めた頃(80年代後半)ワタクシは中学生でした。つまり、「ブレードランナー」以降の世代。
ディック、活躍当時は正当に評価されてなかったとか、不遇だったとか、聞いてはいても有名映画の原作者だし、作品名の知名度も高いし、古本や図書館の流通率といい、それがどういうことか、イマイチ判ってなかった。

双子の妹と生後40日で死別。両親の離婚。幼児期に祖父から虐待を受ける。それらのトラウマ。
離婚歴だけで4回、ちっとも落ち着かない私生活。奥さんで苦労したり、挙句出ていかれたり。クスリに頼る始末。出版社に印税前借りしたり、ハインラインに借金したり(ぶっ……)。
招かれたワールドコンで、「自分は神を見た」と公言する演説を2時間ぶって、ファンを辟易させたりしたらしい。うへえ。
最終的に、薬物中毒で更正施設に入院。退院後、心臓発作で倒れる。享年52歳。って、ウチの両親より若いじゃん。たいへんだあ。

チャールズ・プラットによるディックへのインタビュー、邦訳長編の全作解題、巻末年譜。作品は読んでいてもディック研究は不勉強だったワタクシには、色々面白かったです。

ディックを読みこんで長い方々(SF作家諸氏の寄稿とか)も面白いのですが、もうちょっと若い世代の寄稿も読みたかったかも。なんて思いました。対談にご出演の中原昌也氏が若い世代の代表ってことなのかなあ? 

ところで、寄稿者紹介は、ちょっとでもいいから、あった方がいいのでは……(一切ないのだ。)せめて代表作が挙げてあれば、名前だけじゃピンとこなくても「そう言えば」とか思うかも。もう少し「普段SF読む人以外」へのサービスがあればと思いました。そうすれば、ディック入門として使えるよ、って、初心者(?)にオススメも出来るのに。……勿体無いなあと思いました。(文句たらたらで済みません。)

関連小説ガイド「ディックの影響を受けた、かもしれない作家たち」(中野善夫)は興味深かったです。
「ディック」っぽいと言われてしまう部分、つまりディックの「偽とホンモノへの拘り」や「ドラッグ」云々というのは、読めば自明なので、それ以外の部分で「ディックらしさ」を形成するものはナニか、に外側からアプローチを試みてあります。「そこんとこもっと教えてくれ」、なんて思いました。あと、ジョナサン・レセム「銃、ときどき音楽」読まなきゃ。

評論「神はどこにいるのか:断章」(東浩紀)は、のってきたかな、てとこで終わり……続きが、とっても気になります。

2002/12/20(Fri) ・・・とりこ
ユキノヒBOOK

●山名沢湖「ユキノヒBOOK」/講談社「なかよし増刊ふゆやすみランド」掲載/2002年

「ユキノヒ図書館」と「ユキノヒBOOK」のショートショート×2本。両方で22Pなので、案外しっかり読めます。スバラシイ。

雪の日 
図書館の前 
初めて 二人は 出会ったんです

と始まる前者は、本好きのイワナミくんとみすずちゃんが、とある雪の日に、出会うお話。中学1年生かなあ、このウレシハズカシなお二人さんは。

「この本! すげー! レアじゃん! 超読みてー!」

そして、続いてはヤハリ本好きのナツメくんと、さえらちゃんのカップル。

デートはいつも 本屋 図書館 古本屋 
私の彼は 本が好き
とても好き

本好き男子ってス・テ・キ! ひゅー!(いやはや……)
「本」好き男子を巡る云々ですが、「本」をそれ以外の何かに置換してみると、なんちゅーか、オトメゴコロをモノスゴク端的に&鮮やかに切り取ってあると思います。

まあ、両作とも、イカ漫画の定番たる「察しのよい男子」抜きには、成立しえないラブではありますけれども。(※)

そーいや先日掲示板(「ミズウミ電報」共用)で少々話題(?)になってた「恥ずかしくない少女漫画の買い方」ですが

「店員さんに「●●って本、どこにありますか?」と聞いて、持ってきてもらって、そのまま買う」
てのが有効らしい。成程。ネット通販も良かろうとか。ナルホド。
いっそフェイスガード着用して、変装するってのは、どう? (ダサっ。)←……。
掲載誌の「なかよし増刊 ふゆやすみランド」はA5サイズ。分厚いです。前半4分の1くらい(p127〜)に載ってます。520円。

読んでお気に召した向きには、1月6日発売「いちご実験室」、超プッシュいたします。こういうのご期待いただいて、間違いないです。マジで。

(※)…12/22追記。
たいへんドリーミーな展開なのです。実際こうなればなあ・でもなかなかこうはなあ。察しいい男子って、いいよなあ……な〜んて下手に書くと、リアルとりこをご存知の向きに必要以上に深読みされそうで、身動き取れないよう。ま・強いて言えば、ナツメくんて「憎いアイツ」だよな……て! (マジ?)

◆また改めて書きますが、「いちご実験室」は、主役少女ミソラちゃんが、メガネ&白衣の科学青年「ハカセ」の実験室に入り浸り、ハカセの数々のトンデモ発明品と、うんぬんかんぬん……という漫画。販促ページイラストの黒ネコくん、背中にぜんまいがついてますが、そういう次第。つまりロボ。


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