2003年3月

2003/3/14(Fri) ・・・とりこ
マリオネット症候群

●乾くるみ「マリオネット症候群」(徳間書店/2002年)

お母さんのサプライズには、思わず笑っちゃいました。楽しかったです。 さらりと読みやすく、あっという間でした。あるまじろうさんの可愛い表紙挿画、主人公の女子高生のイメージにたいへんマッチしてるなあ。

SF、という依頼での書き下ろし(後書き情報による)、とのことですが、リクツによるセツメイがないので、怖くないオカルト・みたいな雰囲気もあったかも。

大森望氏の解説に、類例に新井素子「あたしの中の…」が挙がってましたが、ワタクシは佐々木淳子「ダークグリーン」(※)を思い出しました。人間を、さながらコクピットに見立て、目の部分から外界を覗く複数の憑依者(いや、憑依ではないんだけど…)てな場面があった。気が。※…そういうマンガがあった。
階段の伏線は読めてしまったのですが、最後がああなるとは。映画「アンダーグラウンド」(カンヌ受賞したアレ)っぽい狂騒で、いいなあ(あの映画、特にラスト、たいへん好きなのです)。

全体にさっぱり風味で、これはこれで(とっつきやすいし)アリだと思うし、楽しかったのですが、もし、もっと「ブキミさ」が流れてて、そしてエンディングももっともっと「怪奇風・アンダーグラウンド」だったら、個人的に、相当大喜びだったかも。とか思いました(←ナマイキな……)。

2003/3/14(Fri) ・・・とりこ
S-Fマガジン 2003年3月号

●「S‐Fマガジン 2003年3月号」/早川書房

感想書くの、遅れに遅れて申し訳ありません。※長い感想文って、誰も読まないそうです。……そうかもね。トホホ。

◆テッド・チャン「地獄とは神の不在なり」…+2

「死後の世界」が、目に見えて実在する世界。死後の世界には天国と地獄のふたつがある。さてここに、愛し合う夫婦がいる。妻は信心深く、夫は懐疑的。シアワセな日々も束の間、妻は夫に先立って世を去り、天国に召されます。

最愛の妻が去りし世界は、地獄みたいなもの。しかし自殺するとマジで地獄行きなので、妻に再会するために、夫はナニがなんでも、天国に行かにゃならんのでした。

「神」の意図(振るまい)が、人間には不可知、且つ絶対的なものとして描かれているのが面白かったです。信心の深さ=見かえりの程度と規則的に結びついていない(「信心深く」なくても天国に行くやつもいたり、その逆もあったり。)

阪神大震災の折に、民衆がパニックにならなかったことに諸外国が驚いた、とかそういう話を聞いたことを思い出しました。例えば台風等、通過を耐えて待つ以外にどうすることも出来ない四季の移ろい(不可知で手が出せない物事)に慣れた国民性によるんじゃないか、てな結びになってた気がします。

もっと信仰に興味があれば、もっと衝撃を受けたかもしれませんが、ワタクシ日本人だし(?)、多分、アメリカの人より衝撃受けなかっただろうと思います。でも、巧さは判るし、中高生に読ませたいし、SFMっぽいなー、と思いました。ル=グィン好きにワリとオススメかも。

◆ケリー・リンク「ルイーズのゴースト」…+2

そこまで好み、て訳ではないのですが、でも面白かった。
主人公のルイーズには、ルイーズという名の親友がいて、ルイーズとルイーズは20年来の友達同士。ルイーズがルイーズと仲がいいので、ルイーズはルイーズのちいちゃな娘アンナと密かな火花を散らしたりもする。

SFMにコレ、てのは、正直戸惑います。でも、ゴーストがヨーデルを嫌がる、ってのは「マーズ・アタック」が元ネタかも。SFファンを意識してるのかなあ?(良くワカンナイけど)

ルイーズの欲しい何かは手に入らない・という、そのこと。松浦理恵子「裏ヴァージョン」を面白いと感じる向きにはオススメ。女性が書いたお話だなあ、と思いました。
様々な愛のかたちをシュール且つ個性的に表現した、柴田元幸編・英米短編小説アンソロジー「むずかしい愛」に収録されてても、まったく違和感なさそう。

そういや「ふたりのロッテ」(98年に米国で再映画化したし。双子が入れ替わる騒動を描いた、ケストナーの名作)って、片割れはルイーズだったなあ。二人はサマーキャンプで偶然出会うんだよね……←まあ、これは深読みし過ぎかも。ちなみに新しい方(「ファミリー・ゲーム」)は観てないです。古いほう(「罠にかかったパパとママ」)はパティ・デュークが可愛かったー。

◆主任設計者:アンディ・ダンカン…+2

うはっ、し…渋い! 今回の掲載作では、一番好き。
舞台は旧ソ連の宇宙基地。どこまで史実でどこから架空か、不肖ワタクシには判断つきません(スミマセン)。でも、たいへんたいへんカッコイイ。不覚にも、2度ほど涙ぐんでしまいました。
主任! 萌え!!

冒頭、収容所に収監されていた「主任設計者」こと技師セルゲイ・コロリョフは、政局の変化(多分)により釈放、再任されます。
そして、場面転換。若き秀才・アクショーノフが、不安と期待と野望とに胸を膨らませつつ訪れた、宇宙基地・バイコヌール。公式には存在していない、辺境の地。
「きみは最高の成績で学校を出た。これだけの成績なら、じっさい、職場はよりどりみどりだったはずだ。教えてくれ、何故バイコヌールを?」

背が低く、地味で、無愛想。キラキラ光る目、厳しい仕事ぶり。名が出ることを極端に嫌い、戻れないかもしれないロケット乗りたちは、宇宙への旅路に、彼のボールペンをポケットに忍ばせたがる。

うきゃー・主任ー!!(←エエイちったあ静かにシタマイ…)

劇場版のパトレイバー3作目、より更に渋い。ジョン=ル=カレ「寒い国から帰ってきたスパイ」もちょっと髣髴(東西冷戦が絡むから…。安直な発想)。

先日亡くなったギャビン・ライアルやハメットの「オプ」シリーズ、松本清張、ああいう社会派の、抑えた筆致・且つ底に流れる熱さなんかを描く系、そういうハードボイルドを愛読の向きはきっとそそられる筈。原りょうや高村薫ファンにも相当オススメ。きっとツボ。

あと、映画「ライト・スタッフ」で泣いたクチにも強くお勧め(※ワタクシは泣いた。アレ、泣く映画だよね?)。

(※ワタクシの「萌え」の定義って、ナニカ間違っていますか?)

◆さいざんす(ことのはの海、カタシロノ庭):深堀骨/藤原ヨウコウ…+2

砂丘を征くのはチンドン屋。植田正治や古賀春江っぽいレトロムード、キリコ調の伸びる影、ダリ調の溶けかけた犀(さいざんすだから犀のダンス……)。
ナイスです。1〜3ページがお気に入り。
ぐったりするような深堀氏の文章に、シュールレアリスムで攻めるとは、ワンダフル(^o^)丿

2003/3/28(Fri) ・・・とりこ
ドラゴンファームシリーズ(1)〜(2)

●久美沙織「竜飼いの紋章」/ハヤカワ文庫/2001年

もうずっとせんにイカちゃんからオススメしてもらった「ドラゴンファーム」シリーズ。やっとこ読んでみましたよ。 イカちゃんの読んだのは、1998年プランニングハウスの刊で、そちらは吉野朔実装画だとか(見たいなあ。口絵も数葉あったとか? 図書館で探してみようかな…)。私が読んだのは、2001年のハヤカワ文庫刊(コチラは水玉蛍之丞の装画)です。

それにしても、久美沙織作品の解説に、東大の農学部長、ってのは、ナカナカ面白いなあ。「土の匂いがするところがイイ!」てことでの人選なのかと思います。でも、確かに、従来の久美沙織ファンで土の匂いを求めてる、なんて向きは、あまりないかも。

実際、ドラゴンファーム(ドラゴン牧場)描写はたいへん魅力的なのです。なにしろのっけから、ドラゴンファームは臭い。という描写から始まるし。
主人公の少年は、ドラゴン農場の牧童で、ドラゴン達の糞尿を吸い込んだ寝藁から立ち上るアンモニアの臭気で、濃い色の髪がすっかりブリーチされてカガヤクパツキンになっておる! という設定(そんなん、聞いたことねー)。

ドラゴンは、ウマと犬と鷹をミックスしたイメージされたとのこと。乗用(競争竜)種もいれば温厚で大人しい家畜的な種もあり、といった具合。1頭1頭が愛すべき個性的な存在として描かれていて、とても身近。イヌでもネコでも何でもいいけど、何かペットを家族の一員として可愛がった経験があれば、楽しく読めると思います。

主人公の少年フュンフは、ドラゴン牧場の跡取息子。15歳ののんびりおっとりクンで、でもまあ実は、一応、貴族の若様なわけです(領主が落ちぶれてドラゴン牧場になったという設定)。堅実で保守的な「イナカモノ」。でも、そんな彼の恋のお相手は、都会からきた勝気な美少女。

互いが相手に憧れる、というシチュエーションで、都会と田舎の両方にそれぞれのステキさがある、というキレイごとがムリなく読めるの。巧いなあ。
だから、2項対立も面白いです。

ラブコメの初々しいドキドキは、もう、サスガ、久美沙織。仲違いした背景の二人が、バルコニーで逢引、とか。
主役の二人は、幾つかのピンチを潜りぬけつつ親密さを増していくので、自立成長モノとしても楽しめる仕掛け。典型的な周囲の脇も、キャラが立ってて読みやすいです。やっぱ、大御所だなあ、巧いなあ。筆も安定してて、安心して楽しめます。

終盤、主役二人は伝説に挑むのですが、ナカナカムズカシイものを巧く描いたなあと思いました。「伝説」がもう安売りされまくりの昨今だし、コレもまあ、巧く逃げているなあ、という印象でもあるのですが。でも、イヤなカンジは全然しませんでした。回避の仕方が、夢が壊れないようになっているというか。

個人的には、各章タイトルがたいへん好き。そしてやっぱり、最終章ね。←コレねー、ズルイなあ。こう来られては負けるしかないよー。

◆久美沙織「竜飼いの誇り」ハヤカワ文庫/2001年

続いて、同シリーズ第2巻も読みました。
長いトコ家出中だったお兄さんが、久方ぶりにご帰還なさって、平和(?)な家庭に一波瀾巻き起こす、ところから始まります。ガンコなパパ(←このお父さん、ワタクシたいへんお気にです)と、封建的な父親に反発しまくりのお兄さんの一触即発な雰囲気に、食卓が静まり返っちゃったり、とか。

お兄さんの不在が主人公に育んでいた、長いしこり、複雑なコンプレックス。最後にきちんと昇華されます。ココはカタルシスあるー。そりゃ、おハナシではあるし、だからきれいに片付いちゃうんだけどね(現実はこうはいかないからなあ)。

今回もまた、父と兄の相克、及び主人公とヒロインの相克によって、都会と田舎の対立が更に深まる形で描出されています。都会と田舎の両方の良さを知っている作者の経験、思い入れがよく出ていて、うーん、説得力あるなあ、読ませるなあ、と思いました。

両方ともいいんだよ、なんてのは、キレイごとになりがちですが、ドラゴンファームの動物達や土の匂いの魅力が、文明化ってそんなにいいこと? という疑問に説得力を与えています。

お話のふくらみ具合は、スタート地点である1巻には敵わない(それこそが1巻の強みだからしょうがない)。でも2巻は、キモチ良く泣かされてしまいました。
あとねえ、やっぱ、動物を愛したことがある向きは、涙せずにおられんものがあるです。ワタクシは鳥を飼って20年以上ですが(今は6代目、かな?)何度か死なれたりしてるからなあ。ちなみに、今の鳥(オカメインコ)は、もう既に9年生きてるので、死なれたら怖いなー(まだまだ元気だけどね!)。

狂言回しの悪役ミュージシャン(?)、「丘ミキ」シリーズのガイジンの彼(名前すら失念)を、ちょっと思い出しました(登場してる間は結構気になるんだけど、読後、印象にあまり残ってない……)


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