「マッスル超宇宙マッスル超絶マッスル世界」2

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一気に下まで行きたい

この地区は、「マッスル超宇宙マッスル超絶マッスル世界」その1に引き続き、ある意味「筋肉(腕力ではない)でものごとを解決する世界」というか、肉体が存在感を主張しまくるマンガを紹介する地区である。
このジャンルで超有名なものとしては、「聖マッスル」(ふくしま政美)があげられる。そのコンセプトは80年代に入っても「北斗の拳」や「ジョジョの奇妙な冒険」を筆頭にさまざまなカタチで継承されていく。
しかし、このカテゴリーをその1で「広義の『ぶっとび界』においてもっともメジャーだ」などと書いてから5年くらい経つが、筋肉の持つ過剰性といったようなものは、現行の少年・青年マンガにおいては「刃牙」や「蒼天の拳」などの一部作品を除いて失われつつあるようにも思える。
理由については、時間がないので考察しない。

(サイト内関連ページ)
「スーパーナチュナル超・超人伝説スーパー」その1

「スーパーナチュナル超・超人伝説スーパー」その2

(03.0809)

・「ニートに翔んで」 平松伸二(1981、週刊少年ジャンプ16号、集英社)
・「熱笑!! 花沢高校」全29巻 どおくまん(1980〜84、秋田書店)



・「ニートに翔んで」 平松伸二(1981、週刊少年ジャンプ16号、集英社)

ニートに翔んで

裁きの庭に流行も権威もない!!
あるのはただ 正義 のみ!!

なんだか、だんだん「ぶっとびマンガ」を分類するのが面倒になってきた。そもそも、分類不能なハイストレンジネスな存在が「ぶっとびマンガ」だからしょうがないんだけどね。
本作をこのページにカテゴライズしたのも、便宜上というコトで。

週刊少年ジャンプ、81年16号掲載の46ページ読みきり。当時行われていた「愛読者賞」チャレンジ作品。

ムチャクチャに荒れている高校。松井という強姦未遂のスケベ教師が謎の失踪をしたが、それがたいして話題にならないほどの学園の無法状態。
おちこぼれ組だが、ツッパリではなくヘタレ系の少年・立原も、そのとばっちりを食らってブン殴られる始末。
しかし、そんな荒廃した学園を厳しく取り締まる熱血教師の姿が。それが花井先生だ。

ニートに翔んで

ワルには厳しく、まじめ生徒には信頼の厚い花井は、校長に推薦しようという理事会の動きが出るほどの模範教師だが、実はとんでもないことをたくらみ、実行してしまった。

花井に対し、謎の仕置人、立原の針が光る。

ニートに翔んで

知る人ぞ知る「ブラックエンジェルズ」の原型となった作品だが、本作が不気味なのは立原という少年が何者なのか、最後までまったくわからない点だろう。しかも、「ニート」なんていう当時の流行語で軽薄さを打ち出そうとしているので、余計に奇怪な感じがする(むろん「ニート」は、今問題視されているというNEETではなく「手際のいい、気の利いた」といった意味のneatなんだろうな)。

トビラの惹句「裁きの庭に流行も権威もない!!」は、タイトルに含まれている言葉「neat」が流行語だったからなんだよねえ。しかも、今も覚えている人がいないほど微妙な流行語だった……。

ニートに翔んで

以下、ネタバレ解説に入る。冒頭に登場したセクハラ教師・松井をピアノ線のようなもので殺したのは、おそらく立原である。彼にとっては、たぶん強姦魔は死罪に値するのだ。
その後、花井の熱血ぶりはパフォーマンスにすぎず、番長の室田(推定年齢40歳くらいに見える極悪不良)と八百長の決闘をして勝ち、ますます生徒の信頼を得る。衆人環視の校庭で、番長と決闘する教師という設定自体、もはや現代ではあり得ないけどね。

普通の状態でも、この花井って人は不良を木刀でバシバシぶっ叩いているし。でもその辺は他の生徒に感謝されるんだよね。まあ、この頃校内暴力がすごく問題になってたから。

ニートに翔んで

人を見たら噛みつきそうで、偏差値も0.2くらいしかなさそうな室田も、自分の身辺をかぎ回っている立原に気づき、「スケベ教師松井を殺ったのは立原なのでは……」と淡い不安に襲われる。
しかし、何のバックストーリーもないのに仕置人を演じるヤツがいるとは思えなかったのだろう(読者も思ってなかったりする)、彼の不安は危機感にまでは至らなかった。

花井から300万円をもらって頼まれた室田は学校に放火。
結果、校舎から火が出て死者3名、負傷者28名。このため現校長は責任をとらされ、ついに花井に校長のお鉢が回ってくる。

校長になりたいがために、番長とグルになって学校への放火を依頼。
300万円欲しさに、放火して友人を巻き添えにしてもぜんぜん平気。

もう、ムチャクチャ悪いやつらである。

考えられない。
ありえない。

ニートに翔んで

というわけで、まず、立原は道路にピアノ線みたいなものを張ってバイクで走ってきた室田の首をちょんぎる。
確か「武装錬金」の単行本では「ジャンプでは生首の描写がダメ」ということだったが、80年代は生首出まくりである。「ゴッドサイダー」でも、確か人間の生首を集めてなんかやるとかあったし。現在はいろいろあって、モノホンの映像がネットで見られるご時世になってしまい虚構と現実のウンタラが……って、エセ社会評論家ですか私は!(ミートくん風ツッコミ。)

新校長として就任が決定し、全校生徒を前に初めて挨拶をするという晴れの舞台に花井が立とうとする直前。すれ違いざまに立原が袖から出した針を耳から通して、花井を瞬殺する。

いつまで経っても校庭に現れない花井を呼び出す声が鳴り響いて、物語は幕となる。

とにかく、短い16ページという枚数の中で、ワルは徹底してワル、番長・室田は高校生というより40がらみのやくざ顔、かわいい女の子もちゃんと出して、当時としては画期的だった「現代版仕置人」マンガのさきがけとなった。

ひさしぶりに読み返して気づいたが、第一の仕置(スケベ教師・松井)、第二の仕置(番長で花井の手下・室田)、両方とも立原はまったく姿を現していないのである。 この辺の演出が効いて、ラストの2ページで立原が一瞬のうちに花井を殺してしまうという、あっけなくもショッキングなシーンが印象に残るのである。

ニートに翔んで

最後に、週刊少年ジャンプ15号に掲載された本作の次号予告。

シティー派の
ナイスガイが
青春をさわやかにきめる傑作!!

どこがだ!?

(04.1120)



・「熱笑!! 花沢高校」全29巻 どおくまん(1980〜84、秋田書店) [amazon]

熱笑!! 花沢高校

週刊少年チャンピオン連載。あまりに弱虫なために、中学時代、同級生はおろか弟妹にまでいじめられていた力勝男(りき・かつお)は、そのたぐいまれなる凶悪なつらがまえとでかい図体だけは道行く人も避けて通るほど。
高校からは周囲の迫害から逃れたいと思っていた勝男は、自分の顔と図体だけは恐れられることから、弱虫を隠して高校からはコワモテで通そうとまったく知り合いのいない私立花沢高校に入学する。
入学早々、石田鉄太郎(通称:鉄)という子分もできたものの、コワモテゆえに因縁をふっかけられることも多く、次から次へと不良どもがいいがかりを付けてくる。
そんな勝男に平穏な学園生活は来るのだろうか……?

……という感じで、当初は学園ギャグマンガとして始まった。ぶっちゃけ、「カメレオン」みたいな展開である。もう「ケンカをふっかけられてどうしよう」とか「初デートでずっとウンコを我慢し続ける」とかそんなんばっかりなのだが、これはこれで面白い。

そして、回を重ねるごとに勝男の巻き込まれるトラブルが大きくなっていき、どんどんそれがエスカレートして、有名な不良高・回天高校の番長、玉井とのタイマン勝負に至り、完全に番長ケンカものに移行、最終的には大阪を二分する大抗争にまで発展し、力男はその一方の長として君臨することになる。

・美しきエスカレーション
マンガでも何でもそうだが、エンタテインメントの傾向とかジャンルというのは、それが望まれている頃は何の疑問もなく説明もいらず受け入れられるが、時代が移り変わって流行らなくなり、後で振り返ってみると「なぜこんな展開が望まれたのか?」と疑問に感じることも数多い。
少女マンガで何でバレエものが流行ったのか? 何で孤児ばかり出てくるのか? 「そのままの君が好きだよ……」とかいつも同じ告白だな! とか。

本作も、まあ掲載当時もかなりぶっとんだマンガだったが、今読むとさらにそのぶっとびぶりにガク然とする。もっとも、その飛躍の過程は着実ではある。

最初はタイマン勝負である。「十字拳」という中国拳法を使う玉井を倒すために、勝男が山で特訓するという展開になり、ここはまあ理解できる。学園ケンカものには、「男組」もそうだがブルース・リーブーム以来中国拳法を取り入れるのが流行ったし、80年代に入ってからもそういうのはけっこうあった。
「武器を使うのは汚い」というシバリも、手段を選ばない敵の出現や、ケガをしたフリをして復讐のチャンスを狙い、仕込み松葉杖を武器とした富岡良造の登場によってないものとなる。

ところがだんだん集団戦、乱戦の様相を呈してくる。「武装したバイクで集団で襲ってくる」という敵の出現で、力男たちも武装せざるを得なくなる。「戦闘用バイク」も、最初はモリを発射できるとかその程度だったのだが、最終的にはホバークラフトで宙に浮き、爆弾を発射するようなのが出てくる。
武装も当初は武器を手に持つ程度だったが、物語中盤から特殊プロテクターを身に着け、殺傷能力の低いライフル銃を兵隊レベルの学生が持つようになり、バズーカ砲、武装ヘリ、高射砲、時限ミサイルなどどんどんエスカレート。

宿敵「北大阪の虎」との、大阪の不良高を傘下におさめた「北大阪戦争」においては最終的に両軍それぞれ1万人近い兵隊を動員した総力戦となっていく。

・規模はデカいが、あくまで現実世界の話
熱笑!! 花沢高校

たとえば「核戦争後の地球」というのなら、まだ納得はできる。実際、同時代にやっていた「北斗の拳」ではそういう奇想天外な展開が容認されるだけの舞台設定を用意していたし、「魁! 男塾」では戦いは逆に密室化する。
まあたぶん「男塾」の作者の宮下あきらにその辺のこだわりはないだろうし、その後もかなり大げさなマンガを描いてはいるが、本作「花沢高校」の場合、宮下マンガとは違って戦闘用バイクなどのメカを導入してしまったために、他のローテク番長マンガにはない奇怪な集団乱戦を描くことになった。

現代の高校生が、何千人も集まって山奥でキャンプして武闘訓練したり、ヘリで上空から岩を落としたり爆弾を爆発させたりするのだ。やりすぎを通り越して、違う地平へ行っていると思う。
そして、何でこういうことになったかというと、本作発表当時はSF的な設定を練り上げるよりも、お話が学園生活から始まってそこから飛躍させた方が、読者が納得するということがあったからだと思う。
車田正美の「風魔の小次郎」なんかも最初は学園生活から始まって最終的にはなんだかよくわからない地平に行った作品だが、「ヘンなマンガ」として読者の記憶に残っていないのは、ファンタジー的展開になってからは外界とはまったく関係のない世界へ行ってしまったからだろう。

ところが、本作ではどんなに話が大きくなっても、お話は開かれた現実世界という設定である。だから、力男たちの「戦争」に対する警察やマスコミの対応などもシミュレーション的にはおかしな点があるのだろうが、描き方としてはきっちり描いてある。
きたる決戦前夜、一兵卒に至るまで「両親や親兄弟との最後の別れ」をするために籠もっていた山を降りてしばしの休息をするのだが、この辺などはもう目眩でクラクラする。確かに、末端のやつらにだって親や兄弟や恋人はいるだろう。不良が何千人も集まって武装してケンカするなら、最後の別れを告げることだってあるに違いない。
その辺はジャンプ系バトルものではけっこう誤魔化して描いてあることが多いのだが、本作では妙にきっちりやっているのである。
感動のラストシーンなどは、荒唐無稽な戦闘をするために特別な異世界をつくらないことによってこそできたものだろう。現在ではシミュレーションものが定着してしまったのでおかしいと思う人もいるかもしれないが、本作の戦国時代のような描き方に、得も言われぬ迫力があることも確かである。

・ブサイク男しか登場しないある意味ユートピア
熱笑!! 花沢高校

また、どおくまん独特の絵柄も本作に異様な迫力を与えている。とにかく男は全員ブサイク。「カッコいい」という設定の男も出てくるが、それはあくまでもどおくまんワールドにおける「カッコよさ」で、大半は岩みたいなゴツい顔の男ばかりである。
高校生に見えないほどフケているのはすでに当然。変な帽子を被っていたり、鉄仮面を被っていたりという奇怪な番長たちもこういうマンガの定番ではあったが、少年院から出てくる段階ですでに仮面を被っているのは何かおかしい。でもいいのだ。これはどおくまんのマンガだから。美形キャラとか美少女なんかいっさいいらない。

・もうひとつの80年代
「80年代」というと、わりに軽薄短小であるとか、低成長時代の地に足のついていない感じとして認識されることが多い。しかし、今から見ると「漢(おとこ)らしさ」を追究するような作品もけっこうあるのである。

なぜそれがあまり認識されないかというと、理由はいくつかあると思う。
まず、60年代から70年代の学園紛争があまりにヴァイオレンスで、なおかつそれが後に思いっきり終息してしまったために、80年代前半あたりまでの「漢(おとこ)らしい作品」は、その残滓としてしか受けとめられないことが多かったということが1点。
展開として「戦いを際限なくエスカレートさせて敵がインフレとなる」ことばかりが求められ、それがシステム化していってしまったことに対する批判があることが1点、ある。

しかしなァ。やっぱりあることはあったのだ。同じく80年代前半のモノとしては「ゲームセンターあらし」がある。確かに「あらし」に観られる泥臭い熱血路線は、必ずしも表立って評価されなかった。だからこそ少年誌ではなく児童誌に連載されていたとも言えるのだが、しかしやっていたことはやっていて、単行本もけっこう売れたのである。
こうした「泥臭い熱血」とか「漢(おとこ)くささ」は、同時代的にはリアルロボットアニメにも観られたし、ツッパリ文化にも観られた。
まぁツッパリマンガの評価が低いから、やっぱり見過ごされがちなんだけどね。

ただまぁあることはあったし、やっぱり私はこういうのも好きだから。取り上げてみた。
(03.0809)



ここがいちばん下です

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