つれづれなるマンガ感想文3月前半

「つれづれなるマンガ感想文2002」もくじに戻る
「つれづれなるマンガ感想文」2月後半
「つれづれなるマンガ感想文」3月後半
一気に下まで行きたい



・「スーパーロボットマガジン」Vol.4(2002、双葉社)
・「スーパーロボットマガジン」Vol.3(2001、双葉社)
・「コミックバンチ」15号(2002、新潮社)
・【映画】「パーティ・パーティ」(1983、イギリス)
・「恐怖新聞 平成版」Vol.1 つのだじろう(2002、講談社)
・「COMIC阿ロ云(あうん)」4月号(2002、ヒット出版社)
・「週刊少年チャンピオン」15号(2002、秋田書店)
・「斬鬼」第8号(2002、少年画報社)
・「斬鬼」第9号(2002、少年画報社)
・「コミック伝説マガジン」No.4(2002、実業之日本社)
・「コミック伝説マガジン」No.5(2002、実業之日本社)
・「コミックバンチ」14号(2002、新潮社)
・「コミックバンチ」9号(2002、新潮社)
・「コミックバンチ」11号(2002、新潮社)
・「コミックバンチ」13号(2002、新潮社)
・「石ノ森章太郎美女画集『GIRLS 1961〜97』」(2002、パイオニアLDC)






・「スーパーロボットマガジン」Vol.4(2002、双葉社)

ゲームの「スーパーロボット大戦」や、マジンガーのOVA、フィギュアなどがらみのスーパーロボットモノのコミック専門誌の第4号。だいぶ前に出た。すまん。
次号は3月19日発売予定。70年代ロボット特集。

今回は読むのに時間がかかった……。特集が「スーパーロボット大戦Aアンソロジー」で、ゲームをやったことない私にはいまいちわかりづらくて。

あと個人的には4コマはいらないなー。なんか「同人誌でたくさんです」って感じなんで……。

そんな中、「いい旅ロボ気分」はぬま あんは、ページ数が少ないながら面白い取材マンガ。実際の日本のロボットを、オモチャも含め探訪して回るというもの。なんか最近、「ゲッターロボアーク」の次はコレを読む感じかな。
(02.0315)



・「スーパーロボットマガジン」Vol.3(2001、双葉社)

ゲームの「スーパーロボット大戦」や、マジンガーのOVA、フィギュアなどがらみのスーパーロボットモノのコミック専門誌の第3号。
確か去年の冬に出たんだけど、繰り返すけどこれはボキ(ドラマ「翔んだカップル」風に自称すれば「ボキ」)のメモ書きだから。必ず次につながるから。

連載は「ゲッターロボアーク」永井豪、石川賢「超電磁大戦ビクトリーファイブ」長谷川裕一「スーパーロボット大戦α外伝コミック 鋼鉄の救世主」富士原昌幸で、どれもロボット大好きマンガ家の作品なので、文字どおりの柱となっている。

特集は「超電磁ロマンロボ」。「コン・バトラーV」、「ボルテスV」、「闘将ダイモス」を合わせてそのように総称するらしい。さまざまな人が描いている。
個人的には「地下迷宮の翼」環望に出てくるエリカがエロいのでよかった。こんなにふともも、露出してたっけ? と思ったが、たぶんそういう服にデザイン変えてると思う。

おそらく三十代半ば以上の人の「エロ妄想原点」の一人である南原ちずるをフィーチャーした作品がなかったのが残念。「超電磁大戦ビクトリーファイブ」の長谷川裕一の描くちずるは、かわいいけど個人的にちょっとロリっぽすぎるので。
八神ひろきとかこばやしひよことか、有賀照人(「警視総監アサミ」の作者)とかが描きませんかね?(笑) 全部個人的な私のシュミなんですけど。

ところで、今回ショックだったのは、自分が「ボルテスV」のストーリーを知っているつもりでまったく知らなかったこと。「愛と誠」のようなねちっこいドラマが売りもののシリーズだったから、「ボルテス」の頃には脂っこすぎて一時期離れていたことを思い出した。
「ダイモス」は再放送かなんかで一生懸命見たけど、これは「空手ロボ」という設定がどこまで活かされるかを確かめるため(ちなみに「ウルトラマンレオ」も似たような理由で、再放送を一生懸命見た)。

私、「空手バカ一代直撃世代」だから。

でも、「ダイモス」にはけっきょく正拳突きしか出なかったような覚えがあるけど。
(02.0315)



・「コミックバンチ」15号(2002、新潮社)

「世界漫画愛読者大賞」のエントリー作品を毎週楽しみながら読んでいる。今までの感想としては、「バンチ、意外と面白いマンガ載せられるじゃん」ということ。「痛快!! マイホーム」とか言ってる場合じゃなかったんじゃん。

まあ賞金何千万というのはカマしすぎだとは思うけどね。「こぢんまりとした、いい作品」が埋もれてしまう危険性があるから。

で、エントリー作品第7弾は「エンカウンター −遭遇−」木ノ花さくや。子供の頃、アブダクション(UFOにさらわれる)された少年が、それ以来強力な帯電体質となる。彼は「エンカウンター」という組織の助けを得て、怪奇現象に立ち向かっていく……というような感じ。
作者は一見して絵が「戦うメイドさん!」の「西野つぐみ」なんだけど、原作は別にいて合作しているらしい。私がいくら「メイドさん!」をホメても周囲からサッパリ反応がなかったが、コレにエントリーされたってことで私の目もまったくの節穴ではないってことが証明されたでしょ? そう好意的に取るよ?

展開はけっこうスリリングで、怪異の説明も今どきのマンガにしては珍しく(私の少ない知識に照らして)ちゃんとしている。ただ、クライマックスで主人公が「自分を避雷針にする」って言ってたけど、いくら帯電体質でもそれじゃ死んじゃうのでは!?

あと、「ジャンプ人脈」は個人的にもうどうでもよくなりつつある。売れてるなら文句は言わないけど。
(02.0315)



・【映画】「パーティ・パーティ」(1983、イギリス)

パーティ・パーティ

近所のレンタルビデオ屋のワゴンで、隣にあったモノと間違えて買ってしまった!! ちなみに500円!! この値段なら牛丼食えるジャン!! 監督:テリー・ウィンサー、脚本:ダニエル・ピーコック&テリー・ウィンサー。彼らの名前で検索してもまったくヒットなし!! だれなんだこの人たち!!
内容は「青春はロックして、ロールして、涙と笑いの大騒ぎ!! ドジな男も、パーティで男になる。」とかいう、「イギリス版はちゃめちゃパーティ狂騒コメディ」……まったく興味のないジャンルだ。試しに見てみる気力もない。

でも「ずっと探してたんだ!! 100万円でも買いたい」ってヒトがいるかもしれないから、ここに書いておく。100万円ちょうだい。
(02.0309)



・「恐怖新聞 平成版」Vol.1 つのだじろう(2002、講談社)

恐怖新聞 平成版

B5、中綴じの雑誌。「恐怖新聞」と「うしろの百太郎」の書き下ろしが載っているほか、イマ風にネームを書き直した「ピュンピュン丸」も載っている。
「釣りキチ三平 平成版」に続く、一人の描き手による雑誌といった感じ。

実はつのだじろう、大人気の頃にはあまり読んでいない。小さい頃、恐いのがぜんぜんダメで。とくに「恐怖新聞」に翻弄される鬼形礼少年の姿は、その不条理さが恐さにつながっていた(単純に、「恐怖新聞」の顔は恐いし)。
この「平成版」では、前作で死んだ鬼形礼の生まれ変わりの少年・鬼形礼が、再び恐怖新聞に悩まされる。最初に携帯電話のメールを通じて恐怖新聞が配信されるところが、イマ風と言えばイマ風。
「うしろの百太郎」の方は、「恐そうだから」とページを開いたことすらなかったが高校生くらいになって読んだ。主人公に百太郎という守護霊がついている話だから不条理性はあまりないし、むしろつのだじろうの勉強した心霊世界の世界観を披露するといった印象。今回の平成版もそんな感じ。そういう意味では「恐怖新聞」と対照的な作品であるといえるかも。

リバイバルものに関しては、過去の作品と比較してレビューを書くのが習慣なんだが今回はそれほど読んでいないので、あまり書けない。つのだじろうの心霊ものの場合、同時期の世の中の心霊・オカルトブームの関連とも論じられなければならないんだろうが。
なぜなら、その他の怪奇ものと違い、つのだ作品は実際の心霊研究に基づいた世界観の統一がなされており(「うしろの百太郎」を読んでみると)、それが他の恐怖マンガにはない説得力を生み出していたと思うからだ。
しかし、世界観が統一されるということは恐怖もののポイントである不条理性を喪失することでもあるので、それをいったん世間が認知してしまうと恐怖も半減してしまう。……などということを考えたのであった。

収録されているエッセイに、なんだかグチが入っていて面白い。「どんな世界でも深入りしすぎると、人間関係の軋轢がおこりがちで、誤解が生まれ……、あげく事実とは程遠いウワサの標的にされる。それでどれほど、心に傷を受けた事か……?」……って、梶原一騎とのことを言ってんのかな?

「ピュンピュン丸」は、もともと「忍者あわて丸」という作品を元にアニメ化され、それに合わせて描かれた今で言うメディアミックスのハシリらしいのだが、なんと今回収録の「ピュンピュン丸」も、「あわて丸」のキャラクターを全部「ピュンピュン丸」に描きなおしたモノらしい。ネームもなおしてあるが、ムチャクチャさむい。

「えーテロ警報発令!! タリバンかも知んない そんなことアルカイダ みんなやっつけに行くのだピョーン

甲賀のピュンピュン丸たちが伊賀を攻撃するという話で、それをやたらと同時多発テロ事件に置き換えている。それでいて、「こっちは貧乏だから特効精神で行くしかないんだ」「うわあっ特攻隊か! かっこいい」ってストーリーは当時の流れそのまんまなんだよな。いいのか?
(02.0309)



・「COMIC阿ロ云(あうん)」4月号(2002、ヒット出版社)

コレも出てからだいぶ時間が経ってしまった。次回は3月28日発売。
私がコンビニにトレカを忘れてきたと思われる(恥……)「シャイニング娘。」シリーズ「Party Time2」師走の翁は、シャイニング娘。とファンたちの一大乱交状態に突入。もうちょっとハッピーな感じになると思ったら、そうでもなかったっスね。ゴリゴリの陵辱感溢れる展開に。
「壱岐鞘香には縄」ってのも、ちょっと背景を知らないんでよくわからん。あの首輪状のマフラーにも何か意味があるんじゃないかと思うんだけど。

それにしても、杉作J太郎がBUBKAの連載を降りたのが矢■のスキャンダル写真掲載が原因だとは(自分のトークライブでも言ってたらしい)。かなり驚いた。まあ基本的に、決して他人をけなさない芸風のヒトではあるが。

あと、「放課後セブン」村正みかどが勢いがあっていい。架空のカードゲームをやって、勝ったら犯してイイみたいな、そんなやつ。
(02.0309)



・「週刊少年チャンピオン」15号(2002、秋田書店)

「男女のエロ妄想の違い」ということをいろいろ考えていて、でも大っぴらにするとディスコミニュケーションになるだけのような気がして、やっぱり考えないことにしたりする。まあ個人差もあることですし。
なんか男の方が「目玉寄り」だよね。視線が強力というか。目玉と脳の大冒険。G−tasteとか明確にそうだし。まあそういう「視線主義」みたいのに反発する気持ちが、男女問わず強い「実践寄り」の作品になっていったり、反発を明確に表したりする行為になっていくのではないかと仮定してみた。ぶっちゃけ、オタクとかマニアック批判になるのだな。

そんなことはおいといて(おいとくのかよ! という三村的ツッコミも空しく)、今週は「週刊エロピオン」と言っていいくらいにエロいマンガが多かった。

「エイケン」松山せいじは、新キャラだかゲストキャラだかの女の子が登場。伝助のバイト先のセンパイで、サバサバしているけど実は学費を自分で稼いでいる苦労人。
最初はおねえさんぽかったが、タメ年とわかってさらにフレンドリーに。いつも気を張っているので、ヨロヨロッと伝助にすがってしまうかわいいところも。しかも後半、関西人だったことが明らかになる……って、特徴が多すぎるよ!(という三村的ツッコミも空しく)初登場シーンとしては、成功とは言えないのでは。
あ、パンチラとかはいつもどおりで。

「ナックルボンバー学園」川島よしおは、4コママンガ。毎週、中途半端にエッチなネタが多い。意識的に女の子の頭、目、手足を大きくしてかわいくしているけど、実際は熟女好みと見た。苦労がしのばれる。

「スクライド」黒田洋介、戸田泰成は、正直言って始まって10週くらいは「んん〜どうかな?」と思っていたんだけど、最近勢いがあって面白い。
そして今週の「週刊エロピオン」的な強烈イメージは、この作品にある。ボンデージスーツを着せられて操られるシェリスさん。後ろから見た立ちポーズもしっかり描かれているのがイイ。洗脳マニア(そういうのがあるらしい)が色めきたつ展開だ。しかもこのヒトのアルターが、他人と合体してどうこうってやつ。「合体しましょう!!」っつってるし。
敵の「知識万歳(ビバノウレッジ)」というアルター名も最高だ。
「ニセジョジョ」的なマンガの中でも、「アルター」は最も「スタンド」に概念が近いため、最初はどうかな〜と思っていたが、徹底的に「俗」に漬かりきることで何か違うものを獲得してきている。
ひるがえせば、荒木飛呂彦がいかにスタイリッシュかということなんだが。

「7人のナナ」今川泰宏、国広あづさは、ナナのつくった匂い袋のにおいを嗅いで、24歳にまで年齢進行してしまう友人の瞳ちゃん。身体に合わないピチピチのセーラー服がエロエロでございます。これも年齢進行&退行マニアが色めきたつ展開(「年齢進行」の方はあんまないみたいだけど)。

以上、エロネタ終わり。

「弾丸スマッシュ」木村さとしは、前後編の後編。テニスのうまい兄がケガをしてしまったことから、テニスに打ち込んでいく主人公。最初はイヤイヤだった主人公がだんだんテニスにのめり込んでいく前半は面白かったが、ラストのオチはなあ……。どうなんだろう?
「フジケン」小沢としおは、ミスター波浜決定戦終了。マッタリ具合が魅力の最近のフジケンだが、このシリーズはいくら何でもグズグズすぎた気が……。
「屋台シェフ 里 一郎」橋本俊二は、短期集中連載。料理のネタ出しは、「鉄鍋のジャン!」と同じおやまけいこという人がやっているらしい。料理うんちくのネームも似てるが、もしかしてそこだけ書いてんのかな?
「柔道放物線」今井智文は、柔道部メンバーのゴリラが帰郷する。……っても、なんか都会で就職したやつが地元に帰ってきたみたいなノリで、昔の仲間と居酒屋で同窓会。今回、このマンガの連載が始まってからいちばん笑った。

ところで、来週から瀬口たかひろの「スイートレガシー」という、美少女がお菓子の学校に入学するマンガを2号連続掲載するそうだが、まさか主人公がクリームまみれになって「いや〜ん」とかいうマンガじゃないでしょうね……?
(02.0309)



・「斬鬼」第8号(2002、少年画報社)

時代劇画の再録を中心とした雑誌。前号だから、もう売ってないです。前回載っていなかった「九頭龍」石ノ森章太郎は、今回は載ってました。

「御用牙」小池一夫、神田たけ志は、「石垣直角」。カタブツで有名な侍・大野木玄蕃に、横紙破り(奉行所の門前でイモを焼いて食う)をやって反発した半蔵。しかし、大野木のカタブツさも徹底していて、1カ月の謹慎期間を自分とともに過ごせという。最初は彼の四角四面の考えに反発していた半蔵だったが、次第に大野木玄蕃の「さむらい」としての覚悟を知る……。
「石垣直角」のカタブツぶりがどこかユーモラスで哀しく、そしてその向こうに男の決意が。イイ話。

「決闘伝紀」かわぐちかいじは、今号の目玉か。77年、「漫画天国」掲載作の復刻。
甲冑を付けた二人の男の死体が発見される。どうやら「決闘」をしたらしい。現代にそんなことをする人間がいるのか!?
死んだ二人と少なからずつきあいのあった「剣道ジャーナル」の編集者は、警察沙汰になった事件を記事にするために、二人の「人を殺すための剣道」に対する狂気とも思える情熱を回想するのだった。
昭和の時代に甲冑を付けた果たし合いをする、という奇矯さと、それが警察によって捜査されるというリアルが融合していて面白い作品になっている。70年代的な考え方の残滓もかいま見える。

「蘭学者たち」みなもと太郎は、マンガ評論家の呉智英が連れてきたオランダ人に作者が「どうしてマンガは日本でこれだけ発展したのか?」を説明するというエッセイマンガ。とてもおもしろい。

「歪」平田弘史は、75年。太平の世に弓道をめぐって争いが起こり、一方の雄が殺され、殺した男がおのれの理想の弓道を実現するために、その息子を預かり徹底的に肉体改造的猛特訓を受けさせるという話。
ものすごい迫力だが、この人、いつもラストがあっけない。
(02.0308)



・「斬鬼」第9号(2002、少年画報社)

時代劇画の再録を中心とした雑誌。次号は4月22日発売。

「御用牙」小池一夫、神田たけ志は、「凍鶴心中晒し」。心中に失敗し、さらし者になっている女の方に生気が感じられることを察した半蔵が、偽装心中の謎を追う。

今号の目玉は、「まぶちの右近」ひらまつつとむ。ジャンプで「ハッスル拳法つよし」や「飛ぶ教室」を描いていた人だ。
シリーズとしては第2話にあたる。代々石工の技術を継承する馬淵と穴太(あのう)の一族。馬淵は穴太の謀略に落ち、お家断絶、嫡男・右近は秘伝の要石を付いて獄舎から脱出……というところまでが前回。

今回は、馬淵一族再興のために、自分たちの技術を売って軍資金を稼ごうとする右近が、「北斗の拳」チックな悪人の城を攻めるために、石工の技術を駆使して戦う。

この作品、とにかく石工が主人公であるため、使われる技がすべて石がらみ。石垣を積む技術や、その1点を付いただけで倒壊させる技術、というのを継承する一族というのはまあいたのかもしれないが、彼らが石つぶて(要するに石を投げるだけ)の達人だったり、歴史上日本国内で使用されたことがない投石機までつくってしまうなど、かなりのぶっとびぶりである。
さらに、「馬淵の一族には墨士の影響があった」などの唐突な(どう考えても劇画「墨攻」の影響としか思えん)説明もけっこうイイ。

しかしこの人の場合、ぶっとびが銀河の彼方まで飛んでいくほどではなくどこかおとなしいのが特徴で、今まで本誌に載った時代劇読みきりも常にそんな「こぢんまり感」が漂っていた。
本作がシリーズ化され、もうひとつ突き抜けて欲しいと思う今日この頃だったりする。

「残照者たち」みなもと太郎は、「貸本の宅配」があった頃の懐古ばなし。とてもおもしろい。

「新撰組凄春記」第二話 千本朱雀の惨劇 荒木俊明は、恋人を芹沢鴨に寝取られ、自分も殺された隊士・佐々木愛次郎の物語だが、あまりの救いのなさにビックリ。かなり陰惨な話である。
原田佐之助と沖田総司の「仇討ち」の部分がバッサリカットされているのがその一因か。
(02.0308)



・「コミック伝説マガジン」No.4(2002、実業之日本社)

懐かしマンガの続編や復刻を中心にしたマンガ雑誌の、第4号。もう売ってない。……といっても、こちらでバックナンバーを注文できるということです。

やっぱり今号のトピックは、新連載「飛葉」望月三起也でしょうなあ。
30近い年齢になった飛葉は、現在中米(ニクァラガ共和国)で危険な仕事からは足を洗って生活していた。
一方、カリブ海から太平洋に通じる第2パナマ運河をつくる巨大プロジェクトのイベント船に、恐怖の伝染病「赤い草原病」が蔓延しはじめる。それと同時に、「古代人民兵団」を名乗るテロリストが襲いかかってくる。
すっかり「昔」の仕事がイヤになり、慢性の胃ケイレンに悩まされる男・飛葉はこの事件にどう関わっていくのか。

ひいき目にならずとも、望月三起也は老いていないと思う。本作も、ムチャクチャに面白くならなくともきっちり及第点は取るだろう。それはたぶん、他のダメダメになってしまった大御所マンガ家たちより、アクション映画や冒険小説などのエンターテインメントの普遍的な技術を修得していることが要因のひとつだと思う。
あと、なんだかんだ言って気持ちが若いよ。

「ド根性ガエル2001」吉沢やすみは、だんだんよくなってきている感じ。梅さんの左手がミズムシになってしまい、そのウワサがあっという間に広まって宝寿司にお客が来なくなるという話。

「新しまって行こうぜ!」吉森みきおは、宝くじで30万当てた草野球メンバーの一人が、寝たきりになった父親の看病をしてくれた妻に5万円のプレゼントをして、残りを自分のモノにしようとする話。
なんかなあ……、人間って30過ぎると、一生こんなことばっかり考えて生きていかなけりゃならんのか? と、個人的に思うわびしい話。

復刻では、マタギを描いた「サスガの三次」矢口高雄(73年)と、「怪物くん」藤子不二雄A(68年)
この間、「ピストル・オペラ」の公開に合わせて鈴木清順監督のインタビューをテレビでやっていたのだが、「昔は映画の脚本が来ても、流れ者が街にやってきて、そこの組織をぶっつぶして、女に惚れられて……って、そういうのばっかりだった」と言っていたが、「サスガの三次」はまさにそのフォーマットの作品。マタギ集団を追われた三次が、牧場の親娘のためにエゾオオカミの集団を退治する。
しかし、まさに「渋い」としかいいようがないこの味! すばらしい。同じモノを現在描いたとしてもレトロな感じはまぬがれないし、これ1本を中心に単行本をつくろうと思ってもたぶんムリだろうから、まさに雑誌での「復刻」でしか味わえない作風と言える。
「怪物くん」は「新年パーティーはザ・モンスターズでいこう」の巻。怪物くんたちがグループサウンズのまねごとをしたり、怪物たちが仮装パーティをしてわけがわからなくなるという楽しい作品。
今回は藤子不二雄Aの新作で「踊ルせぇるすまん」も載っているが、読み比べるとAのマッタリ感覚もマッタリなりにシャープさがそげ落ちていってしまっていることが、皮肉にもわかってしまう。昔の方が、やっぱりサエているのだ。
(02.0307)



・「コミック伝説マガジン」No.5(2002、実業之日本社)

マチコ先生

「まいっちんぐマチコ先生」えびはら武司に、なぜか萌えっぽいキャラ登場。アシスタントが描いたのかな???

復刻は「鉄人28号」横山光輝(62〜63年)と、「ガルマ」岩本うしお、石ノ森章太郎(65〜66年)
「鉄人」は「十字結社の巻」。「タイムスリップグリコ」のオマケフィギュアで、地中から出てきて鉄人をムンズと掴んでいるモンスターが登場している。
「ガルマ」は、「空賊ガルマ」という謎の集団が「空とぶかんおけ」と呼ばれる真っ黒な板チョコみたいな乗り物で人々を襲撃する。彼らは少女・ウツミが胸から下げているメダル「重鉄」を使い、真実だった「地球双心説」(地球には重心が二つあり、それが反発しあいながら移動しているために地球は回転している、とする説)を使って地球をどうにかしようとたくらんでいた。
ウツミの友達・ノリオは、事件に巻き込まれてガルマにさらわれてしまう……。

当時の石ノ森作品にしては、珍しくモッタラした印象というか、むかし眉村卓や光瀬龍が書いていた少年少女向けSFを思い出させる、ちょっと古くさい感じのプロットだが(原作の人には悪いが……)、「空とぶかんおけ」のデザインなどはなかなか秀逸。
また、本誌の解説を担当している「森遊机」というヒトが、本当にこの頃の石ノ森章太郎の絵柄が好きなんだなァ……という気持ちが解説文から伝わってくる。

「筒井康隆全漫画RETURN」筒井康隆は、発表当時の回顧文とともにまだやっているが、……ちょっと飽きてきた。
やっぱり小説と絵じゃイメージ違うし。
(02.0307)



・「コミックバンチ」14号(2002、新潮社)

「世界漫画愛読者大賞」エントリー作品第6弾は、「142Bのハングオン」大西しゅう
身長142センチ、体重も軽い女の子・千葉茅幸(ちば・ちゆき)は、バイクを改造したり整備したりするのが趣味のセンパイ・浅井聡に、バイクに乗ってある走り屋を抜いてほしい、と頼まれる。「買ったらパフェ食べ放題」という約束に乗って、原付のペーパードライバーだった茅幸は特訓に励むのだが……(そういえば、エントリー作品第1弾「満腹ボクサー」とは、体重の重い軽いの扱いが正反対だ)。

これ、個人的に好きだ。
確かに、今までのエントリー作品の中ではもっとも荒削り、稚拙といっていい部分もある。このプロットなら、本来3倍のページ数はいるんじゃないかと思う。
当然描かれるべき、茅幸と浅井のちょっとした恋愛っぽいエピソードや、茅幸の「背が小さい」ということに対するコンプレックス、逆に、単に軽量ライダーというだけではない彼女の才能、そしてクライマックスでのバイクテクニックなど、描ききれていない部分があまりにも多い。
多いが、本作の独特のさわやかさはこの人にしか出せない持ち味だろう。まったく才能ってのは恐ろしい。そして、その才能に素直に感情移入できない(トシとったから)自分が哀しい。若いっていいな。

「屈辱er(クツジョッカー)大河原上」坂本タクマは、もう31回もやっている本誌唯一のギャグマンガ。
なんでもかんでも屈辱に感じる(逆に言えば気位が高い)大河原上が、いろんなことに屈辱を感じまくるというマンガだが、思いつきや最初の着想だけではない話が最近続いてて、なかなか面白い(今さらな話ですけどね)。
それにしても、今どきめずらしいほど絵がヘタな人だ。いや、そんなことはギャグマンガにはどうでもイイんだが、ヘタの方向性がやっぱりバンチっぽいというか。
(02.0305)



・「コミックバンチ」9号(2002、新潮社)

またひさしぶりに購入。理由は、賞金総額1億円の「第1回世界漫画愛読者大賞」ノミネート作品掲載が始まったからだ。たとえ投票はしなくても、読者として参加できる企画だと思う。「今週のはどうかなァ」なんつって。

で、その第1弾が「満腹ボクサー徳川」日高建男。ボクシングのウェルター級日本チャンピオンだった主人公が、「ウェルター級でチャンピオンになることと、おれ自身が強くなることとは別」と主張して、3年近くも体重増加に特化した訓練を行い、ヘビー級に転向しようとする話。
絵も格闘技マンガを描くのに適していると思うし、「格闘技における体重差」の問題を取り上げているのも面白いし、スパーの相手がK−1のマーク・ハントを思わせるゴツい系キャラなのもイイ。
これはけっこう続きが読みたいかも。
(02.0303)



・「コミックバンチ」11号(2002、新潮社)

「世界漫画愛読者大賞」エントリー作品の第3弾は、「アラビアンナイト」長谷川哲也。西暦750年当時のイスラム世界を舞台に、滅ぼされたウマイヤ朝の王子がお家再興のために家臣とともに流浪の旅に出る。これはイイ! 今までの候補作ではいちばんいいかも。
取り上げる時代も今までになかったし、戦闘シーン(人をブン殴るときにナニゲに目の中に指を入れていたり、剣で人間があとかたもなくなるくらい、ある意味マンガ的に粉々にしちゃったり)も考えられている。主人公の王子の「漢気」も描かれているし、連載になればなかなか燃える作品になりそう。
(02.0303)



・「コミックバンチ」13号(2002、新潮社)

やっと最新号に追いついたので、連載作品の感想などを書いてみたい。全体的に「往年のジャンプ感」が薄れてきていて、いい方向に行っていると思う。個人的には雑誌立ち上げ時の連載陣より、その次の世代の方が面白く読める。

「報復のムフロン」上之二郎、小野洋一郎は、ハイジャックに遭った旅客機が、犯人を逃したままフラフラすることに。墜落したら大惨事になるため、米軍が出動して撃墜しようとしたりするが、乗客である主人公の青年と、老人が操縦桿を握りなんとか不時着させようと奮闘する。
明らかに例の「テロ事件」、それもホワイトハウスに向かって墜落した旅客機の事件をもとにしている。「たぶん撃墜されたんじゃないのか」という、一般市民のイヤ〜な気持ちをうまく汲み取ってマンガにしている。絵の迫力もあって、読ませる。

「灰色の街」江口孝之は、世界漫画愛読者大賞エントリー作品第5弾。
ブルセラショップを拠点とするネオ・ハードボイルド調探偵のもとに、青二才然とした青年が彼女の浮気調査を依頼。この探偵と青年のやりとりが面白い。絵がちょっと汚くて、内容が青臭くて、でもなんつーか「清い」感じがする。つまりミステリ的プロットの手法を用いていないことを除けば、正統派のハードボイルドという感じだ。
「男たちの好日」に代表されるような、単純イケイケ路線でないことに衝撃を感じた。へー、バンチってこういう作品も載せるんですね。グランプリを取れるかどうかはわからないけど、今後も読んでみたい作風ではある。

「黄金の明星」山本周五郎、二橋新吾、武喜仁は、幕末の動乱が始まりつつある長崎の出島を舞台にした時代ものアクション。たぶん山本周五郎の原作とは全然違うんだろうなーと思いつつ、バンチ的イケイケ感がいい方向に行っている作品だと思う。
(02.0303)



・「石ノ森章太郎美女画集『GIRLS 1961〜97』」(2002、パイオニアLDC)

本書の内容について、くわしくはここ

「009ノ1」、「ワイルドキャット」や「龍神沼」などのカラーイラスト、そして今まで未刊行だった「プレイコミック」表紙用の美女イラストをオールカラーで一挙完全収録した、石ノ森章太郎の美女画集(……と書くと、タイトルと一緒になっちゃうな)。68年代の幻の作品「ガイ・パンチ&アン・ドール」の小冊子のオマケ付きで、4800円。

他作品のイラストも付いているけど、基本的には60年代後半から70年代のプレイコミックの表紙イラストがメイン。HPの紹介文では「レイト・シックスティーズ・ムードたっぷりで必見!」って書いてあって、「レイト・シックスティーズ・ムード」って、私の知識不足でよくわかんない……。

けれどもむりやり自分なりに形容してみると、「オースティン・パワーズ」的なモノをもう少しエロくした感じとか、あるいは「007」で全裸の女の人が後ろ向きになって両手に拳銃構えて、背中にボディペインティングをほどこされたポスターがあったと記憶していますがあんな感じ。
現在の「PLAYBOY」(週刊にあらず)のヌードで、女の人が水兵さんや軍人のカッコをしてたり、冬の号だとスキーウェア着てオッパイだけ出してるのとかがありますが、アレをさらに図案化して「60年代っぽく」した感じかなあ。わかっていただけるでしょうか?

まあもともと基本コンセプトがきっちりしているという点もあるんでしょうが、私の予想どおり、石ノ森美少女というのはキュートではあっても、描き手の女体に対する異常な執着心とかそういうのはあまり感じないですね。そういう意味では健全。

黒書刊行会さんからの孫引きになってしまって恐縮なんですが、唐沢なをき氏が「石森女性キャラはたるんだ肉の感じがヤだ」と言ってたそうです。で、私はハタと膝を打ちました。確かにそうなんですよね。
かなりデフォルメされた場合でもそう。お尻が下がっちゃってるし、巨乳にも実に興味なさげ。絵の統一コンセプトがアメリカ風なのに、体つきは日本人ぽいというか、まあ、たるんでるわけです。で、それが石ノ森氏の好みだったのかどうかはまだ判断つきかねる。けれども、たぶん女体を個々のパーツとしてとらえるというより、内蔵のつまった袋というか、総体としてどう見せるかに執着はあったのかも。その代わり、フェチ的な執着はなかったのではないかというのが私の予想です。
だから、今やってるアニメ「009」でフランソワーズが頼まれてチャイナドレスを着るシーンがあったが、かなり違和感がある。いや、もし原作にそういうのがなかったらというのが前提なんですが。自作のキャラを着せ替えて遊ぼうとか、そういうのは次の世代の人くらいからで、石ノ森的な感覚としてはなかった気がするんですよね。
次世代の「女体をパーツで見る」永井豪ですら、下着には無頓着だったわけだし。

(ちなみに、私の知るかぎり「009」の原作では「アフロディーテ」とかいう話で、フランソワーズが悪の組織につかまってギリシャ風の衣装を着せられるシーンがありますが、それがまたすごくゾンザイなんだ。)

江川達也は女の人の裸を描くときに、下半身の腰骨の部分というか、足の付け根の関節の上の部分、痩せぎすな女の子だと突き出てしまう骨のでっぱりを必ず描いてた(最近読んでないからわかんないけど)。
そんなような石ノ森なりの「女体のリアル感」で、こんなに肉のたるんだ感じにこだわってたんじゃないかなあ、と考えてみました。
(02.0301)

「つれづれなるマンガ感想文2002」もくじに戻る
「つれづれなるマンガ感想文」2月後半
「つれづれなるマンガ感想文」3月後半
ここがいちばん下です
トップに戻る