天竺浪人

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対の踊り子たち
薊の子ら

NIGHT GALLERY I 桜色の肖像」
WILD FLOWER
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黒日夢
星に願いを
CROSS

■作家名:天竺浪人(てんじくろうにん)
■作家名でオンライン書店を検索: Amazon.co.jp

▼更新情報
2003/02/12 「AFTER S」データ追加
2002/09/06 「BLIND」データ追加
2002/06/30 「LOVE BITES」データ追加
2002/02/28 「ANGEL WITCH」データ追加

 斉藤0子編集長時代のホットミルク興隆期にデビューし、新人とは思えない力量であっという間にエロ漫画界では独特の地位を築いたのが天竺浪人だ。その後、漫画ばんがいちに主戦場を移し、現在では激漫(ワニマガジン)、フラミンゴ(三和出版)で主に作品を発表している。
 すでに話題としては旬を過ぎている作家といえるかもしれないが、今なおそのストーリーテリングの力はエロ漫画界でも屈指。どの作品も一筋縄ではいかない懐の深さがある。ぜひ、天竺浪人の薄暗く魅惑的な世界に足を踏み入れてほしい。

 天竺浪人はデビュー当初から陰のある妖しい画風がほかと一線を画していた。そして、それ以上に陰鬱だったのがストーリーだ。人間の、というよりも天竺浪人自身のダークサイドをさらけ出す、暗くて夢にうなされているかのような作品を次々と発表した。ときに読者を幻惑し、その薄暗い内面世界に取り込もうとするかにも思える作風はエロ漫画界だけでなく漫画界全体から見ても異彩を放っていた。山本直樹にも通ずるような、トリッキーな作品も見られた。

 その後「薊の子ら」あたりから、陰鬱さが少しずつ払拭されていったのだが、相変わらず屈折していることに変わりはない。最近ではフェチ、SM、スカトロ方面にも実力を発揮している。とくにフラミンゴ掲載作品はその傾向が強い。ただ、これも人間の内部にある汚いモノをさらけ出すといった点から見れば実に天竺浪人らしいともいえる。
 また、ときに描く悪意に満ちた、ひねくれたギャグ系の作品もまた楽しい。最近はとくに男根の描き方が進歩してきた感じで、ゴツゴツした邪悪な形状が非常に頼もしい。女性の身体も最初は線に硬さがあったが、だんだん柔らかく肉感的になっている。

 どの作品からも共通して感じられるのは、主人公たちが皆、陰と陽の境界線上に不安定な精神状態で立っているということだ。そして、ふとしたきっかけで皆一様に陰の方向に、ある者は他人の妄執により、ある者は自発的にずぶずぶとはまり込んでいく。そこに見られるゆらぎと業がたまらない魅力である。律しきることのできない自我。そしてその中にある闇。それはおそらく天竺浪人の精神状態そのものなのだろう。

 なお、例によってコミックスリストにあるデータはしばたが持っているバージョンのものなので、現在発行されているものとは異なることがある。