◆ 1999年9月中旬 ◆

9/11〜20
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9/20(月)……めでてえメディテーション

 暑かったり暑くなかったりするなか一生懸命働いている方々には申しわけないが、今さらながら夏休みを取っている。8月は忙しくてろくに休めなかったので、今月休むことにしたというわけだ。20〜22日に有給休暇をとって土日祝日とつなげて6連休にした。とはいえ、さすがにヘンな時期なので一緒に遊ぶ人もおらず、一人寂しき夏休み。旅行でもすりゃいいんだけどね。とりあえずあくせく働いている人たちへの罪滅ぼしとして、つまらない夏休みにすることで手を打つというのはどうか。

 そんなわけで本日は仕事の打ち合わせに出る。といっても副業のほう。コミック・ファン(雑草社)から原稿書いてみないかというお誘いがあったので、その件で編集の方とお話しする。昨年末に出た、1998年ベスト漫画を選ぶ特集の号でも投票の依頼があったのだが、それ以降ときどきホームページを覗いてくださっていたらしい。こんなところまで目を配っていただいていて、さらにお仕事までいただけるなんてありがたい限り。ネットで書いている人をこういう感じで一本釣りしてコミック・ファンで登用するというのは、どうも初めてのケースらしい(ベスト100の投票以外では)。悪い前例にならないよう頑張らねば。
 実際の原稿に関しては、エロ漫画系のお話1本と、普通の書評をちょぼちょぼとという感じになる模様。なんか雰囲気的には、継続して書かせてもらえそう。コミック・ファンは今度出る号から季刊になり新装刊されるらしい。それが12月上旬発売予定とのこと。まあ本当は未発売の本についての情報を書くのもどうかと思ったのだが、編集部の方が「コミック・ファン新装刊号は、ネットなどいろいろな方向から告知していきたい」ということだったので。雑草社の編集部環境については、正直よく分からなかった。入口すぐそばの応接スペースで話すのに終始してしまったので。もうちょっと周りを見回してみれば良かったかな。

【雑誌】ウルトラジャンプ No.34 集英社 B5平
 藤原カムイ「福神町綺譚」。今回は福神町の結婚式の模様なのだが、これは実際に福神町で住民登録した実在の人物たちなんだとか。山葵さんと紅緒さんについてはたぶん個人的によく知っている人たちなんで、たいへんに感慨深きしだい。最近福神町関連のオフとかにはごぶさたしてるんで、ちいとも知らなかったです。ともあれこのたびはおめでとうございます。寿!!
 大暮維人「天上天下」。今回は無事復活。やはりこの人は女体描くのうまいなあ。松本嵩春「アガルタ」は、RAELの力の底なしぶりがかなり見えてきて激しい展開になってきた。物語的にも盛り上がってきている感じ。イラ姫は今回2本立て。1本めの「最終シスター四方木田番外編」である「B7からの脱出」がコミカルかつファンタジックでいい出来。絵柄が適度にスカスカしているところが気持ち良い。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 10/4 No.42 小学館 B5中
 榎本ナリコ「センチメントの季節」再開。巻頭カラー。1999年8月の人類滅亡をおぼろげに信じており、それからのヴィジョンをまったく持っていなかった少女が、行く当てのない先行き不透明感にとまどい、捨て鉢なSEXをする。いつもながらに分かりやすく、よくできている。能條純一「月下の棋士」。刈田升三は語る。「対局者以外私語を禁ず!! ”禁”を破った者は即退場、直ちに敗退とみなす」。即退場はいいとして、対局者以外も敗退するもんなんだろうか、将棋って。柳沢きみお「SHOP自分」。出たっ!世界の名車シリーズ。待ってましたッ! 現代洋子「おごってジャンケン隊」は2000年春まで一時中断。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 10/4 No.43 集英社 B5平
 新連載、岸本斉史「NARUTO」が巻頭カラーでスタート。少年忍者が主人公のアクションもの。少年向け系の藤原カムイ作品っぽい絵柄。表情などは沙村広明の影響くささも。もちろんその両人ほどにうまくはないけれども。第1回めとしては、ためてためて見開きでドカーンって感じの見どころもあったし、まあいいんじゃないだろうか。この作品が面白くなるかどうかはともかく、こうやって新鋭をどんどん第一線で登用するのはジャンプのいいところだ。
 作:ほったゆみ+画:小畑健「ヒカルの碁」。碁盤を買ってもらったヒカルはおうちで佐為と対戦。もちろん石を動かすのはヒカル。今回はやけに佐為がコミカルで表情も崩れてて楽しい。佐為ってカワイーよねーっていわれそーな感じー。あと和月伸宏「るろうに剣心」が最終回。わりとひっそり。

【雑誌】ヤングマガジン 10/4 No.42 講談社 B5中
 小田原ドラゴン「おやすみなさい。」。鉄郎は急激にエログッズ知識をゲット。追求すると面白そうな世界。安野モヨコ「花とみつばち」。月イチ掲載。今号もコンスタント。華倫変「デッド・トリック!」はまたも死体。徳子さんの不穏な発言がよろしい感じ。それから別冊ヤングマガジンで連載中の蓮古田二郎「しあわせ団地」が本誌に再登場。パートをやっている年下の妻の稼ぎを頼りに、無職&全裸で暮らすダメ人間である夫。彼のともだち募集の貼紙に応じてきたむさくるしい変態中年男とのすったもんだ。ダメ人間がダメ人間としてダメな暮らしをするやる気なきさまがいい。最近お気に入りの一作。

【雑誌】まんがくらぶオリジナル 10月号 竹書房 B5中
 ゲストにて小本田絵舞が登場。タイトルは「マルマルの達人」。ちっちゃいアパートを建てて経営を始めた未亡人の大家さんが主人公。エースネクストの奴もそうだけど、こういうの描かせても小本田絵舞はうまいなあ。適度にエッチ系の風味(この作品ではそういうシーンはないけど)を漂わせつつ、楽しくさばく。絵柄もしっかり4コマ風であるし。かたぎりわかな「みちばたトライアングル」。この雑誌で電波系はやっぱ浮いてるなあ。とりあえずかたぎりわかながコンスタントに読めるというのはうれしいこと。もっとバリバリとばしてくれるとありがたいが。本山理咲「ケ セラ セラピー」は今回で最終回。


9/19(日)……印度亜競技会

 新しいパソコンラックを導入してからテレビの画像が汚くなりまくり。テレビのケーブルがかなり長いうえに、PCの後ろ側を通る配置になっていたため、ノイズをビシバシ受けていた模様。そんなわけで一念発起して部屋の模様替えに着手。危惧していたほどに時間はかからず一安心。これを気にいろいろと配置についても見直したのでだいぶスッキリ。できればも少し環境的にはカッチョよくしたいところではあるが、それは今後の課題としておこう。

 本日読んだ同人誌は、コミケで吉本松明さん、志賀彰さんにお願いして買っておいていただいたモノ。ご両人様、得難きものをどうもありがとうございました。

【単行本】「二十一世紀科學小僧」 唐澤なをき 文藝春秋 B6
 唐沢なをきページのほうをサンショー!

【同人誌】「印度で乱数」第2/4集 駕籠真太郎
 商業誌でも十分にスゴイ駕籠真太郎だが、同人誌はさらに輪をかけてスゴイ。クールでニヒルで悪趣味な描写にリミッターがまったくかかっていない。人体が当たり前のように破壊される。実に楽しそうに、ブラックユーモアをもって。キチガイはキチガイらしく、恐ろしいほどにユーモラスに描かれる。右系のネタのパロディも毒々しくて素晴らしくはあるが、人体というものをおもちゃにして遊び回るさまがやはり肝。筋金入りのアナーキーさに、脳髄をひっつかまれてぐるぐる引きずりまわされる思い。さすがにこの内容とテンションは、商業誌では受け容れられまいなあ。天晴れ。

【同人誌】「ろったーず倶楽部」Vol.2 <ろったーず倶楽部>
【同人誌】タイトルなし <HARVEST HOME>
 タイトルなしとなっているのは、そういうタイトルなのではなくて本自体にタイトルが付いていないということなのだそうだ。両方ともカシミイル(戸隠イズミ)の作品が読みたくて。「ろったーず倶楽部」のほうは音楽系の本なので、音楽には本格的に不如意な俺にはよく分からない部分が多し。カシミイルの作品はおおむね音楽には関係ない、だらだらしゃべり系。タイトルがない本のほうに掲載の作品は、とある女学生が久しぶりに会った友人に導かれて、川の流れる谷間にずんずん降りていくという話。死後の世界を思わせる風景のなか歩いていく過程は、ゆるやかに異世界に引き込まれていくようで薄気味悪さが漂う。こういう自然でかつ幻覚っぽい作風が気持ち良い。

【同人誌】「ELENA&BLAIR in ANAL CRACKS MASTER」 砂 <砂細工>
 表題作でもある「エレナとブレアのアナルクラックスマスター(予告編)」は、エレナという女性がケツ穴調教されてオウオウいう様を描いた作品。例のアクの強いセリフの連発はやはり圧巻。巻末の1枚イラスト+セリフの洪水のページはさらに良い。セリフの部分が活字になっておらず、鉛筆書きで隙間なく埋め尽くされた画面の迫力。「あ、あんたのチンポも金メダルよッ 金メダルセックスで金メダル精注キメてッ!  ウッ ケツを握っての最高の射ち込みだわッ 来るッ チンポ太いッ 金メダルアクメッ」とかいわれた日にゃあアンタ、俺にそれ以上何をいえと。

【同人誌】「精液便所2 −肉奴隷共同飼育計画−」 しろみかずひさ <MILK TANK>
 しろみかずひさ個人誌。ザー汁狂いの麻理果ちゃん。溜めた兄とその友達のザー汁が大好き。コップやらビンに並々と入ったザー汁を浴びせかけられるシーンの濃厚さ、迫力ときたら。肉奴隷ちゃんは淫らで変態で健気である。仕上げがされていないページがいくらかあるのは残念だけど、濃厚な風味はキッチリ味わえる。この人の描線へのこだわりは、たいへんにかっこよいなあと思う。あとこの人の同人誌は文字部分も好きだったりする。今回の巻末は、女性のダイエットへの憎悪およびグラマーへの讃歌。書き出しや〆が鮮やかで、実に読ませる。


9/18(土)……豚骨漫画

 自宅で七輪(ジタシチ)。すみびやき。今日は鶏モモ。への字型をした骨付きのデカい奴に挑戦。味付けは塩オンリー。モノがデカくて焼くのに時間がかかるので、けっきょくへの字になっているのを2分割して焼きを入れる。けっこう時間はかかったが、かけただけのことはあった。鶏のカワの部分がパリッと仕上がり、それを食いやぶるとあっつあつの肉エキスがぶじゅうと口の中に充満する。炊き立てのご飯と一緒にいただき、ZMK(三昧境)であった。ついでに1パック500円で売っていた、小指ほどの大きさのマツタケも焼いてみる。なかなか味が濃くておいしうござった。さて、季節は秋。次のターゲットはいよいよ炭火の本領。秋刀魚に挑戦予定。もうサンマ三吉って感じ!!

 あ、それと別冊DOS/V magazine CUSTOM第2号は本日発売。今回はAthlon、デュアルCPUの特集。CPUグリスの特別企画やApollo Pro133マザーの比較記事など、前号よりも若干自作マニア寄りの内容に。ミリタリーマニア系お気楽自作漫画、作:高橋敏也+画:城久人「PCコマンド ボブ&キース」、山田X(ZERRY藤尾)「自作王」、それから連載挿絵系4コマで新谷明弘も健在。サイトウマサトク氏、宗像明将氏、LZD氏、本田健氏も。
 本当は仕事のことなんか書きたくないんだけど、まあ書いたことによって1冊でも余計に売れてくれる可能性があるならとかそういうわけで。B5中とじ。赤い表紙とAthlonと、ドライバー握った黄色い手のイラストが目印。

【雑誌】コットンコミック 10月号 東京三世社 B5中
 駕籠真太郎「駅前縫合」。イヤな世の中に生まれることを拒否する胎児を子宮に入ったままにするべく、妊婦の陰部を縫合するのを生業とする男が主人公。不条理な世界観は相変わらずで、グロテスクでクールな表現は健在。ただ、今回はいまいち暴走ぶりが足らぬ気配。なお、扉のところに「単行本2冊目が立て続けに出るぞっ」と書いてあるのだが、つまりは東京三世社から2冊単行本が続々登場ってわけなのか? だとしたらヴェリーヴェリー楽しみ。

【単行本】「血まみれ天使」 早見純 久保書店 B6
「情念炸裂傑作集」と銘打たれた単行本。再録ではあるが、今まで読んでなかった作品ばかりだったのでたいへんにうれしい一冊。今となっては古い劇画絵ではあるが、その心根の極北さl加減はハンパでない。現在でも一線級のクレイジーっぷりといえよう。とくにうだつの上がらぬおっさんくさい醜男・早見くんシリーズなど実に素晴らしい。少女宅に忍び込んで盗んできた服(途中部屋の主に見つかり彼女を組み敷くが、下着だけ奪い女の子には目もくれず退散)で女装し、男役と女役を一人二役し鏡を見ながらオナニー。女性が歯の隙間掃除に使った爪楊枝を採取し、それをなめつつ、最後は尿道に挿入。男から交換日記を手渡された帰り道、夕焼けを見ながら早見くんは呟く。「生きるってことはなんてすばらしいんだ」。素晴らしい! それからアシスタント志望を名乗るキチガイから送られてきた手紙の内容をそのまま載っけるという形式の「愛をもって毒を制す」などなど。男キャラが皆醜悪で、汗ばんでいて口が臭そうなあたりがたいへんに頼もしい。濃厚でヒリヒリ焼きつくような劇薬漫画。いやあ、痛快、爽快であります。

【単行本】「好きさ好きさ好きさ」 小野塚カホリ 宝島社 A5
 CUTiE comic掲載作品、「好きさ好きさ好きさ」「夏になれば彼らは」「塀の上で」「マークシェイキとポテト ザ フライ」を収録した短編集。小野塚カホリはいつ見てもおんなじだ。そう見える。でも、大事なことはいつ見てもおんなじであってもちゃんと面白いということ。そして、内容自体もやはりそれなりに違っている。「マークシェイキとポテト ザ フライ」は、浮き世離れしたお嬢のまま齢を重ねてしまった女性の日々を描き、自暴自棄な恋愛系の作品とはまた違ったゆるやかなリズムを持っている。そのほかの作品も、いずれもひとヒネリが利いていて、絵柄ほどではないにせよそれなりにエッジは立っている。これだけの作品を、けっこうなペースでコンスタントに送り出してくるセンスとパワーはやはり大したものだ。

【単行本】「くみちゃんのおつかい」 軽部華子 朝日ソノラマ A5
 ネムキ掲載作品+未発表作一点。なんだか不吉だけど、周りのことには無関心でぼーっとした不思議な女の子くみちゃんが、ときには魔法使いのおばあさんの使いとして森をうろつき、またあるときは曲馬団に拉致されたりとあっちふらふらこっちふらふら。周りのキャラクターは概ね耽美な感じで、ナチ系の軍服やら何やらを着用していたりするあたりは千之ナイフと近い味わい。一時期の千之ナイフのように裸とかは出てこないが。飄々と展開するお話は不思議な雰囲気に満ちているけれども妙に和む。絵柄は一見デンジャラスだが内容は気楽。そのギャップと気負わぬ作風が気持ち良い。

【単行本】「ピンクなショーツ」 うらまっく 蒼竜社 B6
 5冊めの単行本、なのだそうだ。短編集である。ドタバタあり、ラブコメあり、シリアスな作品あり。それぞれにキッチリと仕上げて、口当たりのいい絵柄で後味良く読ませるあたりは職人という感じがする。凝りすぎず浅すぎず。実にスルスルと読めて、どれも楽しめる。絵柄自体が親しみやすいので、そこから多少ゆらぎを入れればいくつもの物語パターンに対応できる。後書きによれば、最近エロ系と「増田剛」名義のメジャー系との間で揺れているらしいが、どちらにもそれなりに対応できてしまう器用さゆえの悩みなのかもしれない。次はそろそろ、一発代表作となるような長編にチャレンジしてみるというのもいいのでは。器用貧乏というわけではなくきっちりいい作品を作っているのだが、もう一つ決め手となる武器を作ればさらに向上できそうな人ではある。それは絵でもいいし、ストーリーでもいいし、ほかの面でもいいのだが。


9/17(金)……匹夫の尻

【雑誌】別冊ヤングマガジン 10/1 No.002 講談社 B5中
 今号はなんといっても前川かずお「闘破蛇烈伝DEI48」。爆笑。最初のアオリからして「尻の脅威が、破武男を襲う!!」である。筋肉ムキムキでふんどし一丁、頭にとぐろを巻いた蛇をくっつけたムサい男どもが破武男に迫る。今回はとくにダイナミックで馬鹿げた展開が続出。すごいゾ! 尻男たち! 巻頭カラーではサガノヘルマーが新連載。タイトルは「レゾレゾ」。平成より34代後の世界。女により支配される世界で、男は女に快楽を与える蟲を身体に貼り付け、そいつらに栄養を与えるだけの奴隷と化していた。その奴隷の一人、川村にくっついていた蟲が突然変異的な奴で……といったところから始まる物語。今回の連載は、「SATELLITEぢゅにゃ」よりも変態風味が濃い感じで、よりサガノヘルマーの味が発揮されそう。期待。
 蓮古田二郎「しあわせ団地」。全裸&スキンヘッド&無職な夫21歳と、胸がぺったんこな妻19歳の、どうでもよくうだつのあがらない日常を描く作品。彼らのレベルの低いやりとりが爽やかでなくて楽しい一作。わりと新しめの人だが、けっこう気に入っている。坂井恵理が久々に登場。タイトルは「演歌な女」。出始めのころよりも、だいぶ絵がつるんと滑らかになって売れ筋っぽくなった。お話は平凡な健康ランドの職員が、そこで営業していた売れない演歌歌手の女の子と知り合う。彼と彼女はそのうち一緒に暮らすようになるが、彼女は彼と一緒にいたいがために歌の道を諦めようとする。そのうち恋慕がすぎて彼女は彼からいっときでも離れるのをいやがるようになっていくが……。実のところ、昔の楚々とした味わいのある絵柄のほうが好みだったけれども、とりあえずお話自体はきっちり読ませるしうまい。見せ方はしっかりしている。何はともあれガンガン作品を描いていってほしいところ。

【雑誌】週刊少年チャンピオン 9/30 No.43 秋田書店 B5平
 板垣恵介。刃牙はタイトルリニューアル。今度からは「バキ」である。なんかまたすごく強いのが出てきて、なんともかんともな感じではあるが。巻末作者コメントで「『刃牙』と『バキ』。スタートの号が同じ43号。それを知り、背筋が凍った」とのこと。なぜ凍る? 水島新司「ドカベンプロ野球編」。9回の表、山田が塁に出たら代走で出場しろと告げられたロッテ・小坂。張り切ってファウルゾーンで代走の練習。しかも出番なし。すごい扱いだ……。

【雑誌】メロディ 10月号 白泉社 B5平
 麻生みこと「GO!ヒロミGO!」。超難関のT大に入ったが、どうも周りから浮いている、美人で頭の回転は早いが口の悪いおねーちゃんが主人公。喧嘩腰で女のコが好きの彼女が巻き起こす騒動を、カラッと描く。きれいな絵柄とせわしないテンポが楽しく、サッパリした読み心地。雁須磨子「どいつもこいつも」。昇進試験シーズンの人間模様。とはいってもギスギスはしておらず、あくまでのほほんとしているあたりが雁須磨子らしい。女の子のキャラクターもいいけど、男のキャラクターも妙にストイックで良い。

【雑誌】ZetuMan 10月号 笠倉出版社 B5中
 ZERRY藤尾が穴埋め用4ページ。やる気なさげな日記漫画「だだもれ草」。まあだらだらーっと描かれているので、だらだらーっと読むべし。コミケ受かるといいですね(ヘタに受かると原稿遅れそうな気が……いやいやソンナコトハ)。榊原薫奈緒子「Slow Music」。今回は珍しくシリアスでセンチメンタルないいお話を描いていると思いきや……。うーん、やるなあ。ラスト1ページなしでもちゃんと美しくまとまっているお話をこうするとは。やーらーれーたー。


9/16(木)……ビヤボーン現象

 台湾系のチップセットベンダーで最近ブイブイ、いやむしろヴィァヴィァいわしている会社のセミナーに出席。朝9時から午後4時までというロングタイムなスケジュールのわりに内容が薄くて参ったなあといった感じ。メモリメーカーとかビデオチップメーカーとかいろいろ出てきたのだが、どれもこれもすでに発表済みの内容だったりして、たいへんにつまらなかった。どうせ眠れないからと一睡もせず、しかも久々に満員電車に乗ったため疲労していた俺は、途中でエンヤコラと船をこぎまくり、こーげこーげこーげよー、ボートこーげよー的状態に。でもセミナーが終わった後、いくつかのマザーボードなどのベンダーの担当者さんと名刺交換したりできたのは収穫。その後、台湾のあまり名は知られてないメーカーの人と一緒に飲みに行く。「台湾って最近ドーヨ?」「アーハー」、「ハウアバウトニッポン?」「アーハー」などといった小粋な会話が交わされ、俺の英語力(イングリッシュパワー)もまんざらではない(ナットマンザーラ)のではと錯覚に陥ったりした。

 ああ、そうそう。ちょっと前に書いたMS-6199のビープ音は鳴らないようになった。やっぱり練れたBXマザーはなんか安心感があっていいねえ。

【雑誌】モーニング 9/30 No.42 講談社 B5中
 井上雄彦「バガボンド」。武蔵と宝蔵院院舜の対決は続く。すでに何をかいわんやというレベルの、堂々とした表現。揺るぎなく、そしてスピード感、迫力を兼ね備える。かっちょいい〜。三宅乱丈「ぶっせん」。この連載なかなかイケる。暑苦しくて、かつ脱力系の僧侶ギャグ。濃厚な絵柄と腰砕けな下らなさのギャップが魅力。高橋のぼる「リーマンギャンブラー マウス」が再登場。脂っこい表現と、一本ブチ切れたキャラクターで得も言われぬ迫力がある。本筋にはあんまり関係ないような女体盛りのシーンなんかたいへんに馬鹿馬鹿しくて良い。ラストの、どうでも良い力強さもマル。
 次号では吉田基已「水と銀」が掲載。

【雑誌】ヤングジャンプ 9/30 No.42 集英社 B5中
 山口譲司「BOING」と奥浩哉「ZERO-ONE」くらいかなー。「BOING」は、ボインやらお尻やらにこだわるフェチどもが集まり、フェチ日本一決定戦を行うことに……。なんだかどうにもダイナミックに馬鹿な展開になってきた。

【雑誌】ヤングサンデー 9/30 No.42 小学館 B5中
 山本英夫「殺し屋イチ」。今号も暴力双子はやりたい放題。どちらが龍をより痛がらせることができるかと、拷問合戦を繰り広げる。情け容赦などカケラもない仕打ちが、読んでいる者の痛覚にもビシバシ訴えかけてくる。なんと本格的で自覚的な暴力漫画であることか。柏木ハルコ「ブラブラバンバン」。ブラバンの名門校で指揮を振るえることになった芹生さんは、演奏に心酔して激しくノリノリ。何をやるのか分からない、危うくて軽やかな魅力。楽しい。あと、岩田やすてるによる「球魂」のキャラを使ったアデランスヘアチェック漫画が、かなり下らなくて良いと思うのだった。


9/15(水)……スージーとの関係

 休みだからと調子に乗って寝まくり起きたら夜6時。今日は一歩も家から出ず。

【雑誌】ビッグコミックスペリオール 10/1 No.19 小学館 B5中
 中川いさみ「関係筋」が最終回。まあいつものごときナンセンスギャグなので、どこで終わってもOKな感じではある。スペリオールでの中川いさみの次回作は、年末で巻末カラーになるとのこと。高田靖彦「演歌の達」。達がかかずらわいつつある謎のミュージシャンのデモテープは聞けそうな気配が漂ってきたが、一方で以前プロデュースした歌手・紬が歌を辞めると言い出す。なんかいろいろと微妙な情勢。達がどのように決着をつけていくのかが気になるところ。

【雑誌】別冊マーガレット 10月号 集英社 B5平
 上野愛「魔法の手に乗って」が新連載。一枚のグラビア写真を見て、そのヘアスタイリングをした「ヘアスタイリスト」(床屋)に弟子入りすることを決意した18歳の女の子。というわけで今流行りのアレだ。とまあイロモノみたいな書き方をしたけど、美容師さんと女の子のラブメインの青春物語な感じである。目新しいところはとくにないけど、爽やかでけっこう読める。永田正実「恋愛カタログ」。今回は主人公の彼氏、高田君がバイトしている家庭教師先の教え子である、ヨシオくんのネット恋愛の結末。中学生ながらメールだけでなく、ICQやチャットルームも駆使。なかなかやりますな。次はプロキシサーバーに挑戦だ!

【単行本】「バロン・ゴング・バトル」9巻 田口雅之 秋田書店 新書判
 これにて完結。一時期はオスマンのほうにも挙げたとおり、大ざっぱでノリノリのたいへんに面白い作品だったのだが、最後のほうは残念ながら不完全燃焼な終わり方になってしまった。もう少し長く続けばそれなりのラストは迎えられただろうが、そんな死んだ子の歳を数えるような話をしていてもしょうがない。次回作でぜひ挽回してもらいたい。手近なところでは、ヤングチャンピオンの次号に掲載されるようなのでそちらに注目。

【単行本】「入神」 竹本健治 南雲堂 A5
 オスマンに追加。


9/14(火)……DAN DOHリくん

 あ〜ん、遅刻しちゃう〜。

【雑誌】週刊少年サンデー 9/29 No.42 小学館 B5平
 作:坂田信弘+画:万乗大智「DAN DOH!!」。初っぱなからダンドー少年に、キャディのねーちゃんが馬乗り。胸元のぞける色っぽい恰好で。狙っておりますなあ。そしてダンドーが赤野のキャディをやることになって、うれしくて泣くあたり。手つきや表情がこれまた。今時代は半ズボン。久米田康治「かってに改蔵」。最近さらに好調。ひねくれた想像とツッコミの翼をはためかせ、イヤな世界へまっしぐら。地丹くんのヤラレ芸も完成の域に。

【雑誌】週刊少年マガジン 9/29 No.42 講談社 B5平
 石垣ゆうき「MMR」は今回で最終回。思えば彼らは10年間もこんなことをやっていたのだ。連載当初25歳だった人も、今では35歳。スッカリ出世コースから外れた編集者たちは、今も何かと闘い続けているのだ。読者の葉書に支えられて。本田康昭「泣くようぐいす」。今回のお話に出てきたプロ野球選手の投球フォームが誰かに似ているな〜とか思ったのだが、GUY・JEANS+ヒラマツ・ミノル「レジー」の関谷にソックリだと気がつく。第101話(講談社モーニングKC10巻)の6ページめ。ていうかポルシャはやいぞー。塀内夏子「Jドリーム完全燃焼編」。アジア第3代表決定戦クライマックス。限界かに見えた鷹だが、大詰めの大詰めで原点に戻ったかのようなズル賢い、そして楽しそうなプレーを見せてくれた。残り時間が気になるところだが、もう一波乱起こすのかどうか。

【雑誌】ヤングマガジンUppers 10/6 No.19 講談社 B5中
 最近、田中ユキなどが載らないのでいまいちもの足りない感あり。
 小田原ドラゴンの新連載「コギャル寿司」がスタート。ちょ→立派なコギャルになるべく、田舎を捨てて上京、日本で三本の指に入るコギャルがいるコギャル寿司に入るジャージ姿の女の子。彼女のコギャル修行のさまがたぶん描かれていくのだろう。「0(ラヴ)リー打越くん!!」では、シノヴ+打越 vs. 京花+先生のダブルス戦が開始。いよいよテニス漫画になっていくのだろうか。

【雑誌】ヤングチャンピオン 9/9 No.19 秋田書店 B5中
 作:宮崎克+画:高岩ヨシヒロ「松田優作物語」。「野獣死すべし」編がスタート。描写がいちいちカッコついていて面白い。これを読んでいると、つい松田優作の作品が観たくなる。石山東吉がゲストで登場。タイトルは「突撃! 北島寮」。男子寮を舞台として、お気楽なお色気ギャグ。ギャグをやるにしても、たわける方向に力一杯。相変わらず脂っこくくどい。作品自体はわりとどうでもいい出来だが、石山東吉のノリって特異なので、珍しもの見たさ的感覚で楽しんでしまう。今村夏央「ファイヤーキャンディ」は連載再開。

【雑誌】ビジネスジャンプ 10/1 No.20 集英社 B5中
 冬目景「イエスタデイをうたって」。リクオはハルとのデートを控えているが、やはり予想通りというかなんというかシナコがらみでゴタゴタしそうな感じ。ハルの家庭事情はいろいろ複雑そうではあるが、おおむねストレートにラブコメしていて楽しく読める。「羊の歌」のような暗めの作品とはまた違った魅力。

【雑誌】ヤングキング 10/4 No.19 少年画報社 B5中
 今号でビックリしたのは三浦文祥が漫画を描いていることだ。昔、「激変地獄丸」というイカれた漫画を描いていた人。そのころはサラリと人でなしで不吉なギャグをやってくれていてけっこう気に入っていた。当時の雑誌をキリヌキで残していなかったのが悔やまれる。その後、モーニングのプレゼント漫画で何度か見たが、ちゃんとした作品を読んだのは久しぶり。で、今回の「悪魔人」なのだが、まあ他愛ないギャグ。絵はだいぶ線が滑らかになって普通っぽくなった。昔の久米田康治に近いタッチのほうが好きだったのだが。内容もわりとよくあるって感じでちと残念。なお、柴田昌弘「サライ」は、作者が体調を崩して緊急入院ということでしばらく休載。


9/13(月)……羊の姪

 会社マシンのマザーボードとHDDを交換。マザーは以前、記事でレビューするため自腹で買ったMICRO-STAR MS-6199。HDDは家のサブマシンに10GBのが付いていたので、それを会社に持ってきて、会社マシンに付いていた奴を家のほうに持って帰る。実は先日、2〜3日前までおうちメインマシンだったLet's noteのHDD換装もしたばかり。都合4台のマシンでフォーマット→OSインストール→環境再構築をやり直しているわけである。まさにパソコンに使われてるって感じですな。
 それはそうと、MS-6199だが、ちゃんとすべてのコネクタ類をしっかりつないでWindows 98SEも正常動作しているのに、起動時にハードウェアがアブノーマルだとかいうファッキンなメッセージを表示し、癇に障るビープ音を連発する。明日あたり原因を突き止めて、その耳障りな音を止めてやりたく思う。俺は本気だ。

【雑誌】ビッグコミックオリジナル新人コミック大賞増刊号(10/12増刊) 小学館 B5中
 新人コミック大賞受賞作を載せる雑誌。そのコンセプトだけでもうれしいじゃありませんか。当たり外れは当然のことながらある(というかかなり激しい)のだけれど、こういう雑誌から当たりを見出したときのうれしさといったらない。アフタヌーンの四季賞でこういう本を出してくれたら最高……というのはマニア筋はみんな思っていることかもしれない。でも商業ベースにゃ乗らないだろうなあ。
 新人の作品では増田孝治「めい」がいい。小説家志望の男が一人。そのめいであるまゆは、彼のことを「お兄ちゃんお兄ちゃん」と呼んで慕う。子供のころからお兄ちゃんの小説を読み、まとわりつく気持ちは成長してからも変わらない。その後、お兄ちゃんは不遇の新人時代を経てやり手の女性編集者の意見で作風を変えて売れっ子になるが、作家としての原点を見失っていく。そんなときに彼を励ましたのは、やはりめいのまゆだったのだ。……といった感じの物語。絵はかなり素朴。しかし素朴であるがゆえの暖かみがあって、まゆには心和む健康的な魅力がある。そして、特徴的なのはコマ割り。正方形、長方形のコマ(斜め枠線のコマはない)が1ページにつき10コマ程度、余白をふんだんに持たせながら、雑然としつつ調和を持ちながらパラパラと並ぶ。その独特の配置が、急ぎもせず止まることもしない心地よいリズムを作っていてとても味わい深い。しみじみとするいい作品。
 佐藤由男「メンタルな人達」。メンタルな部分が競技の大きなウエートを占めるアーチェリーの選手たちの駆け引き。何ごとにも心を乱さない矢神はるかのペースを乱さんとして、ライバル選手が試合直前、男を使って彼女に愛の告白をさせる。動揺した彼女は、やはり思い通りの射ができないが……。ラス前の見開きの使い方がダイナミックで気持ち良し。芳年「凡人軍人変人」は奇妙な趣のある作品。アメコミ系の絵柄で、チェスに人生を捧げた三人の男たちの生き様を描く。白と黒のコントラストの利いた濃厚なタッチと、やけに理屈っぽい独り言のようなネームが特徴的。執念深そうな作風に得も言われぬ迫力を感じる。高倉麻紀「アパートの鍵返します。」。こちらはこざっぱりした絵柄が良い。上品な細みの線で丁寧に描かれた画面に好感。川上弥生「裸の手」。ちょっと雁須磨子を思い出すところのある艶っぽい感じはいい。絵が若干固いので、もう少し滑らかになるといいのだけど。しっかり読むとけっこう読めるのだが、ツカミが弱いような。
 それから新人ではないけれども、武富健治「シャイ子と本の虫」が載っているのがたいへんうれしい。武富健治のしっかりとしているけれども、どことなく古臭く、陰気くさい描線は大好きだ。本ばかり読んでいる女子高生・夏紀とその友達でやたら内気な女の子・通称「シャイ子」の物語。シャイ子の恋を心配したり、本を読まなくなった兄の会話のお粗末さなどなどを、考え考えしながら夏紀の日々は過ぎていく。なんかものすごく劇的なことがあったかのごときキャラクターたちの表情、ギチギチに描きこまれた作画が、普通の日常を奇妙に演出する。このストーリーだと、明るい絵で書けばなんてことのない爽やかな作品になるのだと思う。でも、武富健治が描くとなぜだか陰鬱で濃厚になって異様な迫力を持ってしまう。その不吉な作風に、強く惹かれる。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 9/24 No.42 集英社 B5平
 作:ほったゆみ+画:小畑健「ヒカルの碁」。塔矢アキラがインターネット囲碁のsaiはヒカルではないかと目をつけ、ヒカルと対峙。丁々発止なやりとりが面白い。それから新キャラ。囲碁部の新入部員の女の子。地味だけど惹かれる。脇役っていいよね。

【雑誌】ヤングマガジン 9/24 No.41 講談社 B5中
 平本アキラ「アゴなしゲンとオレ物語」。ゲンさんがカリスマ美容師の許に押しかけ、暴虐の限りを尽す。本気になったゲンさんほど恐ろしく、汚らしいモノはない。シャレにならぬ活躍ぶりはエスカレートするばかりだ。華倫変「デッド・トリック!」。なんか意外とちゃんとミステリしているが、けっこうなじんでいるような気がしないでもない。ところでやはりミステリ漫画では、キーワードを太字にするのは基本なのか。それはそうと、華倫変の描く女性はなんかイジメたくなるような、なしくずしでもっていってしまいたくなるような、ユルい艶めかしさがあってソソる。惚れる徳子さん

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 9/27 No.41 小学館 B5中
 石川賢「MAGA 禍」が連載スタート。スピリッツでは初登場なんだそうな。いつもながら力強いが、お話の展開がどうなっていくかはまだ分からない。これからのテンションアップに期待。山本直樹「ビリーバーズ」。『副議長』さんは、ついに邪魔者である『議長』さんを排除にかかる。そして島には彼女と『オペレーター』さんの二人だけとなり、彼女らは愛欲の日々に入らんとするが……。さてどうなるどうなる以下次号!

【雑誌】コミックバーズ 10月号 白泉社 B5平
 今回はやはり冬目景「羊のうた」。体調を崩して弱気になった千砂が、一砂に自分の偽らざる気持ちを告白する。つまり告ったわけだ。一砂が千砂を頼っていたのではなくむしろ逆であり、一砂に依頼する心をストレートに訴える。冬目ラヴァーよ、いつもより弱い千砂にメロメロになるがいい! 雁須磨子「ご破産で願いましては」。とくに大きな盛り上がりこそないが、これからの展開にむけて種まきはされている。飄々とコミカルに流す作風が良い。読切、雨宮智子「RHINO」はけっこう読ます。サイのごとき巨体で一人では起き上がることもできない母を持つ女性。その母親が前触れもなくぼっくりといったその日、恋人に遠い土地で結婚しようといわれる。が、母親の腕の中から逃れられない、逃れようとしない彼女は、母の遺体を措いていけないといって恋人と共に行くことを拒もうとする。業を煮やした恋人は一計を案じる。母親の遺体を鋸で切り刻み、少しずつ捨てていこうとするが……。洋風な味わいのある少し硬めな絵柄。ラストはきれいなハッピーエンド。きっちりお話を作り上げる力を備えている。
 あと、星野之宣「コドク・エクスペリメント」がスタート。危険な生物だらけの未開の異星に着陸した一部隊。その星で繰り広げられるはずだった「コドク実験(エクスペリメント)」は、隊員たちの死により中断される。そこから始まるガシガシのSFアクション。宇宙船が出てきて、さらに異星、実験、宇宙戦闘などなど、今ではあまりお目にかかれなくなったSF的要素がてんこ盛り。

【雑誌】まんがタイムジャンボ 10月号 芳文社 B5平
 こうの史代「こっこさん」目当てで購入。このシリーズもそれなりに回を重ね、にわとりのこっこさんにだいぶキャラクターが出てきた。といっても擬人化なんぞはまったくされてはいないが。気分屋でパワフルなこっこさんに振り回される女の子の姿がカワイイ。最終ページは1ページぶち抜きの1枚絵。簡潔な描線なのだけど、内からにじみ出てくる暖かさと柔らかさが心地よい。ぽかぽかした陽だまりという趣。


9/12(日)……考えるサプライ

 すごく面白い読み物発見。それはサンワサプライのカタログ。見ていると「ああこれいい! 欲しい!」とばかりに物欲刺激しまくりで平気で時間がすっとんでいく。環境が無闇に改善されそうな甘い誘惑に、俺の買物欲は揺さぶられっぱなし。この悪魔の物件はホームページから無料で資料請求できるので、一家に一冊ぜひどうぞ。ただ、Web通販ができないっていうのが隔靴掻痒。

 ようやく8月末のコミティアで買った同人誌を読み終える。実はまだ人にお願いして買ってきていただいた、コミケ売りの同人誌は読み終わっていないのだが。そういえばバーズ買い忘れてたなー。遺憾。

【同人誌】「くまちゃん国家社会主義」 あびゅうきょ
 ……スゲエ。ホンモノのみが持つ迫力。あびゅうきょといえば、美しい少女の絵で知られているが、その狂気が容赦なく発揮されたこの一冊の迫力は圧倒されるほかない。この本に収録されているのは漫画ではなく、美少女のイラストとそれに添えられた書き文字である。いや、書き文字のほうがメインといっていいかもしれない。「くまちゃん国家社会主義」はこんな言葉から始まる。

僕は寂しいロンリーボーイ。
31歳。独身。無職。住所不定。
テディーベアの中に潜んで
女の子のお部屋でおねんねさ。
 そしてこんなことをいうのだ。
ああ、僕は女の子の奴隷になりたい。
それが唯一の希望だよ。
コンビニで『ごめんね』をペットボトルで買ってきて
女の子の膝枕で飲みたいよ。
チュウチュウチュウチュウ飲みたいよ。
 ああ、この人は、本当にダメな人なのだ。現実の、そして空想の少女たちを愛し、崇拝し、そして憎悪する。深い業。強すぎる執着。あびゅうきょは、自分を削って絵を、文章を作っている。

【同人誌】「種馬青年こけし」 三五千波 <つくりもの>
 こちらもすばらしい一品。三五千波については本田健のページに詳しい。ナルシストで他人に不寛容な、線の細い青年・サユリちゃんが、自分のこけしをつかんで身悶える。どこを見ているんだか分からない人たちが、自分の世界の中でなんかいっている。一つの想念の許に描かれて統一感があるようで、とっちらばっているようでもある筋立てが異様な迫力を持って迫ってくる。イメージの湧出に漫画を描くスピードが追いついていかないような感じで、想念があっちへいったかと思えば脈絡もなくこっちへ行く。妄念と白痴美の入り混じるかっちょいい作品。こういう作品が存在するってだけでも世の中が豊かになったような気がしてしまっているのは、たぶん人間的にはあまり正しくないことだと思う。とりあえずしばた兄弟は大喜びだ。

【同人誌】「ぴあの no 気持ち」 石川ひでゆき
【同人誌】「みるく★きゃらめる」3号 <みるく★きゃらめる>
 吉本松明さんのところのご本。
 今回の「みるく★きゃらめる」は特集「キチ」。基地外(キチガイ)でもなく基地内でもなく、その中間ラインに立っている人たちを、エロ漫画界から抜き出してきて研究する一冊。こういう馬鹿げたことを真摯に研究する姿勢が、松明さんのかっこいいところ。実に立派な労作。ただ、今回は前のロリに比べると若干曖昧な感じはした。キチという存在からして、容易に基地外にも基地内にも振れてしまう曖昧な存在であるからして仕方ないところではあるのだけれども。次回の研究では、なんとなくだけど数量的な分析も入れてみると無闇にもっともらしくていいかと。意味がなくてもいいので、グラフとか表とか図、フローチャートを多用していただきたい。
「ぴあの no 気持ち」は松明さんの相棒の石川ひでゆきの個人誌。「みるく★きゃらめる」の表紙などでおなじみ(?)の人だ。あえて狙ってあざといパンチラやら、キャピキャピした女の子を描く。まとめて読みたいな〜と思ってた人だったので、ボリュームある本(といっても26ページだが)になってうれしい。ぴあのちゃんが授業の最中にエロ小説を朗読させられるあたりなんて非常にいいですな! 最後のオチのベタベタさも吉。
 まあそんなわけで、両方ともコンセプトに基づいて狙いまくっているあたりがかっこいい。

【同人誌】「ビタミン」 <Hee-Haw>
【同人誌】「花も嵐も」 <Hee-Haw>
 Hee-Haw2冊。メンバーがいずれもこぎれいな絵柄で、それぞれにしっかりとお話を作っている実力派のサークル。その中で一番好きなのは藤ノ木いらか。「ビタミン」収録の「からすとパパイア」がとくに気持ちいい。マンションだかなんだかの屋上にある、ほったらかしになっていた庭園。二人の少女がそこに勝手に入り込んで、自分たちでパパイアだのアボガドだのの種を植えて育てている。この庭園はやがてオトナたちに撤去されることになる。彼女たちはそれに抗議するわけでもなく、実にアッサリと受け容れる。クライマックスといえるシーンがあるわけではないのだけど、全体から屋上の涼しい風を感じる爽快な一作。衣羅ハルキは明朗な絵柄で、ときにセンチで、ときにファンタジックなお話を描き出す。百井葉月も上品で実に達者。どれもたいへんによくできている。もう一歩、読者をねじ伏せるようなパワーがあればいうことないが……。

【同人誌】「けだもののように」II-5 渋蔵 <ぐんたまカンパニー>
 比古地朔弥=渋蔵「けだもののように」最新刊。今回は、ヨリ子の養父であるマキと、その妻の過去がメインで語られる。マキの懊悩と周囲のしちめんどうなしがらみを、ヨリ子たちは蹴散らすことができるのかどうか。お話的なカタルシスはあんまり得られないパートではあるが、物語を語る力はやはり抜群。きっちり読ませて次へとつなぐ。そしてまた、次が読みたくなってしまうのだった。

【同人誌】「CHAOS」(梟亭 VOL,3) <梟亭>
 テーマはSF。落とした人もいるみたいで、全体的にはちと中途半端な本に仕上がってしまった印象。この中では柳沼行「打ち上げ花火1999」が一番まとまっていて面白く読めた。銀河の果てで何かをやる実験のため、地球を離れる宇宙飛行士たちの、出発前の時間を描いたお話。打ち上げ花火のシーンとか、宇宙に行く前のお話ではありつつ、ノスタルジアも感じさせてくれて気持ちのいい作風。

【同人誌】「ヨタカの星」 志賀彰 <憂便局>
 とある町の片隅で、ナゾの人物が持ってくる話に乗って春を売る少女。連れてこられる男は、みな人生に行き詰まったような、女を抱いたことのないような人々。一人で気楽に生きることを好む少女はこの生活を気に入っているのだが、「いつものパターン」がやがて揺らぎはじめ……というところで中断。実はまだこの作品、未完成版なのである。いや、それでも、魅力的なキャラクター作りや思わせぶりな展開などすでに引き込まれてしまっている。続きは来年2月のコミティア売りの本になるそうで、11月コミティアは「Tableau」のほうに全力投球とのこと。どちらも早く続きが読みたい。

【同人誌】「エロホラー」 大西/梧桐風子/淵
「すこやかな大西」のユニット。大西はホラー、梧桐風子は耽美、淵はレトロな感じのするギャグタッチと3人それぞれの持ち味を持っているが、いずれもなんだか禍々しい雰囲気をもたたえている。そんな雰囲気ながら、飄々とギャグをこなしたりする軽やかなセンスが秀逸。とくに大西の身もフタもないギャグがいい感じである。いずれネムキとかそこらへんにでてきてほしいような才能。

【同人誌】「どこへ、遠くへ」「うわの空で」 入江アリ <アラビヤ魔人>
【同人誌】「てのひらの虹」「遠いサイレン」 入江アリ <アラビヤ魔人>
 いずれの本も達者。清潔感のある涼しい絵柄で、軽いタッチで上品。お話もキッチリ作られていて、爽やかな読み心地。きれいにまとまっていて、高尾滋とか好きな人は気に入りそう。端整でサッパリとしていて、省略されることは多いが背景も美しく描けている。まあなんといっても魅力はその気持ちいい絵柄なので、ホームページに行って実際の絵を見ていただけると話が早い。Webのほうの絵は、控えめな色使いがいい感じだなあ。

【同人誌】「ごらんのとおり」 こうの史代
 まんがタイムジャンボなどに掲載された作品を再録した作品集。表紙からして、モーニングの懸賞コーナーに掲載されたイラストに彩色したものだ。収録作品は「願いのすべて」「俺様!」(以上初出:まんがタイムジャンボ)、「七人の神様」「のの」(以上初出:同人誌「ののの二」。あとイラストも数点。漫画に関してはすべて既読だったのでとくにいうこともないが、こうの史代の優しくて柔らかい絵は改めて見直してみてもたいへんに素晴らしい。品があるうえに彼女独自のものも持っている。もっとたくさん読みたい、と一つ作品を読むたびに思ってしまう。

【同人誌】「ILLEGAL STYLE Version 2」 山本昌幸 <山本内燃機出版>
 5月コミティアで出ていた同タイトルの作品の完成版(2ページの加筆あり)。というわけで「Version 2」。作品の感想は5/5の日記に記したが、改めて完成したものを読み返してみるとやはりとても面白いので関心した。キャラクターは魅力的だし、途中の謎めいた展開、ラブコメ的ハッピーエンドなど、実に読後感爽やか。44ページとページ数も多く読みごたえもある。いいお話。

【同人誌】「ひとつ」3〜5 <メタ・パラダイム>
「ノンストーリーマンガ集」と銘打たれた作品集。正直いって、「ノンストーリー」という言葉には違和感を覚える。「ストーリーのない漫画」なんてものが存在し得るかどうかという疑問を前から持っているからだ。読み取ろうと思えば、一枚絵だってストーリーを読み取ろうと思えば読み取れてしまう。それが読者の勝手な思い込みだとしても。真にストーリーのないモノを作り出せたとしても、それを読者が漫画と認識できるかどうか。少なくとも今まで俺が読んだ漫画の中で、「ストーリーがない」と思えたものはなかった。
 まあそこらへんの話はしばらく措く。ここでいう「ノンストーリー」とは、作者としては「ストーリー」とは正面きって呼びにくいような、断片的な情景といった意味合いであろうから。要するに、大きなストーリーを作ろうと腐心するのではなく、感性の赴くまま肩が凝らないようなペースでサラリと描いたといったところ。
 毎号10人を超える多数の人たちが寄稿しており、内容は玉石混淆って感じ。その中でもなかせよしみのほのぼのとしたタッチ、秋元なおとの几帳面そうなカケアミ多用の作風は目を惹いた。


9/11(土)……宇宙開発に手を出すな

【雑誌】コミックビーム 10月号 アスペクト B5平
 収録作品リストはビームのページ参照。
 今月の注目はまず新連載2本。有川祐、タイム涼介と、どちらも講談社で活躍していた人たちだ。有川祐「彼女とデート」はいきなり巻頭カラー。摂津くん、朱堂くん、八神リッちゃん……といった登場人物の名前から見るに、「反町くんには彼女がいない」と世界を同じうするのかもしれない。そういった普通な感じの高校生たちの、淡々と一部ひねくれた日常漫画。味わいは「反町くん」同様なので、あちらが好きだった人はこちらも迷わず押さえるべし。タイム涼介「東京カイシャイン」。いい加減な趣の会社の新入社員・馬具四子。そして彼女がアシスタントすることになった、何ごとも色事で解決しようとする大男・色々木。この二人がどうでもいいノリで業務を進めていく漫画の模様。下らなさが気持ち良い一作で、今後のハッスルぶりが期待される。
 最終回もアリ。竹谷州史「PLANET 7」。銀河連邦のお家騒動は、おでんのポジティブな宣言によって一件落着。明るくカラッと終わった。魅力的な絵柄で最後まで楽しかった。次回登場にも期待したい。竹谷州史の作風はもう完成されている感があるのだが、まだまだ工夫しだいで飛躍できそうな感じもする。永野のりこ「電波オデッセイ」は、原さんが過去の自分と真っ正面から向き合い、そして次回でついに最終回を迎える。原さんやキタモリ、野川さんたちの気持ちにどんな決着がつけられるのか。楽しみでもあり寂しくもあり。羽生生純「恋の門」。コミケ編。石漫画を売る門。オタクの祭典の中で、激しい妄執が渦巻く。今回は展開がやたらに濃厚であった。暑苦しさ爆発。なんだかとんでもない方向にお話が進みそうな予感。いやーすごい。
 なんかパタパタと連載が終わり、また始まっている。そろそろ雑誌のラインナップ転換期を迎えているらしい。とりあえず今回の新連載は実力派な二人。次はどんなタマを持ってくるのかとても楽しみ。

【単行本】「バイオルミネッセンス」 志摩冬青 ラポート B6
 この前、コミックとらのあなに行ったとき見つけたので購入したもの。そういえば小田中さんがオススメしていたなーとか思って。志摩冬青は、アフタヌーン四季賞作家の漆原友紀(1999年3月号掲載「蟲師」。俺日記では1/25の日記に感想)であるらしい。初版は1997年9月10日で、四季賞受賞より多少昔の作品ということになる。
 横文字なタイトルとは裏腹に、この単行本に集められた作品の舞台はおおむね日本。都会からは離れた、山や森、田んぼなどが当たり前のごとく存在する地域。そんないわゆる「田舎」で繰り広げられる、ファンタジックな物語。「蚕の子」といわれる髪の毛が真っ白な少年、校庭の端っこに佇み白昼夢のように消えていく男の子などなど。「蟲師」の原型になったと思われる「虫師」という作品も収録されている。線は細く若干硬い。カケアミ系で丁寧に描き込まれた、さっぱり涼しい画風には好感が持てる。紡ぎ出される物語は、ちょっと切なく、またふわりと立ち上ってはスゥと消える不思議な瞬間に満ちている。上品で閉じたところがあり、一編一編の作品が強烈に印象に残ることはない。でも、この単行本全体で心の隅っこに位置を占める。といったところ。

【単行本】「G-taste」3巻 八神ひろき 講談社 A4
 ビッグサイズ! ミスターマガジンに掲載された、八神ひろきの妄想爆発するエロイラスト漫画。元々月刊少年マガジンで「2人におまかせ」とかを描いていた八神ひろきであるが、長じてもスピリットはまったく変わっていない。描かれるものは多少大人っぽくはなった。直接的にもなっている。でも心根はたいへんに無邪気。健全なスケベという感じで、実用とかそんな感じにはならない。ただ、実に楽しげに女の子のHな姿を描く姿勢が、見ていて微笑ましいなあと思う。たいへんに馬鹿馬鹿しくてよろしい。無闇にデカい判型もそれをさらに加速している(とくに観音開きページ)。

【単行本】「あたしの女に手を出すな」 南Q太 飛鳥新社 A5
 半分は最近の作品、そしてもう半分はヤングヒップに'92〜94年の間連載された「あそびにいこうよ」。ヤングヒップ時代も読んではいたが、今改めて読み返してみるとなんとも懐かしい。このころはよくまなべゆうに間違えられたりしてたもんだが、今はずいぶん絵が変わっちゃったものだ。「あそびにいこうよ」は今の作品とはけっこう違って、ポップで軽いノリ。ほのぼのと愛とSEXにあふれる日常を送る女の子のお話をやってて、気楽に楽しく読める。最近の作品は落ち着いていつつ鋭利さを覗かせる風格ある作風もいいし、昔のは若々しくてフレッシュな感じもいい。一冊で二度おいしい。

【単行本】「ドラゴンヘッド」8巻 望月峯太郎 講談社 B6
 御一行様、いよいよ東京へ到着。しかし、そこで見たものはこれまでよりもさらに過酷な、破壊されつくした大地であった。絶望的な状況の中、さらに絶望の中核部分へと一歩一歩近づいていく。天に衝き上げる巨大な火柱。気を抜くことが許されず、しかも長い旅路。連載では掲載がスローペースなのでノリにくいところもあったが、単行本でまとめて読むと実に面白い。破滅の正体を見極めんと、どんどんその中心部へ近づいていく切迫感、息苦しさ。そして瀬戸さんの可憐さ(関係ないか)。ラストはどのようになってしまうのか、予断を許さない。もう連載でガツガツ追いかけることは望まないので、じっくり腰を据えて最高のラストを飾ってもらいたい。

【単行本】「歌麿」4巻 六田登 双葉社 B6
 ウタの許へ、昔共に暮らしていた女・玉が帰ってくる。気が触れて童女のような状態になって。そして玉を連れたウタの生活が始まる。ウタの親友であったタカを殺した人斬り魔との出会いによって、新たな転換を迎えたウタは、謎の河童のあっせんもあり美人画を描き始めるが……。
 コンスタントに薄暗い、不穏な世界を描いており、読ませる力はさすがに大したもの。物語としては、謎の河童の登場でだいぶ怪しげになってきたが、今後の展開はどうなるのだろうか。気になるところではある。


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