オス単:2004年8月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則として行っていません

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でも入ってくることがあります。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、取り上げないことが多いです。


▼強くオススメ

【単行本】「リトル・フォレスト」1巻 五十嵐大介 講談社 A5 [bk1][Amzn]

 都会から遠〜〜く離れた田舎住まいのイチ子が、農作物や自然の恵みなどを食べる食べる。五十嵐大介らしい細かな筆致で、それらの食べ物が実にうまそうに描かれる。都会暮らしでは絶対に味わえないスローフードたちへの憧れが募る一作。ただ、憧れるとはいうものの、自分が即今の暮らしを捨てられるかといえば捨てられないし、都会から来たモンがいきなり移住していきなりそういう美味しい部分だけ持ってくなんてことはできないわけで、やはりこれも一つのファンタジーなんであろうなとは思う。あと漠然と「おいしそう」とは思うものの、そのとれたて感とは東京とかに住んでると味わえないので、それがどの程度「おいしい」ものなのかは想像がつかないところもある。そこらへんもやっぱしファンタジ〜♪であるなあと思います。

【単行本】「刺星」 中野シズカ 青林工藝舎 A5 [bk1][Amzn]

 うーん、いいですね。何がいいってやっぱり絵。この人は1作品描くのに、いったい何枚のスクリーントーン使ってるんだろうと思ってしまう。といってもスクリーントーンの多重貼りや削りが凄いっといったタイプではない。紙を切り取って貼り付けていって1枚の絵を作る「切り絵」という絵の作り方があるけど、中野シズカの場合、その切り絵の紙をすべてスクリーントーンでやっているかのごとき画面を作っていて、その独特の質感がなんとも美しいのだ。輪郭線もだいたいなくて、ほとんどがトーン。ペンで描いている部分さえ、もしかして黒色のスクリーントーンでやってるんじゃないかと疑ってしまうほど。こんなのどーやって描いてるんだろーなーとか思う。画像はスキャニングの過程でつぶれちゃってる部分もあるけど、基本的にまっ黒に見える部分以外は全部トーン。恐ろしく細かいトーンワークに感嘆することしきり。お話のほうも、淡い雰囲気のポップな絵柄に似合う、詩的なものとなっていてとても美しい。この人の漫画を見てると、本当に「生原稿を見てみたい!」と思う。とても美しい1冊で、一見の価値あり。

【単行本】「しまいもん」1巻 IKARING 祥伝社 A5 [bk1][Amzn]

 FEEL YOUNGで連載中のギャグ漫画。ユーコとやよいのバカでマイペースな姉妹が、次々と因果な男たちに出会っては別れていくお話。ユーコは男好きのする顔と体型でわりとほいほいやっちゃったりもするが、男の好みが恐ろしくマニアック。バイト先の頭の薄い冴えない中年おやじだったり、ひげもさもさで見るからに不潔なっぽいキモい男だったり。やよいのほうも理想だけは高いけど、やることなすことなんか空回りしっぱなしで、みっともない行動を繰り返す。その様子が異様におかしい。最初のうちはまだ地味な展開だったのだが、回を重ねるごとにユルユルのダラダラ状態になっていって、姉妹の情けなさ全開。出会う男たちもどんどんレベルが下がっていってるような気がするのがまた面白い。とくにユーコのほうの頭悪さ、だらしなさが素晴らしいと思う。単行本でまとめて読んでも面白いが、むしろあのオシャレなFEEL YOUNGの中にポツンと混ざっているという状態のほうが、より映えるかもしれません。

【単行本】「アニメがお仕事!」1巻 石田敦子 少年画報社 B6 [bk1][Amzn]

 アニメーターになろうと上京した双子の姉弟、イチ乃とニ太の青春を描いていく物語。タイトルどおりアニメの制作現場が物語の舞台。石田敦子自身がアニメ業界の人だったこともあって、なかなか普通のアニメネタの漫画では見られないようなところまで突っ込んでて面白い。例えば、辞めてほかの会社に移ったアニメーターの新しい職場に対して、集団での嫌がらせの無言電話攻撃が行われたり、イヤ〜な話もいろいろ。またイチ乃・ニ太の賃金事情なんかもチリチリくるものがある。しかしそんな中でも「アニメが好き」という情熱を持ち続ける二人の姿は素直に応援したくなる。普段何気なくアニメを見ているけれども、その舞台裏でこういった苦労がいろいろあるのだなあなどと思ってしまう。作者自身の実体験に基づいているところがかなり多いだろうし、描いていてキツく感じる点もあろうけれども、そこから逃げないできちんとお話を作っている点はとても石田敦子らしい。

 見る側としては普段気軽にいろいろいっちゃってて、それはそれで視聴者側のスタンスとしては間違っていないんだろうとは思いつつも、その作品の向こうにはいろんな人がいていろんな想いが込められているってことも、わきまえておきたいところではあるな、などと感じたりした。まああまり意識しすぎて、評価を曲げちゃったりしたら、それも不自然だし違うと思うけれども。

【単行本】「CLOTH ROAD」1巻 作:倉田英之+画:OKAMA 集英社 B6 [bk1][Amzn]

 OKAMAの作画はさすがに美しく、設定もユニークでなかなか面白い。ナノテクノロジーの発達で、コンピュータと衣服が融合した世界が舞台。この世界では服を作るデザイナーとそれを着こなすモデルが主役。そんな中、駆け出しのデザイナーである少年・ファーガスと、生まれてからずっと離れ離れだった彼の双子の妹(姉かも)のジェニファーが、さまざまなバトルをくぐり抜けながら旅していくという物語。

 服がコンピュータでそれを使ってバトルするという発想は奇抜ではあるものの、それなりに納得はできるように作ってあるし、バトルの様子もスピード感があってダイナミック。ここまでのところはなかなか面白く来てるんじゃないかと思う。ファーガス少年はなよっちいながら、いきなり激したりしてちょっと危なっかしいが、まあファーガスもジェニファーもしっかりかわいいとは思う。まだ1巻なのでこれからどう転ぶかは分からないけどまずは期待。何はともあれジェニファーにいろんなデザインの服を着せてもらいたいですな。


▼一般

【単行本】「赤灯えれじぃ」1巻 きらたかし 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 ヤングマガジンで連載中のなにわ恋愛ストーリー。ガードマンの仕事場で知り合った、ヘタレだけど一本気なサトシと、パツキンでアネゴ肌のチーコ。この二人がだんだんお互いの距離を縮めていき、恋人同士になるという内容。チーコのほうはヤンキーっぽいものの実は純情。二人とも奥手で距離が少しずつしか近づいていかないもどかしさがかえって微笑ましい。垢抜けない絵柄で、あんまり器用っぽくないところがいいのです。

【単行本】「ガンダルヴァ」上下巻 正木秀尚 河出書房新社 A5 [bk1][Amzn:/

 形がないだけに漫画では描きにくいものの一つである「匂い」の描写にこだわった一作。これまで単行本未収録、かつ雑誌連載が終わった後も描きためられていた分も合わせた完全版の単行本。誰よりも匂いに鋭敏で、かつ人が嫌うような人間の体臭などからも悦楽を見出す香田という男が主人公。彼が、脇や足など素敵な体臭を持つ女性たちと繰り広げる、大人の物語。普通は人が嫌がるような匂いに興奮を覚え、そこから目眩く世界を作り出していく様子は、一幕のショウを見ているかのよう。情熱的で官能的でたいへんカッコイイ。雑誌未掲載分も約130ページ以上あるので、イブニングKC版を持っている人にとっても購入する価値は十分。正木秀尚のシッカリした艶のある描線は美しく、濃厚な世界観をしっかり演出。表現、ストーリーともに密度が高く、満腹感のある一品。やはりこの匂い表現は一読の価値ありでしょう。


▼エロ漫画

【単行本】「ちゅ〜ぺっと」1巻 島本晴海 富士美出版 A5 [Amzn]

 桃姫で連載の長編Hラブストーリーが単行本化。これは甘くてとても良いですなあ。高校生の藤川秋は、友人に誘われてその叔母がやっているソープランドに連れていかれる。そこでイチゴという女の子に出会い、二人は強烈に惹かれ合う。しかし「ソープ嬢なんかにハマらず彼女を作れ」というイチゴの言葉もあり、藤川は彼に一途な想いを寄せてくる後輩女子ひいなとも関係を持ってしまう……という展開。基本的には三角関係モノのラブストーリーだが、それぞれの相手に対する「好き」って想いがまっすぐなのがいい。例えば藤川とイチゴの初めてのHシーンでは、イチゴのきれいさを目にした藤川がジーンと感動さえしてしまう。藤川に対するひいなの献身的な態度、エッチしたときの幸せそうな表情などもたいへん濃厚な甘さ。各キャラクターの表情もよろしくて、うれしいときは本当にうれしそうに、切ないときは本当に切なそうにする。本命はやっぱりイチゴのほうだと思うが、ひいなの健気さも捨てがたし。この後、彼らの関係がどうなっていくかも気になる。キャラクターに暖かみがあって、繰り返し読みたくなる1冊。

【単行本】「大人になる呪文」2巻 パニックアタック FOX出版 B6 [Amzn:1巻/2巻][楽天:1巻/2巻

 1巻の発売から2年、ついに2巻が出ました! (1巻の感想は2002年8月2日の日記参照)この巻もロリロリ風味満載でたいへん楽しいです。魔法修行中のぷにぷにな妹・未由と、ロリコンなお兄ちゃんの日常生活を描いたお話。お兄ちゃんはなんだかいろいろ理由をつけて妹にイタズラをしかけ、ときにはちょっとエッチっぽい展開になったりするけど、一線はけして越えず。未由もそっちのほうの知識はないので、なんかあってもお兄ちゃんに遊んでもらってるだけとしか思わない。妹はとにかく兄に甘え、兄は彼女をかわいがりまくる。そんなわけで鬼畜な話になることはなく、いつもカラッと明るく楽しい。

 「プリキュア」だの「そーなんだ!」だの「味の助」だの、そのときどきのアニメ・漫画ネタもさりげなく……はなく盛り込みつつ(掲載時期の関係で旬でなくなってるネタもありますが)、ロリぷに妹を萌え萌え〜っと描くことに専念した作風は潔いといっても良い。天真爛漫すぎる未由が、ナチュラルに見せる美味しすぎる萌えアクション、そしてそれに身悶える兄の様子がとにかく面白い。煩悩に、小動物をかいぐりかいぐりしまくるような感情をプラスしたようなドタバタコメディ。ヒメクリがいったん休刊になっちゃったんで、今後も続くかどうかはよく分からないけど、楽しませていただきました。

【単行本】「発電ぱんだくん!」 和六里ハル コアマガジン A5 [Amzn]

 可愛くてエッチで面白い! 以前コミックフラッパーで「魔法のエンジェルグリグリビューティー」[bk1][Amzn]を描いていた和六里ハルの2冊め、エロ漫画では初となる単行本。お話としては、すごくカワイイんだけど、ちょっとでも興奮しちゃうとやたらめったらおちんちんがうずいちゃって、授業中でもしょっちゅう抜け出してはヌイている少年・ぱんだくんが主人公。そのぱんだくんの前にどこからともなく現れてはHなことをしてくれる謎の女性・絹枝さん、ぱんだくんの大好きなクラスメートのアズキちゃん、それからアズキちゃんが好きでぱんだくんをライバル視しているささげちゃん。この4人を中心にHで楽しいドタバタな日常が展開されていくという内容。近藤るるるとよく似たキュートな絵柄で、ショタっ気、ロリっ気たっぷりのHワールドが展開。お話のノリも良く、畳みかけるように次々とコミカルな事件が起きる。なんだかんだで流されてしまうアズキちゃんの様子はたいへんソソられるものがあるし、ちょっと太めの絹枝さんのふくよかさ加減もグッド。遊び心もりもりで楽しく読めて、明るい絵柄のわりに意外とエッチだったりとお得感のある1冊。「グリグリビューティー」のときもHっぽい描写は多かったけど、すごく楽しんで描いているように見えてたいへんいい感じです。

【単行本】「ぼくちん。」 よこやまちちゃ 松文館 B6 [bk1][Amzn]

 よこやまちちゃとしては初のボーイズラブ単行本。もともとその手のネタっぽいものは描いていた人だけに違和感ないです。この人といえば銀麗というイメージがいまだに強かったりするんだけど、銀麗→正太郎くん→ショタとイメージもつながるので違和感がないのも当然というべきか。まあエロ的にも巨乳よりはむしろ尻の人であろうかと思うので、実用度の面でも変化なし。むしろあののびやかで胴体のつるーりすらーりとした画風は、男の子を描くことにおいて、より威力を発揮してるやもという感じもした。奔放でいい具合に適当感あふれる話作りも楽し。

【単行本】「甘熟娘」 小暮マリコ ティーアイネット A5 [Amzn]

 この単行本も、小暮マリコらしいフレッシュでムチムチした女の子たちの、ボリューム感たっぷりでジューシィなエロシーンが楽しめる。基本的に明るくキュートな絵柄でラブラブなエッチが多いんだけど、エロシーンのテンションは高く実用度も十分。最近の小暮マリコおよび関連作家(ジェームスほたてとか)の作品は、エロ的にたいへんコンスタントで良いです。この単行本の中では、生徒の理系オタク男子の実験事故が原因となったのか彼にぞっこんな女教師若奥様の出てくる「奥様改造計画」、しばらく会わないでいたら母親が激ヤセして超かわいく変身してたいという「ワガママな彼女」、それからお兄ちゃんにラブラブな妹が仕事場に押しかけてくる「妹コミュニケーション」あたりが好み。


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