2003年2月23日コミティア購入物件


2003年5月4日読了分

【同人誌】「影男4コマダメ劇場」 あびゅうきょ

【同人誌】「阿佐ヶ谷妄想妖精」 あびゅうきょ

 「影男4コマダメ劇場」は、単行本「晴れた日に絶望が見える」[bk1][Amzn]発刊記念のコピー本で、影男を使った4コマ集。美少女たちはやっぱり彼を罵るが、影男にはそれがちょっぴり快感、でも死んじゃう。絶望しつつノリはお気楽でなんか楽しい。影男は案外丈夫そうだ。「阿佐谷妄想要請」は魔女っ子ライクな「阿佐谷妄想妖精」を中心としたイラスト集。いつもながら風景、少女ともに美しい。ところでこの本に出てくる女の子はけっこう乳がデカい。

【同人誌】「Smile Service Pack1」 きりはらただし <迷画座>

 4コマ5本とエッセイ的なページ。鉛筆描きの優しい絵柄を特徴とする、きりはらただし世界を理解するのにちょっと役立つ副読本といった感じ。

【同人誌】「ゆめのなか」 音子or寿 <音々堂本舗>

 いつもながらたいへんいい絵。丸い輪郭に目鼻がちょこんと慎ましやかに載っかった可愛らしい作画。細かなペンタッチも美しい。「ゆめのなか」は、アフタヌーン2002年10月号に、岩岡ひさえ名義で掲載された「ゆめの底」の続編にあたるお話。夢ができる場所にあるふしぎな店の店長さんと、そこに勤める娘さんの日々を描いた優しい物語。読むとちょっと切ない気分にもさせられる。

【同人誌】「PLANTER」 淘汰

 この人の線の感じは好みです。ちょいと五十嵐大介風というか。で、この作品は、頭から花が生えるという不思議な病を抱えた少女・素晴と、その双子の姉妹の見晴、それから素晴に恋する少年の物語。素晴に生えた花は大きくなるに従って彼女の身体に負担を与えるので小まめに摘む必要がある。しかしその花が素晴のネガティブな感情を吸い取るのか、花が生えている間、彼女は非常に優しい気持ちの少女となる。優しい少女でいるためには花をつけたままにし続けねばならないが、そうすると彼女はどんどん弱っていく。なかなか面白い制約を登場人物に課して、ドラマを構成している。なかなかいい感じの「お話の種」を持った人だと思うので、作画をさらにどんどん向上していけば、その分だけストレートに面白くなっていきそう。

【同人誌】「インタルード」 山川直人

 各所で発表された短編13本を収録した作品集。コミックアルファ掲載作品も入っているのがうれしい。いつもながらの重厚なカケアミ、ときに暖かく、ときにクール、ときにブラック、ときにファンタジー。いろいろな山川直人作品がまとめて読めてうれしい。この中では本当に種も仕掛けもない、超能力を手品に見せかけた芸をやって生きている男の人生を描いた「早すぎた男」がとくに好き。着想が面白いし、彼の師匠である手品師らをからめたストーリーも起伏に富んでいる。作画面では主線を省略して、各領域を密度のことなるカケアミで埋め尽くして画面を構成する「口笛」が面白い。

【同人誌】「とっておきのパーティー」 <おざわ渡辺>

 このときのコミティアって「とっておきのパーティー」というのをテーマになんかやってたんすね。よく知らないんだけど、複数のサークルがこのタイトルで本なりチラシなりを作ってた。

 この本は渡辺博光、おざわゆきの二人本。渡辺博光「集う」は自分の脳内のさまざまな感情を擬人化したキャラたちが、いろいろな気持ちをぶつけ合うという感じのお話。身もフタもないといえばないけれども、その気持ちはよく分かる。おざわゆき「ばりぼう」はとある王国のバレーボール大会に参加したチームの中で繰り広げられる人間ドラマという感じ。けっこうスポ根っぽくて、ちょっと意外だった。

【同人誌】「とっておきのパーティー」 <Metal zigzag>

 これはよくできたお話だなあ。神様が壊すことを決意したとあるファンタジー世界を、記憶もなにもすべてをなくした男が行く。自分が何者だったかを知るために。お話は月曜日から始まり、日曜日で終わる。男が旅をする中でさまざまな人に出会い、その中で起こった出来事がすべてラストシーンに収束していく様子はなかなかに感動的。作画のほうもペンタッチがしっかりしていてカッコイイしオリジナリティもある。ページ数多めで読みごたえるのある作品でした。

【同人誌】「GIFTS 西村竜商業誌作品集」 西村竜 <universal kidology>

 アワーズ本誌/増刊、アワーズライトで西村竜が描いた短編作品をまとめたオフセット本。シンプルで伸びやかな線が気持ち良いし、お話のほうもそれぞれ楽しい。こういう本を見ていると、商業誌での活動を休止してしまったのは惜しいなーと思う。この人の絵柄はけっこう目を惹くものがあるし。4コマ誌に掲載される非4コマ枠とかに最適なタイプという感じがする。恋愛モノ、学園モノ、ファンタジーモノとそれぞれうまそうだし。でもまあそれぞれに事情はあるわけだしそこは仕方ない。

【同人誌】「けだもののように完結編合本 III-2/3」 渋蔵 <ぐんたまカンパニー>

【同人誌】「けだもののように完結編合本 III-4/5/6」 渋蔵 <ぐんたまカンパニー>

 渋蔵(比古地朔弥)が長らく続けていたこのシリーズも、いよいよクライマックス。完結は次巻以降となるが、ついに一太の元に帰ってきたヨリ子が、彼の愛情に触れて人間らしさを取り戻していく。それと同時に、一太は自分が彼女について何も知らなかったことを知り、ヨリ子への愛情を強めながらもお互いの持てるものの違いに愕然とする。相変わらず吸引力の強いストーリーで読ます。孤独に生きるヨリ子がそのときどきで出会う出来事を追うというシンプルな構造なので、多少間が空いていても物語自体はスムースに理解できる。ラストに向けて2〜6をまとめて読んで、ますます興味は高まる。学園編のほうが太田出版から単行本化[bk1][Amzn]から単行本化されたが東京編・完結編もぜひ。

【同人誌】「ザット秘密」 <サイレン>

 「ひみつ」をテーマにした短編を並べた本。保科慎太郎「夜色カーディガン」は、ひみつを織り込んだ羊毛で編んだ毛糸のカーディガンという発想が不思議で面白い。ニシムラカズコ「宵ヶ淵」。再会した同級生男女のラブストーリー的なお話になるのかなと思ったら、途中で思わぬ展開が。保科慎太郎、ニシムラカズコとも、スッキリした絵柄で読めるお話を作っててどちらも良い。あと今回の本で初めて見た人だけど、小豆という人の小ネタ漫画もちょっといい雰囲気だなと思った。

【同人誌】「braingoes」 上倉旧 <ロボ音>

 いつもながらにセンスの良いポップな作画。自然と湧き出てきた発想を絵にしているという感じだが、楽しんで描いている感じが伝わってきて嫌味がない。

【同人誌】「Summer Camp」 朔 <LAPP LAND>

 これはいい話だなと思った。「色素性乾皮症」という病にかかっていて、直射日光を浴びるとそれがソバカスやシミとしてすぐ定着してしまうため、昼間は外で遊ぶこともままならない子供たちのお話。同じ症状を持った子供たちが集まるサマーキャンプでの出来事を描いている。というと重い話という感じがするけれども、作画、ストーリーとも優しい雰囲気でうまいことまとめている。その病気のために家庭でもいたたまれない想いをしている彼らが、気がねなく遊んだり話したりできる場。その中で生まれたちょっとかわいらしい少年少女の物語も微笑ましく描いている。清々しく気持ち良く読めるし、その病気について自然に関心を持たせることにも成功している良作。

【同人誌】「流星学舎(五)」 入江アリ/封谷映

 実力派二人による連作シリーズそれぞれ5本め。今回はとくに、入江アリの品があってキレもいい作画によるウーナ嬢に心惹かれるものを感じた。なかなかキャラが魅力的に作れていると思う。

【同人誌】「自主制作本 漫画の雑趣 ドラQ〜ラ」 NAOTO

【同人誌】「TIME CAPSULE」 NAOTO

 少年誌的にきっちり完成された絵柄が目をひいた。漫画としてはコマ割がゴチャゴチャしているのでちと読みにくいかなあと思わないでもないけど、勢いのあるお話作りはなかなか。画面作りにメリハリを付けてキャラの個性をどんどん前面に押し出すよう心がけていくと、もっと面白くなっていきそう。なんか商業誌にも向いていそうなタイプという感じがした。

【同人誌】「DAYDREAM TRACK 2 CALM SIDE」 Yanayang <猫ラヂヲ社>

 この人の影のあるネームと、黒々としたベタの質感は特徴的。ここにまとめられた作品は、お話としてはいまいちまとまってなくて完成度は高いほうではない。でも何か妙に気になる不思議な味。


2003年5月2日読了分

【同人誌】「放課後まんがまつりVol.2」 新田五郎 <WAIWAIスタジオ>

 毎度おなじみ、「ふぬけ共和国」新田五郎氏のところの漫画紹介エンターテインメント本。今回はアイドルマンガ特集第2弾。Webのほうでだいたい読んだ内容が中心だけど、改めて読み直してみても笑える。やっぱりこの人の文章はすげー面白い本の作りが垢抜けていないのも、これはいい意味で味だと思う。あんまりスタイリッシュにレイアウトしてしまうと、この味は出ないのではなかろうか。

 ところで同人誌で漫画評論をやることの意義についてはときどき考えることがある。同人誌だとさすがにさほど数が出ることは見込めないので、影響力という点ではある程度限定されてしまう。だから「業界をどうにかこうにかしよう」「読者を啓蒙しよう」というのは目的としにくいところがある。とくにインターネットが普及した今となっては、読者の数だけでいったらそっちのほうが稼げるだろう。では考えられる目的はといえば、個人的には「道楽」「エンターテインメント」「練習」「腕試し」あたりかなあと思う。あとそれができるサークルは多くないだろうけど、「営利」というのもちょっとあるかもしれない。

 で、WAIWAIスタジオの本の場合は、本当に「道楽」「エンターテインメント」に徹してるというのが伝わってくるのがいいと思う。今回の本でも最後のほうで『はっきり言って、もう疲れました……。「楽しく同人誌をつくる」限界を超えたので、今回はこの辺でおしまい』と書いていることからもそれが伺える。こういう感覚は、Webではいろいろ書いているけど同人誌は作ったことがない自分みたいな人間にとって、ちょっと羨ましく思えるときもある。

【同人誌】「みるく☆きゃらめるのムスコ」 <みるく☆きゃらめる>

 上記のWAIWAIスタジオの本とはある意味対照的、そして似通った部分も持ち合わせているのが「Ionisation」吉本松明氏のところの本。こちらはよりガチンコな研究っぽさを前面に押し出しており、いずれ評論で世に打って出るための「腕試し」的な色合いが強い。といってももちろん「道楽」「エンターテインメント」性も忘れてはいないんだけれども。石川ひでゆきのお馬鹿H漫画で客を引き付け、後半の評論文も読ませてしまえ〜という構成が戦略的。今回の論考は「無意識過剰のブレイクダンス」。「物語性の欠如」に対する言及から始まって、漫画に多く見られるようになった「無意識性」について語っている。リバイバルブーム→物語性の欠如→無意識性→妄想力→新しい文化の萌芽の可能性……と進む論理展開は少々強引でもう少し各部分に対する掘り下げと整理、サンプリングは必要かなと思うけれども着眼点としては面白い。今後も継続して探求していっていただきたいところ。

【同人誌】「ラブ&ピス」 イシカワヒデユキ

 下らなくてかるーい。そのあまりの下らなさ軽さにいつもびっくりさせられる。この人の作品に出てくるヒロインは、通常だったらツッコミ担当でチラリズムをウリにしたりしそうなもんなのに、けっこう開けっぴろげだしやっちゃうし。でもそれが妙にエロかったりする不思議。馬鹿っぽいけどちゃんと恥じらいはするあたりがいいのだと思う。

【同人誌】「やくそくのひ2」 鈴木ちょく <直立不動産>

 バレンタイン・デーの日の、ちっちゃな男の子女の子、それぞれの模様を5ページのサイレント漫画で微笑ましく描写。可愛らしくて良いなあ。絵もいつもながらにきれいで鮮やか。

【同人誌】「走れエロス」 男マン <デジタルボウイズ>

 1999年11月発行。勢いのある子供恋愛ものでいい味を発揮している人。このころの絵柄はまだずいぶんこなれてないところがあるけど、お話の進め方は良好。誰もいない学校のプールで裸になって泳ぐ少年少女。しかし少女のほうが、少年の服を奪って裸のまま学校中を引っ張り回す。女の子主導な展開で、爽やかでもあり妙にエロチックでもある。

【同人誌】「とかげの生活 2 イケナイコトカイ」見本版 さくらのりたか <DARUMAYA FACTORY>

 昨年の2月コミティアで発表された「とかげの生活 1 君と暮らしたら」(→感想)の続編。まだペン入れされてない見本版だが、やっぱりこの人の作品は読みやすいし面白いと思う。合コンの席でのノリのまま、女の子と同棲することになってしまった男。この巻ではその身体的な距離がずるずると縮まっていく。でも心のほうは……ということで以下は続きを待つべし、という状態。今回はちょいとアダルトに攻めていて、物語に起伏がけっこうある。完結したら一気にまとめ読みしてみたい。

【同人誌】「どんぶり将棋」 志賀彰 <憂貧局>

 いきなりこの人が18禁漫画を描いているのでびっくりした。しかも内容のほうも詰め将棋とHのコラボレーション、さらに兄×妹というなかなかに面白いシチュエーション。個人的にはかなりいい感じだなと思った。もともとこの人の描く女性の目には独特の色気があるのだけれども、それがストレートなHでもちゃんと生きている。あと詰め将棋というアイテムが微妙に馬鹿馬鹿しいのも良い。

【同人誌】「Night-Marchenの幻想雑誌 2003.2.23版 チッペの物語IV」 村山慶

 殺し屋として育てられた少女チッペの物語も4話め。 次回でこのシリーズは一旦終わりにする予定とある。だんだんキャラクターがこなれてきて面白くなってきつつある。というわけで次回のエピソードにも期待。

【同人誌】「SecretGarden」 <カナリアン・パレス>

 「ひみつの恋」をテーマに、西尾ちゃちゃ、卯月千尋、ウカイジュン、山名沢湖の4人がそれぞれ短編を執筆。短いながらもメガネ、指先フェチ、ボーイズ、ポエムとそれぞれが自分の持ち味を発揮していて楽しい。

【同人誌】「Traumania」 森砂季/大野ツトム <トラウマヒツジ>

 森砂季による「魚マン」の4コマと、大野ツトムによる戦うシスター漫画「ゾンビシスターエレナ」を収録。「魚マン」4コマのほうはすでに魚マンのキャラがだいぶ刷り込まれているので、ギャグがけっこうヒット。なかなか面白かった。ただ魚マンはもう少しデカいコマで見たいような気もする。あの形が好きだから。「ゾンビシスターエレナ」はシャープなペンタッチでキャラクターはカッコイイ。ただこちらはページ数がもっと欲しいところ。

【同人誌】「サダマサシ 温泉卵70円?」 <みりめとる>

 小田扉、へたれ、西口、なぞによるコピー誌。小田扉はもちろんのことなのだけど、全員がひじょ〜に脱力感のあるページを作っているのが好ましい。読むと肩こりがとれそうな気楽な本。

【同人誌】「放棄惑星」 弘岳粟高 <あわたけ>

 単行本「プロキシマ1.3」に収録された「らくがき」「みのりちゃんジャンプ!」と同一世界における、別人物たちのお話。らくがきからいろんな現象を生ぜしめる特殊能力の持ち主である少女のもとに派遣された女性が、野外で裸にさせられたりHなことをされたりするお話。毎度思うけど、この「らくがき」という特殊能力はなかなか面白い。たいへん空想力をかきたてられる。それとHとの取り合わせは、かけ離れているようで意外となじんでいたりもする。

【同人誌】「遷移点の鉄塔」 粟岳高弘 <あわたけ>

 こちらは少女が芋虫のような浮遊物体とコンタクト。ワームホールに入って異世界の住人さんたちにもぞもぞされたり。異世界と地続きな日常描写がいい感じ。あとスクール水着。この人の描く女の子は非常に普通っぽいので、普通に似合ってなおかつ妙にHくさい。

【同人誌】「ピルピル8×デッサン3」 藤井ひまわり <ひまわりデザイン事務所>

 タイトルどおり「戦えデッサン少女」が3ページ、ピルピルみち代さんという女の子が出演して宇宙で真空ネタの下らないことをやるシリーズ8ページを収録。どちらも絶妙に適当っぽくて明るく楽しい。力みがないのがいいと思う。

【同人誌】「BEST ELEVEN」 <N.Y.JANCKERS>

 サッカー・ワールドカップネタでいろいろと。フィー子&九の二人を中心に、小田扉、朋田のえ、治島カロ、帆高マナ、chihirockがゲストとして参加。脱力系のギャグがメイン。小田扉の「レコバ対うすいさん」の出っ歯レコバくんが馬鹿っぽくてよろしいが、九によるフィーゴ体毛ネタの漫画も面白かった。

【同人誌】「はじめの柘榴」 石椎紅美 <頭が柘榴>

 星のかけらを拾うために旅に出ることを決意した少女とロボットのアニーの、旅立ち前の一風景。シンプルながらファンシーでかわいい絵柄が好感触。

【同人誌】「世にも奇妙な物語」 羽柴光/果竜

 果竜サイドでは、親友の少女・ももに秘かに恋をしている女の子・あかねが、別の男の子に恋しているももに、いろんなおいしいものをもりもり食べさせんつとする。おいしそうにものを食べる女の子はいいな〜とか思いつつ、「太ってしまっても彼女のことが好き」というあかねの気持ちがオトメチックで切ない。スウィートでありビターでもある。羽柴光は久しぶりに再会した雪国の男子女子の物語。絵柄は垢抜けないし、風景は雪が降っているけれども、ほんわか暖かみのある作品であります。

【同人誌】「つゆくさ第9号」 <つゆくさ>

 三島芳治「ナサの人2」、それから原作:林誠治+画:三島芳治「3時のあなた」の2作が収録。どっちもしみじみいいなあ。まず「ナサの人2」は空に大型動物みたいな形をしたナサ製の人工衛星がぷかぷか浮かび、それを少女が不思議そうな顔で眺め続ける。彼女と同じクラスにやってきた転校生の少女・田中ナサ子は、ナサのことを「今は上の方を見るのをやめて、」「下の事ばかり見ているの。」と語る。このセリフがなんかすごくツボに入った。空の上を目指す冒険から観察への移行。饒舌にそれを語るわけではないけど、ぽつねんとした三島芳治の絵は胸がキュッとする何かを読む者にもたらす。「三時のあなた」は、喫茶店でネームを切っている最中のとある同人漫画家にそのファンの少女が語りかける。彼女はなぜか自分のことを、普通知らないようなことまで知っている。でも別に不快な感じではない。ただドキッとさせられる。不思議な余韻を残す作品。

【同人誌】「やけセット」 <ち>

 たぶんあらすじを説明するのは無意味。なぜならそんなものないから。落書き寸前、というか落書きそのものな、自由奔放すぎるイメージに満ちた「コピー誌をホッチキスでとじたもの」が8個セットになって封筒に収められている。情念がほとばしっているような、でも適当でもあるような。説明しようがない。感ずるしかありません。

【同人誌】「江古田功夫」 <地味頁>

 笹川宏の自然体な絵柄が気持ち良い。とくにカラーページ。収録された「生まれは越後」という作品は、越後生まれ、現在は東京で一人暮らしの女の子が銭湯から戻って、故郷の母と電話でお話。のんびり癒し系な青春風味。青さもまた心地よい作品。

【同人誌】「トロコフォア妖精」 三五千波 <つくりもの>

 たいへん濃い……。30歳を過ぎたひとりもの女性の願望に満ちた独白が、画面いっぱいに広がっていてずずーんとくる。あまりの密度の高さに読んでいるとくらくらきてしまう。『ようこそ「勝ち負けのある世界」へ』という言葉は、素敵であると同時に重たすぎる。

【同人誌】「Deutral」Vol.0〜3 <びっくら工房>

 七瀬あゆみらしき人が「七瀬なるみ」名義で参加していたのでちょっと買ってみた。商業誌同様、読後感のさっぱりした恋愛ベースのお話を描いている。あと本多芳延、矢川ノエル、三宅ロースといったそのほかの執筆陣についてもそれぞれ暖かみのあるペンタッチの持ち主で気になるところ。

【同人誌】「くまがまん」 山田参助

 相変わらずむくむくした男が歯を食いしばって気持ち良さを満喫する姿を描かせたら最高。今回はラフイラスト集という感じなのだが、この人って本当に絵うまいよね。むくつけき男だけでなく、ロリロリな美少女とかもこれまたかわいい。たぶんそっち方向で売っても食えちゃうだろうほどの腕があるのに、くまおとこ漫画を描いてしまう。そこがカッコイイ。でも本人はその道のホンモノではないという。つくづく興味深い。


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