つれづれなるマンガ感想文10月後半

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「つれづれなるマンガ感想文」10月前半
「つれづれなるマンガ感想文」11月前半
一気に下まで行きたい



・「プロキシマ1.3」 粟岳高弘(2002、FOX出版)
【アニメ】・「陸上防衛隊まおちゃん」 「雪祭りわっしょい」
【アニメ】・「超重神グラヴィオン」第3話「迷宮」
・「WEEKLY プレイボーイ」46号(2002、集英社)
【書籍】・「中国『野人』騒動記」 中根研一(2002、大修館書店)
・雑記
・「ハロー! モーニング」(テレビ東京)
【アニメ】・「灰羽連盟」第2話「街と壁 トーガ 灰羽連盟」
【アニメ】・「機動戦士ガンダムSEED」
【アニメ】・「超重神グラヴィオン」第2話「重力の使命」
【アニメ】・「わがままフェアリー ミルモでポン!」第30話
・「エルフェンリート」(1) 岡本倫(2002、集英社)
・「WEEKLY プレイボーイ」45号(2002、集英社)
【CD】・「プリティ・ケーキマジック/ミルモのワルツ」(2002、東芝EMI)
【CD】・「Dream」 吉幾三(2002、徳間ジャパン)
【CD】・「釈お酌」 釈由美子(2002、プライエイド・レコーズ)
【アニメ】・「わがままフェアリー ミルモでポン!」第28〜29話
・「快速! FREE NOTE Book!!」 すがわらくにゆき(2002、ワニブックス)
・「いちご100%」(2) 河下水希(2002、集英社)
・「悪太郎」(1) 結城真吾、みね武(2002、秋田書店)
・「エイケン」(7) 松山せいじ(2002、秋田書店)






・「プロキシマ1.3」 粟岳高弘(2002、FOX出版)

成年コミック。B6判。主に「カラフル萬福星」に掲載されたSFチックなHマンガの短編集。
世界観は共通していたりしていなかったりするが、個々のお話には以下のような共通点がある。

・主役は女の子。語り手が男の子でも、やっぱり女の子が目立っている
・田舎町が舞台。「うさぎ追いしかの山」チックではなく、どこか人工的な景観
・その田舎町が、SF的設定によって隔離されている場合が多い
・異星人・怪生物が出てくる
・Hのシチュエーションとしては、女の子に露出趣味やライトSM趣味がある場合が多い
・女の子の露出趣味のため、ほとんどの作品でその子がハダカで田舎町をウロウロするシーンが描かれる

以上のことがこれでもかと繰り返し描かれていて、静的な作品印象とは逆に強烈な個性を感じさせる。まとめて読んでみると思ったより厳密なハードSF的世界設定はないのだけれど、作者の頭の中には強いイメージがあるのだなとわかる。

本書に収録されている比較的長めの作品「隣星1.3パーセク」は、私は同人誌としてまとめられた99年に読んでいる。正直このときはもうほんの少し、わかりやすければ……と思ったのだが、あれから何度も作者の作品を読んでいると、設定、雰囲気ともにだんだん掴めてくる。このため、今回再読したときには、それほどむずかしさは感じなかった。

基本的には「冷戦に東側が勝利して、1960年代に限定核戦争が発生した日本の田舎」が舞台のことが多い、と漠然と把握していれば、細かい設定やネームのところでひっかからずに読み進められる。
エロ的には「設定的にひねった野外露出モノ」という珍しい立ち位置にいる作風だな、と思う。
(02.1031)



「ミニモニ」が小説の文庫になるそうだ(←天上の飛鳥)。「学園祭にコンサートで招かれた4人が事件に巻き込まれながら、超能力を使って解決していくという物語」になるそうだが、超能力ってなんだ!? でも、どうせ期待してもありゃりゃな設定になるんだろうなあ。さらに「イラストをコゲどんぼが描く」そうである。これを見ると、辻ちゃんが完全に「コゲどんぼの普通のキャラ顔」になっている。
(02.1031)


【アニメ】・「陸上防衛隊まおちゃん」 「雪祭りわっしょい」

第7話の感想以来、ひさしぶりに感想を書いてみたりする。でもまあ、言いたいことは7話のときにダラダラ書いたことと変わっていない。要するに、お笑いグループで言うと「ジョビジョバ」や「ラーメンズ」や「バナナマン」、ちょっと前だと「さまぁ〜ず」ではない「バカルディー」とかが「小劇場っぽい=どこか高踏的な感じがする」という理由で批判されるのと同じ構図が、マンガやアニメにもあるということではないかと思う。
こうした「小劇場っぽい」モノに対する批判は、たいていが「人を笑わせるということに一点集中せず、どこかカッコつけている」ということを論拠にしている場合が多く、その意味ではブロードウェイとかが好きそうな小堺一機なども含まれる。
若い頃、そういうのを面白いと思うかつまらないと思うか、ロイヤルホストやガストで議論を繰り広げた人々も多かろう。が、最近思うのだがこういうのって「笑わせるだけでなく、カッコいいところも欲しい」と思う人がつくっていて、また見ている人がいるわけだから、まさにその点を指摘しても不毛なだけだと思うのである。

さて、7話以来本作をずっと見続けているのだが、やはり「テンポがいい」という点では「まおちゃん」はきちんと評価できる作品だと思う。今回は、雪祭りに行ったまおちゃんたちが、晴天の雪祭り会場から雲行きのあやしい山を見上げ「きっとあそこにいる人は遭難しているだろう」と想像を巡らしている最中、実際そのとおりにエイリアンの女子高生2人、およびかわいいエイリアンが遭難しかけているところを平行して描いている。

みそらやシルヴィアがまおちゃんを怖がらせようと誇張して言っている「遭難ばなし」が実際そのとおりになっているところが面白いわけで、交互に描かれるそれぞれのシーンに単純ながらおとしどころがあって楽しめる。
(02.1031)



【アニメ】・「超重神グラヴィオン」第3話「迷宮」

公式ページ

ぶっちゃけ、やや劇画寄りなアニメ絵で描かれたカッコいい男やカワイイ女の子や巨乳のおねーさんが、大河原邦男デザインの巨大ロボに乗って戦うアニメ。
まだ2話しか見てないんだけど、OPがあんまりカッコよくないのと、合体シーンのわかりにくさを除けば案外楽しめるアニメだと思う。

で、最近、自分の書いた昔の感想文を読み返しているのだが、けっきょくレビュー的に面白くしよう&私自身の主張をしようとして、かえってつまらなくしている文章が多いなあと自分で思ったりした。このトシになると「作品との出会いによってシュミが変わる」ということはまずないわけで、いきおい個々の作品について、自分の理想、「こうあって欲しい」という願望を当てはめてダラダラ書いているにすぎない場合が多いな、と自問自答してみた。
その方法論をそのまま使わせてもらうと、私は巨大ロボットものの、ある意味悪趣味な、猥雑なところが好きだったのだが、どうしても「洗練」の方向に向かっている気がしていた。で、本作はあざといことも含め、いかがわしい、合成着色料のふんだんに入った駄菓子のようなものなるんじゃないかと期待している。

今回、「進化する敵」であるゼラバイアを倒した根拠が新兵器を登場させるという意味でもはっきりしないこと、単にお屋敷の中を見せるためだけにつくられたような話であることから、そっち方面の期待ができるのではないかと思った。
(02.1031)



・「WEEKLY プレイボーイ」46号(2002、集英社)

「ファンタジ星(スター)」(後編)平松伸二は、創刊36周年特別記念読切サッカー漫画。ドイツの名門チーム、ハイル・ヒンデンブルグとの試合で苦戦を強いられている新生ジャパン。
ジーケン監督は中仁田英雄に変わって、背番号1000の謎の男、ロベルト・火祭を登場させた!

先週からの続き。あいかわらずパワー全開、ツッコミどころ満載(しかしたぶんそれはある程度計算されている)の平松マンガを堪能できる一品。主人公であるロベルト・火祭の強さをただひたすらにアピールするだけであり、それでいて過去の「十年一日、同じことをやってりゃいいんだろう」とワンパターンにあぐらをかくマンガでもない、平松マンガがここにある。
敵将・ガーンは先週と比べると、早くも顔が変わっているように感じます。オリジナルキャラっぽくなってる。とにかく、ガーンのやられっぷりがこのうえもなくすさまじいので、たぶんカーン様ファンの人は苦りきると思います。が、それだけ実在のカーンが一般読者にさえインパクトを与えたということが言えると思います。

Jリーグの発足から2度のW杯出場を経て、日本人のサッカー観もだいぶ変わったと思うんですが、平松作品ではあいかわらずの荒唐無稽パワーを発揮してくれるので、ある意味うれしいかぎりです。

以下はマンガとは関係のない、他の記事に関するダラ書きです。

まず巻頭グラビアの「仲根かすみセレクション」は袋とじ。私はこの袋とじってやつがすごく好きじゃなくて、なんでかっていうとまず袋とじにしなければならない、読者側に対する利点ってほとんどないから。
実際、袋とじで切って中身を見て、驚いた経験はグラビアを見始めて一度もない。今回、仲根かすみの過去のグラビアからのセレクションだから、クォリティ的には信頼できるものの、逆に袋とじにする理由がない。
ファンも保存がしにくいだろう。
しかし、仲根かすみデビューから4年とは時の経つのは早い。

小倉優子は、めずらしくハズレっぽいというか、DVD発売記念のグラビアで、宣伝メインであまりよくなかった。
それと、この人はたぶんつくり声でしゃべっていると思うんだけど、あれはやりすぎ。あのつくり声のやりすぎ感は、一時期の山川恵里佳に匹敵すると思う(などと思いつつ今調べたら、同じ事務所だった。もしかしてあのつくり声は直伝か!?)。

坂上香織は、ヘアヌード。この人、「ウルトラマンコスモス」が終わってから早く脱ぎすぎ!!(隊員役で出演していた) こういうの、いいんでしょうか? いやまあたとえば「コスモス」で初めて坂上香織を知って、「この人のハダカが見たい……見たい……」と切望している中学生男子とかいたら、まさにドンピシャリの企画なんだろうけど。昔はそういうことは絶対になかったから。でもそんな人いないんでしょ? どうせ今の男子中学生って全員AV見てんでしょ?
まあいいです。とにかく坂上香織の清純路線から、突然(というふうに私は見えた)のオールヌード披露には驚いたもんです。しかもその脱ぎっぷりのある種の豪快さ、気前の良さにも驚いたけど。スキャンダルがあったとか、いったん引退してまた復帰したとか、そういう「きっかけ」がゼロだったのも衝撃の理由でした。
まあそんなことどうでもいいです。昔の話だから。

緑川のりこは、あいかわらずイイです。みうらじゅんが押してるってだれかから聞きましたが、よくわかります。ロリロリ路線で突っ走ってるのが小倉優子で、近頃セクシー路線で突っ走ってるのがこの人。巨乳というギミックだけをウリにするのではなく、ちゃんとエロく撮ろう、撮られようっていう意志(本人の意志かどうかわからないが)を送り手から感じるし。
宮地真緒がNHKの朝ドラ主演で早々にグラビアから足を洗う可能性もあるんで(この間やってたけど)、チャンスはあると思う。
で、小倉優子と緑川のりこって二人とも「アバンギャルド」っていう事務所で同じなんですよね。

あと「スカイフィッシュ」の記事が載っています。新しい未知動物として話題のやつ。解説は、UFO本とか出してる並木伸一郎という人でした。

次週はグラビアに平田裕香が出ます。見よう。

……という、なんだか精神的にテンパってるときほど文がダラダラ長くなる悪い例でした。ガックシ。
(02.1024)



【書籍】・「中国『野人』騒動記」 中根研一(2002、大修館書店) [bk1] [amazon]

「野人(やじん)」は、ウワサになる未知動物としては比較的新しい部類に入る、中国・湖北省神農架の山中に生息するという「猿人」っぽい幻の生物である。ネッシーやツチノコのように、一時的に大ブームになるということは日本ではなかったようだが、それでも断続的にテレビの特番などで紹介されている。
個人的には「パトロール中の兵士が野人につかまって、数カ月手足をしばられたままなぶりものにされ、逃げ出した」という記事が「やじうまワイド」で紹介されたのを覚えている。

本書は、そうした「野人」、さらに人間と野人との混血「雑交野人」が存在するのか、そして中国で「野人」がなぜもてはやされるのかを考察した1冊。

前半は、中国に留学していた著者が「野人」の記事にふれ興味を持ち、仲間たちとともに実際に湖北省神農架を訪れたレポートになっている。「野人」の博物館があるなど、すでに「野人」イメージが(観光客を呼び込みたいという意味も含め)地元の生活に密着しているようす、「野人」研究家へのインタビューなど、ちょっとした探検隊もの風で面白い。次の章へのヒキもうまく、ひきつけるなあと思ってあとがきを読んだら筆者は「川口浩探検隊」のファンだったというから、そのパロディなのかもしれない。
「野人」研究家のインタビューは2人に対して行われ、一人は世捨て人みたいなあやしい人、もう一人は学術的研究者っぽい人。とくに世捨て人みたいな人は「畸人研究学会」に登場しても良さそうな人であった。

後半は、中国での「野人」イメージがどのように形成されていったかを「山海経」などの古典やさまざまな目撃談、「野人」をテーマとした小説やマンガなどから考察する。また、湖北省神農架という土地と野人との関わりについても、「実在性」とは別のアプローチから考えられている。

前半の実録モノ風面白さから、後半は「野人」そのものではなく「野人」イメージについて考えるというメリハリもきいていて、読み物としてたいへんに面白い。結論は知的好奇心をくすぐるものだが、ネタバレになってしまうかもしれないので伏せておくことにする。
私が昔テレビで見た「野人につかまった兵士」のエピソードも紹介されていた。これがまた詳細はギャッフンなシロモノ。こういう記憶の隅をつついて洗い出してくれるというのも、読書の楽しみではある。
文章は適度に「茶目っ気」みたいなものがあるし、おそらく取材や資料の検討もしっかりしていると思われる。オススメ。
(02.1030)



・雑記

エスロピが閉鎖かあ。月並みですが、「お疲れさまでした」と言いたい。

で、こうした人気のあるサイトが閉鎖、あるいは休業するたびにいろいろ考えてしまうのだけれど、今回の場合、私見としては同じジャンルのニュースサイトが複数あってもいい、いやむしろ複数ある方がいいと思ってます。
管理人さんが「他のヒトが提供する情報を、こっちも出す必要ないじゃん」と思う気持ちはわかるつもりなんですが、ニュースサイトの存在意義は情報取得の効率化だけではないと考えてますので。
エスロピなら、確かモーニング娘。に合わせて、他のミュージシャンの情報とかも混ざっていた。SPANK HAPPYとか。で、そういうのを合わせて受け手は通読するわけだから、どういうくくりで管理人が情報をとらえているのかを把握できるし、それがニュースサイトの個性だと思っています。
コメントがまったくなくても、ニュースをどう「編集」するかで個性ってのは出るし、また出ないとニュースサイトというのは人気が出ないでしょう。

「今のスタイルだと疲弊する」というコメントに対しては、何も言えません。まあきちんとしたニュースサイトっていうのはどうしても情報の鮮度と量が勝負ですから、並大抵の努力じゃないと思います。やっぱり情報の消費速度が速くなりすぎてる、っていうのは私も感じますんで。
あと「孫ニュースサイト」ってのがあるとしたら、最初に拾ってくる人がよけい疲労を感じてしまう場合もあるのかもしれないですし。

▼ちゆアンケート「強い奴から倒すか、弱い奴から倒すか」バーチャルネットアイドル・ちゆ12歳 ポータル)。どうせみんな読んでるだろうと思って詳しく解説はしませんが(と言いつつしますが)、路上ケンカマンガ「ホーリーランド」で「ケンカで複数の人間を相手にするのには、弱い奴から倒すのがいい」と書いてあったことに端を発する、「強い奴から倒すのがいいのか、弱い奴から倒すのがいいのか」のアンケートです。

これ、すごくよくできてて、アンケートの編集とかコメントとかもさすがだと思うし、「ちゆ」というたくさんの人が見ているサイトだからこそ、アンケートのコメントの層も厚い。まあ要するに漢(おとこ)の仕事だと思いますね。ちゆのお兄ちゃんが男かどうかは知らないですが。

でも、なんかおれもう毒舌ギャグとかダメかもしれない……とかも思った。理由を箇条書きにすると、

・「ケンカのセオリー」なんて『らしいければいい』じゃんと思う。フィクションとして楽しむ場合、そこにワンダーがあればいい。
・「普通の人」のケンカばなしは、尾鰭の付いた格闘家のケンカばなしと違って、生々しくてなんかイヤだ。「石でメチャクチャに殴った」とか。
・梶原一騎がホラ吹き、しかも偉大なるホラ吹きだったことを前提に話を進めてほしい。
・「ホーリーランド」も、2回くらいしか読んだことはないがケンカマンガとしては新境地だと思う。作者が実際にケンカをしたことがあるかどうかは、あまり関係ない。夢枕獏だって、「人を殴ったこともない」って言ってるんだし。

……という、まったく冗談の通じない朴念仁みたいな結論になってしまいました。まあ、これはオカルトとか超科学の真贋論争に必ず心情的に出てくる「虚実皮膜を楽しんでるんだから暴きたてなくてもいいじゃん」という意見にも通じるものがあるんですが、今現在、日本でストリートファイトの技術論が切実に必要な場合ってのはまずない。そんな中、どういうケンカが効果的かは「物語内で通用していればいい」んじゃないでしょうか。
……っていうか、私が欲してるのは「物語内のリアリティを有するケンカ」であって、それはある程度、作品の中で醸成されなければならない。たとえば梶原一騎のカラテ最強説はそれなりにきちんとしたものだったし、それをくつがえした夢枕獏の「餓狼伝」も「物語内格闘技理論」はしっかりしていた。「刃牙」も同様。
問題は「ホーリーランド」という物語の中でリアリティがあるかどうかであって、「『ホーリーランド』のケンカはリアリティがないからつまらない」というのであれば、それは総合的にどのようにリアリティがなく、どのようにつまらないかが論じられねば……って、やっぱり朴念仁みたいな結論になってしまいました。もうやめます。

・Hマンガ家「師走の翁」の同人仲間で、師走の翁HP管理人の濱まちす電波日記が一時お休み。なんだかいろいろあったみたいだけど、この人にもお疲れさま、と言いたい。

ここの10月23日の日記、
師走の翁は僕の友人であり、同人パートナーであり、尊敬できる漫画屋でもある。
高校時代に初めて彼と会ったときに「こいつとは同じ夢を見られる」と思い今まで続いてきた関係です。しかし、僕には彼の所まで飛べる翼が無かった。同人活動をやっていても、イベントでページをめくられるたび、僕のページにさしかかると本を置いて帰って行く人たちがたくさん居る。それはひとえに僕の漫画のお粗末さ故です。そんな僕を、彼は同人サークルの一員として接してくれ、また、仕事においても信頼して仕事を任せて呉れた。

ここらあたりの気持ち、すっごいよくわかる。実際、濱まちす氏のマンガを読んだことはないんで、マンガの実力そのものは知らないけど、心情的にはすっごいよくわかります。
実際、モノを書いた人にしかわからないが、自分の書いたモノがどこまで届くか、届かないかは本当に自分で書いてみなければわからない。コミケを回って、いくら売り上げ部数の平均値を出しても自分がヘタならどうしようもない。コミケ全体の標準レベルを推し量っても同じこと。ヘンなたとえだが、平均寿命が延びても自分がその年齢まで生きられるかどうかとはあまり関係がないのと同じことだ。

たいていの才能のない人はなんやかや言って創作活動から足を洗っていくし、そのときに言い訳を言う者もいるし、自分の実力について見つめずに「なんとなく面白くなくなったから」という理由でリタイヤする人もいる。「面白くないのは売れないから、あるいは支持者を得られないからじゃないの?」とかも思うんだけど、当人は本当に気づかないままやめていったりする。
そんな中、この人はすごく正直だし、ふだん「ないこと」にされがちなんで心に響いたりした。

・数少ない、当サイトを毎日覗いている人、しかもBBSを覗いている人は、「よりぬきマンガつれづれ(工事中)」というコンテンツを見かけたと思う。今はない。
情報が押し流されていくことに何となく危惧を感じ、当「マンガつれづれ」において過去に書かれたレビューで、再読に耐えるものを分離独立させようと思ったのだが、……再読に耐えるものがほとんどなかった。

サイトを始めた頃からの自分の「つれづれ」におけるレビューを読み返してみると、「その時期だけ」のものがほとんどだった。「ぶっとびマンガ」の場合は、それなりに心がけて書いているのだが(まあレビューが面白いかどうかは各自判断してください)、普通のマンガのレビューはホント、自分で読んでて鮮度がすぐ落ちると思った。
なんだか客観的になってしまったんだが、サイト開設当初は過剰に「けなしてはならない」と思っていたらしく、今読むと「?」というくらい作品を持ち上げている場合が多い。
この「持ち上げ」は、時間が経つほどシラケたものになっていく。もちろん、雑誌が出たときにリアルタイムで読んで面白く感じ、その後はなんだかサッパリ、ということもよくあることだし、「雑誌内相対評価」という部分もある。「この雑誌でいちばんマシなのはこれ」と思うと、いきおい持ち上げてしまうわけだ。
でもそれは、確かに雑誌を読んだときのファーストインプレッションというか。「この時期の自分がこの時期に読んだ感想」であって、ウソではない。しかし、時間軸から切り離すとどうもおかしいことになりそうだ。日付を毎回付けているのは、もともとそういう意味があるんだけどね。

……まあ、もともと「けなしのためのけなし」とか「愛情ゼロのけなし」はいっさいやらないつもりなんで、過去書いてきたことをマズいとは思わないですけどもね。ただ「よりぬきマンガつれづれ」にかけた手間が、かかったわりに実りのない作業だったんで、ここに愚痴ってみた次第。
(02.1029)



・「ハロー! モーニング」(テレビ東京)

公式ページ

「モー」関連のバラエティ番組「ハロモニ」。10月に入って、リニューアルしてもうそろそろひと月。でも1日5本撮りとかいうウワサもある(っていうか、台本が5本で1冊になっているらしい)。本当だったらすごいね。あのテンションを、長時間維持できるのは。

んでまあ、一見話は飛ぶようだが、「エルフェンリート」(私の感想)ですっかり頭を悩ませてしまったんですよ。
これを「エルフェンリート問題」と名付ける。自分の中で。
要するに、同作はいろいろな「ヘン」な要素を持ち合わせていて、それが魅力のひとつにもなっているんだけど、それを説明するのに少々時間がかかるんですよ。
「エイケン」も同じタイプの問題点というか「エイケンを語る人にとっての問題点」を抱えてはいるんだけど、あれはある意味完成形だからどうとでもなるという感じはする。
でも、「エルフェンリート」の面白さ、ダメさ、将来性、他ジャンルからの引用からの読み解きなどを解説することは、けっこうむずかしいんじゃないかと思うんですよね。
簡単に言えば「オタク的面白さ」の説明。
もちろん、それは同作が「面白い」ということを前提に言ってるんですけどね。

同じようなことは「ジャンル内ジャンル」みたいな、長期シリーズ化されている作品に言える。要するに「ジャンル内での評価」っていうのが外部とは別にある。「ゴジラ」とか「ガンダム」とか。
まあ、本当はどんなものにでもあるんだけど、特定ジャンル内がミクロコスモスみたいになっちゃってるから、外部に対して説明がむずかしい。

で、前置きが長くなったんですけど、モーニング娘。も同じことがいえます。……といっても、私もマニアの人から見たら半可通というか通りすがりの人間にすぎないんでしょうけどね。にも関わらず私が感想を書こうと思うのは、「ハロモニ」って、1年くらい前の石川梨華を知っているとすごく面白いんですよ。
「なんか面白いことやってください」みたいなこと言われて、いちばんダメだった人が、今はいちばん前に出てやってるんですよ。一見さばけてそうな中澤裕子よりできてる(……っていうか、中澤裕子ってお水的な仕切りが得意技だからなー。本人は別に、ギャグとかできなくていいんですよ)。

でも、そういうのってホントに小さなコミュニティ内の出来事ですよね。これは「ごまっとう」(後藤真希、松浦亜弥、藤本美貴の新ユニット)にも言えることです。3人のファン、3人を知っている人にとってはものすごく面白い組み合わせなんですよね。でも知らない人にとっては何じゃそりゃっていう。総合格闘技の、桜庭じゃない人とホイスじゃない人との夢のカードとかに近いです。
頼まれてるわけでもないのにこうして感想を書くときに注意すべきなのは、そうした「ファン内での事件」とか「知っている人にしかわからない変化」とかをどのように伝えるのか、あるいは伝えないかということではないかと思うんですよ。
私は伝える派ですけどね。

以下、リニューアルして数回経ってからの感想。

「ハロモニ。劇場〜昼下がりのモーママたち〜」は、第1回、第2回ともにラストが「みんなでダンス教室に行って、デタラメな踊りを踊って終わり」という新田的に超絶的に(意外性も含めた評価で)面白いオチでした。が、さすがに毎回それはムリだと見えて、ダンス教室の飯田は喫茶店の店長、オスカル飯田としてレギュラー化するらしいです。
このオスカル飯田というのは、飯田がつけヒゲで宝塚風に出て来るんですが、なんか「飯田につけヒゲ」ってだけでツボに入っちゃって、面白かったです。
あと「壁にかかった絵」の役で高橋愛が出ています。彼女を、みんなでくすぐって笑わせようとしたりするわけです。すなわち「ハナ肇の銅像」です。たぶん高橋愛本人は「ハナ肇の銅像」を知らないでしょう。これが輪廻転生というものです。すいません、ちょっと大げさでした。

「ミニモニ。かっぱの花道!」は、「ミニモニ。は実はかっぱだった」という設定のもと、貧乏なかっぱ四姉妹が毎回自分たちが貧乏であることを嘆くというシュールコントですが、なぜか数回でミカの衣装が元の「ぴょ〜ん星人」に戻ってるんですよね。もしかして、かっぱの衣装がやぶけたかなんかしたんでしょうか? で、この「ぴょ〜ん星人」の衣装も少しやぶけてました。

「新ハロプロNEWS!」も、石川梨華のハイっぷりに驚かされます。毎回、セットの前方に、他のメンバーが扮した謎のキャラクターが台に乗って運ばれてくる、というパターンになったようです。「人が台で運ばれてくる」というだけで個人的には面白いんですが、まあ私だけ面白い世界に入っちゃうのはやめておきます。
ちなみに、今週は「パパイヤ鈴木」みたいなカツラをかぶった高橋愛でした。

あとは藤本美貴が歌手方面のいろんなことにチャレンジするコーナー(1万人集めてイベントをやるなど)が始まりましたが、個人的にはもう「試練もの」はお腹いっぱいなので、ふた昔前によくあった5分くらいの「芸能スポット」みたいにしてくれた方が嬉しいです。
知らない? フィルム映像で、5分か10分、「だれそれのコンサートが行われました」とかアナウンサーが解説するのが昔あったんだよ!! なんだかニュース映画みたいで、やたら堅苦しいの。そういうタグイでもうちょっとくだけたので、一本木蛮のとかを見たことありますよ。

「ゴマキスズメ」は今週はなかった気がしますが、要するにゴマキがスズメの着ぐるみを着て、カラスの着ぐるみを着た吉澤とコントをするというものです。顔が隠れては具合が悪いため、くちばしも何もないので、とくに吉澤のカラスがすごくヘンです。まあるくて黒い、謎のぬいぐるみみたいにしか見えません。
本コーナーも「かっぱの花道」同様、押しつけがましくない無意味さがいいです。

今週はスペシャル企画でメンバー全員がものまねをしたんだけど、まじめにやっていた人があまりウケなかったのはかわいそうだった。たぶんマジメに口調を研究していた加護(「ラムちゃん」のまね)、マジでうまかった矢口(中島美嘉のまね)に至ってはかなり編集され、しかも対抗戦で負けていた。
あと新垣という人は何も考えてこなかったらしく、本当に何も考えていなかった。何かをあきらめてしまったんだろうか。

そうそう、あと新曲「ここにいるぜぇ!」がものすごく評価高いんですけど、スカパンクっていうんですか? 私あれがどうもダメで……。「有頂天」を思い出す。有頂天は好きだけど。いや、有頂天はたぶん典型的なスカパンクではないんだろうけど。
ああいう感じの曲で思い出すのって、それくらいしかないからなあ(知識なし)。ちなみに一本木蛮って「有頂天」のファンだったらしいよ。むかし「少年宝島」のマンガで描いてあった記憶がある。

というふうに話題がつながったところで(つながってないかも)、感想を終わります。
(02.1027)



【アニメ】・「灰羽連盟」第2話「街と壁 トーガ 灰羽連盟」

公式ページ

えーと、なんか天使の輪と羽を持つ種族(?)、灰羽連盟の話。彼らは人間とともに、壁に囲まれたグリの街に住んでいる。壁の外は、街に住む灰羽も人間も見たことがないらしい。2話を見るかぎり、灰羽は「人間の捨てたもの」を利用することになっているらしい。古い家とか、古着とか。金銭を所持することができないが、労働したぶんは「灰羽連盟」にプールされて再配分されるらしいから、一種の共産制か???

実は作者もよく知らないし監督もよく知らないのだが、これ本当に、ちりばめられた伏線や謎、決着するんでしょうね? 公式ページを見ると「原案」ってあるから、すでに結末までできているのかな???(公式ページを見てもこの辺のことがよくわからん。データをもうちょっと乗せてほしい)
スパイが奪い合うマイクロフィルムや悪の組織の総統の正体など、まあそれが何なのか明らかになってもならなくてもどっちでもいい謎があることは認める。が、明らかにならなければお話にも何もなりはしない謎もある。あの作品がそうだった、そうそうあの作品も……。

こうした「謎」をめぐる問題は、エヴァのときにいろいろ論じられたけれども、エンタテイメント方向で見た場合はどうでもいいっちゃいい話ではある。が、SFやミステリに慣れきっているとその「謎の解明部分」にやはり非常に期待をかけざるを得なくなる。
反面、近年の作品に対して、そうしたことをほとんど期待しなくなっている自分がいる。頼むからちゃんと謎、解明してほしい。
(02.1027)



【アニメ】・「機動戦士ガンダムSEED」

公式ページ

地球連合(ナチュラル)とザフト(コーディネイター)の対立は泥沼化し、開戦。
(地球の地元民が「ナチュラル」、コロニー育ちが「コーディネーター」というらしい)

その約1年後、中立国家の衛星「ヘリオポリス」を、ザフトのモビルスーツ部隊が襲う。大西洋連合が極秘裏に製造していた連合側モビルスーツ「ガンダム」奪取のためだった。ザフトは4機のガンダムを奪うが、コーディネーターであるキラ・ヤマトは自衛のためにストライクガンダムに搭乗して戦い、いろいろあって「ナチュラル」の新造戦艦「アークエンジェル」に乗り込まねばならなくなる。
敵は4機もガンダムを奪取している。ガンダムVSガンダムが見もの……なんでしょうか。

なんか「ガンダムの新しいのが始まった」っていうから、テレビ朝日でやるのかと思っていつも新聞のテレビ欄を見てもはじまんないからおかしいなー、と思っていたら、TBSだった。だから3話から見た。1話と2話を見逃した。
公式ページのあらすじと実際に見ての印象を総合すると、ファーストガンダムと出だし的にはかなり近いというか。「なりゆきで新型戦艦に乗り込み、なおかつ軍事機密を知ってしまったので少年たちが戦わなければならなくなる」という展開ですね。女性艦長のマリュー・ラミアスも、もともと副長だったのが本来の艦長が死んじゃって艦長に就任する。声は三石琴乃がやってんですけど、この人ってこんなに声にドスがきいてたっけ? と思った。次回予告もやってるけど、ドスのききっぷりがカッコいいですよ。

あと、ビームを撃つときのMSの操縦室内のカメラみたいなやつ(名前知らない)や、ガンダムの射出シーンなど、細かいところが今風にアレンジされてて、でも基本的には変わってない。アークエンジェルもホワイトベースに近いデザインだし、ファーストしか知らないヒトも食べやすい、って感じじゃないでしょうか。仮面の男も出てくるし。

それにしても間に流れるガンプラのCMを上戸彩がやっているということに衝撃を感じたのは私だけか? いや、上戸彩がかつて「Z−1」とかいうユニットでアニメソング番組「うたえもん」に出ていたとかそういうチャチャ入れはなしでさー。
「ガンダム」の、とくにメカって女の子の興味ないものの筆頭じゃん? それをあえて上戸彩がやるってことは、かつてバブル経済にモノを言わせてシュワルツネッガーにヤカンを持たせてCMとった、くらいの力が「ガンダム」のブランドにあるということだと思いますね。え? 上戸彩って「あずみ」の主演もやるの? もしかしてそういうマネジメントの方針? まあどうでもええです。

マリュー・ラミアス、エロいです。エロい女艦長最高。感想終わり。
(02.1027)



【アニメ】・「超重神グラヴィオン」第2話「重力の使命」

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西暦2041年、太陽系に突如襲来した謎の敵「ゼラバイア」。それは遂に地球へと侵攻を開始した。 人類が絶望に捕らわれたその時、宿命に導かれた6人の若者を乗せ、超重神グラヴィオンが立ちあがる。

実はこのアニメのスタッフも知らないんだよな……もしかして知らないの、私だけ? んでまあ内容は「ゲッターロボ」+「コン・バトラーV」+「エヴァンゲリオン」みたいな感じかなァ。「無生物的な質感を持つ外敵」というのにはもういいかげん飽きたんだけど、視聴者が求めているなら仕方がない。
あとキャラクターもいろいろ凝っていて面白い。主人公がシンジくん的ナイーヴキャラじゃないのも好感が持てる。巨乳ねーちゃんやメガネメイドなど、ミもフタもない造形もイカす。

でもね……まずOPがごちゃごちゃしててよくわかんなかった。あと第2話においては作画的にずっこけるギリギリのような気がした。それと、毎回使い回しされる(はずの)ロボットの合体シーンで、どう合体してるのかよくわかんなかった。どこがどうなってるのか。
それさえはっきりしてれば、いいです。
しかしこういうの、本当は週2、3本は見たいんだけどね。
(02.1027)



【アニメ】・「わがままフェアリー ミルモでポン!」第30話

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第30話「なんと、ミルモがワルモ団!?」(10月26日)
今度こそミルモの里を支配してやろうと、お城にしのびこみ王国の弱点をさがすワルモ団は、マルモ国王がサリア王妃の肖像画をやぶっている写真を発見してしまう。その写真をワルモ団に見せられたミルモは、もしこの写真をサリアが見たら、その怒りの嵐によりミルモの里が滅亡してしまうと思い、ワルモ団の子分になることに……。

とにかく、ワルモ団のマヌケっぷりが毎回常軌を逸しているので面白い。ヤシチもアホだがその幹部であるワルモ団もアホ、というアホアホな悪人集団である。ワルモ団の踊り、「ワルモダンス」がかわいい。
ところで、安純は居候しているヤシチを掃除洗濯にコキ使っているのだが、もともとヤシチはヤシチで安純のパンツを何かと盗むというどっちもどっちな関係であったのである。が、最近ヤシチのパンツ盗難描写がないのは哀しい。
(02.1027)



・「エルフェンリート」(1) 岡本倫(2002、集英社) [bk1] [amazon]

週刊ヤングジャンプ連載。研究所から逃げ出した新種の人類・にゅう。彼女は外見は15歳くらいの美少女であり、半径2メートル以内に近づいたものはすべて破壊する超能力を持っている。次々と人を殺して逃げるにゅう。
大学生のコウタと従姉妹のユカは、浜辺でにゅうに遭遇。彼女をかくまう。

一方、研究所は特殊部隊SATににゅう捜索を依頼。「合法的に殺人がしたい」という欲望を持つ隊員・板東がにゅうを発見し、戦闘状態に……!!

なんつーか、いろんな意味で話題になってるっぽいので購読。

これねえ、わたし的には普通に面白いマンガなんだけど、おかしいかなァ。
確かに、ギャルゲー的絵柄&展開の部分と、スプラッタ戦闘シーンとの融合というか非・融合は奇妙な味を出しているし、その辺りが話題になるのはわからないではない。

が、なんというかそこのみの一点突破型のマンガかというと、そうではないと思う。
にゅうの超能力発現の絵的な表現も考えられたものだし、時間をいったん戻してお話を始めたりなど(こう書くと少しネタバレになっちゃうんだけどね……)、技巧も凝らしてあるし、まっちょうじきに天然100%なマンガではないんじゃないか。
絵もたまにデッサンが狂ったようなところもあるけど、もっとヘタなマンガ家はいくらでもいるし。
今生きていると思っていた人間がすぐ死んじゃうみたいな唐突さは、スプラッタ・ムービーかスプラッタ・ムービーに影響を受けた作品に影響を受けていることが予想できるが、そういう作品が過去なかったわけじゃないし。
読んでいてギャルゲーとかエロゲーに大きな影響を受けていることは予想できる(それがどの程度のものなのかは浅学にしてちょっとわからない)が、そうした部分を差し引いてもマンガとして激しくレベルの低いものではない。

要するに、絵柄やコマ割りなどの諸要素の組み合わさり方が、少々いびつな感じはする。そういう奇妙さはある。が、本作はそういうことも含めた総合力が魅力だということでいいのじゃないか。これがベルセルクみたいな絵柄でやったら、面白さ半減だと思う。
これは松山せいじの「エイケン」にも言えることだけど。

「オタク的諸要素の誤解・曲解」ということが話題になってるんだと思う。で、そのような作品であることは認める。だから「オタクの喜びそうなパターン」を熟知していると、違ったふうに見える。「どのようにオタクアイテムを使うのか?」という見方で楽しめる。
が、そういうことをまったく知らない人たちが「エイケン」も、本作も読んでいることは確か。というか、むしろ「そういうのあんまり気にしない」人たちが雑誌の読者アンケートの主力になっているはず。
で、「エイケン」は単行本もすでに7巻を数えているし、「ふつーの人々」にも受ける要素を持っていると言っていいし、本作のヤンジャンでの人気は知らないけど、1巻を読んだかぎりでは「次々とページをめくらせる」という意味において、水準作であると思う。

マンガでも映画でも小説でもいいが、見る側にとって意味合いは多少変わってくる。たとえばわかりやすいのは時代考証。どんなに面白い時代劇でも、歴史に詳しい人が見たら噴飯もの、という場合もあるし、またその逆もあるだろう。
だが、大衆を相手にしている以上、あくまでもベースは「一般人」にあり、違った視点はそうした一般人の見方をより豊かにするものであるべきだと思う。
そういう意味では、「エイケン」における、私のあんまり好きじゃない恋の鞘当て的展開も支持されているのだろうし、本作がヤンジャンでどれほど人気があるのかはわからないけど、この唐突さ、いびつさが受け入れられている、あるいはいびつだとは受け取られていないとしたら、それはそれでまあいいんである。

そもそも、昔は「パワーだけ」っていうマンガが山ほどあった。で、それはそれで熱気があった。ジャンプもスゴイ数の新人を80年代にデビューさせたと思うけど、1回だけ掲載された人とかも含めるとヒドい人とかいっぱいいた。でもパンチのある人もいた。
だから、本作みたいな「いびつパワー」というのは突発的に出てきたとは、私はあまり考えていない。っていうかむしろそういう作品が少なすぎる。もっと出るべきだ。 で、作者の岡本倫という人が「ヘタゆえに」面白がられている、それだけかというとたぶん違うんじゃないかと思う。

同時収録作品の「MOL」(私の感想)(実験用モルモットとしてつくられた人間のミニチュアクローン美少女との悲恋ばなし)を読んでもわかるんだけど、「ラブコメと残酷との融合」という目の付け方はたぶん間違っていないと思うし、この人のマンガの根っこの面白さは、器用になることで消えてしまうものでは、たぶんない。
「MOL」の異様さのようなものは、たぶん失われてしまうだろうけれど。

それよりも、なんというか「泣ける展開」を最初から用意しているために、今後、本作の展開がありきたりになってしまう方が気になる。これは「まほろまてぃっく」とかを読んでいても最近気になるところで(「まほろ」が今後どういう展開になるのかはまだ未知だが)、最後に悲劇的結末を用意していると、どんな展開でもアリになっちゃうんだよね。登場人物全員が涙を流したり悔恨の情にひたっていれば済んじゃうし、そのバリエーションってあんまりないからね。
女の子が涙を流しながらアップになって「○○くん……ごめんね……ごめんね……」とか言ってれば済んじゃうから。
まあそういうのが流行りなら「ふーん」と言うしかないんだが……。

すべてを「悲劇」の名のもとに平板化させてしまうという意味で、結末をアンハッピーエンドにすることは、個人的にあまり好きではない。やっぱりハッピーエンドにする、っていうことはもんのすごくぶっちゃけますが「生に対する矜持」だと思うし、ハッピーエンドを前提とした、それにアンチテーゼを叩きつけるという意味のアンハッピーエンドでないかぎり、それはさあ、マチスモの一種だと言われるかもしれないけど、メソメソ病でしょメソメソ病。男の腐った感じの。

そうそう、すべて「感傷」で済ませてはならないと思うわけですよ。

・岡本倫作品「メモリア」の感想

(02.1026)



・「WEEKLY プレイボーイ」45号(2002、集英社)

グラビアは吉岡(あんなに声がカン高いとは思っていなかった)美穂、吉井(昔、ロフトプラスワンに写真が飾ってあった)怜、白石美帆。

「タッチでイクぜ! 竹田クン」若林健次は、風俗王を目指す青年を描いたコメディらしいです。

「ファンタジ星(スター)」(前編)平松伸二は、創刊36周年特別記念読切サッカー漫画。ジーケン監督が就任した新生ジャパンは、ドイツの名門チーム、ハイル・ヒンデンブルグとの試合で苦戦を強いられていた。日本代表に点を入れさせない最大の壁は敵将・ガーン

「おれのゴールはおれの恋人も同然!! そう愛しの妻マレーナと同じく俺だけの 穴(ホール)だ!!」
「だからこそおれ以外の男には 何人たりとも 何人たりとも入れさせンンン〜〜〜!!」などと言う。「ホール」ってルビふってあるけど英語じゃねえかよう、とか言わないこと!!

その試合を、1コマ目から女とヤりながらテレビで見ている主人公、ロベルト・火祭。彼はジーケン監督の秘密兵器、本物のファンタジスタと言われた男だった! というわけで、背番号1000の男・ロベルトが試合に出場しようというところで次週へ。
「次号、火祭の華麗なるテクニックが! そしてSEXのワケが明らかに……!」ということだそうです。

平松マンガは、「セックスの強いヤツが実戦でも強い」という最近ではかえって珍しくなった男根信仰が残っていて勢いがあってなんかすごい(確か、パンクラスの選手の実録マンガでもセックスしてたなぁ)。あと、実在の人物をモデルにした、ものすごいとってつけたようなキャラね。仲仁田=中田とか。ゴン田暮(たくれ)とか。ゴンはすでに中山ですらない。
タイトルもホントにすばらしいよな〜。「ファンタジ星」で「ファンタジスター」ですよ!? ぜひ次週も読もう。

もちろん、「キン肉マンII世」ゆでたまごも載ってます。新章突入。
(02.1024)



【CD】・「プリティ・ケーキマジック/ミルモのワルツ」(2002、東芝EMI) [amazon]

曲は両方とも作詞:白峰美津子、作曲:渡部チェル、歌は「プリティ・ケーキマジック」がKaede+Cheek Fairy、「ミルモのワルツ」がKaedeのみ。編曲者の表記がないんだけど、たぶん渡部チェルだと思う。編曲仕事も多いし。
アニメ「わがままフェアリー☆ミルモでポン!」の旧OP&ED曲。ひたすらにテンポよく勢いのあるOP曲、「もう番組は終わりだよ〜」的な静けさを持ったED曲、どちらもとてもイイ。歌詞の内容もアニメのテーマに沿っている。
とくに「プリティ……」は、「恋の山手線」みたいに、歌の中に次々とお菓子が出て来るという趣向が面白い。まあダジャレじゃないんだけどね。でもちゃんとつながりがあるし。歌を歌っているKaedeは、作中で楓の声をやっている中原麻衣という声優さんだと思います。これがまたすっごく嬉しそうな感じで歌ってて、勢いを加速させている。
とにかくコレだ!! っていう直球勝負のアニメテーマソングで、ものすごく気持ちイイ。まあ渡部チェルの曲をぜんぶ聴いているわけではないんだけど、最近では「ミニハムず・愛の歌」のアレンジと並んでの「ものすごいいい仕事」と言えると思います。
(02.1024)



【CD】・「Dream」吉幾三(2002、徳間ジャパン) [amazon]

「おもいっきりテレビ」を見ていると何万回も流れる「新日本ハウス」のCM曲。「♪住み慣れた〜我が家に〜」ってやつです。いやあ、いい曲だよね、これ。
私、吉幾三ってヒソカに才能あるんじゃないかと思っていて、この人の曲をたくさん聴きまくったわけではないけれども、「雪国」ってこの人の作曲でしょ? すごいいい曲じゃん、あれ。
あとやっぱり「夏・体験物語」の教師役とかが印象に残ってる。それにしてもあのドラマにおける吉幾三は、学園ドラマでの最も無力だった教師の一人であろう。毎回まいかい「若いうちからヤりまくってはいけない」と生徒に説教するのだが、説教された生徒はぜんぜん言うこと聞かないで体験物語してしまうのだった。

なんか急速にテレビに出なくなっちゃって、千昌夫もいろいろあって出なくなっちゃって、入れ替わりに田中義剛という「地方色の強烈なミュージシャン」が出てこれたっていうのは、テレビでの吉幾三不在に原因があると思うな。吉幾三がいまだにテレビで第一線だったら、田中義剛の入り込む余地ないですよ。

あとねー、何カ月か前、ひさしぶりに「ごきげんよう」に吉幾三が出てきたんで見たら、「恥ずかしかった話」とかいうテーマで「シンガポールかどっかの路上でウンコ漏らした」とか言ってんだよ。何なんだろうね? 変わってないということなのか、たまにしかテレビ出ないから適当なこと言ってんのか。それにしてもさあ、「恥ずかしい話」で「ウンコ漏らした」だもん。そのままじゃん。いろんな意味で恐ろしい人だと思ったよ。

このCDには「半音低い一般カラオケ用カラオケ」が入っている。また、歌詞が別の紙に印刷されていて、歌詞カードとして独立している。8センチの頃からそうだけど、演歌系のCDはたぶんカラオケ練習用に使われるため、別々になっていると思われる。CD持って歌うと疲れちゃうもんね。
(02.1024)



【CD】・「釈お酌」 釈由美子(2002、プライエイド・レコーズ) [amazon]

作詞:釈由美子、作・編曲:タコースティック・チカ・バンド。日本全国を当惑の渦に巻き込んだロボット(?)、「釈お酌」のテーマソング。あまりのインパクトに思わず購入してしまった(CDの方をね)。
曲は、何というのか……「シャク シャク シャク シャク お酌〜」というのがサビで、振り付けの分解写真も付いている(ちゃんと釈ちゃんが踊っている)。年末の宴会ソングとして、というのがコンセプトらしい。歌詞の内容は、若い女の子やお父さんのぼやきみたいなの。で、「呑んで忘れましょう〜」みたいな感じです。公式ページの日記では、「ゴジラの撮影の合間に歌詞を書いた」ということです。イイ話です。

私も2000円くらいなら買ってもよかったんだけどね、ロボットの方の釈お酌。だって、人に見せたらぜったい驚くよ!? まあ驚かせればいいってもんでもないけどさ。
(02.1024)



【アニメ】・「わがままフェアリー ミルモでポン!」第28〜29話

東京では土曜午前8時半からテレビ東京でやっているアニメ。

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ごく普通の女の子・南楓(みなみ・かえで)の元にやってきた生意気な恋の妖精・ミルモとその仲間たちがドタバタを繰り広げるギャグアニメ。

第28話「がんばれ、ダブル運動会」(10月12日)
土曜日はミルモと妖精学校に通っている楓だったが、妖精学校チーム対抗運動会の日が、人間界の中学の運動会と重なってしまう。しかも、ヤシチと安純の悪だくみによって、何種目ものクラス代表の選手に選ばれてしまう。どちらも欠席するわけには行かず、楓は人間界と妖精界を何度も往復し、かけもちで競技をこなすが……。

こういう「かけもちネタ」は、ベタだと思いつつついつい観てしまう。楓が何度も往復するうち、妖精界の競技の方がなにげになんだかわからなくなっていく過程とか、そこはかとなく面白い。今回の作画担当のヒトは、キャラクターが怒ったり笑ったり崩れた顔になると、とことん崩れるのが極端ですごかった。
魔法でとばしていた玉ころがしの玉が風に乗って飛んでいってしまい、「どこかに飛んで行ってしまったのら〜」と言うヤシチの子分がカワイイ。

第29話「リルムの大切な日」(10月19日)
近づく婚約記念日のために、幸せをかみしめながらお祝いの準備をするリルム。しかし、ミルモは毎日友達と遊んでばかり。「婚約記念日だけは忘れていないだろう」と信じるリルムだったが、楓はリルムから言付かった伝言をミルモに伝えるのを忘れ、さらにミルモ自身が婚約記念日を忘れていたため、リルムは約束をすっぽかされてしまう。
ショックで実家に帰ったリルムとミルモの仲を、楓はなんとかもとどおりにしようとするが……。

個人的には「これぞ少女向けアニメ!」と思える回。リルムが婚約記念日を待ちわびる前半がきっちり描かれているだけ、それが無視されたときの怒りに共感できる。
今回もライバルのヤシチがトリックスターになっていて、ミルモとリルムの仲直りにひと役買うことになる。完全に友情から、っていうわけでもなくて、自分の都合も含まれているところがうまいなあ。
仲直りのクライマックスも非常に納得のいくもの。

今回から、ベッキーが歌う新主題歌と新OP&ED。初代OP&EDがかなり出来がよかっただけに、折り返し地点でのリニューアルは当然とはいえ少しショック。そもそも、今回の主題歌ってぜんぜんアニメのテーマと関係ないし。反面、開き直ったような新OPはやけくそ気味のパワーがある。そもそも、OPで主人公のカワイイキャラがずっと凶悪な顔をして飛び回るようなギャグアニメはそんなにない。

今回の本編のクライマックスでは、旧OPの主題歌が歌付きで流れた。新OPになってからもあえてコレを持ってくるあたり、何やら確信犯のような気もするが、やはりこの歌はお祭りやパーティのシーンなどには盛り上がるんだよなあ。
それと、旧OPに登場する楓の魔法少女風変身シーンはけっきょく本編とは何の関係もなかったことが判明。代わりに新OPでは妖精に変身した楓や、旧OPで登場できなかったキャラクターが出てきたりしてフォローされている。
(02.1023)



・「快速! FREE NOTE Book!」 すがわらくにゆき(2002、ワニブックス) [bk1]

A5判。COMICガムに掲載された短編マンガを中心に、「おれさま! ギニャーズ」と「おれさま! ギ☆ライズ!!」のコミックス未収録作品を同時収録。

作風としては、投げやり風ギャグマンガと「奇妙な味」の短編を取り混ぜた感じ。この人のぽにゃーんとした感じのキャラクターには一度見たら忘れない魅力がある。
「パニクって自殺」ってパターンには、爆笑しました。
「投げやりで描いてます風ポーズ」の作品と「かなりマジで描いてます」風な作品とが入り交じっていて面白い。「投げやり風」と「マジ風」の出来不出来が混淆しているのも不思議テイストですね。

この人、オタク自虐マンガというイメージがどこか強いんだけど、なぜか出てくる女の子より男の子の方がずっとかわいい。ショタ的にかわいいんですよね。「ショタ的にかわいい男の子」を基調にして、女の子を描いているのではないかという気がする。出てくる女の子が、男の子みたいなんですよね。それもかわいい男の子。

あとものすごく自分勝手な感想を描きますが、最近のギャグマンガ家ってシリアス話とかちょっといい話とか、奇妙な味方面とかへの転身が早い気がします。
まあ「ギャグマンガ家の寿命はもって3年」とよく言われてきたし、ギャグに魂を吸い取られたように鮮烈な印象を残して消えていった人が少なくないことを考えると仕方ないとは思う。それに、ギャグ作家がギャグでないものを描くと実に不思議な作品ができる、ということもわかってはいるんですが、もうちょっと「ギャグと心中していいです」という人が出てきてほしいなあ、と本当に勝手ながら思う。

とりあえず、小林よしのりはギャグマンガを描くべき。しかも一見ダサダサなやつね。野球選手やJリーガーを主人公にしたような。でも内容はきっちり面白いみたいな。それはわたし的にはダンディズムなんだけど、よしりん的には違うんだろうね……。
(02.1021)



・「いちご100%」(2) 河下水希(2002、集英社) [bk1] [amazon]

屋上で出会った謎のいちごパンツ美少女の幻影を追い求める真中淳平は、中学3年生。
それはそれとして、ボーイッシュな美少女・西野つかさとつきあい始めて、その魅力は中学生男子には刺激が強すぎるほど。
一方、映画製作を夢見る淳平と、創作ばなしで盛り上がる友達関係なのが小説家を目指す東城綾
二人の魅力の間で揺れ動く淳平なのだった、という正統派少年ラブコメ。

さすがに私もこのトシになってこういうの読むの、照れるのでありますが本作は本当によくできている。少女マンガ的方法論にジャンプ的なストーリーテリングの面白さを加味していて、少年ラブコメとしてはひとつの到達点と言えると思う。こういう作品に巡り会えるとは、トシはとるもんだ。独身ではあるもんだ(←違う)。

展開としては淳平の妄想が暴走する、両親のいない間の西野さんの家に招待されたりする、好きな人と一緒の高校を受けるの受けないの、といった王道パターンが続くのだが、これが本当に読める。

たとえば、淳平が本命の高校を受験する過程で、本当にありきたりなパターンだったらその高校を難関に設定し、合格できるかどうかで引っ張ると思う。だけれども、本作では本命もそんなにレベルが高くないという設定。受験当日までも、ラブコメ的緊張感はあるが受験に合格できるかどうかのヒキはあまりない。
しかし、ここで何の緊迫感もないまま合格してはあまりに盛り上がらない。だから、合格発表当日、ちょいと小技を効かせる。そして小技の後に、もう一度大ネタをふってくる(西野さんの身のフリ方)。こういうのは本当にジャンプ的。ジャンプがトーナメント方式をギリギリまでつきつめて磨いていった「勝負もの」におけるノウハウではないかと勝手に想像している。

・以下、箇条書き感想。
・「制服姿にエプロン」は、私も妙にやらしいと思う。
・「東城でもエッチな想像するのか〜」という盛り上がりは中学生ならではだなあ……。
・東城さんのイケメン風弟が、イイ味を出している。
・東城さんが西野さんにヤキモチをやいて、無意識にいらだってカバンをブンブンやっている演出はうまい。
・東城さんがメガネをやめたことに、明確な理由があればもっとよかった。

・以下、また箇条書きじゃなくなる。
「自分の家に招待した西野さん」が、料理をつくってくれるなど家庭的なことをしてくれる。「家庭的=女の子らしさ=女の子のかわいさ」という公式は、低年齢向けのラブコメほど強調される。セックスが直接描けないための暗喩が、どうしても「家庭的」というところに帰結してしまうのだ。
セックスの暗喩を曖昧にしていくと、少年誌においての現時点での演出としては「家庭的」というところに絞らざるを得ない。これを性役割を固定化していると批判するか、「たかがマンガだから」と看過するか、「男の『妄想にすぎない』からこれでいいのだ」とするか、それともまた違う視点で見るか、もっと軽く「まあいいじゃん」とするかは意見が分かれるところだろう。

今のところ、少年マンガにおける「ベタな恋愛妄想」は、突き詰めれば男女の役割が固定化したニューファミリー幻想、もっと保守化すれば旧来の家長制を前提とした家族制度のようなものに帰結せざるを得ない。それをひねろうとしたり、何か違う地平に向かわせようとすることはおそらく青年誌以降で行われることで、それはつまり「ベタではない」、ということでもある。
私自身は、エンタテインメント作品のそういう要素についていちいちあげつらうことはあまり好きではない反面、無視もできないだろうと思っている。いまだ結論は出ない。

ただひとつ言えることは、「ベタなマンガ」において、少年が少女を好きになる場合の「女の子らしさ、女の子のかわいさの演出」はどうしても「家庭的なもの」にならざるを得ないし、その代わりにどんな演出があるのかというと、それはまだだれも想像できていないということだ。
未知のものに「かわいい」という気持ちは起こり得ない。
あと10年、早くて5年くらいで「好きな子に弁当をつくってきてあげる」などのベタ演出がまったく別の何かに取って代わるかもしれない。しかし私はそれに代わるようなものって、ほとんど思い浮かばない。それでいいと思っているかと問われるとそうでもないんだが、ここらあたりは相当むずかしい問題をはらんでいると思う。
今後ありえるとしたら、男の子側が過剰に女の子に奉仕するようなパターンか。しかし未知はわからないから未知なんで、どうなるかはわからない。

・余談
淳平たちの受ける高校の倍率が1.1倍ということで、少子化してる昨今ではリアルな倍率なのかもしれないが、けっこうムカついた。それで受験戦争とか言うな!!(作中では言ってないが)
この間、ヒトと話していて「ゆとり教育で、台形の面積の割り出し方が三角形を組み合わせる方法だけになったらしい」と聞いて、あれだけ「受験」について学生時代こづきまわされていた私でさえ「カンバックつめこみ教育」と言ってしまいたくなる不安がある。が、いちばんムカついたのは「台形の面積云々」を知らなかった、と言ったら話している相手に死ぬほどバカにされたこと。
いいですか、「教養」の権威ってこういうところにも現れているんですよ! そしてそれが権力になるまではあと半歩なんですね。そういえば「受験勉強」こそ、教養が権力化していることの最も大きな象徴かもしれないね。しかし、その権力を無効化したとしても、必ずそれにとって代わるものが現れざるをえないのだから、それが安易なものであるとしたら(という但し書きを私は付けたからね!)「ゆとり教育」にはあまり賛同できません。

・「いちご100%」(1)の感想

(02.1021)



・「悪太郎」(1) 結城真吾、みね武(2002、秋田書店) [bk1] [amazon]

プレイコミック連載。昭和40年代、芥鱗太郎は地方都市のわりといいところのぼっちゃんとして生まれ育つ。が、持ち前のクソ度胸にはやくざも驚くほどのものがあった。彼は、一匹狼のやくざの愛人・理絵と肉体関係を結び、「横暴な権力者に挑む豪気な強者としての『悪』になれ」と言われる。そして悪太郎と呼ばれるようになる。
父の行方不明の秘密が、五代グループの創設者・五代宗一郎にあるのではないかと考えた悪太郎は、大学生となり東京に出てきて、宗一郎に挑戦状を叩きつける。彼の戦いは、今始まったばかりだ……。

いわゆる「ものすごい胆力を持った男が、たくさんの男たち、女たちに愛され、また敵をつくりながら立身出世する」話らしい。個人的にはまだまだぶっとび度が足りないように思えるが、とにかく鱗太郎の女のくどきスピード、惚れられスピードはものすごく速い。目が合った瞬間、女が惚れていて次のページではもう一緒に住んでいるくらい早い。そしていろんなタイプの女ととにかくやりまくる。

こういう話はもっと転がっていくともっと面白くなっていくと思うので、今後に期待、という感じ。

それにしても、現在あまりに景気が悪くなったため、昔は何の抵抗もなく受け入れていた昭和40年代の立身出世物語はなんだか「波に乗れるか乗れないか」の問題に帰結していたように見えてしょうがない。
もちろん、高度成長期の成功者が人並みはずれた努力をしてきたことは明らかだが、今は乗るべき「波」すらないように感じてしまう(といいつつ、カネ儲けているヤツはきっちり儲けているのが今なんだろうけどね)。

バブル崩壊までは、そんなに成功しなかった者もあぶれた者も「経済大国日本」の一員として高度成長期の物語を享受できたモンだが。いや、振り返ることはあまりなかったけど物語の舞台として入ってはいけた。
でも、今はそうじゃない気がする。あるとしたら「プロジェクトX」的な回顧というか。夢よもう一度みたいな。ノーベル賞受賞に対する世間の反応も、そんな雰囲気がつきまとう。

もうちょっと経ったら、昭和40年代も完全にノスタルジー領域に入れるんだろうけど。戦前を舞台にした東映任侠ものみたいに。
(02.1018)



・「エイケン」(7) 松山せいじ(2002、秋田書店)  [bk1] [amazon]

週刊少年チャンピオン連載。「エイケン部」という謎のクラブに入った少年・伝助が、なんとなくメンバーの女の子一人ひとりに微妙にホレられたりするマンガももう7巻目。でも、伝助の本命は巨乳美少女・東雲ちはるさんただ一人なのであった。

まあ「いつもの感じ」。伝助が銭湯を覗いたり、女の子の部屋で一晩過ごさなければならなくなったり、先生の彼氏のフリをして実家にまで行ったり。個人的には百合子(ちはるの妹)がやたらとせまってくるエピソードにはあんまり興味ない。あと美八留(バイト先で知り合った女の子)も、エイケン部の連中に比べると普通すぎてちょっと。
SFおしかけなどと言っていて衝撃的なハナシだが、ワタシ、普通の少年ラブコメってほとんど興味ないんで……。
あと正面向いた顔に鼻の穴を描くようになったところに違和感がある。

しかしあいかわらず擬音とかは面白い。「シリーン」とか「ロマーン」とか「ナマーン」とか。尻が出てくるから「シリーン」というのはまったくすばらしいね。

表4のイラストは伝助らしい。どうも美少女マンガ家の美少年とかショタ趣味ってのはわからんなァ……理解しがたいところがある。いや別にどんな趣味でも自由だけど。

・「エイケン」(6)の感想

(02.1018)

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