2003年5月

2003/5/30(Fri) ・・・とりこ
S-Fマガジン 2003年5月号

●「S‐Fマガジン 2003年5月号」/早川書房

※姫川みかげさまに、ずいぶん以前に「感想お待ちしてます」という旨の言及をいただいたものの、遅れに遅れまして申し訳ありません。

5月号はナノテク特集号でした。そしてまた、スタトレ特集号でもありました。
新シリーズ「ネメシス」紹介に加え、TVシリーズ全エピソードの人気投票ベスト35(於米国・2002年4月調査)の翻訳記事も。写真も多く、「宇宙大作戦」しか知らないワタクシも面白く拝読しました。

◆キャスリン・アン・グーナン「ひまわり」…+0

人体に入りこみ、脳を異常活性化する微小ナノマシンを噴霧するテロ(まあ、サリンみたいなものか。違うけど)のため、妻と娘を失った男が、ゼツボーして、そして云々、というお話。天才と狂気の紙一重、ということでゴッホの「ひまわり」がキーワードに採られています。

ちなみにゴッホの「ひまわり」は、新宿の安田火災美術館の常設で観られますが、アレを観ても、ワタクシ到底こんなことには思い至りませんでした(そりゃそうだ)。

◆シェイン・タートロット「ナノボクサー」…+0

体内に予めナノマシンを仕込み、強化された肉体で闘うボクサーたちのお話(タイトルまんまですが)。ナノマシンは設定に使われていて、粗筋そのものは、要は同部屋の力士対決を避けたがるスポンサーに腹を立てた力士が、いろいろ目論んで…てなアレです。

コレ読めばナノテクがどういうことに役に立つか判りやすいです。でも前掲「ひまわり」と同じ使われ方なので、そういうのはどうなのかなあ、なんて思いました(これなら、そりゃ厚くて読むの大変だったけど、ニール・スティーブンスン「ダイヤモンド・エイジ」のほうがいろいろで面白かったなあ、とか思ってしまうのでした)。
男っぽい雰囲気はカッコよかったです。

◆藤田雅矢「飛行螺子」…+1

藤田雅矢、と言や『糞袋』『蚤のサーカス』。てかワタクシ「ええっ、藤田雅矢ってSFと仲良しなんだ?!」とこの度初めて知りました。うわーん! ショック! てわけでもう力いっぱい目尻が垂れてます。そうかあ。うひひ。(異形コレクションシリーズにも掲載作がありますし、お好きな方はとっくにご存知のハズですね。うひー。)

ストーリーは「聞いてよ、ぼくが、飛行機だったころのこと……」という具合。ファンシーで優しく、ふんわり柔らかな挿画(加藤龍勇)が作品世界にたいへんマッチしています。それだけに、ハードナノテクSFに囲まれての掲載は不運かも。昨12月のファンタジー特集号で併載されてるほうが、相乗効果があったかも、惜しい…なんて思いました。

◆「世の終わりのための音楽」(ことのはの海、カタシロノ庭):倉阪鬼一郎/藤原ヨウコウ…+1

クラニーせんせい、これがSFM初登場だとか(ビックリ)。幻想的で破滅的で、美々しいホラーでした。と思いました。抽象的で寓話的でカッコイイです。彗星のお話、なのかなあ(チガウかも)。
言葉遣いが練れていてイメージ豊かです。面白かったです。 

2003/5/31(Sat) ・・・とりこ
S-Fマガジン 2003年6月号

●「S‐Fマガジン 2003年6月号」/早川書房

「スプロールフィクション」特集号。
ラインナップを通読すると、「バリバリのSF専科も、たまには一般小説も読んでみ!」とか「一般小説にだって、例えばこんな風に「SF」っぽいのがあるよ〜」とか、そんなあれこれが集めてあるのね、そんな印象でした。

そしてまた、銘打たれた「拡がりゆく小説」というキャッチは、SFM読者に向けたものであり、他ジャンルの読み手がSFへと「スプロール」するときに誘い込むための特集ではないのかな。そんな印象でもありました。
手堅すぎるほど手堅いラインナップ、とも思われる一方、パンチが弱いなという印象でもありました。企画の主旨は面白いのに難しいなあ、勿体無いなあ、と思いました(うわ、なまいきでスミマセン)。

「スプロールフィクション・ブックガイド」で紹介されている作品群と、掲載作との間に、乖離があるような気もしました。てか、ガイドの紹介作はカナリ面白そうなのが多く、「あ、これ未読だー。ヤッパ読もう」と思うこと頻り、でした。

◆アーサー・ブラッドフォード「ドッグズ」…+0

不評を耳にしましたが、悪く言うほどでもないような。無難だなあとは思いました。でも、例えばテリー・ケイ「白い犬とワルツを」をモノスゴク期待して読んでそして超ガックリ。したときの脱力感よりは、全然マシ(※と、さり気なくいいたいコトを書いてみる。)
てか、SFの読者は寓話や奇想に慣れているけれども、一般小説の読者層はこういうので充分ビックリするのかも? と思って読むのに丁度いいかも(←…マジ言いたい放題だな……)

◆ポール・パーク「ブレイクスルー」…+0

ウワサに名高いNHK「奇跡の詩人」にて紹介されていた「ファシリティテッド・コミュニケーション」という治療法をめぐるお話(解説にも、ちゃんとそう書いてあります)。

重度の自閉症患者と、信頼しあった治療者との間に、スゲエコミュニケーションが! まるでテレパシー! 
そこへ、治療者に対し、アンタのやってることって全部ただの思い込みなんじゃん? と周囲が宣告する(ガーン)。ここで幕。殆んどノンフィクションのような筋立てで、たいへん救われないお話でした。
でも、例えば「奇跡の詩人」を知らなければ「この治療法ってありかも」と思いつつ読むかもしれないわけで、問題提起として優れた作品だなあと思いました。

◆ケリー・リンク「私の友人はたいてい三分の二が水でできている」…+1

オシャレで洒脱で色っぽく、そうか「スプロールフィクション」ね、ナルホドぅ。と思いました。 日常の中で「SF」を扱う軽やかな手つきは、現代的でちょいオトナ目。ここでは「SF」が、まるでふくら脛丈のスカートみたい(着こなしが難しいけど、着る人が着るととっても都会的でスマートなアレ)。水のようでしなやかで、テンポや移ろいかたの軽妙さ。ステキ。「ルイーズのゴースト」に比べ濃度は1/3、という印象でしたが、うーん、こりゃあ嬉しいなあ、とか思いました。爛れてない崩したジャズ、みたい。

「ブリジット・ジョーンズ」はまるで苦手なのですが、ケリー・リンクは素直にオシャレだ、いいなあと思います(てか、両者を比べる方がヘンかも。スミマセン……)
大貫妙子(初期〜80年代)をお好きな向きや、ルパン三世のBGMが好き、てな向きにオススメ。

山本容子挿絵とか、ワインと愉しむ系が似あいそう。オシャレ系高級女性誌(「セレブ」とか出てくるアレ)に好感持たれそうな印象で、SFM掲載でいいのかにゃー。でもワタクシは次訳が待ち遠しいです。

◆ブルース・ホランド・ロジャーズ「死んだ少年はあなたの窓辺に」…+1

これも昨12月の「ファンタジー特集」に掲載してほしかったなあ。
少々不気味で幻想的な作風と北見隆さんの挿絵は、ベストマッチです。4Pに満たない小品ですがインパクトありました。寓話度が強く、M・エンデファン(「自由の牢獄」「鏡の中の鏡」あたりがお好きな向き)にオススメ。

◆ニール・ゲイマン「十月が椅子に座る」…+1

冒頭はマルシャーク「森は生きている」で、ラストはG・マクドナルド「北風の後ろの国」とかA・リンドグレーン「はるかな国の兄弟」と同型。つまり、「行ったきり」になるお話でした。ラストに現実回帰がない(「往きて還りし物語」ではないわけです)。

「僕の世界に行かないか」と誘うものがあるとき、ブラッドベリなら、きっと一晩ののち、夢は覚める。覚めずに攫われてしまう者もある。このあたりが「オマージュ」なのだろうと思いますが、いずれにせよワタクシはこの作品は好きです。
そもそも「はるかな国…」の甘美さに、小学生当時あれだけウットリした自分としては、見逃せないテイストなのでした。

◆林 巧「栄曜邸の娘の魂が抜けた話」…+1

架空の城市が舞台です。諸星大二郎「諸怪志異」のような世界観の、とてもいい雰囲気です。うわ、このままどう落とすのかなあとワクワクしていたら、ラストでちょっと腰砕けな印象が……勿体無い…というか「枚数が足りずこうなった」感がどうも強い気がしました。改訂バージョンを是非読みたい、なんて思いました(うわ、ナマイキでスミマセン!)。

◆草上 仁「青銅の人形」…+0

スッカリ失念してましたが、おがわさとし挿画です。(^o^)丿 酒場で出会った爺さんが、若かりし頃の己の冒険譚を語る形式で、ノスタルジックなファンタジー世界(特に冒頭)は、おがわさまの絵柄とたいへんマッチしています。
読みやすく、最後どうなることかと思っていたら、ああいうオチなのかあ……(女子として、ちょっと、反応しづらい)。

◆「単純な形」(ことのはの海、カタシロノ庭):小林泰三/藤原ヨウコウ…+0

数学的で面白いなーと思いつつ、でも、それだけにラストに納得がいかないのでした。ルイス=キャロルの数学ウィットみたいなアレできてて、でもオチがああなのは、…うーん。やっぱり納得いかないよう。
テクストとビジュアルの噛みあいはとても良かったと思います(てか、読んだ人はみな図形萌えした筈だー。)

◆横田順彌「近代日本奇想小説史 または、失われたナンジャモンジャを求めて」(第18回)

採点対象外ですが…だって、マジ面白いんだもんこの連載!

前半は前回の捕捉で、後半の本題がスゲー面白かった。です。
「少年小説」の源流、つまり日本におけるジュヴナイルの創出のあたりに触れていて、それだけでも大変興味深いのですが、例えばペロー童話初邦訳の旧漢字旧かな総ルビの引用文なんか、もーマジで超萌え! 「西洋神仙譚」のルビが「フェアリーテイル」ですぜアンタ!

「睡美人」(「眠り姫」のことです)の挿絵なんて、百人一首絵札調の平安時代のお座敷に侍女や美姫が寝ており、そこへ若武者(「陰陽師」の博雅な風体)が入ってきて、姫を起こさんとしている図。だし、
「長靴をはいた猫」挿絵なんか、畳敷きのお座敷で着物の美女から杯を受けている殿様に、羽織袴着たネコが、お目通りをしているYO! 


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