13 「ちゃっかりギャグ」を考える

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一気に下まで行きたい






・13 「ちゃっかりギャグ」を考える

・10円もうけてしたり顔
最近、マンガとかアニメとか特撮を見ていてなんだか気になることがある。
それは、ギャグマンガ、とくに4コマギャグなどで「主人公がちゃっかりしていて得を得る」、「主人公がずうずうしいゆえに得を得る」というおとし方が非常に多いことだ。

……と、前回と同じような出だしで始めて見たが、最初に言っておく。
こういう「最近よく目に付く」みたいなのって、はっきり言って床屋政談ですよ。統計とったわけでもないし。よく、新聞の投書欄とかで目にする出だしだよね。
最初の「最近目に付く」が「統計的に多い」とイコールではない場合、出だし自体が間違っている可能性もあるわけだよ。

それは、各自判断してください。各自、ね。
それ以上説明しないからね。

最近、ホントに誤読にピリピリしてんだよ。それと、意地の悪いハナシの持っていきかたっていうの? もうあんたの意地悪に付き合ってるヒマないから。

・本題
まあ、「ちゃっかりしてる」とか「ずうずうしい」っていうのは、「サザエさん」の頃からあるわけですよ。マンガに限って言えば。
カツオくんとかちゃっかりしてるでしょ。あと、サザエさんも、デパートに行って「2割引の券を5枚持っているから、商品をタダにしろ」とか言うわけですよ。

あとさあ、「○○くん」みたいな典型的なやつでも、あるよね。「コーヒーお代わり自由」の喫茶店にポット持っていって何杯も詰めちゃうみたいな。面白くねェー!! でもそういうのがあることは確か。

で、もともとこういうのって、立場が弱い人間がやってたから「お話」になり得たわけでしょ。
「一休さん」とかもそう。よく、ギャグとかパロディで、一休さんがとんちで将軍さまの鼻をあかそうとしたら、ぜったいとんちで切り抜けられそうにない難題を与えられて苦しむとか、バッサリ斬られちゃうっていうのがあるけど、あれは他のおとぎばなしのパロディと違って裏の裏をかいて表に帰っちゃってると思うんだよ。
「一休さん」っていうのは、権力も腕力も持たない子供だからこそ、とんちを使っていた。それが「ヘリクツをこね回して大人をからかうガキ」というふうにまでイメージが摩滅してしまってこそのブラックギャグというか。

それとおんなじで、最近の「実はちゃっかりしてました」ギャグとか「実はずうずうしいんです」ギャグって、別にちゃっかりしたりずうずうしくなくてもいい人が、ただパターンでやってる気がする。繰り返すけど「気がする」だけだから、幻かもしれないけど。

なんか、カツオくんとかと違って「ずうずうしいことが正義」みたいに思っているマンガ、多いじゃん。その根拠はいったいどこに!? 爽快感が少しもないんだよな。
「あー、どうせこれ『ちゃっかりギャグ』なんだろうなー」と思って4コママンガを読んで、思ったとおりだと心底イヤな気分になる。

こういうふうに書くと、「しいたげられた庶民が笑いで権力を批判しなければならない」みたいな話になりそうでイヤなんだよ。そういうのとはちょっと違うと思うから、そういう結論にしたくない。

まあ、「いじわるばあさん」みたいに、いじわるな人間のヘンクツ具合を楽しむというのも「笑い」の中にはあると思うけど、そこまで行ってない。
ケチ話とかだと、けっこう上の立場の人が「いかにケチか」というエピソードが笑い話とも困った話ともつかないかたちで語られることもあるけど、「ちゃっかりギャグ」にはそこまでの含みがないんだよ。
ただ日常のイライラを、10円もうけたとか20円もうけたとかってマンガに描いているだけでしょ。

・海外行くな!!!!!
昔、勤めていた会社で、前からいた社員で私が心の中で通称「メガネブス伝説・投稿編」と呼んでいるやつがいて、社員が少ない会社だから必ずそいつとメシ食わなきゃならないわけ。そいつと、もう一人の女と、上司と。
で、いちばんペラペラしゃべるのがその「メガネブス伝説・発動編」だったんで、そいつの話を昼休みにえんえんと聞かされることになるんだけど、海外旅行が好きだっていうのね。
で、「海外旅行でこんな体験をしてこんなに感動した」っていう話が聞ければいいんだけど、もうそいつが、

「どこそこへ行くのにいくら得をした、いくら安くなった」

……っていう話しかしないわけ。
知らないよそんなのー。じゃあ、旅行行かなきゃいちばん得じゃないですか。カネがかからないから。しかも、個別的で偶発的な話が多くて、自分が海外に行くときの参考にもならないし。
なんかもう許せなかった。でも、自分は愛想笑いでエヘエヘ言って聞いていた。弱いから。弱い人間だから……。

あと、よくエロ本とかに載っている4コママンガで「かわいい女の子が実は『チンコ』とか平気で言う」、「かわいい女の子が実はセックスに非常にどん欲だった」というオチのものもあるが、あれも禁止してほしい。もちろん、そういうオチで面白い作品もあるが、たいていはメラメラ腹が立ってくるくらいどうしようもない。その先がないの。で? それで? とか思うんだけど。
なんかあれでしょ? 編集者が合コンのツテとかが欲しくて連載させてんじゃないの?

上野千鶴子が、「大学時代何をやってきましたか」と聞かれたときに、必ず「麻雀とセックス」って言うことにしてる、って何かに書いてあったけど、それってやっぱり、相手のポカンとした顔が見たいからでしょ。で、マンガの「かわいい女の子が実はセックスに非常にどん欲だった」ってオチも、今のところそれに近い気がする。
それ自体が、いまだに飛び道具だと思っているから出てくるオチのような気がする。それにOKしてる編集者も含めて。
上野千鶴子っていくつ? 少なくとも40歳以上でしょ? 若いギャグマンガ家が、なんでそんなさあ、ずっと年上の人の定番ギャグみたいのとおんなじことを、2003年にもなっていまだにやってんのよ。

「ちゃっかり」、「ずうずうしい」、「実はエロオチ」というのを「三大どうでもいいオチ」と自分は名付けております。でも、自分にはどうしようもない。弱いから。弱い人間だから……。

で、実はもしかしたらこういうのが存在しているのって、「サザエさん」の時代には抑圧されてきた何かのすごいルサンチマンが噴出しているからかな、と思うときもあるんだけど、わかんない。
(03.0717)



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