| 2003/1/8(Wed) ・・・とりこ |
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●山名沢湖「いちご実験室」/講談社KCDX/2003年
先日のデンワ。 そんなわけで、無謀にも全作解題(?)。てか、どの作品も大好きスギて、いずれこうなってたって気がするよ。 「いちご実験室」全10話(+番外編1話)に、読切り7本。奇想が詰まったスィート&シュールな「いちご…」と、情感たっぷりの読切り群、2テイストが相乗り。読み応えあるなあ。男性には「いちご」が、日常をふんわり優しく掬い取る読切り群は、女性に、支持されそう。 ◆「いちご実験室」 講談社「amie」1997年10月〜1998年7月号掲載 まるで色褪せてなくて、驚きでした(まあ、元々レトロテイストな気味があるので、古くなりようがないのかも)。 ヘンテコな発明品、メルヘンとSFの狭間をただようのんびりムードは、実は「ちまりま・わるつ」等の、竹本泉ワールドに近い印象でもあります(テンポもチガウし、線の太さのせいで一見判りませんが。画面構成、なごみ度、スコシフシギ感覚、共通項、実はイロイロあると思うな。) ◇DATA1:「Strawberry Fields Forever」 記念すべき第1回。ぎこちなくぽきぽきとした、青硬で無機質な感触が愛おしい。定番の名作絵本「わたしのワンピース」西巻茅子/こぐま社(大スキ! 超名作!)のオマージュでもあります。 ◇DATA2:タイムマシンにお願い」 ミソラちゃんのクラスメイト、チエミちゃんが初登場。彼女、連載時は1番人気のキャラだったとか(ツッコミ役だもんね!)。ハカセの発明したタイムマシンは、世紀のタイムワープに大成功! やらずぼったくり! ◇DATA3:「星に願いを」 「流れ星を生けどりにして 解剖し なぜ願いがかなうのか そのメカニズムを研究したい」ハカセの野望や、イカに。流れ星を探す二人が、夜の裏山で見つけたものは? 稲垣足穂、野中ユリのファンは、きっとお気に召す筈。
◇DATA4:「憂鬱天国」 実は、刊行時期に最もタイムリー。Q.ミソラちゃんのお年玉は、一体幾らになるのかな?(……) ◇DATA5:「サカナ跳ねた」 後に「ハミング」が出てくるまで、とり的には「イカちゃんのプロ作品中、切なさナンバー1」でした。小学生で読んでたら、マジ泣きしたかも。てか、6年前も相当衝撃的だった。コレが一番スキ、て人も多そう。鈴木卓爾脚本「さわやか3組」のファンにお勧めしたいな。 ◇DATA6:「ひみつの花園」 「ウタをハナにかえる、ハナウタキャンディ」を食べたミソラ&チエミちゃん、ふわふわお花を撒きながら、あれれ、どこ行っちゃうの? ◇DATA7:「青空のかけら」 神経質なプチ引きこもり、ユキムラくんが初登場。(作品中で「引きこもり」と明記されてるわけじゃないのですが、どうもそんな印象なのよ、この子……) ◇DATA8:「ビューティフル・ネーム」 ハカセの大切な相棒、黒猫のタンゴくんの誕生秘話。ハカセ幼少のみぎり、嗚呼運命のその日、電子レンジの中で、一体何が??(しかし、全っ然変わらんのな、ハカセって……←ミソラちゃんもか。) ◇DATA9:「虹の彼方へ」 カラーで読みたい度、ナンバーワン(彩色はしんどそうか……)今回のハカセの発明、「ドラ●もん」の「お座敷釣堀」セットみたいじゃのう。 ◇DATA10:「Strawberry Fields Forever(reprise)」 そう、ページから溢れ出さんばかりの、夢一杯なイカちゃんワールド。大きく大きく伸びてゆく夢のいちご宇宙は、一体、何処まで広がるの? ◇緊急実験:「宇宙みつけた」 番外編。書き下ろしとカンチガイされるかも? でも「ビューティフル・ネーム」と同号に掲載でした。 ◆「春風郵便」 (2002/はるやすみランド)
単行本収録中、最新作。「いちご」から5年、絵柄の変貌度合いは衝撃的(イカちゃん、う、巧くなったな……←それを言っちゃいかんて。) ◆「朝顔ラジオ」 (2001/なつやすみランド) この手を使えば「なかよし」にだってSFが!(?) タイトルのとおり、音楽を受信する朝顔=朝顔ラジオ、ってお話です。谷川史子ファンのお気に召しそう(とりこ的には「裏・竹本泉」と踏んでますが)。
※おまけ情報。 ◆「雪玉ロンド」 (2001/ふゆやすみランド)
ショートストーリー3本仕立て。うち1本で、ほのか系がメインなイカマンガには珍しく(?)、恋の告白が見事・成就しております。今度雪が降ったら、やってみ? うまくいくかもよ? (…マジ??) ◆「空色探偵帳」 (2001/はるやすみランド)
なんとミステリ。舞台は横溝(よこみぞ)帽子店。少女探偵・江戸川さんが、謎を解決?! ネタバレ帽子、いえ防止につき、あとは読んでのお楽しみ。 ◆「真夜中郵便」 (2000/なつやすみランド) スタジオ・ジ●リによる映画化キボウ。北村薫ファンにもオススメしてみたい。頭一つとび抜けたワンダーがあると思います。「いちご」がなければ、こちらがタイトルになってたんでは、と思ったり。 ◆「ポップコーン・クリスマス」 (1998/ふゆやすみランド)
「真夜中郵便」の大きな感動のあとで、「でも、パーティーは終わってないよ」とウインク。茶目っ気いっぱいで、CDのボーナストラックみたい。
◆おまけ情報その2。 |
| 2003/1/20(Mon) ・・・とりこ |
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※ネタバレは避けました。でも、一部伏せ字。なるべく白紙で観るといいと思います……てか、こんなん読まんでいいから。映画館行って。 時代の空気を切り取るのに、映像は強い。ここには、鮮やかに切り取られた「今」がある。
一枚剥ぐと、真っ黒でどろどろの恐ろしい何か。毎日、「現実」の皮一枚ギリギリでそれを隔ててる。
そう、私たちは不安だ。未来は真暗で、だから不安。上の世代にも若い世代が不安であることは不安だ。彼らは彼ら自身の将来も不安だ。でも、ワカモノだってそう。
昔は良かった。世界はワリと単純だった。ホントはチガウけど、でもまあ、そういう風に見えてて、そう信じててもまあまあやっていけてた。 彼らの論理では、現状は改善されうる。日々努力邁進することは、善。この期に及んでも、不安をその論理で解消しようとする。 嘘だ。先なんかない。答えもない。ホントは皆知ってる。「癒し」が流行ったりしてる。誤魔化しや一時的凌ぎのために。
この映画で描かれるのは、先ず「不安」だ。
目の前の問題は、1度、2度、解決される。たかのように見える。そしてそれは嘘だ。現状を回避・クリアしても、全体は変わらない。変わり得ない。逃避の末、夢は昇華した、ように見える。でも、まやかしは暴かれる。所詮逃避は逃避に過ぎない。その上、「逃避」からも逃れられない。(※2)
逃げ込みたい、逃げ込むことを赦して欲しい、でも、囲い込まないで欲しい。我侭と呼ばれても仕方がない。判ってる。
甘えたい。優しさが欲しい。「赦し」「赦され」たい。でもこの希いは他者を要する。必然的に、嘘となる。自分の不安は自分以外の誰も引き受けられない(※他者と関係する以上、見返りがゼロである事すら見返りとなる)。 助け、寄り添おうとする他者の有難さ。でも、手を出すと刺される。あなたが私の光に触れることは決して出来ない。自分ですら触れられないのに。あなたが私の重荷を替りに背負うことも出来ない。
ラストシーンの少年たちを、河から海に漂い出る光の一群と重ね合わせることは、容易だ。個々の別無く、あてどなく往く彼ら。緩やかな坂を上がりゆくのも、また、示唆的だ。 しんどいね。 素晴らしい作品です。
※1:そのことが物語に厚みを与えてる。スゴクいい。
≪オマケ(?)≫
春樹は春樹流に物語ってますので、構成もオチも読後感も、全然違います。
女性はほぼ不在でした。不要な要素の排除かな。ここでは良い選択だと思います。 これは海外でモノスゴク評価されそうな気がします。多分。 時に白く、時に青く、時に暗い画面は、不安、痛み、閉塞、希望、を絶妙に表現しています。場面場面の構図はキマリ過ぎるほどで、でも余裕あって……同行のららさま曰く、「アレだけカチッとしてて、でも緩い。そこが凄い」。うーん、ナルホド。 それにしても、監督ご自身に近いだろうオヤジ世代への、視線の、辛口さ。齟齬の切り取りのリアル。ワカモノの苛立ちのリアル。ああこれ以上言うとネタバレだ。構成、脚本の見事さ、黒澤監督の力量を思いました。必見。 |
| 2003/1/25(Sat) ・・・とりこ |
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今月はスティーブン・バクスター特集。短篇4本、インタビュー、「史上最大スケールの未来史」≪ジーリー・クロニクル≫シリーズの解説等がありました。
「スター・トレック」の新シリーズの、小特集も。 相当びびりました。色んな意味で。 ◆スティーヴン・バクスター「グラスアース・インク」…+0
時は、21世紀半ば。「箱入り警官」が「守護天使」のフォローを受けつつ、バーチャルな犯罪捜査を始める…という出だし。
「A I」に、懐かしの「マザー・コンピューター」とかを当てはめれば、結構古典的な筋立てかも。 ◆スティーヴン・バクスター「シルヴァー・ゴースト」…+0 極寒の惑星、通称「スノーボール」が舞台。寒そうな情景は、今の時期(2月号)読むのにピッタリかも。主役少女はなかなかの強情ムスメ。敢えて強者の論理で締める、のが問題提起になっています。 ◆スティーヴン・バクスター「重力鉱庫の記憶」…+0 …スミマセン、幾度も読み返したんですが、お粗末なアタマでは、ナニがなにやらサパーリワケ判りませんでした。(「…何となく?」が、精一杯……)◆スティーヴン・バクスター「月その六・インク」…+0 月面着陸を果たした主人公。ふと、視線を戻せば、同僚の姿は消えている。「あったかもしれない」月面着陸が幾つも描かれていて、面白いです。でも、それに気づく為には、ある程度の「SFファン的(※)知識」を要求されちゃうかも。 いわくありげに出てきた英国紳士、シリーズではお馴染みのキャラなのかなあ? (※)…或いは「宇宙開発ファン」とか。 ◆若き洗礼者の肖像(ことのはの海、カタシロノ庭):平谷美樹/藤原ヨウコウ…+0 主役はなんと、レオナルド=ダ=ヴィンチ。前半、ロウソクを片手に階段を上がる、おじいさんのイラストが、とてもキュートです。 ◆草上仁「この日のために」…+1 人間のいない、ロボット社会。出来そこないロボのルーイは「あの方」がもたらした「天使」だという……折角、「救世主」と「天使」のお話なので、クリスマスと絡めて12月号に掲載、とかだったら、より面白かったかも…なんて思いました。(却って「ありがち」になっちゃうかなあ?) ほのぼので、オチはちょっぴりブラック。「無難」とも言えますが、ソツなく読めて安心です。毎回安定してて、ホッとします。今までいつも「+0」つけてきちゃったので、今回は「+1」つけてみました。 ◆横田順爾「近代日本奇想小説史 または、失われたナンジャモンジャを求めて」…連載第14回「写実小説と奇想小説の対立」…+2 明治18年、坪内逍遥が「小説真髄」を発表。これを支持したのは、尾崎紅葉を中心とする、当時の同人作家グループ「碩友社」であった。江戸伝習の戯作にひきつづき、政治、科学小説などの翻訳が行われ、(それらは)政治・科学への啓蒙的役割もつとめていたが、こういう文学の本質性から距離のある作品も、副次的な効果として社会的に文学の地位を引き上げる役割はつとめてくれた。
(以上、本文中の「碩友社の文學運動」部分抜粋。強調はとりこによる) そんな時代背景の中、大衆に大好評で迎えられた矢野龍渓『浮城物語』。一言で言えば、冒険海洋小説(南方雄飛思想がテーマの、一大エンタテイメント)で、作者の自序によると、
(自分の)小説の要は、人を悦ばせることにあり… これを巡り「明治文壇史上、初の文壇文芸VS大衆文芸論争」が巻き起こった、んだとか。森鴎外が「浮城物語」に高い評価を与えてて、これに当時の「文壇文学」(当時はそれが「新しい文学」だった)側が、猛反発した、とか。(※)
しかも、それだけでは終わらない。そう、その後大東亜戦争が勃発する風潮の中、冒険海洋小説の傑作の幾つかは、当時の軍部により、国策(軍国主義)に都合のいいよう適宜改竄され、再刊されちゃう憂き目に遭ったりする。 コレ、歴史改変SFとかでなくて、レッキとした史実。 詳細もっと知りたい? なら読んでね(……)。考課評の対象外ですが、2月号中、ワタクシ的には最もエキサイティングな記事でしたよ。ので、勝手に点数つけてみる。←あ、そうそう、巻頭の「2002年度SFM読者賞・結果発表」も面白かったです。勿論。 (※)…キャッチーな部分を拾ってますが、ヨコジュン氏の論旨は「日本の奇想小説が、真のエンタテイメントとして読まれず、戯作と蔑まれ、純文学からは爪弾きにされ、国策に利用され……」(部分抜粋)と、奇想小説が長く正当に評価されてこなかった、そのことの指摘(&慨嘆)にあります。うん、こんなに面白いのに、勿体無いよね! エンタテイメント・マンセー! (そしてヨコジュンさま、有り難うゴザイマス!!) |