つれづれなるマンガ感想文4月前半

「つれづれなるマンガ感想文2002」もくじに戻る
「つれづれなるマンガ感想文」3月後半
「つれづれなるマンガ感想文」4月後半
一気に下まで行きたい



・「近代麻雀オリジナル」5月号(2002、竹書房)
・「週刊ヤングジャンプ」18号(2002、集英社)
・「週刊ヤングジャンプ」19号(2002、集英社)
・「週刊少年チャンピオン」20号(2002、秋田書店)
・「コミックビーム」2月号(2002、エンターブレイン)
・「コミックビーム」3月号(2002、エンターブレイン)
・「コミックビーム」4月号(2002、エンターブレイン)
・「アフタヌーン シーズン増刊 No.10」(2002、講談社)
・「アフタヌーン シーズン増刊 No.11」(2002、講談社)
・「コミックバンチ」16号(2002、新潮社)
・「コミックバンチ」17号(2002、新潮社)
・「コミックバンチ」18号(2002、新潮社)
・「コミックバンチ」19号(2002、新潮社)
・「月刊少年チャンピオン」4月号(2002、秋田書店)
・「月刊少年チャンピオン」5月号(2002、秋田書店)
・「月刊少年チャンピオン」1月号(2002、秋田書店)
・「月刊少年チャンピオン」2月号(2002、秋田書店)
・「月刊少年チャンピオン」3月号(2002、秋田書店)
・「週刊少年チャンピオン」17号(2002、秋田書店)
・「週刊少年チャンピオン」18号(2002、秋田書店)
・「週刊少年チャンピオン」19号(2002、秋田書店)
・「エイケン」(3)〜(4) 松山せいじ(2002、秋田書店)
・「はつ恋アルバム」全2巻 みやわき心太郎(1979、講談社)
・「快尻(かいけつ)グラマンチェ」 山口かつみ(1996、少年画報社)
・「レイパー姫」 夢野ひろし(1993、蒼竜社)






・「近代麻雀オリジナル」5月号(2002、竹書房)

「がんばれMARSY」中村毅士は、読みきり。マーシーソックリな男がビデオカメラを拾ったところを警察に見つかり、覗きと誤解されて追いかけられ、ビデオに映っていた雀荘に真犯人がいるのではないかとそこを訪れる。
そこには志村けんそっくりのバーサンがいて、マーシーそっくりの主人公はいかりや・仲本工事・高木ブーそっくりの3人と麻雀することになるが……。

「なるが……。」じゃないっつーの! というくらい安易な思いつきで描かれたと思われる作品。しかし、実は前号の予告編を見た段階でかなり強い気持ちで読んでみようと思っていた作品でもあったのだ……。
とにかくマンガは手にとって確かめてみなければ何も言えない、「ぶっとびマンガ」を探すには目先の名作より危険な未知の作品を読む、というのが「ふぬけ共和国」のサガ、掟、「スタンドはスタンドでしか倒せない」というルールなのである。

本作が思いつきにとどまってしまっているのは、まずドリフの3人とマーシーが麻雀を打つ必然性がないという点。パロディマンガにするなら、メンツを志村・くわまん・鈴木雅之とひとまず考えるのが普通の発想ではないだろうか。「面倒見てやる」と言ったあとマーシーを突き放した和田アキ子でもいい。まずその発想があって、ヒネるのはその後だと思う。
時期的にやや遅いというのもイタい。こういうのは早ければ早いほどいいから。

「ムネオでポン!」猿山長七郎は、スズキムネオが麻雀をやるという、だれかがぜったいやるだろう的4コママンガ。たぶん読みきり。しかし、内容もまったく予想の範囲内というのが……。私、この作者の同人誌買ったことあるけど、決してここまで「う〜ん」な感じではないんだがなあ……。
「ムネオ」というネタも、現在のところ時期的に微妙すぎる。素材が面白すぎると料理がむずかしいという例なんだろうなあ……。

発想が安易、ということで言えば「代打主婦 火美子」市川智茂も同じことが言える。こちらも読みきり。とにかく目新しさが「主婦が代打ちする」という部分しかない。個人的に発想が安易な作品はキライではないんだが、当初の企画そのまんまのものができあがっては寂しいだろう。

「葬儀屋雀忌 三途」飯山カズオは、葬儀屋同士で政治家の葬儀を巡って麻雀する話。葬儀屋の裏話が素朴に面白かった。

「おやこ雀ゴロ」高港基資は、雀ゴロのオヤジと、そんな父親を嫌っている刑事の息子の話。続けて読めば面白いかもしれないんだけど、なんか微妙だな〜。

「近代麻雀」5月15日号の高橋のぼる「ジャンロック」が面白そうだ。「近代麻雀」ゴールド6月号予告の奥田渓竜「黄金猿−ゴールデンモンキー−」ってなんだかルパン三世みたいだ。
(02.0414)



・「週刊ヤングジャンプ」18号(2002、集英社)

ひさしぶりに購入。格闘モノかヌルい恋愛ものか、途中から読んでもわからないアクションものかで構成されている印象。

「民俗学者八雲樹 蕗の葉の下の殺人者」金成陽三郎、山口譲司は、「新シリーズ」というから前にもやったのか。わからん。原作者は、確か「金田一少年」の人。推理モノらしい。
まだ事件は発端でお話は見えないが、いつ見ても山口譲司の描くおねーさんはエロいなあとか思った。

それと、本作と関係ないが金田一少年のパクリ問題はどうなったのかね??? トリックのパクリをことさらに気にするのは、ミステリファンだけなのだろうか。まあどんなものでもパクリか否かは微妙なところだけれど。
私が後から個人的に思ったのは、「金田一少年」の原作者はおそらくミステリを読んではいても、ミステリファンのコミュニティには入っていなかったのではないかということだった。もしくは、入っていても気にしない人だったのではないか。
……というのは、ミステリにおける「オリジナリティ」とか「仁義」とか「リアリティ」とか「バカげてる」とか、そういう基準ってやっぱりミステリ内のある種のコミニュティの了解事項があって始めて成立するものではないかと思い始めたから。
「金田一少年」に対してミステリファンがいらだったとしたら、それは表面上は古典のネタバレに対してだったけど、根底ではコミュニティに対する無神経さがカンに触ったのではないかと。

……と、ぜんぜん関係ないことを書いてみた。
(02.0413)



・「週刊ヤングジャンプ」19号(2002、集英社)

松本恵が「松本莉緒」名義で復活。松本恵の引退騒動は、鈴木あみの引退、さらに「カリスマ美容師」という言葉を流行らせた「シザーズリーグ」のプロデューサーが出場していた美容室を恐喝、という事件とともに、「芸能界って梶原一騎がブイブイ言わしてた頃とかとぜんぜん変わってねーんだなー」と思わせた事件であった。
小堺一機がいくら「ごきげんよう」で「芸能界ってみんなが思ってるほど恐くない」と言っても、やはり恐いのだ。

「妹あかね 2nd.season.」山花典之は、血のつながらない兄を愛しておいかけまわす女の子の話らしい。この人のマンガ、ひさしぶりに読んだがもともと悪い意味ではないモッサリ感のあるタッチだったが、いろんな意味でシャープになったような気がする。
何より「義妹が兄にせまり続ける」というので毎回続けてるのが、どう言ったらいいのか……時代の要請なのか、何なのか。

「メモリア」岡本倫は、SFおしかけ女房参照のこと。
(02.0413)



・「週刊少年チャンピオン」20号(2002、秋田書店)

「拳魂(ケンダマ)」今谷鉄柱が新連載。ケンカにちょっと興味のある主人公が、いろいろあって空手道場に通うハメになる。まだ私としては海のものとも山のものともつかない感じ。「どこを殴られるとどこが痛くなる」とか、そういう描写はリアル。
「エイケン」松山せいじは、伝助がデートをダブルブッキングしちゃってどうのこうのという話。本来、こういうエピソードが続くのが普通のラブコメマンガなんだけど、本作の場合かえって当たり前すぎて面白くない。
もっとも、こういうのを入れておけば妙なエピソードが出たときに引き立つんだけどね。本末転倒のような気がするけど、それが本作の魅力だから。
(02.0412)



・「コミックビーム」2月号(2002、エンターブレイン)

「カネヒラデスカ?」金平守人は、ロゴまでつくってコロコロマンガのパロディ「やっこ凧ジュン」。やっこ凧マンガね。すばらしい。パロディとしてもすごくよくできてるし。
確かゲーム雑誌「CONTINUE」でも、大西祥平原作でだれかがカン蹴りのマンガをコロコロパロディとして描いているらしい(未読)。

コロコロ・ボンボン系は、まず「マンガ地獄変」とか「コミック・ゴン!」とかの作品紹介・再評価から始まって、実物(「ゲームセンターあらし」、「とどろけ! 一番」など)の復刻と来て、ここへ来てパロディマンガが散見されるようになった。もしかしたら作品評価っていうのは常にそういう順序なのかな。

とつぜん思い出したが、そうした流れとはまったく別に、10年くらい前にうのせけんいちがコロコロもののパロディやってたなぁ。

「ウルティモ☆スーパースター」須田信太郎は新連載。田舎の高校で日常に飽き飽きしていた三波は、マイナープロレス団体「るちゃプロレス」に魅せられて、彼らのバスに飛び乗ってしまう、というマンガ。
(02.0412)



・「コミックビーム」3月号(2002、エンターブレイン)

「青 オールー」羽生生純が新連載。
沖縄に住む、かつて売れっ子マンガ家だったが今は描くことに飽いてしまった男と、彼に作品を描かせようと東京からやってきた編集者の出会い。
第1回目では、海のものとも山のものともわからん。
(02.0412)



・「コミックビーム」4月号(2002、エンターブレイン)

「カネヒラデスカ?」金平守人は、オタクの楽園「ときめきランド」。要するにロリかわいい美少女がわんさかいるディズニーランドのようなところね。で、このマンガだからやっぱりオチがある。

このオチ、笑えます(ネタバレになるから説明はしない)。しかし、もしコレが全部「そういうのものすごくバカにしているイヤ〜な女(もちろん成人した)だったら?」と想像してみると、ぜんぜん笑えないどころか、サーッと胃の底が冷たくなるような感触を覚える(私だけか?)。
もしかしたらこの作者はそっちのオチも考えていたかもしれない。しかし、それはあまりにファンタジーではないと思って回避したのだろうと妄想してみる。

すると、いかに「オタクの美少女妄想」が脆弱なものかわかるだろう。
「脆弱だったら悪いのか?」というと、実はそうとも思ってないんだけど、ま、「あんまり妄想に浸かるのも気を付けよう」と自戒した次第(作品自体とはあんま関係ない話なんですけどね)。

「ウルティモ☆スーパースター」須田信太郎は連載第3回。高校生の三波が飛び込んだ「るちゃプロレス」の面々の生きざまが、少しずつ明らかになっていくのかもしれない。そうだったら今後面白くなっていくのかもしれない。

「エマ」森薫は連載第4回。
19世紀のロンドンを舞台にした、青年とメイドさんの恋愛を描いた話……になるのかもしれない。
実は連載当初から数回、今ひとつおとしどころがわからなかったんだけど、数回読んでみて、メイドさんが存在した時代を舞台に、ちゃんとメイドさんを描こうという話なのかもしれない、と思うようになった。

19世紀ロンドンだとか、当時のメイドだとかの知識を私が持っているわけではないのでどの程度事実に忠実かはわからない。しかし、たいていのメイドものが現代を舞台にしているだけにその「あり方」は都合よくアレンジされてしまっているから、もし本作が私が考えるようなアプローチだとしたら、面白い試みだと思う。
出てくるメイドにも、愛情を感じるしね。
(02.0412)



「バンチ」の「世界漫画愛読者大賞」の、10作揃った時点での投票をしてみた。ハガキに、押したい作品にマルを付ける欄の他に、「その作品を世界漫画愛読者大賞として認めますか?」みたいな断り書きにもマルを付ける欄がある。つまり、「ウン千万の賞金ほどじゃないけど、面白いからマルを付けますよ」というスタンスも、読者に認められているということだと思う。これはイイと思った。
私は「世界漫画愛読者大賞として認める」にマルを付けておいた。確かに賞金金額がデカすぎる気はするんだけど、御祝儀ってコトで。「御祝儀」ったって、私が払うわけじゃないけどさ。

・「アフタヌーン シーズン増刊 No.10」(2002、講談社)

「ラブやん」田丸浩史。第6話「たちまち高校生」。「メガネっ娘萌え」がどーたらこーたらと。すごいね。「妄想戦士ヤマモト」と熾烈な戦いを繰り広げているように思う。こういうオタクネタのマンガのレベルの高さはとどまるところを知らない。
ところで、私はもう人生も半ばを過ぎたので、自分の趣向という意味で「萌え」という言葉は使わない。さようなら「萌え」(今後も便宜上は使うと思います)。
「破落戸(ごろつき)」小川雅史。小さな美少女悪魔が青年に取り憑き、恋愛をしろとけしかける。絵柄から「みんみんミント」みたいな軽めの作品かと思ったら、そうでもなかった。
「MELTDOWN」遠藤浩樹は、新連載。近未来、人間がセックスにより子供を生み出せなくなってしまった世界の物語らしい。戯遊群の「バトルフィールド」を超えられるか!?(そういうテーマじゃないのか?)
「みんみんミント」士貴智志は、巫女さん魔女っ子マンガ。最終回。ただひたすらに脱力。しかし脱力させることがこのマンガの使命だった。それをまっとうした。
「神原則夫の人生劇場」神原則夫は、其の一「エミーさん」。女房に逃げられた中年サラリーマンの同僚が、「新しい奥さん」として女装して同居することになる。精神的に孤独な人々が疑似家族をつくる、と書くと陳腐というか80年代的なんだけど、この人の作品は実にキャラクターが活き活きしていてわざとらしいところがない。「なんだかんだ言っても、こうするよりしょうがないだろう!」という、矜持が感じられるのが頼もしい。
そういう意味では、この人の作品は熱血マンガである。
「こちらエデン28号」和田新介は、01年四季賞冬のコンテスト入賞作品。とある惑星に「楽園」をつくれとプログラムされ、それを実行し続けるアンドロイド「エデン28号」と、そこにやってきた人間との出会い。SF掌編。よくまとまってる。
「かいじゅうの背番号」もみじ拓は、読みきり。自分も両親も怪獣(宇宙人?)だと知らされずに育った少年・一郎は、ある日自分たちが「正義の味方」に追われていることを知る。そして彼が中学生になったとき、あるできごとが起きる。それに対して彼がとった行動とは……。
一郎の日常描写の地に足のついた感じが、よけい彼の人生の不条理さをきわだたせる。泣ける。
(02.0411)



・「アフタヌーン シーズン増刊 No.11」(2002、講談社)

「Ordinary±(オーディナリープラスマイナス)」高橋慶太郎は、新連載。文部省教育施設特査の女子高生・伊万里はプロのヒットマン。香港からやってきた殺し屋と、学園内で対決。
……あんまりタイトな殺し屋モノって個人的にシュミではないんだけど(ほら、私は「野獣警察」派だから(笑))、本作は確かによくできている。連載されるだけのことはある。
「まんぼう」武富健治は、読みきり。 夏美の親友・ユリ子はかなり太っている。そのユリ子が最近「まんぼう」とあだ名されてバカにされている。不愉快に思った夏美は、だれがこのあだ名を広めたのか突き止めようとするが……。
これ、ミステリ仕立てですごく面白いんだけど、オチはギャグっぽくしない方がよかったなぁ。
「神原則夫の人生劇場」神原則夫は、其の弐「9.99」。リストラされ、妻にも子供にも見放された中年男・まさおは、公園でホームレスになっている中学時代の恩師で陸上部の顧問だった森先生に再会。
この出会いをきっかけに、まさおは「100メートル9秒台を出す」ことを目標に走り始める。あまりに無謀、無意味、ドーピングまでして筋肉はついたが頭はツルツルに。森先生を家庭崩壊した家に呼び込んでは波乱を起こし……。しかし、公園で同じようにリストラされた高阪さんも仲間に加わり、奇妙な陸上練習生活が続く。
しばらくして、まったくムダと思われた練習によって、まさおも周囲も変わり始めて……。

やっぱりこの人すごいわ。日常の泣き言を描いてさえいれば「中年男の悲哀」を描けるとカン違いしている作家に対する、これはもはや鉄槌だ。

「remain(リメイン)」柏原麻美は、01年四季賞冬のコンテスト・四季賞受賞作品。とある田舎町に住む夏子は、2年前、「東京の大学に行く」と言ったまま電車事故で死んでしまった先輩(彼氏?)のあっちゃんのことがどうしても忘れられない。ケンカをして、ヒドい言葉を投げかけたままになってしまったから……。そんな夏子はなぜか突然、事故の起こる前の世界へ行ってしまう。夢か? 現実か? わからないまま、あっちゃんに再度別れの言葉を告げる夏子。
「泣ける作品」と書いてあって、実際そうなんだけど、私は哀しいことに泣けなかった。それはこの作品が悪いのではなく(本作は受賞作品だけあってたいしたマンガであると思う)、私の心が腐ってしまったからだと思う。いや、腐ってしまったのではなく、最初から腐っていて、それに最近気づいただけなのだ。

「めもり星人」フクヤショウジは、シリーズ読みきり第3弾、とか書いてあるんだけど、どう考えても私は初見なんだよな……。去年1年間、同誌を買い続けてきたはずなんだけどな……。
内容は、仕事に追われるサラリーマンが自分と他人や社会の関係について、「めもり星人」を通して考え直す話。
(02.0411)



・「コミックバンチ」16号(2002、新潮社)

「世界漫画愛読者大賞」のエントリー作品第8弾は「黒鳥姫」葉山陽太。余命いくばくもないと告知された女性が、「生涯で最高の絵を描く」ために家出同然に飛び出し、ひょんなことから出会った画材屋の男性と同居したりする。

登場人物のちょっとした会話や心理描写に、確かに見るべきものがあると思う。むしろ連載で実力を発揮するタイプかもしれない。
でも、読みきりとして完結してないのは、やっぱり掲載作品としては問題なような気がする。主人公の女性が男性の部屋に居候を決め込む際、セックスの問題がまったく無視されているのも、それなりの方法で処理できるはずだがたぶんページ不足でできていないし。
潜在的なパワーがある人だとは思うんだけど。
(02.0410)



・「コミックバンチ」17号(2002、新潮社)

「世界漫画愛読者大賞」のエントリー作品第9弾は「逃げるな!! 駿平」野田正規。子供の頃、自分より強い相手から逃げ出し、それを軽蔑されてからトラウマになっている駿平。その後少林寺拳法を学び、タイ旅行へ。彼はそこでも子供時代のことを引きずっていて……。

エントリーされるくらいだから、本作もいざ連載となればそれなりのアベレージは保てることは予想できる。しかし、この1作だけ見た場合、駿平がなぜムエタイではなく少林寺拳法を学んだのかの理由が不明確なところに不満が残った。

「黄金の明星」山本周五郎、二橋信吾、武喜仁は、幕末「裏出島」と呼ばれた深川の「安楽亭」に、幕府から刺客が差し向けられる。
このマンガ、決してつまらなくはないけど、井伊直弼ってこんなに悪人だったのかなあ? まあ細かいことに難癖つけるつもりはない。しかし、「月チャン」の「エルドラッド」における蒙古軍もそうなんだけど、実在の人物とか集団を、いくらマンガ的表現とは言えまったく余地のないほどに超極悪に描くのはどうかと思うんだよなあ。
それこそ「そのときだけ魔が乗り移っていた」とか、そういう伝奇的表現にすればイイと思うし、それがマンガだと思うんだ。
やっぱり近石まさしが熟女エロマンガばっかり描いている場合じゃないということなのか。問題がぜんぜん違うか、やっぱり。
(02.0410)



・「コミックバンチ」18号(2002、新潮社)

「世界漫画愛読者大賞」のエントリー作品第10弾は「熱血!! 男盛り」南寛樹。これでエントリー作品は全部出そろったか。本作はギャグ4コマ。「男くささ」をギャグにすると言うパターンですね。でもまったく意味がわからないのがあった。「中華的吸血鬼」とか。「拳骨野球」っていうのは、ちょっと面白い。

「男たちの好日」城山三郎、ながいのりあきは、「かじめ焼き」という現在では理解しにくい職業から「ダムづくり」とわかりやすくなった。
で、信州に水力発電用のダムを建設しようとする主人公が地元民を説得するために、松明を使って日本に将来できるであろう電力網を表現する。おお、これは面白い。面白いけれど、本作に対する評価は私の中では微妙だ。

ひとつには「バンチ」という雑誌の微妙さがある。まだノスタルジーにまで醸成されていない「近い過去」の方法論を用いているという違和感が、まずある。次に、他の作品はともかく、本作「男たちの好日」は、明確に70年代頃の少年マンガテイストの再現である。製作者にそういう意図がないとしても、そう受け取られても仕方がないだろう。
そうしたテイストの再現が悪いとは言わない。しかし、いったいどのあたりの位置で本作が描かれているのか。もしかして本気でこれが新しいと思ってやっているのかもしれない、という不安感が、読んでいてある。

私は、たとえば町田康が小説の中でわざと昔の言葉遣いをしたりする、そうしたものと同じものとして解釈しているが、実際はどうかはわからん。
(02.0410)



・「コミックバンチ」19号(2002、新潮社)

「蒼天の拳」武論尊、原哲夫は、私が個人的に「本作では出てこないだろう」とあきらめていた北斗同士の格闘シーンに突入しているのでうれしい。
しかし、重箱の隅をつつくというか余計なことかもしれんが、拳法の分家が本家にぜったい勝てない、っていうのはなんだかおかしいよ。しかもそれが、拳志郎が逆転する理由になっちゃってるし。拳法にかぎらず、頂点に立てないことを想定した求道など、ありえないと思うが。

「株式会社大山田出版仮編集部員 山下たろーくん」こせきこうじは、単なる草野球がライバルマンガ雑誌の代理戦争というか、その「あり方」を代弁するという展開は面白いと思う。
しかし、西村元ジャンプ編集長がモデルの人物が登場するように、ほんの少し鼻につく部分もある。この、独特な編集者が前へ前へと出てくる感じ、押しの強さが「バンチ」という雑誌の鼻につく感じになっている。確かに、マンガ界に旋風を起こそうとしているのはわかる。だが、それが単に人気とか売り上げとかというのとは別に、今のマンガ界を作品として撃つ、批判するようなものになっているかというと、やっぱり疑問が残る。
そういった「志」と「批評性」の乖離が、個人的に「鼻につく」と感じさせる理由になっていると思う。
実は、雑誌としては対照的だが「IKKI」にも似たものを感じている。

「大怪獣の下で」雨谷ウィッグは、フレッシュマン読みきりシリーズの第1弾。
怪獣が出現し、街を暴れ回る。たいへんなことになっているはずなのだが、主人公の二人の少年にはイマイチ緊迫感がない。他の人物たちの行動も、なんだかどんどんズレていく……。

マジ書きしますが、「何か大変なことが起こっているのに実感ができない」というのは……80年代後半的なセンスだと思った。……そう思って作者コメントを見たら32歳らしい。ううん、同世代だねえ。そういう感覚ってわからなくはないんだけど、これを「新感覚」と言われても……と思ってしまう。
同時多発テロ事件やいつまで経ってもよくならない景気、イスラエルとかあの辺でもドンパチやってる。そういうことについてさえ「実感がない」と断言できる(ある意味での)土性骨みたいのがあれば、もっと面白くなると思うんだけど。

「黄金の明星」山本周五郎、二橋信吾、武喜仁は、「安楽亭」に潜入した刺客がついに正体を現した。
この刺客、開国を望む安楽亭の主人を暗殺しようとする佐幕派なのだが、言ってることがあまりにも単純すぎる。開国が夢物語なら、鎖国だって似たようなもんだったろう当時。善悪がはっきりしすぎてしまうマンガの弱みが、少し露呈しているような気がする。
(02.0410)



・「月刊少年チャンピオン」4月号(2002、秋田書店)

「B.M.N(ブラックマンデーナイト)」SP☆なかてまが新連載。プロの格闘家・猫地に親友を半殺しにされた健太郎は、B.M.Nという格闘試合で猫地を倒した……という、修斗監修の格闘技マンガになるらしい。

「いちばん」小沢としおは、高校野球のマンガ。「フジケン」に比べるとちょっとヌルい印象なんだけど、主人公の友人の「野球をやめろやめろ」と言うオヤジが単なる悪役じゃなくて、なかなかの苦労人だ、というところがなんかうまい。
(02.0408)



・「月刊少年チャンピオン」5月号(2002、秋田書店)

「花右京メイド隊」もりしげ。いつになくマリエルが積極的になって、裸エプロンになったり太郎のスケジュールに付いてまわってノーブラで柔道を教えたり水泳を教えたり。何だ? 最後にオチがあるのかと思ったら、別になかった。
(02.0408)



・「月刊少年チャンピオン」1月号(2002、秋田書店)

個人的にイチオシだった伊藤清順のマンガ「ヒッサツ!」の連載終了が決定し、いちじるしく購読のモチベーションが下がったので、ほっておいたらいつの間にか数カ月積ん読になってしまった。

ま、続けて読んでて流れはつかめるけどね。

「エルドラッド」原作:寺島優、マンガ:真壁太陽、企画構成:宮崎信二は、新連載。13世紀後半、鎌倉時代。津軽郡十三湊は国際商業都市として栄えていた。だが、そこに蒙古軍が襲来。源義経の子孫・咲耶姫は蒙古軍総司令官のマルコ・ポーロに連れ去られてしまう。
一方、咲耶姫に仕えていた主人公・ゲンはバグダードにいた。咲耶姫から黄金の秘太刀・ヒヒイロカネを託されたゲンは、バグダードにも侵攻していた蒙古軍相手に一戦交えることになる。しかし一騎打ちの相手、千人隊長(ミンガン・ノヤン)は奇怪なパワーで化け物に変身して……!?

十三湊にいたゲンの幼なじみ・がイキナリ故郷の危機を伝えにいつの間にかバグダードに来ていたり、距離と時間の感覚がめちゃくちゃ。しかし勢いは確実にある。
ゲンの持つ剣「ヒヒイロカネ」は、明確に「ベルセルク」のガッツの持つ剣を意識したものだと思う(敵の化け物のデザインなんかもそう)なんだが、何よりガッツの大剣よりデカいのがうれしいじゃないか。

「ヒッサツ!」伊藤清順は、Vol.9 地獄のあみだくじ。三島中ダークエリア最強を決めるバトル・レース、予選第一次関門はあみだくじ型の崖上の道を1時間以内に渡るというレース。登場人物も出そろって、あのいとおしい作品「ぶかつどう」再び……!! である。でもこの頃ってたぶん連載終了決定してたんだろうなァ……。
(02.0407)



・「月刊少年チャンピオン」2月号(2002、秋田書店)

ラブコメ「のーぶら」川津健二朗が新連載。主人公の少年・片岡正人と二人きりで同居することになった幼なじみ・野村ユウキは、子供の頃はれっきとした男だったが、再会してみると外見上ものすごくカワイイ女の子に変貌していた……というような話。
元アシスタントだったのか、どことなくもりしげに近いタッチである。

「ヒッサツ!」伊藤清順は、Vol.10 恐るべき正体。「ぶかつどう」のように、連載終了が決まって大急ぎで広げた風呂敷を畳まなければならない。予選とか言っておいて、次の関門にはいきなり闘技場が出現。しかしこの辺も、この作者が描くとホントに違和感なくギャグになるから楽しいといえば楽しい。
ここでダーク・エリア最大最強チーム・「ジェノサイダーズ」のリーダー、枡崎ナオトが出現。闘技場でサツヤと死闘を繰り広げることになる。なんといっても「連載の店じまいをギャグに変える」という点では、「いろいろなチームが構想を繰り返す無法地帯・ダークエリア」とか言っていたのに、実は「ジェノサイダーズ」がダークエリアの95パーセントを支配していたことが今になって発覚したりするところがすごいです。
(02.0407)



・「月刊少年チャンピオン」3月号(2002、秋田書店)

「ヒッサツ!」伊藤清順は、最終話 光が生まれる日まで。相打ちとなったところから、「蛇拳」を繰り出してきた枡崎ナオト。ギャラリーのセリフは、「ジャッキー・チェンの映画をみてマネをしてるだけではないとはっきり断言できる!!」
それに対して、サツヤは「だれも見たことがないツチノコの動きを取り入れた形意拳・つちのこ拳」で対抗する。

ああ〜、終わってしまった……。すでにわかっていたこととは言え……。

サツヤの最後のセリフは、こうだ。

「格闘部を発足してからまだ1週間も経ってないけど…… レイちゃんに教わったことがある……」
「前のオレは 強くなるためにまず部員を集めて 強い部員を集めたら 今度は校内で最強をめざし」
「その次は学校最強チームで外の大会に出て じっくりと腕を磨こうなんてことを考えてた」
「でもいつも一生けんめいのレイちゃんを見てておもいしらされたよ……」
「そんな先のことなんか考えてたってしょうがない…… 先のことなんてどうなるかわからない 突然先がなくなることだってあるんだから」
「大切なのは今を考えることだと…… 未来のことよりも今が一番大事なんだとね……!」
(以下略)

これ……私には作者のマンガ家としての気持ち、として受け取れてしまってしょうがない。マンガ家や編集部の内部事情なんて知らないけれど、「ぶかつどう」から5年のブランクを経て(それまでマンガ以外の仕事をしていたらしい)復活したことには、それだけの期待があっただんと思う。にも関わらず、また連載が短期に終わってしまった。
でもねえ、私は短期間でも輝いていたと思いますよ。伊藤清順氏には、機会があればまた復活してほしい。
(02.0407)



・「週刊少年チャンピオン」17号(2002、秋田書店)

「元祖! 浦安鉄筋家族」浜岡賢次が新連載。あれっ、期待したよりはイマイチかな……? まあ、仕切り直しということでまだ顔見せ、って感じなんだと思う。

「屋台シェフ 里一郎」橋本俊二は、短期集中連載の最終回。オムレツ対決の決着編。監修がおやまけいこという、「鉄鍋のジャン!」と同じ人。この人がどの程度関わっているのかはわからんが、なんだかものすごくマニアックな対決だった。意外にまっとうなマンガだった。屋台が変形してギミックが出てくるんじゃないかとか、勝手に予想してたんだけど。

「バキ」板垣恵介は、「ロシアの注射」という一種の時事ネタを、まあこういったカタチで使ったんだろうなあと思った。ジャック・ハンマー、手術で身体がデカくなったのはわかるが、薬の副作用などの問題はいったいどこへ……?(まあみんなが思っていることだろうけどね)

「A.−D.O.G.S」北嶋博明、鈴木ダイは、特殊能力を持った少年たちが凶悪犯罪と立ち向かう、という話だが、ここまで読んできて今ひとつカタルシスのないマンガだなぁ〜と思う。敵キャラや悪事の設定に凝るのはイイけど、それを上回るカタルシスがないと、バイオレンスアクションものってどうかなぁと思う。

「ななか6/17」八神健は、むちゃくちゃに盛り上がった。「大人になれば6歳のななかは目的を達成し、消える」と16歳のななかから言われた雨宮は、「ななかに消えて欲しい」という考えを捨てきれずななかに勉強を教える(よくわからんが、勉強が高校レベルになると「大人になった」ということなのか?)。ななかの面倒を見てやっている雨宮さんに、素直に喜ぶ稔二。しかしその感謝の念に耐えきれず、雨の中で本心を言う雨宮さん……。
16歳ななか、稔二、雨宮さんとそれぞれの思惑が揺れて、物語はまだ続く。
(02.0406)



・「週刊少年チャンピオン」18号(2002、秋田書店)

「虹色ラーメン」馬場民雄は、原田さん(メイド風ウェイトレス姿の女の子)があいかわらずイイ味を出している。いろんな意味で正直なんだよね。

「WARP アンカーエクスプレス」平川哲弘は、自転車便のマンガ。読みきり作品。この人、昨年の同誌45号でも自転車便を描いていた。う〜ん、今回の方がなんだか大味な気がする。
(02.0406)



はああ〜。やっぱりたまってた雑誌をいっぺんに読むのは、3冊が限度だな。

・「週刊少年チャンピオン」19号(2002、秋田書店)

「虹色ラーメン」馬場民雄は、主人公たちが常勝軍団ではなく、リーグ戦のルールから勝ったり負けたりしながらトーナメントを進んでいくところが面白い。
今回の飛騨高山ラーメン、対決そのものは面白かったが、対戦相手の忍者装束が単なるコスプレに終わってしまっていたのが惜しい。あいかわらず原田さんがイイ。

「ハングリーハート」高橋陽一は、月イチくらいのペースで連載しているサッカーマンガ。高橋陽一独特のダサオーラが出てはいるものの、やっぱりこの読みやすさは強いと思う。

「バキ」板垣恵介は、わたし的には意外すぎる展開。カッコよく立ち去ったジャックは、昏倒した烈海王の危険は何も考えてなかったのかな?

「七人のナナ」今川泰宏、国広あずさは、アニメともどもどうも見ていて心がチクチクすると思ったら、どちらも「受験」という点についてははずしていないからなのだった。もう受験モノはいいや……。学生時代さんざん苦労したから。死ぬ。

「UMEBOSHI」森田克俊は、読みきり前後編の後編。ボクシングマンガ。なんか出だしだけで終わっちゃった、という印象があるなあ。

「スクライド」黒田洋介、戸田泰成は、最終回近くなってムッチャクチャな展開に。でも連載当初、ここまでムチャクチャになるとは思わなかったから、嬉しいよ私は。
「作らせたのさァッ」「タイムマシンを!!」「宇宙船じゃねーーかっ!?」「カッコいいだろう!!!」ってやりとりはすごすぎだな。結局タイムマシンなのか、宇宙船なのかどっちなんだ???
(02.0406)



・「エイケン」(3)〜(4) 松山せいじ(2002、秋田書店)

70年代後半の純愛コメディ「はつ恋アルバム」を楽しんだ後は、タイムマシンに乗って約20年後に執筆された本作を見てみよう(←ダ、ダサい表現……)。

といっても、1巻が出た頃に書いた感想に付け加えることはほとんどない。「はつ恋アルバム」とムリヤリ比較してみるなら、「はつ恋……」が今読んでもしみじみとするみずみずしさを持っているとすれば、本作「エイケン」は、「バナナは腐りかけがうまい」という印象である。
「エイケン」という作品自体、ラブコメと少年スケベマンガとの合体という要素が強い。思い返してもそのような作品は、少年マンガにおいてありそうでなかった。ここへ来てソレが出てきたのは、まあミもフタもない言い方だがギャルゲーとかの影響が大きいと思う。ホントにミもフタもないな。
いや、ギャルゲーがエッチだとかそういうんではなくて。ある種のフォーマットを提示したということ。それを少しずらすと、本作になるという気がする。

そもそも、なんで「エイケン」がいろんな意味で話題になるかというと、ある種のフォーマットが「ずれて」いるからでしょ。そこにフックがある。この「フック」に気づくことができるのは、そのフォーマットに気づいている読者だけ。
こういう「変さ」というのは、少年ラブコメにかぎっては今までほとんどなかった。そうそう解釈のブレというのはなかった気がする。少年ラブコメは「お手本」だった「少女マンガ」の誤解から成り立っていたフシもあるけど、それは男の子用にカスタマイズしたため仕方がない、という気持ちが読者側にもあったし。
「エイケン」の存在は、少年ラブコメが歴史を獲得したということかもしれないし、松山せいじという人が一種の天才ということかもしれないし、それはまだわからない。

主人公の「視点、視線」ということで言うならば、「はつ恋……」の方では少年の視点・視線ははっきりしていない。要するに女の子をスケベな目で見る、覗き見的な感覚という意味で、それが見事なまでにない(主人公の少年は、そういうモードに頭が切り替わるとそれを否定してしまう)。
「覗き見的な感覚」というのは説明がメンドウだが、「エイケン」だったら伝助がちはるの胸をじーっと見て「やっぱり大きくなってるのかな……」とか言って、実際にちはるの胸のアップが読者側に映ること。伝助視線と読者の視線がシンクロすること。
こういうのはねえ、大昔はなかったあんまり。80年代に、村生ミオとか、大和田夏希とかがきわめてイモっぽい表現でやっていたのがハシリという感じがする。

伝助は、エッチな妄想をするたびにそれを若者の潔癖さゆえに否定するんだけど、もはや伝助妄想が読者にとってはエンタテインメントになっているので、平井和正の「スパイダーマン」でガールフレンドの淫夢を見てしまった小森ユウの罪悪感とは、ぜんぜん質が異なる。
そういう意味では「エイケン」内では、あらゆるものが出そろっている。ウドの街のように、質さえ問わなきゃなんだって。

・「エイケン」(2)の感想

(02.0406)



・「はつ恋アルバム」全2巻 みやわき心太郎(1979、講談社)

はつ恋アルバム

たぶん月刊少年マガジン連載。小学生のとき、修学旅行で知り合った次郎ヒロッペは、中学に入ってから相思相愛の仲に。ふたりがまきおこす騒動を描いた純愛学園コメディー。

この人の描く女の子は、しぐさが実に色っぽい。中学生くらいの女の子だと、たぶんここまで女っぽいしぐさはしないんじゃないかと思うんだけど、そこがまたいいんです。昔のマンガに登場する女の子ってみんなそうだった。手塚も石ノ森もちばてつやもみんなそう。
それが変わるのはたぶん江口寿史からなんじゃないかと思うんだけど。「少年っぽいしぐさを入れるとより女の子がかわいく描ける」みたいなことをどこかで書いてた記憶があって。それはまた別の話。

本作はリアルタイムでは知らないのだけれど、時代的には78〜79年ということで、おそらく「少年ラブコメ」の歴史としてとらえたときには黎明期というか前進的存在といえる。
まだ少女小説とか少女マンガにしか、「男の子の読む恋愛モノ」のお手本がない時代(とか書いちゃっていいのかな? 「男の子の読む恋愛モノ」にはもっと深い歴史があるような気はするが)で、いわゆる「少年ラブコメ」、80年代に勃興する新ジャンルのスタイルが確立される前。
作者のみやわき氏が少女マンガ誌に描いていたかどうかは浅学にして知らないので、また独自の方法論ということになるがとにかく、「青春全体」と「恋愛」を強く結びつけてコメディタッチに描いた作品というのが、少年向けに、昔(この当時)はあったように思う。

要するに、マンガにおける少年ラブコメってのは、決してある枠から逸脱しないシチュエーションコメディ的な要素と、ともすれば「人生とは何か?」みたいな問題にまで触れようとする意識を持った「青春小説」的な要素との混合体みたいなものではないかと、きちんと検証せずについ書いてしまいたくなる。
その「青春小説」的な要素を強く持った少年ラブコメ作品、たとえばあすなひろしの「青い空を白い雲がかけてった」とか、織みゆきの「ふられ竜之介」とか、そういうのが個人的に好きなんだが、本作もそうした「プレ少年ラブコメ」的な位置づけができる作品だと思う。

80年代は、少年マンガにおいて、そういう気恥ずかしい部分が払拭されていったという印象がある。現代になって、ギャルゲー原作のアニメやなんかを見ていると不意にむか〜しマンガにあった「青春」的な要素がかいま見られて驚いたりもするんだが、まあ最近のことはわからないです。

学園内の公認カップルでありながら、手さえほとんど握らない清純な二人、という設定のマンガは、もう新作というカタチでは読めないと思う。「彼女のエッチな夢を見ちゃって悩む」なんてシチュエーションは、今ならもはやギャグにすらならないだろう。ああ、そういうのしみじみと良かったなあ。平井和正の「スパイダーマン」とか。

数回しか出ない番長が異様に恐い。学園コメディに登場する記号的な「番長」じゃないのね。この辺りの恐さが、この人のマンガの凄みであり、泥臭さであり、「ザ・レイプマン」につながる迫力なんだろうな。
(02.0405)



・「快尻(かいけつ)グラマンチェ」 山口かつみ(1996、少年画報社)

快尻グラマンチェ

ズボッと参上 ズボッと快尻(かいけつ) その名は快尻グラマンチェ

成年コミック……なのかな? 邪神マーラーの闇の理力(フォース)によって、世界を狂乱とSEXと暴力の支配する「真の楽園」にしようとたくらむ秘密結社マラカント。美少女・荻野四季子はこの組織にとらえられ、デビルフォースによって怪人グラマンチェとしてこの世から愛を奪うことを宿命づけられた。
が、初恋の威力によって暗黒の理力は愛の理力へと形を変え、四季子は性戯の味方・快尻(かいけつ)グラマンチェとなって、マラカントの野望を阻止する正義のスーパーヒロインとなるのであった。

敵は、マラカントがスカウトしてきたさまざまなコンプレックスを持つ男たちが変身した怪人。きつい口臭ゆえに女性にフラれ続けた口臭男、大量のフケゆえに女性にフラれ続けた怪人フケ男、多量のホクロゆえに女性にフラれ続けたホクロ男……って、書いているうちになんだか辛くなってきますが、この辺は作者自身も書いてますが「仮面ノリダー」のノリですね。

対するグラマンチェは「聖潮射撃(ヴァ・ルト・リーン)」(股間からバルトリン腺液を大量に放出する)、「殺波光炎剣」(高熱を出す剣。マラカントの戦闘員・スペルマンは、熱に弱い)などなどの技を駆使する。ヴァ・ルト・リーンってのも、作者自身が言及していますが「バスタード!」のパロディですね。
そして最後は、「愛を教えたい」とか言って、さまざまな体位で慰めてくれる。これ、すでに攻撃技じゃなくてただ気持ちいいだけじゃないかと思うんだけど、クライマックスがコレ、ってところがまさしく性闘技マンガだと思いました。

欧技

物語は、グラマンチェの宿敵・スカトロ・ド・ヴアンギーナとの対決でさらに盛り上がる。根っからのスカトロ好きなこの男のフェロモン攻撃(なんか、この攻撃にはとくにスカトロは関係ないみたいだが)により、セックス勝負で負けてしまったグラマンチェはショックで立ち直れなくなってしまう。

しかし、マラカントは「エクスタシーランド」というディズニーランド風の男の楽園を建造し大儲け。このアミューズメントパークは、「フェロモンランド」、「ピンサーロランド」、「ヴァーチャルランド」、「SMランド」、「ソープランド」の5つに分かれ、男性の欲望を吸い上げていくのであった(個人的に「ソープランド」っていうのがそのままじゃないか! って感じで大笑いしてしまった……)。

ここにいたダッチワイフ用レプリカント・かりんは脱走し、挫折したグラマンチェに「マラカントを倒すために協力する」と申し出る……というところで、途中で終わっている。
なんだよー! ここからが面白くなるところなのに。続きはないのかな。
(02.0402)



・「レイパー姫」 夢野ひろし(1993、蒼竜社)

成年コミック。というか、官能劇画という感じの作風。「女が男をレイプしたっていいよね だって許せない奴っているじゃん!!」と冒頭に書いてあったので、仕置き人テイストの逆レイプものだと思って購入。予想は、半分は当たったが半分はハズれた。

まず1話完結形式の毎回のパターンが非常に流動的で、決まっていないために実にマッタリとした印象。男を逆レイプする話だと思ったら、第1話から子分の男に憎い女をレイプさせる、アイドル歌手・工藤姫子が主人公。
じゃあ、毎回姫子がこの子分(「デカチン」というミもフタもない名前)に命じて悪い女をレイプするのかというとそうでもなく、途中から姫子自身が「仕置き」する回も出てくる。姫子は膣圧が異常に強く、本気でイこうとすると相手のペニスをちぎってしまうほどの力を持っていたのだ。

だから、セックスフレンド(セックス奴隷?)のデカチンも姫子とのSEXを非常にいやがる。硬質チタン製の、男性器を守るための「姫専用逆コンドーム」をしないとできないのだった。

気にくわない相手にレイプで仕返ししたり、ちょっと憎い男はすぐ自分のアソコでペニスをちぎりとったりと、お話は乱暴だがあっけらかんとしているというか無責任的というか……。
設定に凝ったりせず、1話1話に強いつながりがないわりには、デカチンが姫子の子分になるエピソードが脱力モノだったり、「逆コンドーム」など捨てがたいエピソードも入っている。なかなかに微妙な作品。
(02.0402)

「つれづれなるマンガ感想文2002」もくじに戻る
「つれづれなるマンガ感想文」3月後半
「つれづれなるマンガ感想文」4月後半
ここがいちばん下です
トップに戻る