毛野楊太郎その1〜

一気に下まで行きたい


・「プレイヤーS」 1995年10月20日発行(富士見出版)
・「磨衣スレイヴ」 1996年6月1日発行(富士見出版)
・「アウェイクン」 1998年4月20日発行(富士見出版)
・「亜弓ちゃんといろいろ」 1998年12月20日発行(富士見出版)
・「トイレはきれいに」 1999年2月21日発行(コスミックインターナショナル)



プレイヤーS

・「プレイヤーS」 1995年10月20日発行(富士見出版)  [amazon]、蒼竜社版[amazon]

判型:A5
シリーズ:富士見コミックス
価格:800円(本体777円)
ISBNコード:ISBN4-89421-131-9 C9979
(収録作品)
・プレイヤーS・前編
・プレイヤーS・中編
・プレイヤーS・後編
(以上、「キャンディータイム海賊版」、1994年8月〜10月号)
・毛野楊太郎作品(「キャンディータイム海賊版」、1994年11月号)
・病膏肓(「キャンディータイム海賊版」、1995年2月号)
・がっかりしないで▼(▼はハートマークの代用)(「キャンディータイム海賊版」、1995年5月号)
・黄金郷伝説(「ドライアップ」Vol.1、1994年11月号)

平凡な大学生・木戸聡(きど・さとし)は、バイトしている深夜のコンビニで、これみよがしにSM露出プレイにいそしむ男女を目の当たりにする。女の子の方はすごい美少女だった。
最初は「ヘンタイなんだ」と思っていた聡だが、女の子が助けを求めてきたため男をやっつけ、アパートの自分の部屋でかくまってやることになる。女の子の名前は絵夢。いっさいの素性がわからない美少女だった。
聡と絵夢は当然のように深い仲になるが、彼女にはある秘密が隠されていた……。

以上が「プレイヤーS」の出だしの部分。実は、「SFおしかけ女房」のコーナーに作品が出そろい、ひとまず終わらせるときに最後に持ってこようと思っていたのが本作だった。
「女の子が男の部屋に転がり込んでくる」Hマンガは少なくないのだが、本作をラストに持ってこようとしたのにはそれなりの理由がある。
ひとつは、作中で聡が「ひょんなことから俺の部屋に転がり込んで来た 絵夢」「……と言っても猫でもなければ宇宙人でも女神でもない」「天使でも悪魔でもないしゲームのキャラでもない フツーの人間の女の子だ」と言っていること。要するに、本作自体が「宇宙人や女神が転がり込んでくる」作品、すなわち「SFおしかけ」を多少なりとも意識した作品だと思われること。
もうひとつは、本作のストーリーそのものが、聡と転がり込んできた絵夢との関係をテーマとしていること。そしてそれが、聡の絵夢に対する支配欲と結びついていること。
「SFおしかけ女房もの」では、表だって描かれないことをまっちょうじきに描いてしまった作品、「それを言っちゃあおしまいヨ」的な作品であると考えたことが、「ラストSFおしかけ女房」として選出しようと思っていた理由だった。

その後、「SFおしかけ的作品」の数がマンガだけにかぎってもあまりに膨大なこと、そうしたジャンルそのものが、必ずしも支配・被支配とか独占欲とかいったものを裏テーマとしているわけではないと思い始めたことなどから、ここにフラットな感じでレビューしようと思った次第。
この作品集は、「プレイヤーS」のセルフパロディである「毛野楊太郎作品」、「男は女の何に欲情するか」というその後の毛野作品のテーマのひとつを描いた「がっかりしないで▼」なども収録されていて、後の作品展開の萌芽が読みとれる作品集となっている。なお、昨年蒼竜社から新装版(B6判)が刊行されている。
(01.0905、滑川)



磨衣スレイヴ

・「磨衣スレイヴ」 1996年6月1日発行(富士見出版)[amazon]
判型:A5
シリーズ:富士見コミックス
価格:800円(本体777円)
ISBNコード:ISBN4-89421-159-9 C9979
(収録作品)
「磨衣スレイヴ」調教1〜8

嘉納磨衣は、両親が留守の番、弟の貴志に犯されてしまう。その際撮った写真とテープで脅され、貴志の牝奴隷になることを強要される磨衣。しかし、彼女にはさらに過酷な運命が待ち受けているのであった……。

当初、実姉である磨衣を貴志が小さい頃から異性として愛していたのかも、といった描写が出てくるので近親相姦調教モノかと思ったらどんどん話がそれ、「磨衣」のご主人様も増えていって調教もエスカレート。作者は「ハッピーエンドとバッドエンドの両方を描くつもりだった」が、ページ数が足りないまま最終回を迎える。
通して読むと、磨衣がひたすらにギャクタイされるオーソドックスな調教モノだが(正直、通して読んでかなりダークな気分になった……)、マルチエンディングというか、お話をメタな方向へ持っていこうとする意図は前作の「プレイヤーS」と近いものを感じる。ラストも、これはこれでいいんじゃないでしょうか。
なお、昨年蒼竜社から新装版(B6判)が刊行。
(01.0906、滑川)



アウェイクン

・「アウェイクン」 1998年4月20日発行(富士見出版) [amazon]
判型:A5
シリーズ:富士見コミックス
価格:840円(本体800円)
ISBNコード:ISBN4-89421-267-6 C9979
(収録作品)
「アウェイクン」1〜9

気弱そうな高校生だった根賀吉久のもとに、ある日白鷺亜弓という美少女がやってくる。彼女の言うには、吉久は「古(いにしえ)のもの」からこの世を守る勇者だという。吉久と亜弓は「刻印の儀式」を行い、「封印守護の末裔」である亜弓は、吉久に忠誠を誓う従者となった。どんな命令にも従うと言う亜弓。
で、どうするかというと……吉久はエンエンと亜弓を犯しまくるのである。

妖魔退治ものの設定で、やることは調教モノというのが本編の趣旨。亜弓の額に「従」という文字が浮かび上がるのがビジュアル的にスゴイと思ったが。主人公である吉久は世界を守ることにまったく興味を示さず、ひたすらに亜弓を調教し続ける。もし似たようなシチュエーションがあったとしても、フツーここまでしないだろうという鬼畜ぶり。ある意味通常の鬼畜モノよりヒドいと言える。「SFおしかけ」カテゴリの男主人公としては、キング・オブ・鬼畜である。
といっても、ファンタジー的設定そのものを単なる方便に終わらせず、いちおう「古のもの」との戦いも用意されている。お目付役的存在のもう一人の従者・紅亜矢も登場し、妖魔退治にお話を転がしていけそうなお膳立てを整えながら、どこまでも自分のことしか考えていない「勇者」の欲望に従ってお話は進む。
(01.0906、滑川)



亜弓ちゃんといろいろ

・「亜弓ちゃんといろいろ」 1998年12月20日発行(富士見出版) [amazon]
判型:A5
シリーズ:富士見コミックス
価格:840円(本体800円)
ISBNコード:ISBN4-89421-302-8 C9979
(収録作品)
・亜弓ちゃん物語
・帰らない夏1〜4
・しおしお
・お仕事だしィがんばりま〜す
・やっぱエレガでしょお

「亜弓ちゃん物語」から「帰らない夏」までが「アウェイクン」外伝。「古のもの」からこの世を守る勇者・吉久に仕える運命を負った亜弓ちゃんは、吉久があまりに自分のことしか考えないばかりに使命そっちのけで牝奴隷プレイに明け暮れる毎日を過ごしている。「帰らない夏」では、故郷にいた頃に亜弓と友達だった少年・林悠介が、亜弓と吉久の公園での羞恥プレイを目撃してしまう。亜弓を激しく責める吉久に、悠介は憎悪を感じだして……という話。
亜弓と吉久の関係を目撃して、内省的な少年が暴走、また亜弓も幼い頃の気持ちを思い出す……という「切ない系」の話。しかし悠介の思い込みが単なるカン違いではなく、「吉久ってホントの鬼畜かも」と思わせるところが本作の一筋縄ではいかないところ。

「しおしお」は、「男が何に興奮するか」テーマのギャグHマンガ。傑作。「やっぱエレガでしょお」は、ギミックなしのまっちょうじきなレイプもの。
(01.0906、滑川)



トイレはきれいに

・「トイレはきれいに」 1999年2月21日発行(コスミックインターナショナル) [amazon]、愛蔵版→[amazon]
判型:A5
シリーズ:キュン コミックス
価格:857円(税別)
ISBNコード:ISBN4-7747-0107-6 C9979
(収録作品)
・トイレはきれいに
・新トイレはきれいに

御手洗亜沙美は、「立ちションするとトイレが汚れるから、便座に座ってしろ」と義兄の良介に文句を言うが、日頃からあまりにうるさいので良介の恨みを買い、犯されたあげくマゾ奴隷、良介専用の「便器」として調教されてしまう。しかし実は自分が兄を愛していたことに気づいて……というのが「トイレはきれいに」
良介が亜沙美の気持ちに気づいたとき、調教された彼女はすでに何か別のものへと変貌を遂げていた。そして亜沙美はちょっとした事故に遭い行方不明に……というのが「新トイレはきれいに」

本来、「トイレ……」で終わるはずだったのが、掲載誌のリニューアルで新たに続編を描くことになったのが「新トイレ……」らしい。確かに、最初の話の方が義理の兄妹の心の(そして身体の)スレ違いという意味できれいにまとまっている。ちなみに、本作は後の課外授業シリーズと同一の世界らしい。

ところで、本作のあとがきには雑談ぽく「男は洋式便器では座りションすべき(トイレが汚れるから)」ということが書いてある。昔はフツーの家でも公衆便所にあるようなあさがおの便器が、和式とは別に付いてる家も少なくなかった。後に狭い「ウサギ小屋」対策やトイレ掃除の簡便化のために次第に「あさがお」は姿を消し、現在ほとんどの家が洋式便器になっている。
ところが、なぜか洋式って確かに立ちションしにくい(外人はどうやってんだ?)。つまり、細かい理由はわからんが便所も男女同一化の方向に進んでいるのだ。このことを考えると「男女の性的違い」に敏感なキチク系のマンガが「洋式での男の用の足し方」から始まっているのは、なかなかに意味深だと思う。

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