オス単:2002年7月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。

 日記形式だと、どうしても日にちが過ぎてしまうと大量の過去ログの中に個々の作品が埋もれてしまうため、このコーナーではダイジェスト的にまとめてみました。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則としてしませんので、普段日記を読んでくださっている方にとっては読む意味がないかもしれません。手抜きといえば手抜きなんですが、まあその点はご容赦ください。

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でもどんどん入れていきます。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、わりと省略しがちです。


【単行本】「初期のいましろたかし」 いましろたかし 小学館 B6変形 [Amzn]

 祝・復刻。「ハーツ&マインズ」「ザ★ライトスタッフ」に、単行本初収録の短編「アホ族の男」「ランラン青果店」「美奈子と先生」「ピアノの先生」を収録。「ハーツ&マインズ」「ザ★ライトスタッフ」は、ともにボロっちいアパートで暮らす格好悪い青年たちの、不器用極まりない生きざまを描いた作品。「いつかなんとかしてやる」と思いつつも、結局どうにかする手段も力も持たず、ただ虚しく年月を重ねていくだけの物語。たぶん怠惰な性質を持っている青年男子なら、きっとここで描かれる青年たちのようなことを思ったり行動をとったことは、何かしらあると思う。それだけにしみる。なんか昔読んだときよりも、今読んだほうがしみた。たぶん30代になって、人生がある程度確定してしまってからのほうが、この作品は味わいを増してくると思う。

【単行本】「釣れんボーイ」 いましろたかし エンターブレイン B6変形 [Amzn]

 そしてこちらが現在のいましろたかし。作品は売れずこれからブレイクしそうもない漫画家のヒマシロタケシ先生の、釣りに溺れる日常を淡々と描き続けるという物語。それ以外にとくに大きな筋というか、物語はないのだけれど、これがすごく面白い。ヒマシロ先生の人生を諦めたかのような言動と、しかしそんなことをいいつつけして本業のほうを捨て去ることのない煮え切らなさ、あと日々脳裏をよぎっては消えていく都合のいい煩悩や妄想の数々などを、なんとも屈託なく描いている。心に映りゆくよしなしごとを、悩んだり諦めたり執着したりといった心の動きを全部含めて漫画の中に描き込んじゃっている作風は、その懐の深さに驚かされたり、身もふたもなさに笑わされたりしてしまう。例えば、アユを釣りにいって「まんが描いてるより100倍おもしろい!」と叫んだかと思えば、次のコマでは「そんなこと言ってていいのか……」と呟くなんてのは、実にこの人らしいシーンだと思う。あとアユ釣りに差し支えると思って久しぶりの隔週連載の仕事を断ったかと思えば、あとでまた思い直して受けることにするとか。釣りという趣味にのめり込みつつも、やっぱり留保を残しちゃう姿勢は多少かっこ悪いのだが、「人間ってこんなもんだよなあ」と思う。

 ちなみに今回の2冊、「初期のいましろたかし」が700ページ弱2500円、「釣れんボーイ」が800ページ超で1980円。値段的には少々張るし、ボリュームもかなりすごい。でもこれを逃したらきっとそう簡単には買えなくなると思うので、欲しい人は急いだほうがいいんじゃないかと思う。聞いた話によると、いましろたかしの単行本は発行部数が少ないうえに、買った人はなかなか手離さないから古本市場にもあまり出回らないんだそうな。

【単行本】「紅陽」 もみじ拓 講談社 A5 [bk1][Amzn]

 とても良い本。「紅陽」「哀愁のシマキマン」「かいじゅうの背番号」「キリエ」前後編が収録された短編集。素朴で飾りっ気はないけれども、青春模様の中で心に刺さったトゲのような引っかかりを、柔らかく丁寧に描写していく作風はしみじみとした読後感を残す。

 その中でもとくに素晴らしいと思ったのが「キリエ」。ごくごく平凡な少年である主人公・安芸と、極度の個人主義だが憎めないところのあるクラスメート、自称「キリエ」、本名青木太郎の二人を軸とした青春模様を描く物語。キリエはあまり人とツルんだりすることはないが、学園祭のときに屋上から自作のわけの分からない詩を大声で叫んでみたり、ライブハウスに出てみたりとエキセントリックな行動をときに起こす少年。でもその行動には、実は真摯なある想いが込められていて、キリエと接するうちにその想いに触れるにつけ安芸は知らず知らずのうちに自らのうちに芽生えていた煮え切らなさや卑怯さに気づいていく。語り口は静かなんだけど、微妙な心の動きをすくい上げていく描写の数々は、ページをめくるごとに胸に迫ってくる。あとどんどんボルテージが上がっていくキリエの言葉、そしてその後の静けさが心にしみる。

 「紅陽」は、親がどうもうっとうしく感じられて小さな反抗期を迎えている平凡な少年である主人公の親子関係を、クラスの中での「からかわれ役」であるが高校生とは思えないくらい子供っぽくて天真爛漫な笑顔を見せるクラスメートをからめて描いていく。いくつかの紆余曲折を経た後、主人公が再び親に向かい合うシーンは泣ける。「哀愁のシキシマン」。突然好きな女の子の体が発光して見えるようになってしまった少年に親から告げられた真実は、想いもよらぬ皮肉なものであった。こちらはタイトルこそギャグっぽいけど切ないお話。「かいじゅうの背番号」は、実は自分たちの親が怪獣であり、自分もその血を引いていることを知った少年が、母の死に際に自分が口にしてしまった言葉の残酷さに成長してから気づくという、これまた苦い物語。

 どの作品も自分が今まで気づかずにしてしまっていた無神経な行動に対する後ろめたさがベースになっているのだが、それに対する苦悩を描くというよりは追憶の色合いのほうが濃いような気がする。絵柄的にはパッと見にうまいとは映らないかもしれないけれども、ストーリーを語る確固たる力がある。良作揃いなので強くオススメ。

【単行本】「ネコカッパ」 逆柱いみり 河出書房新社 A5 [bk1][Amzn]

 逆柱いみり的ふしぎワールドが全開。猫の耳の生えた河童、ネコカッパの生活を描くというお話。ストーリーはたぶん書いてもしょうがない。ネコカッパがただ町を歩いているだけだから。でもそれを見るのはすごく楽しい。豚らしきもののごろごろ首がならべてあるおみせやさん、頭のたくさんあるフタコブラクダに乗った不気味な少年、猿みたいな毛むくじゃらの生き物を呑み込んでいる蛇のようなトカゲのような生き物……などなど、グロテクスクなようだけど遊び心もあるモノの数々が、あっちゃこっちゃに画面狭しと詰め込まれていて、そのごちゃごちゃした世界を見ているだけで著しく楽しい。なかなか言葉ではうまく表現できないけれども、読んでて妙に落ち着く。

【単行本】「けだもののように[学園編]」 比古地朔弥 太田出版 A5 [bk1][Amzn]

 現在商業誌ではエロティクス・FとかIKKIとかで活動中の比古地朔弥が、同人誌(サークル名:ぐんたまカンパニー)にて渋蔵名義で発表し続けている「けだもののように」が、ついに単行本化。バラでも買ってたうえ総集編も持っているけれども、非常に質の高い作品なので、より広い層が手にとりやすい形式にまとまってくれたのはやっぱり喜ばしい。とはいえまだ同人誌のほうでも未完で、東京編、完結編と続いている。そちらが単行本になるかどうかはたぶん学園編の売上にかかっているのではないかと憶測するところなので、同人誌のほうを持っている人もぜひみんな買おう。

 で、内容のほうは、とある田舎の町の中学校に金持ちの家に住む美少女・ヨリ子が転校するところから始まる。たまたま彼女の隣の席となった純朴な少年・一太はじょじょに彼女に引かれていくものの、ヨリ子の美貌と奔放な振る舞いは周囲の状況をしだいに波立たせていく。とくに性に目覚め始める時期のやりたがりな少年たちは敏感に反応するが、ヨリ子は彼女を養い溺愛する保護者のおじさんばかりでなく、同級生や学校の先生たちとも誰彼かまわず肉体関係を持っていく……。ヨリ子の艶めかしい様子には人をひきつけずにはおかない不思議な魅力があるし、シッカリした線と急ぐことのない腰の据わった本格的なストーリー展開など、「これが本当に同人誌作品なのか」と初めて読んだ人は驚くと思う。でも実際のところ、舞台は平凡な田舎の学校ということで地味ではあるし、商業誌作品だったらどこがこれを載せてくれただろうかと考えると意外に難しいかもしれない。まあ後にIKKIで似たようなモチーフを扱った「まひるの海」[bk1][Amzn]が掲載されることになるのだが。ともあれ「けだもののように」のほうが、さまざまな制約がない分、比古地朔弥=渋蔵の持ち味はより色濃く現れていると思う。

【単行本】「東陽片岡哀愁劇場」 東陽片岡 青林工藝舎 A5 [bk1][Amzn]

 東陽片岡の漫画はいいなあ。なんだか心が洗われるようだ。ここで描かれるのは、じめじめしたアパートで暮らす貧乏な庶民たちがメインなんだけど、「下町はあったかい人情にあふれてて……」だの「現代人の忘れてしまったものが」「庶民のしたたかさを描いた」などという、いかにもステロタイプな物言いとはまるっきり無縁。東陽片岡世界の住人はおおむね貧乏で、これからのし上がっていく可能性も皆無なんだけど、そういうことに対してなんとも思っていなさげなのがいい。なんかそういうギラギラしたものが、概念的にすぽーんと抜け落ちた上で生きているというか。だから罪がないし、揃いも揃っていい人に見える。「人間はあるようにあればいいんだ」「人生に意味なんかなくったって人間は生きていけるし実際に生きている」というようなことをしみじみ感じてリラックスできる。「癒し系」という言葉とは程遠い位置にありながら、これほど癒される漫画もなかなかない。そういえば8月末には小学館から「お三十路の町」も発売になるそうだ。

【単行本】「ヒミズ」4巻 古谷実 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 普通であろうとすることは簡単なようで難しい、というかその人の置かれた環境によっては難しい。あと現実の受け取り方によっても違う。この作品の主人公の住田にとっては、彼が思い描く「普通」を実現することは思いのほか困難であり、「普通」が果たせなかった時点で残る可能性は「最悪」しかなかった。絶望的な現実とネガティブな思考は彼を破滅へと導いていく。その様子を淡々と追い続けた物語はこれにて最終巻。最後まで安易な希望を呈示せず、深く静かに事態を進行させていく物語は緊迫感があって、読んでいる間中ゾクゾクさせられた。ときおり住田が見る化物などの心理描写など、追い詰められた人間の想念を見せつけられて怖さを感じた。とはいえ、考えてみると住田にとって事態はものすごく深刻だけれど、結局のところ社会には何一つ影響を与えていない。その人と関わりがある人ならともかく、例えばテレビのニュースを通して世の中を見ている人からすればこの住田の生き様だって平凡で普通といえる。そういう「普通」と自分個人にとっての「普通」。普通というのはいかにも曖昧なものであるなということを再確認させてくれる。

【単行本】「美女で野獣」1巻 イダタツヒコ 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 一言でいえば女子高生格闘モノ。なんだかものすごい強いけど借金こしらえてヤクザの用心棒をやってる拳法家の娘が、その強さを見込まれて「キャットファイト」という、女子地下格闘技イベントに引っ張り出されることに。それぞれの学校の制服を着て闘うというバトルはいと華やか。ノーパンバトルまで仕組まれちゃったりして煩悩も爆発。それまではちとホラーっぽい風味の作品が多かったイダタツヒコだけど、今回はカラッと明るいギャグタッチ。ムチャ強な女の子たちがわんさか出てきて闘うけど、ノリとしてはどつき漫才って感じかな。なんか描いているほうもすげー楽しそうでノリノリな作品。

【単行本】「電脳やおい少女」1巻 中島沙帆子 竹書房 A5 [bk1][Amzn]

 やおいにハマってネットにハマった女子大生、美月ちゃんの生活を描くというほのぼの4コマ。彼氏に趣味を隠して夜な夜なやおいチャットに現れたり、何かとたいへんな模様。彼氏のことを忘れてやおい方面に熱中しちゃってちょっと反省……みたいなパターンが続くのだけど、なかなかその様子が可愛らしくていい。この作品については4コマ漫画だし、まあけっこう誇張してるんだろうなーとか思っていたが、実は作者自身もやおい者でネットにハマって、美月ちゃんのネット友達にもそれぞれモデルがいるとか書いてあってちょっとびっくり。さらに作者本人が、漫画家以外にもなんだか名前の売れている副業を持っているとかでそっちもびっくり。あとこの作品内に出てくるやおい漫画、「愛の泥沼」ファンサイトも期間限定企画として単行本にURLが載っかっているのだが、見てみたらわりとしっかりしてた。

【単行本】「モッちゃん」 尾上龍太郎 白夜書房 B6 [bk1][Amzn]

 ゴルゴ系のシブい顔つき、いつもランニング一丁で片方の裾をズボンからはみ出させ、パチンコ屋の前に銅像のごとくたたずむ男「モッちゃん」。しかし彼は、本当に困っている打ち手を見ると、「俺が打とう、お前の金で」の決めゼリフと共に代打ちをして去っていく。シブいんだかヘンなんだかよく分からない、パチンコ屋のヒーローを描いた一作。尾上龍太郎はわりと濃い目で風変わりな作品を描く人で、ちょっと注目していたのだが、この作品もなんだか得もいわれぬ味。尾崎弘とかもそうだけど、パチンコ/パチスロ雑誌にはときどきこういう作家が潜んでいるから油断ならない。ちゃんとチェックしたほうがいいんだろうなあ。

【単行本】「Dr.モローのリッチな生活」しょにょいち Dr.モロー FOX出版/文苑堂  A5 [bk1][Amzn]

 いつもながらのDr.モロー(毒田モロ男)の生活がのほほんと記された1冊。この巻には1991〜1993年分が収録されているのだが、10年以上前(というかもっと前)からこの人は絵柄も作風も驚くほどに変わっていない。なんだかすごい。あと即売会がらみでセラムンがらみで地獄が展開されていたり、有害コミック騒動があったりと、なんだか時代を感じさせる。一定のタッチで常に変わらず時代を記録し続けるという意味で、オタク界の歴史書としても貴重かもしれない? そういえばコミケカタログのアレとか、共信マンとかもいずれ単行本化されないもんだろうか。ドルフィンマンが単行本化されるくらいなんだから、なっても不思議はないような。


▼女性向け

【単行本】「ハートを打ちのめせ!」1巻 ジョージ朝倉 祥伝社 A5 [bk1][Amzn]

 今年がこんなにジョージ朝倉の当たり年となるとは、作者本人でさえ予想してなかったかもしれない。現在の恋愛漫画家の中でも屈指のイキの良さを感じる。この作品もすごくいい。相手に好きな人がいると知りながら、体を使って同級生の野球少年・荒井くんを誘惑した根岸さん、それから荒井の思い人であった瑠璃といった地方の中学生男子女子の恋愛模様を描いていく作品。ストーリー自体は、別に珍しいシチュエーションを描いているわけではないし、恋愛漫画としてはごく標準的なものだと思う。でもこの人は、その恋心を描き出していく力が非常に強い。メッセージを美しく、かつ明快に伝えられる「声の大きさ」とでもいうべきものを持っている。とりあえずこれまで出した単行本、「恋文日和」「カラオケバカ一代」「ハッピーエンド」「水蜜桃の夜」については、いずれも当たりだった。女性向け漫画を描く作家としては、現在最注目株の一人。


▼書籍

【書籍】「吉田自転車」 吉田戦車 講談社 四六判 [Amzn]

 吉田戦車が2001年9月12日から2002年2月11日にかけて、Web現代で連載したイラスト&写真入りエッセイをまとめたもの。内容は主に、吉田戦車が自転車に乗って、近所や、やや遠いところまで行ったりする日常を淡々と語っている。吉田戦車の言葉遣いのセンスについてはいつも感心しているし、けして小さくない影響を受けている俺だが(←ちなみにこういうときに「俺」という一人称を使うのも、吉田戦車の文章の影響が多少ある)、今回の単行本についてもしみじみいいなと思った。一般的に見て美文といえるかどうかはよく分からないけれども、吉田戦車の文章はやっぱり味がある。なんでもない日常的なことを書いてるのに、けっしてベタベタしたりジメジメしたりせず、なんかほのかに楽しくなってくるおかしさが漂っているのがいい。あと食い物の描写とかも好きで、立ち食いそばだのうどんだの、別段グルメってわけでもない日常的なちょっとしたうまさとかが思い浮かべられる。地味に面白い一冊。


▼エロ漫画

【単行本】「飲尿女神」1巻 上連雀三平 ワニマガジン A5 [Amzn]

 おちんちんの伝道師、上連雀三平先生による素晴らしい作品。人間のおしっこが大好きで、おしっこを窓辺に置いておくと寄ってきて人々の願いを叶えてくれる「飲尿女神」様たちによる愛とおちんちんと精液あふれる現代のファンタジー。おちんちんに関する想いあふれるセリフの数々は、センス良すぎて感動しまくり。例えば「ドクドク精液かけてほしいしズコズコ犯してほしいの!」とかそういうセリフ自体は、なんの脈絡もなく書くとただの淫乱なものみたいなんだけど、それを「私達、一生友達だよね!」とか「いつまでも仲良くいようよ」みたいな友情を示すステキなセリフをいうのと同じようなシチュエーション、表情でサラリとごく普通のセリフであるかのようにいわせちゃう呼吸がたまらない。「先生はね信じてるの 21世紀には男も妊娠できるようになれるって」「君が精神の結びつきで相手を姉と認めたら例え10才年下でもそれは「お姉ちゃん」なんだ」などなど。例えば「妄想戦士ヤマモト」みたいな暑苦しさや力いっぱいさはないし、その他のオタク漫画みたいな照れとかも全然ない。ごく自然にさらりとすごい吹っ切れたことを登場人物たちに語らせる上連雀先生は、まったくもってステキすぎる。なお、この単行本のカバー見返しの部分には、「キミもはかってみよー」ということでおちんちんのシルエットと目盛りが付いているのだが、比べてみてこれより大きかった人は比較写真をネットにでもアップするといいと思う。

 ただこの単行本で残念なのは、何度もいうようにおちんちんの消しが派手なこと。昨今のTM-Revolution後の時流に逆行していると思う。もしかしたらどばーんと消しなしで載っけられるタイミングは今くらいしかなくなっちゃうかもしれないのだし、思い切ってチャレンジしてみてほしかった。出版社の都合を考えない身勝手な要望であることは承知しているけれども、作品が作品だけにそう思ってしまう。だってさー、上連雀三平漫画のテーマってズバリおちんちんでしょう。それを消しちゃったら、角のないカブトムシ、鼻の短いゾウ、愛と波動砲のない「宇宙戦艦ヤマト」みたいなもんじゃないっすか。でも考えてみるとモロがいけない理由って本質的にはあんまりないと思うんだよねー。パソコンが人間の形をしている理由とか以上に明確な回答が出ない問題だと思う。モロや性器が悪かっていわれたらそれは違うだろうし。

【単行本】「P総研」 RaTe 茜新社 A5 [Amzn]

 こちらもおちんちんの素晴らしさを標榜する作品。セリフ回しとかきっと「アナル・ジャスティス」の影響は受けているんだろうなあと思ったら、巻末のおともだちページに上連雀三平が描いてたりした。で「P総研」のストーリーは、遺伝子技術により開発された女の子でも射精が可能になるリアルおちんちん「P」のセールスをしている「P総研」の、ふたなりセールスレディたちを描いている。まあそんなわけでみんなしてPを使って、おくちやおしりやおまんこに、精液をどっくんどっくんぶちまけ合う愛の物語となっているわけだ。こちらはワニマガジンと違っておちんちんを隠すことなく、堂々と露出させていて気持ちがいい。あとRaTeの描く、ほっぺたのふくよかな女の子たちは前からけっこう好きだったんだけど、最近おちんちん&精液にこだわるようになってからお話的にもだいぶキレが出てきて面白くなってるな〜という印象。「P総研」は、その路線の集大成的な作品であり、上連雀おちんちん路線ほどのぶっ飛びぶりはないけれどもまとまった面白さを発揮している。あとこの人について乳も柔らかそうでいいねえ。使うかどうかはともかくとして、楽しめる作品であるとは思う。

【単行本】「コングラッチュレイプ」 祭丘ヒデユキ 晋遊舎 A5 [Amzn]

 面白ーい。「レ研」(→俺感想は2000年10月24日の日記)でブイブイいわせたギャグエロ漫画の凄玉、祭丘ヒデユキの2冊め。「レ研」シリーズについてはコミックマオに移って描いた2作が収録されている。レ研というのは要するに「レイプ研究会」の略で(本単行本に収められた2作では「プ研」になっている)、明るく楽しく即レイプ、レイプで世の中を平和にする大学のサークルである。あいさつは「オーレ」(かつては「Oh!レイプ最高」の略だったが、今回はここにも変更あり)。もちろん内容的には陰惨なことなんか全然やってなくて(といってもシリアスなネタもあるけどね)、ムチャなギャグがいっぱい。セックス共有を政策として掲げたセーラー服の副首相パイズリフらが乱交しまくる「ソ連 〜ソープランド連邦共和国〜」やら、おいしいネタがいっぱい。あとエロ漫画的お約束でいっぱいのあの島(特に名は秘す)を舞台に祭犯プデユキ先生大活躍の「罪と罰から始めよう」も素晴らしい。この人のギャグは、力づくなんだけどそこかしこに知恵がしっかり働いているのがいいと思う。カラッと明るくていい。個人的には「レ研」のほうがよりヒット率は高かったけど、やっぱりこっちもオススメということで。

【単行本】「痴漢やま感大輪姦」 奴隷ジャッキー エンジェル出版 A5 [Amzn]

 エンジェル倶楽部で活躍中の奴隷ジャッキーの単行本。この人の漫画はテンション高くてすごく好き。表題作の「痴漢やま漢大輪姦」シリーズ全3話なんかだと、どこへ行っても痴漢が群をなして集まってくる妙なフェロモンでも出してるのかと思われる少女・美加ちんを中心に、痴漢たちが「ええじゃないか」状態。最終話では遊園地で美加ちんと彼氏がデートしていたら、観覧車にまるで葡萄の房みたいにわらわらと痴漢たちが集まってきて最後は彼女を胴上げしつつ去っていくという、シュールかつ大馬鹿なオチで圧倒してくれる。そのほかのお話もキャラの感情の振幅が激しくて、純愛モノであるにも関わらず、セックスシーンでは彼氏がぐりぐり目をむき出して「愛天使たんエプポロリ〜ン♥」とかわけわからんこと言い出すし。そのほかにも「我慢できんから!!できんマン!マンマン!!我慢マン!!」など、いいセリフ満載。そんなヘンな漫画でありつつ絵が可愛く、かつ楽しく、そしてHなのがまたたまらない。この人の描く女の子って、なんかもう顔から体から、むちむちぷにぷにしててすごく柔らかそう。健康的にお尻がデカいのも好ましい。爆発力のある面白い人です。

【単行本】「はぢめてのせっくす」 魔道うに オークラ出版 A5 [Amzn]

 コミックピンキイでロリ系なエロ漫画を描いている魔道うにの初単行本。ほっぺたがぷにっとして八重歯が可愛いなかなかいいロリ娘さんたちを描く人だ。あとこの人はめがねっ娘がけっこういいと思う。お話としては小さな娘さんたちの、大好きな男の子への想いが高まってHな行為に突入〜という感じのお話が多い。というわけでわりと甘いラブラブHなお話のほうが多い。小さな娘のセックスもある恋愛ということで、男的なファンタジーのツボを押さえた1冊。


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