2002年5月5日コミティア購入物件


2002/8/18読了分

【同人誌】「ひとりものがたり」 三五千波 <つくりもの>

 うわ、濃いな……。巻頭作の「船橋の孫」は作者自身の個人的なトラウマを描いたというだけあって、生なものが伝わってきてかなりダークな気分に。「プライベートビーチ」「少年犯罪」も、この人ならでは耽美趣味が詰まってて非常に混沌としたメルヘンとなっている。読んでて酔っ払いそうになりました。

【同人誌】「菊男ちゃんのキロメンタル通り」 鵜匠カシヲ <赤色オレンヂ>

【同人誌】「菊男ちゃんの肉屋の福袋」 鵜匠カシヲ <赤色オレンヂ>

【同人誌】「かおりちゃんの蛸壺でオールナイトロング」 鵜匠カシヲ <赤色オレンヂ>

 面白い。いつもながらのかおりちゃんや菊男ちゃんのお話を描いているけれども、いずれもこの人なりの愛の物語という感じがする。「かおりちゃんの蛸壺でオールナイトロング」は、珍しくかおりちゃんがレティクル星人にそんなに悩まされたりもせず報われた話になるのかと思いきや、けっこう切ないお話だった。菊男ちゃんシリーズは愛とメルヘンが共存。素敵だー。


2002/8/17読了分

【同人誌】「大きなカーブどこまでも」 YanaYang <青ラヂヲ>

 全8ページのコピー誌。夜道をぷらぷらしていた主人公が、道端で猫にいじめられていたアイドルのミニクローン(ちっちゃいクローン人間)「野ヒロスエ」を拾う。といってもこの時代には野ヒロスエはあんまり価値がなくなっていたので、彼はそれをぞんざいに扱うも、野ヒロスエはやがて彼の買っているミニ千代の富士と仲良くなる……というまったりとしたヘンな話。野ヒロスエが「とっても」「とっても」「とっても」としか鳴かないとか、細かいネタがけっこう楽しい。

【同人誌】「素直」 サムラケンジ+飯島俊哉 <AC>

 垢抜けない感じではあるけれどもどちらもデッサンのしっかりした達者な絵。サムラケンジの「売夏」あたりはメインキャラの一人であるおねえちゃんも色っぽいし、ゆったりしたムードも心地よい。「ひまわりの居場所」についても淡々と日常を描いていく感じはなかなか惹かれる。とはいえ、なんか美大っぽい感じがする作画は多少生真面目すぎるようにも思えるので、漫画としては人物の作画がもう少し滑らかになるといいかなあとか思った。あと巻末の二人トークはいかにも若くて、読んでてむずがゆかった。

【同人誌】「たいようがきこえる」 作:いとうれいこ+画:きのあずさ <ショミンの家>

 見開きの右側がいとうれいこによる文章、左側がきのあずさによる水彩画のイラストという構成の絵本。内容は8ページと短いけれども、優しいテキストに優しく美しい絵柄がマッチしたきれいな本となっている。


2002/8/16読了分

【同人誌】「Prisoner」 森砂季+大野ツトム <トラウマヒツジ>

 面白かった。森砂季としては珍しくシリアスなストーリーもの「椅子の前」と、ウルトラジャンプ7月号に「ダロウ」が掲載された大野ツトムの「律儀な骸骨」を収録。「椅子の前」のほうはなぜか世間で人気が沸騰してしまった連続殺人犯の内面に、一人の神父が迫るという物語。登場人物たちの真摯な気持ちが伝わってくる、よくまとまった一編。「律儀な骸骨」は、刑務所の地下牢で成仏できずにいた死刑囚の骸骨のお話。絵は達者でお話もユーモアが利いている。いつものガシガシ描き込んだタッチではなく、今回はサインペン画らしいけど、こういう軽いタッチも悪くない。

【同人誌】「automatic」 森砂季 <トラウマヒツジ>

 画集。普段はあんまり同人誌では画集買わない人間なんだけど、これは良かった。緻密とかそういううまさではないんだけど、1本1本の線が非常にダイナミックで暖かみもあってなんか見ててすごく気持ちいい。すごく自由な線という感じがして、インパクトが強い。面白い絵を描く人だなあ。

【同人誌】「地上50センチメートル」 原田それから <プルシャン・プー>

【同人誌】「ヒルネル」 原田それから <プルシャン・プー>

 「地上50センチメートル」「ヒルネル」のどっちも薬屋さんのお話といっていいのかな。「地上50センチメートル」は風邪をひいた見習い少女を先輩二人が看病してあげるお話、「ヒルネル」は薬屋にやってきて冷房ロボットのお話。どちらもゆったりのんびりしたお話。絵柄も自然な感じでぽえーっと読むのに良い感じ。

【同人誌】「カリスト」 衣羅ハルキ <HEE-HAW>

 わりと適当な4コマとかが収録された50円のおまけ本的なもの。HEE-HAWというと端整な絵柄でわりとファンタジー的なテイストのお話の印象があるんだけど、衣羅ハルキはけっこくギャグっぽいのも多いですな。

【同人誌】「not choose by(改訂版)」 風祭彰一 <リンカイハクブツカン>

【同人誌】「paperfiction」 風祭彰一 <リンカイハクブツカン>

 なかなかうまい人だなーと思った。「not choose by」は、とある地方の領主である貴族が、休暇中に出会った反魂の術で蘇った女の子の過去を探るという感じのお話。滑らかな線で絵柄がしっかりしているし、キャラクターもそれぞれ魅力的。「paperfiction」には、「Y-man X-dog」と「4:49」というお話が収録されているが、その中では「Y-man X-dog」が良かった。これはコンビニ強盗として通報された、犬の着ぐるみを着た男を捕らえようとした初老の刑事が彼に引きずり回されるという物語。この犬の着ぐるみを着た男は、普通の人類(Y人)と重力を感じる方向が違うX人であるという設定がなかなか面白く、そういう設定を前提にしたアクションも風変わりで楽しい。

【同人誌】「2002年武富健治Q資料」 武富健治 <胡蝶社>

 アフタヌーンシーズン増刊 No.11に掲載された「まんぼう」や、これから描く作品についての資料など。断片的ではあるけれど、武富健治という特異な作家の思考を垣間見ることができる文章部分が興味深い。なお「まんぼう」についての感想は、4月10日の日記を参照のこと。

【同人誌】「空庭画帖」 水上左人/みずたなしこ <Cight>

 どちらも品の良い絵柄の持ち主。お城に住む龍と太子の微笑ましい関係を描いた「龍の棲む国」が微笑ましくわりといい雰囲気だったけど、これはシリーズものなのかな? なんか番外編っぽかったから続きモノで読んだら印象は変わるかも。

【同人誌】「アサー・ハッラーと信者の意地」 <大宗教学刊行委員会2001/埼京震学舎>

 タイトルはオウムネタだけど、米国多発テロネタがメイン。こういう政治とか宗教とかをパロディする系のネタはさほど好きではないのでこれまであまり読んでなかったが、案外サバサバした毒舌という感じで気楽に読めた。


2002/8/15読了分

【同人誌】「スペースサッカー物語」 新谷明弘

 コミックビームとかでおなじみ新谷明弘の同人誌。木星の衛星であるカリストとガニメデを舞台にしたスペースサッカーの選手たちの物語。16ページの「ビッケ=ヒカシアの謎」、24ページの「12年に1度奇跡をおこすもの」、16ページの「翼のある風景を」が掲載。「ビッケ=ヒカシアの謎」は別の衛星のより大きなリーグに誘われながら衛星カリストに残った天才サッカー選手、「12年に1度奇跡をおこすもの」は12年に一度だけ登場して所属チームを優勝に導く伝説のサッカー選手、それから「翼のある風景を」は背中に翼を持ち伝説のサッカー選手を苦戦させたゴールキーパーの姿を描いている。木星が舞台というのは一見奇を衒っているようだが、内容は意外とシブくて、新谷明弘らしい落ち着いていつつも不思議な味のある作品となっていていずれも面白かった。世界を設定し理をもってお話を導き出していくというSF的な風味もあるし。やはりこの人はしっかり独自のものを持った人だなと思う。作者ホームページで通販もしている模様。

【同人誌】「つゆくさ6」 <つゆくさ>

 2分冊で発行。今回三島芳治は「記録のホノーリア」という作品を執筆。女子中学生の普通の日の話でしかないのに、作画はラフ段階なのに、なんというかこの人の作品はググッと引き込まれる不思議な魅力がある。何か思っていることがあるんだけど、口には出さないでいるふうな表情のキャラ、空白部分の多いコマ。語らないこと描かないことがかえって興味をかきたてる不思議な魅力を持った人だ。

【同人誌】「p.p.m.2」 ピコピコリョウ <pico pico>

【同人誌】「p.p.m.3」 ピコピコリョウ <pico pico>

 いつもながらいい。「p.p.m.2」は、突然転校することを親友に告げたことでそれまで仲良かったのがギクシャクしてしまった小学生の女の子のエピソード。お話としてはよくあるものながら、言葉少なに淡々と独自のメルヘンチックな絵柄でそれぞれの気持ちを描き出す作風が心地いい。「p.p.m.3」もよくできている。自分の前ではずっと寝てばかりの女の子と一緒に暮らす女性。不思議にゆったりとした気持ちになれるファンタジー。感覚的な漫画なので雰囲気を伝えるのはなかなか難しいんだけど……。とりあえず作者Webにリンクを張って逃げます。

【同人誌】「ホモヨロン2」 アニュウリズム/加瀬世市/まきお <テレピン>

【同人誌】「おはよう少年」 加瀬世市 <テレピン>

【同人誌】「H・T」 加瀬世市 <テレピン>

 加瀬世市の絵の達者さがまず目を惹く。「おはよう少年」掲載のぶきっちょな少年が火事になった好きな娘の家に慌てて走る「火事場」はリアルながらも暖かい感触のあるタッチ、おなじく「おはよう少年」掲載の「きみの錯覚」は皮肉なストーリーと艶めかしい画風がよくマッチしている。デッサンがきっちりしてて抜くところは抜く。緻密な絵ながら馬鹿馬鹿しいお話も描くし、うまい人だなーと思う。あとアニュウリズム「アフロvs少女」はタイトルどおりの馬鹿馬鹿しい漫画でちょっと良かった。

【同人誌】「ROUGH DEVICE」 <TEN-PEST>

【同人誌】「JackPot! 2002年春号」 <TEN-PEST>

【同人誌】「PLANET SOLARIS」 <TEN-PEST>

【同人誌】「MERCURIUS」 <TEN-PEST>

 アフタヌーン1998年3月号で四季賞の大賞受賞作「Bird Cage」が掲載された山下博行が参加しているサークルと聞いて、4冊セットでまとめ買い……したんだけど、4冊ともほぼラフイラスト集という感じだったのでちと残念。ちなみに山下博行は「PLANET SOLARIS」で執筆。


2002/5/12読了分

【同人誌】「宇宙温泉」 小田扉 <みりめとる>

 小田扉はやはりコピー誌がむちゃくちゃ似合う。今回の本に収録された「地球にきちゃった」は、地球に不時着したところを少年少女に発見されたタコ型の宇宙人のお話。宇宙船の故障で宇宙には帰れなくなってしまったが、地球の温泉がけっこう気に入ってしまった宇宙人の姿は、なんだか非常にのんびりしている。ラストはちょっと寂しいけれども、淡々としててフツーっぽくもある。それにしてもこの人はなんて味のある絵を描くんだろう。なんかさっさか簡単に描いてる感じなんだけど、人物や動物の表情に得も言われぬ趣がある。

【同人誌】「来ちゃった。」 <NENE>

 漫画が3本掲載。小田扉も1ページ登場。3本の作品が載っているけど、みんなけっこくいい。弥生一八のラブコメっぽい作品も、ゆったりとした味わいがあるし。「来ちゃった2」は作者名書いてないけど、ヒロインの女の子の目がくりくりしててキュート。

【同人誌】「島のうらっかわ」 <極楽とんぼ>

 細かいペンタッチで、写実チックな目を描くこずえもんの作品が気になって購入。少女が海中を潜り、そこで見た風景を描いた「島の裏っかわ」はけっこうスペクタクル。ページ数が短いのでもっと長尺で読んでみたかった感あり。

【同人誌】「Night-Marchenの幻想雑誌 2002.5.5版」 村山慶 <Night-Marchen>

【同人誌】「とても危ない本」 村山慶 <Night-Marchen>

 「幻想雑誌」のほうは、暗殺者として育てられた少女であるチッペのキャラが3回めでずいぶんこなれてきて面白くなってきている。今回の終盤で示された新展開への布石も気になるところ。けっこう面白いセンスを持った人だと思うので、長めの作品をどんどん描いていってほしい。「とても危ない本」は、小型サイズのちょっとしたおまけ本。

【同人誌】「男の闘い VOL.1」 伊藤一蔵 <伊藤一蔵商店>

 なよっちい男の子が、力強き女の子と相撲で勝負。大きな胸で押し返され、蹲踞の姿勢で恥ずかしい思いをする。男の子がふんどし姿で女の子にいいように振り回されるさまを描くことに対する尋常でないこだわりを感じさせる作品。女相撲に近いんだけど、むしろ男の子が色っぽいという不思議な漫画。

【同人誌】「花八代系譜」 大空とわ <猫熊図書>

 コミックメガフリーク(FOX出版)に連載された作品をまとめた本。都会から海に囲まれた島に引っ越してきた女の子が、その島で暮らすうちにいろいろと不思議なことに出くわすというお話。神社のしめなわを切ったばかりにその境内から出られなくなったり、ないはずの学校の旧教室に迷い込んだりなどなど。日本風でありながらも見事にファンタジーしている。きっちりした上品、かつ瑞々しい線による画風も非常にキュートで達者。雑誌のときよりも紙質はいいし、線のつややかさが映えている。

【同人誌】「プールプーール」 袴田めら <逆ギレ刑事>

 転校してきてやっとクラスになじめそうだったのに、骨折して修学旅行に行けなくなってしまったことでスネている女の子が主人公。それだけでなくいつも文句を垂れていた彼女に対して、お兄さんがちょっとイキなはからいをしてみせる。小品だけれどもかわいくまとまった佳作。

【同人誌】「Othelo」 イトウサクミ(伊東朔巳)/ハルタハルノブ

 イトウサクミ/ハルタハルノブの2人本。とくにイトウサクミのほうが良い。葬式のときに縁もゆかりもないけれども涙を流す「泣き女」を仕事としている少女と、彼女に何かとつっかかってくる少年の物語。短い逢瀬の中で反発しあいながらも心を通じさせていく二人の間には、いかんともしがたい悲劇の影が横たわる。シャープで達者な絵柄はパッと見て素直にうまいなーと感じさせる。

【同人誌】「ねむの鈴2」 中田歩美 <天羅万象>

 絵がうまいなあ。非常に端整で清潔感のある線で、やさしいファンタジーを描いている。スライムみたいなヘンな生き物と、3人の子供たちの日常という感じ。お話的なまとまりはいまいちではあるものの雰囲気はすごくいい。表紙の水彩画っぽい彩色のイラストもお見事。

【同人誌】「penkiya iii」 <ペンキヤ>

 やっぱうまーい。とくにKRBKのスタジオジブリっぽい雰囲気がある、柔らかくて優しい作画は見る旅に感心してしまう。今回の森に住むかわいい魔女の女の子・魔女子さんの物語なんか、きちんとペン入れさえすればすぐ商業誌に載ってても全然違和感がない。線がむちゃくちゃ多いわけでもないのに雰囲気を出せるのは、デッサン力がしっかりしてるってことなんだろう。この人の作品はもっともっと読んでみたい。

【同人誌】「どっか行こうや!!」3 <ひまわりデザイン事務所>

 カラッと陽気な作風はいつ見ても和む。今回は自作のバイクで眼鏡子ちゃんを家まで送ろうと奮闘するわんぱくな性根のお話「約束ライダー」が、ほのかにラブコメ風味で良かった。あと毎度おなじみ宇宙の女工のほのぼのした日常を描く「七転八倒ひなあられ」シリーズも、気楽に読めて楽しい。手足のくにゃくにゃした適度にいい加減な造形のキャラたちがとてもいい味を出している。


2002/5/6読了分

【同人誌】「声の温度2」 おざわゆき

 いかにも凡庸そうな新任の男性教師にほのかな恋心を抱き始めた女子高生の物語2巻め。切ない気持ちを描いているという点ではこれまでと同様だけれども、今回の作品は今のところたいへんに暖かい読後感を残してくれている。とはいえ次号予告が「怒濤の3巻」となっているので、次の巻あたり物語は激しく動くのかもしれない。なんにせよこれからも楽しみ。

【同人誌】「かれきちゃん」 西村竜 <universal kidology>

 誰かに出会うとその相手がみんな死んでしまい、ともだちが一人もできずにいる女の子、かれきちゃんの物語。左ページが文字だけ、右ページが絵だけという絵本的な作り。内容もそれに似つかわしい優しい雰囲気のお話になっていてなかなかよかった。

【同人誌】「なんだかよくわからないもの」 らいだゆず(新居さとし) <HATAHATA>

 コミックフラッパーで「女神の鉄槌」を連載している新居さとし=らいだゆずの本。内容的にはタイトルどおり、なんだかよくわからない。でも面白い。この人のカラッと明るく好き勝手なことをやる作風は本当に独特でマイペースきわまりない。しかも勢いがある。何描いても自分の味が出るだろうと思えるあたりは強い。

【同人誌】「アメニウタエバ」 本井広海/本澤友一郎 <METAL ZIGZAG>

 線がシッカリしてて非常に達者な絵柄。このお話は、とある男が雨の日に、かつて弱虫だけどイキがっていた自分の昔を思い出すというお話。ちょっぴり情けなくも今となってはいい想い出を振り返る懐かしげな雰囲気もいいし、ラストの締めくくりもきれいで読後感が良い。このコンビは以前コミックフラッパー1999年12月号に「かさらならないはり」という作品で登場し、よく分からないがCOMIC JAPANというネット販売されているデジタルコミックマガジンにも描いているらしい。

【同人誌】「ゆめの底」 音子 <音々堂本舗>

 いいねえ、この人の絵は。まーるい顔と小さい瞳。こけしを思い起こさせるような、たいへんキュートな絵柄が特徴。でもペンタッチは非常に丁寧で細かくていい雰囲気を持っていてメルヒェンティック。なんともかわいい本。

【同人誌】「赤の丘」「社の娘」 くろ

 シンプルながら絵柄は優しい雰囲気にあふれていてとてもいいと思う。それまでは対立状態にあった二つの村が和解し、その収穫祭で奉納役をつとめた主人公の少女の物語である「社の娘」は、続刊があるようでその展開次第。「赤の丘」はファンタジー色が強く魅力的な感じではあるけれども、お話としては正直まとまっていない。こちらも続きを描いてフォローしたほうがよいかも。

【同人誌】「道草」 こうの史代 <の乃野屋>

 やはりこの人の絵はいい。一枚絵もいいし、漫画の一こまだけ見ても素晴らしい。カケアミを多用する画風もそうだけど、線の一本一本がまろやかで読む者を包み込むような暖かみがある。登場人物たちの表情もゆったりしていて惚れ惚れする。今は「ジュール・すてきな主婦たち」で「長い道」という作品を3ページずつ連載中とのことだけど、この人はもっとメジャーなところでも活躍できそうだと思うんだけど……。

【同人誌】「サイレン vol.4『19-20』」 ニシムラカズコ/保科慎太郎 <サイレン>

 19歳から20歳になる、境界線上の心持ちをテーマにした本。ニシムラカズコ「政す。」はちょっと線が太めなコミカルな作画が心地よい作品。保科慎太郎「19.20」は、成人式と同時に注射をされ「大人」にさせられる子供たちのお話。注射されるまで身体も子供のまま、セックスなどもできないがのだがそれが外的要因によって突如変化させられるという設定がユニーク。物語のトーンは悲しげだけれど、最後は前向きにしめくくってくれており、後味はいい。なかなか面白い話を描ける人だ。

【同人誌】「ニコとアー」 笹井 <ガソリン

 最近は佐藤友哉「水没ピアノ」の表紙などでたいへんかっこよいイラストを描いている笹井さんのところの本。ここの本はいつも作りがすごく凝っていて、今回はなんとニコとアーという女の子のペーパークラフト本。とはいえおまけ漫画もけっこう面白くて、ああやっぱすげーセンスいいなーと思う。ちなみにペーパークラフト部分は、作者Webからダウンロード可能。

【同人誌】「がらくたばこ」 Nie <新屋>

 イラストやショートストーリー漫画などがつまった手帖サイズのちっちゃな本。メルヘンチックな画風が可愛くほのぼの。

【同人誌】「marguerite」 朔 <Lapp>

 マーガレットという名前を持った女の子につまれたマーガレットの花。最初は人間の家でびんにさされた状況が不満だったお花さんだが、だんだん女の子のことが好きになっていく。描線はシンプルだけど優しく、お話も心暖まるものになっている。

【同人誌】「半端マニア」8、10 <半端マニア製作委員会>

 漫画じゃなくて文字本。半端マニアな男たちが集団となって、下らないことに血をたぎまくらせる男らしい雑誌。なんといっても8号の特集が「弱者」、そして10号が「野望」。コミック・ファンでも活躍中の渡辺僚一さんが編集長。花くまゆうさくインタビューや、「かじめ焼きの口実」と題された体当たり牧玲睦再現フォトレポートみたいなのがあったり、普通ならできないところに力こぶができているような感じ。カッコイイ。そしていつの間にか吉本松明さんや本野智さんも参加してるし。なんだかすごく楽しそうで憧れる。


▼未読分

【同人ゲーム】「冬は幻の鏡 体験版」 <半端マニア製作委員会>

【同人誌】「高野文子『黄色い本』を読む(増補改訂版)」 <吉本松明>


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