2003年8月下旬


8/31(日)……乱取りオール

▼ちと遅れましたがOHP月極アンケートのテーマ入れ替えを行いました。9月分「他メディア化したら面白そうな漫画2003」。要するにアニメや実写ドラマ、小説などなど、他メディア移植してみてほしい漫画作品について投票するというものです。なんでタイトルに「2003」とついているかといえば、2001年6月にも一度やっているテーマだから。個人的にはそのころと比べてかなり他メディアと漫画を取り巻く状況、それぞれの現場が持つポテンシャル、力関係、またユーザー側の受け入れ体制も変わってきているような気がします。そんな今だからこそあえて再びやってみることにしました。

▼それに伴って8月分「ホームドラマ」のほうは終了。1位はぶっちぎりで西原理恵子「ぼくんち」。総投票数が若干少なめだったのは、案外語りにくいテーマだったというのがあるかもしれません。あとは夏休みというのも多少はあったかな?

▼本日の更新が遅れたのは、まあ例によってコミティアに出かけていたからです。購入本についてはまたそのうち。

2003年8月31日コミティア購入物件

【単行本】「恋愛ジャンキー」11巻 葉月京 秋田書店 B6 [bk1][Amzn]

 エイタロー、絵夢、ミホの三角関係は、苦い結果になったけれどもいちおう一段落。こうなると残されたピースである巨乳メガネっ子・地井さんの存在感が高まろうというもの。よかよか。ちなみに巻末でゲストページを描いているTHE SEIJIも地井さんイチオシらしい。

【単行本】「夢使い」5巻 植芝理一 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 「鉱物の聖母」編が盛り上がっている。この巻も好調。おもちゃやらおかしやらがぐにょぐにょ〜と変型して武器になるバトル模様は派手だし、この人ならではのいろんなアイテムをいっぱい詰め込んだ画面構成も物語にマッチしている。あとお話が意外なくらいに本格的で、しっかり構成されているように思える。この作品は植芝理一自身もけっこう楽しんで描いてるんじゃないだろうか。なかなか読みごたえあっていい感じ。

【単行本】「Landreaall」2巻 おがきちか 一賽舎/スタジオDNA B6 [bk1][Amzn]

 うん、面白いです。剣と魔法のファンタジー世界。アトルニア王国の王子とその妹が、歌う樹に宿る歌姫を人間に戻すために、火竜を封じる方法を探す旅に出る……というストーリー。「剣と魔法」といえば、やりようによってはいくらでも安くなってしまいがちなジャンルだけど、軽やかな作画とテンポの良い話運び、魅力的なキャラクター作りによってとても楽しく読めるお話になっている。続巻も楽しみであります。

【単行本】「龍」34巻 村上もとか 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 秘宝を追うための私軍を組織するべく、龍は道教の道士たちが集う寺院「無量観」に入る。道士とはいっても馬賊などならず者あがりの者も多く、太極拳の鍛錬も日々行っている彼らは、いかに龍といえでも一筋縄では味方に引き入れることができない。というわけで久々に武道修行および対決の日々が続くのがこの巻。これまでのような歴史のうねりを描く大河的な展開もいいけど、個人的にはこういう武道モノ的なのもかなり好き。龍が太極拳をマスターしていく過程はなかなかに読みごたえがあっていい。そのうちまた、久々にガチンコな武道モノとか描いてくれないかな。

【単行本】「SS」9巻 東本昌平 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 これにて最終巻。とても良い作品でした。通常のクルマものといえば、むこうみずな若者たちがスピードを競って疾走する……みたいなものが多いけど、この作品の場合は自動車整備工のダイブツをはじめオヤジたちがメイン。彼らの胸に、埋み火のように眠っていた情熱が、車を転がすうちにどうしようもなく蘇ってくる。自分がこれまでたどってきた人生に対する追憶、後悔や諦め、現状肯定……その他もろもろすべてを呑み込んだうえで車を駆けさせ速度を楽しむダイブツの姿はなんともシブい。

 ちょっと違った話になるかもしれないけど、最近のヤンキー漫画はずいぶん家族やこれまでの人生を意識したものが増えてきている。例えば高橋ツトム「爆音列島」は80年代回顧だし、田中宏「莫逆家族」も家族を持ったヤンキーたちのお話だ。ここらへんはかつてヤンキーだった人たちが過去を振り返る年になったということと、ヤンキー時代が「振り返れば懐かしい青春」になったってことなんだろう。そのような空気は「SS」にも共通するものがある。ここに登場するオヤジたちは、人生を振り返る走り屋たちだ。ダイブツはもちろんのこと、自動車評論家として成功したダイブツの旧友・栗原、同じ整備工場で働く山ちゃん、チューンショップの経営難に苦しみつつも最速を夢見るブンブク。彼らの姿を見て、積み重ねてきたものについて想いを馳せると、何やらジーンとくるものがある。東本昌平の骨太で抑えの利いた、しかしときにセンチメンタルなところもある描写もいい。ダイブツが自分に対して発し続ける問い「僕は、頑張ったのでしょうか」。自分もそういうことを考えるような年齢になってきた。しみるなあ。

【単行本】「ティーンズブルース」5巻 コージィ城倉 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 この巻も女子高生アサミは転落街道一直線。いかがわしいことで金を得ていたことが親にバレ、家に帰れなくなったアサミは、彼女に好意を寄せていた同級生の少年の家に転がり込む。そうやって生活が荒れていくにつれ、入れあげているホストへの依存度は高まり、それはそのまま金銭への欲求を募らせていく。その過程が一歩一歩小出しに描かれていく様子はたいへんスリリング。読ませるなあ、コージィ城倉は。

【単行本】「よみきりもの」5巻 竹本泉 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]

 好調。いつもながらののんびりした雰囲気と、ちょっぴりヘンなお話。一話一話気が利いててほっこりほこほこ。この巻について竹本泉自身は「変さの割合が、今回低い」と書いているけど、その分いつもより恋愛風味がちと多めかなという気がした。なんといっても毎度出てくるヘンな性癖のある女の子を、男の子がデートに誘う場面があったりするんだもの。「なにをそれしき」と思うかもしれないが、この作品の場合、恋愛ムードはほのめかしつつも、いつも注意深くダイレクトにはそこに触らないままするりするりと進むのが常だった。そんなわけでちょっぴり新鮮に感じたりはした。こうやってときどき読者がピクッと反応する、ちょっとしたエピソードを入れる手際なんぞもうまいねえ。さすがベテラン。

【単行本】「ハイスコア」2巻 アルコ 集英社 新書判 [bk1][Amzn]

 ボウリングラブ。前の巻では、主人公の少女・キヨコが、同じクラスのボウリング少年・千葉にぞっこん惚れ込み、彼に少しでも近づこうとボウリングを始めるというくだりが描かれた。キヨコはかなり天然なキャラで怪力、トロいけど意外にも才能を発揮。二人はボウリング部を作って県大会に出場する。んでもってその顛末が描かれるのがこの巻。「スターレスブルー」「ラブレター」で発揮したように、この人の青春恋愛モノのきらめきには素晴らしいものがある。それとは対照的に「ハイスコア」はドタバタコメディ色が強め。こっちも見せ場ではセンチメンタルな描写はあって、ときどきハッとするんだけど、うーんなんかわりと普通の出来って感じかなー。巻末には読切「何ひとつ捨てきれず」が収録されているけれども、ピュアな恋愛ストーリーであるこちらのほうがアルコの透明感のある作風はより生きていると思う。まあ「ラブレター」クラスの作品を連発するのはちとキツいとは思うので、「ハイスコア」的な気楽に読める作品をやりつつ、時折は超ピュア〜な作品でマイハートをふるわせてほしいと思います。


8/30(土)……弘法筆をらぶばず

▼8月31日は諸事情あるため、OHP月極アンケートのテーマ入れ替え作業とかは月替わりの0時ピッタリとかにはできないだろうと思います。テーマもまだ決めてないしー。てなわけで作業は遅れると思いますので、その間に8月分「ホームドラマ」のほう、ご投票お済みでない方はぜひどうぞ。

▼未読物
【単行本】「龍」34巻 村上もとか 小学館 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「ナンバーファイブ」4巻 松本大洋 小学館 B5 [bk1][Amzn]
【単行本】「SS」9巻 東本昌平 小学館 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「ティーンズブルース」5巻 コージィ城倉 小学館 B6 [bk1][Amzn]

【単行本】「ラヴ・バズ」1巻 志村貴子 少年画報社 B6 [bk1][Amzn]

 志村貴子の作風は、基本的にキャラクターの「生態観察」だと思っているし、ここでもときどき書いている。そしてこの作品の観察対象は女子プロレスラーだ。かつて男を作って逃げ出した、人気はあるけど実力は?な感じの藤かおるが、何を思ったか子供を連れてかつて所属していた団体に戻ってくるというところからお話は始まる。そんな彼女の、子育てをしながら女子プロレスラーを続ける生活が、淡々と描かれていく。まあ世間を揺るがすような事件は、いつもながら起きない。これからも藤かおるがレスラーとしてムチャクチャ強くなったりチャンピオンになったり、はたまたプロレスでの人気を生かして国会議員に出馬するなんてことは、たぶんないでしょう。そんな弾けたところは全然ないのに、これが面白いんだよねえ。独自のテンポできっちり味のある作品を構成している。

 思うにこの人は、各話の始め方と締め方がうまい。その節目節目がきちんとしているので、途中は淡々と進んでも、1話ごとにちゃんと「読んだ」って感じがする。もちろん途中の部分も過剰な描き込みがなく、整理されていて読みやすいってのはあるんだけど。一つの話の中で大小のリズムを刻んで、楽しく読ませてくれます。こういう自分ならではのリズムの持ち主だから、何を描いてもきっと独自の味が出せるんじゃないかと思う。

【単行本】「プラレスラーVAN」1巻 作:牛次郎+画:神矢みのる 秋田書店 B6 [bk1][Amzn]

 15年の時を経て、「プラレス3四郎」の続編が登場。というわけで舞台を現代に移してまたプラレスラーによるバトルがスタート。今回の主人公はプラレス大好き少年の雄二、通称VANと、旧作の主役プラレスラーである柔王丸と同タイプな明王丸。まあ彼らが旧作同様にバトルするわけだけど、これが何気にちゃんと面白い。神矢みのるは漫画家としてのブランクはけっこうあったはずなのだが、腕はまったく衰えていない。ていうかあんまりにも昔のまんまなので正直ちょっと驚いたりもした。んでもってお話もけっこうワクワクするものはある。模型に熱中し、そこに独自の工夫でメカを盛り込み、そしてできたプラレスラー同士を戦わせる……という筋立ては、少年魂をくすぐるものがある。

 とはいえこのようなストーリーが、やはり懐かしいものに感じられてしまうのも事実。実際のところ、ここで出てくるようなことは、15年前よりも今のほうがより現実に近くなってはいる。だからといってこの主人公のような、テクノロジーを信じてそれに熱中する少年が増えているかといえばそういうわけでもなく。そういうところはちょっと寂しい感じもしなくはない。まあこれが懐かしいモノに感じられてしまうのは絵柄の問題もあろうとは思うけれども。例えば似たような題材を扱っていても、CLAMPの「エンジェリック・レイヤー」は十分現代的であったわけだしね。

【単行本】「ORANGE」10巻 能田達規 秋田書店 B6 [bk1][Amzn]

 この巻はとてもアツい。サッカー1部リーグをめぐる戦いはますますヒートアップ。オレンジの最大の敵であるさいたまレオーネとの最終戦は後半に突入。0-2とリードされたオレンジだが、ムサシの「3点とる」との言葉を信じて一つにまとまり、必死の攻めと守りを繰り返す。途中でこれまで控えに甘んじてきたかつての守護神・田村のドラマもあったりして、実にアツい。必殺技などの奇手を使うわけではなく、ごくごくオーソドックスにサッカーに賭ける男の意地と意地のぶつかり合いを描いててすごく燃える。いや〜いい漫画です。ところでこの巻のカバー見返しのところに書いてあって、故障で1か月戦線離脱したアシスタントさんって、ズバリ新谷明弘先生のことですな。

【単行本】「宇宙賃貸サルガッ荘」3巻 TAGRO スクウェアエニックス A5 [bk1][Amzn]

 宇宙の墓場サルガッソーにあるアパートでののんびりした日常がこの巻も展開。登場人物、とくに魔女のメウさんがキュートでこの巻も楽しい。この宇宙の閉鎖空間をめぐる謎についても少しずつ明らかになってきており、4巻あたりでは大きな展開があるかもしれませんなあと期待を持たせる。

【単行本】「凜 りん」1巻 ノボプロ。 双葉社 B6 [bk1][Amzn]

 世界一のナースを目指すも、病院を間違えてしまった大ボケナース白井凜子が、ヤブ医者とその患者たちに「研修」と偽ってHないたずらをされ続けるというギャグ漫画。作者名は「ノボプロ。」となっているけど、要するに高橋のぼる、もしくはそのアシスタントかなんかでありましょう。まあHなイタズラといってもセックスとかまではいかず、唇に薬を塗りつけられるとか、目隠しして足の指をなめさせられるとかそんな感じ。エロチックといえばそうなんだろうけど、描写が無駄に濃いのでギャグ色のほうがずいぶん強い。けっこう馬鹿馬鹿しくて好きだが、掲載誌がピザッツということもあってわりとエロ度は高めにしている感がある。その分、ギャグのほうの突き抜け方は若干足りないかな……という気もする。

【単行本】「ももいろさんご」5巻 花見沢Q太郎 少年画報社 B6 [bk1][Amzn]

 見事なまでの力の抜けっぷりと、とろーりとした甘味、それからなしくずしなエロシーン。その融合ぶりは花見沢Q太郎ならではのワザでありましょう。毎号の超ぞんざいなあらすじとかかなり好き。お話としてはたぶんこのままずるずる行くんだと思う。ていうか本筋である百合子さんとのからみなんぞは、正直なところ3話もあればカタはつけられるはず。だからこのままの楽しいぺースで続けていけば、どうにでもなるんではないでしょうか。

【単行本】「一騎当千」6巻 塩崎雄二 ワニブックス A5 [bk1][Amzn]

 今回はバトルシーンは少なめなので、爆乳爆尻爆パンツ状態はこの作品にしては抑え気味な感がなきにしもあらずだが、ほかの作品に比べたらはるかに多い。シュールなくらいにサービスたっぷり。美少女たちについている三国志ネームについても、原典のイメージとの差にときどきクラクラくるが、そこがいいと思う。なんだかんだいってこの作品は好きなんだよねー。

【雑誌】ヤングキングアワーズ 10月号 少年画報社 B5中

 清水栄一+下口智浩の新連載「無敵番長バクライガ」がスタート。第1回はけっこう馬鹿馬鹿しくて、わりといい滑り出しという感じがした。お話としては「無敵番長」の称号をめぐって学生たちが戦う番長モノなのだが、なぜだか喧嘩がロボットを使ったバトルになっちゃってるし、そのロボットも商店街のおっさんたちが開発したものだしけっこうムチャをやっている。こういうスカッとしたしょうもなさはわりと好きなので今後の展開にちょっと期待。

【雑誌】COMIC LO Vol.03 茜新社 B5平

 どうもこのシリーズは好調なようで、12月発売予定の次号から月刊化してしまうらしい。園ジぇるシリーズもそうだけど、ここらへんについては話題作りもけっこううまいと思う。Webの好き者層の注目をうまいこと集めて話題を盛り上げているし。あと表紙も通常のエロ漫画雑誌とは一味違うオシャレな感じで思わず目がいってしまう。ただ内容については個人的には若干物足りないかなーと毎度思う。根雪れい、EB110SS、ひぢりれい、大原久太郎ら、絵柄的には好みな人が揃っているんだけど、そういう人たちの作品に短めなのが多い。それもあってストーリー面で食い足りなく感じる。

 とくに最近は、ロリ絵とか萌え絵に関しては、うまい人がすごく増えた。それだけにうまい人ばっかり並べるのもやろうと思えばできるんだけど、それだとかえって各作品の個性が埋没しちゃう感がある。「絵がうまい」ってのがウリの作品ばかり並べてしまったら、逆に「絵がうまい」だけでは目立たなくなっちゃう。その中で目立とうと思ったら、さらに一歩抜きん出た超絶画力を見せる、ムチャクチャにエロくする、お話で読ます、目立つほどに萌えるシチュエーションを描く、はたまた毛色の違った画風で描く……といったモノが必要になってくる。そういう目立つ、アクセントになる人が、この雑誌はわりと少ないような気がする。これは本誌である天魔にも共通した作りなので、意図してやっているのかもしれないし、そのほうが売れるのかもしれないけど個人的には読んでてちと退屈してしまう。

 その中で今回目立ったのはシチュエーション的に萌え度が強くお話的にも完成度の高い長月みそか「ぷりーずぷりーずみー」、肉感的で濃いめのペンタッチが目を惹く「僕はおっぱい小学生も好きなのだが?」、シンプルで丸っこい描線がかえって新鮮な芹沢ゆーじ「カキコ」あたり。月刊化されたらもう少しストーリー面で強く引っ張れる作品を増やすとか、ショートギャグを入れるなりして誌面にメリハリをつけるとかしていってほしいところ。

【漫画執筆陣】根雪れい、EB110SS、ひぢりれい、月吉ヒロキ、大原久太郎、長月みそか、とりあ、KEPPI、らいむみんと、瀬峰正重、KURO、片桐火華、幸せ1500、芹沢ゆーじ、川崎犬太朗、水無月露葉、OKINA


8/29(金)……縄の半ば

【雑誌】漫戦スピリッツ 9/29 小学館 B5中

 吉田戦車「山田シリーズ」は、かわうそであるがゆえに足に毛や水かきを有し、バナナの皮を踏んでもうまく転べない山田の苦悩を描く。かわうその努力が胸を打ち、あのぷりぷり県産の有名なバナナの皮も登場し、いい味のお話になっている。このシリーズはしみじみ好きだ。あとこの増刊号のメインである新人枠作家の作品では、えなみしんいち「エレキング」が荒削りながらパワフルなところを見せていて良かったかな。貧乏にあえぎつつスターを目指すロック野郎と、魂を吸い取る魔性のギターの物語。

【雑誌】コミックバンチ 9/12 No.39 新潮社 B5中

 監修:荒木秀一+構成:上之二郎+画:佐藤良治の新連載「追い込み屋銀次」がスタート。タイトルにもある「追い込み屋=スキップトレーサー」というのは、本来は賞金がかけられた犯罪者を追い詰める仕事人的なものらしいのだが、この作品の主人公は主にヤミ金業者に追い込みをかけ、その被害に遭おうとしている人たちを救わんとする。ヤミ金融業者の手口をいろいろ解説してくれるらしいので勉強にはなりそう。ただこれはバンチらしいといえばバンチらしいんだけど、絵柄がいくぶん古めなんで求心力をどれだけ持てるか……というのが気になるところ。

【雑誌】快楽天 10月号 ワニマガジン B5中

 最近は雑誌の前半部分が、熟女系で実用度高めな作品で固められている。今号は月野定規、LINDA、ゆきやなぎ、飛龍乱……といったところが並ぶ。かるま龍狼「暗やみの中で」はギャグもやる人ながら、そういう路線のときはきっちり人妻系で淫靡に攻めてくるあたり、さすがに器用。ペンタッチもそれに合わせて艶っぽくしてきている感じ。ゆきやなぎ「7時24分の女」は電車内痴漢モノ。この人の線はシンプルだけど滑らかで、女性の肌の白さが際立つタイプの画風。エロ漫画雑誌においては汎用性の高い画風なんで、雑誌に一人いると重宝するタイプな作家さんという気がする。

 後半のオシャレ系パートは、米倉けんご、鳴子ハナハル、陽気婢、タカハシマコ、三浦靖冬、SABEといった布陣(SABEはギャグパートかな)。鳴子ハナハルも最近では雑誌の方針か、エロ度をちょっと高めてきているように見受けられる。

【雑誌】エンジェル倶楽部 10月号 エンジェル出版 B5平

 凄いな、奴隷ジャッキーは……。「A wish 〜たった一つの…を込めて〜」がとうとう最終回。憧れの少女が初詣の最中に輪姦されているというところから始まった物語は、最後の最後までテンションが高いまま突っ走った。主人公の少年は打ち気で人付き合いが下手、彼女といざ結ばれるという段になっても超早漏で、何度も失敗する。その積み重ねたるや最終話に至って累計で10895回を数える。しかし体をこすり合わせるだけでも痛いという状況になっても、彼らはつながろうとする行為をやめない。その姿は熱すぎるし激しすぎる。常軌を逸しているけど、ヘンな意味でなく直球勝負で感動さえしてしまった。ラスト間際の涙とよだれと鼻血まみれのキスシーンなんかもう最高。このむっちゃくちゃなテンションの高さは、ちょっとほかの人では出せない。いや〜立派だ。あと奴隷ジャッキーは、今回フリートーク漫画も2ページ描いているが、こちらの内容もぶっ飛んだ感じで面白かった。

 ゆずぽん「ラブラブ3者面談」。最近はこういうクセのない明るめの絵できっちりエロをやる人というのはけっこう好き。ポン貴花田とか琴乃若子とか。吉良広義「アマゾネス学園Z組」は修学旅行編最終日。女子たちとデカチン性根の貪欲なからみ合いがエロい。胸もデカけりゃちんこもデカい。唇の厚ぼったさもいいですな。


8/28(木)……倦んだ赦し

▼5月のコミティアで買った同人誌は漫画についてはいちおう読了。ちょっと今日は時間がなかったので小説本までは残念ながら手が回らなかった。うーん、最近どうも活字読書能力が弱まってる。

2003年5月5日コミティア購入物件
【同人誌】「TIACOCHAN」 白間タケヒデ
【同人誌】「stecca2」 natsume
【同人誌】「ふるさと楽団」 宮田斉彬 <dismo>
【同人誌】「parking? 20030505」 南研一
【同人誌】「鉄塔」
【同人誌】「EU-BOOK 2」 <山本内燃機>
【同人誌】「海へ続く道」 大川大 <小金井市民>
【同人誌】「PRINCE」創刊号 小杉あや&EMI
【同人誌】「パピリオ」 おがわさとし
【同人誌】「カレシは占い師・2」 衣羅ハルキ <Hee-Haw>
【同人誌】「レターセット」 <かなり狐+Hee-Haw>

【雑誌】モーニング 9/11 No.39 講談社 B5中

 桝田道也「浅倉家騒動記」がとても面白かった。城がぶっこわれてムシャクシャしているお殿様のうさを晴らすべく、浅倉父が夏祭りの素人音曲腕くらべへの出場を進言。とくに後半の下らない展開の連続には爆笑。なんという呑気な武家たちだ! オーソドックスなドタバタギャグともいえるのに、これだけ笑わせられるというのは大したもの。桝田道也のギャグ漫画力には見るべきものがある。神原則夫「ナゾの女マリー」は、26歳処女のイタリア人女性とウソをついていた56歳のナゾの女マリーと、彼女のダマされていた人の良すぎる男の愛の物語。いつもながらに飄々としたギャグを描いてます。

【雑誌】ヤングサンデー 9/11 No.39 小学館 B5中

 小田原ドラゴン「小田原ドラゴンくえすと!」がたいへん面白い。今回はアダルトビデオに登場する「汁男優」のレポート。汁男優とは「x人ぶっかけ」というタイプのビデオで、女優さんにぶっかけるためだけに集められる素人男優さんのこと。とくに今回の主役ともいうべき汁男優のおっさんの虚無的な生き様に感激。

【雑誌】ヤングジャンプ 9/22 No.39 集英社 B5中

 うーん、全体にあんまり面白くないかなー。こばやしひよこ「おくさまは女子高生」は新シリーズ開始。恋のライバルっぽい存在も登場してちょっとドキドキという感じでしょうか。

【雑誌】週刊少年チャンピオン 9/11 No.39 秋田書店 B5平

 ブラック・ジャック生誕30周年記念企画として、今号と次号で単行本未収録作品2本を収録。今回は「ブラック・ジャック病」、次号が「落下物」。やっぱり読ますなあ。ブラック・ジャックかっこいー。能田達規「ORANGE」。とてもアツくて面白い。オレンジ側だけでなく、連続して1部リーグ昇格を逃してきたアヴァランチ側にもドラマがあって燃える。いい作品だなあ。

【雑誌】フラワーズ 10月号 小学館 B5平

 そういえば気づいてみると、プチフラワーっぽさが最近はずいぶん薄れてきたなーという感じがする。今号には波津彬子と萩尾望都が載ってないのでそのせいかもしれない。そんな中、今号では渡辺多恵子「風光る」が面白かった。毎回コンスタント。読み始めたのはフラワーズに移籍してからだけど、途中から読んでも十分理解できる、分かりやすいストーリー作りは秀逸。

【雑誌】コーラス 10月号 集英社 B5平

 そのだつくしの新連載「アフロマン」がスタート。車を使った移動店舗でコロッケを売ってるアフロ男に惚れてしまったおねーちゃん・五月を主人公としたドタバタ恋愛ストーリー。そのだつくしらしい楽しく読める作品。ちょっとミステリーっぽい展開もあるのかなーという1回めのヒキだが果たして。

【雑誌】メロディ 10月号 白泉社 B5平

 よしながふみ「愛すべき娘たち」はシリーズ最終回。ラストは突然若い男と結婚した主人公・雪子の母のエピソードでしめくくり。毎回鮮やかにお話を構成してて面白いシリーズでございました。ラストのコマのお母さんの表情もいろんな感情がこもってる感じで良いですな。勝田文の読切「スターレット」は、子供のころの体験が原因で、ものすごいアガリ性になってしまった美人さんのお話。軽いタッチの絵柄とテンポの良い物語展開は上々。ただ彼女がアガリ性を克服するくだりは脈絡なさすぎな気もする。

【雑誌】阿ウン 10月号 ヒット出版社 B5平

 大井はに丸「lose」。学園乱交ゲームもそろそろ大詰め。今回はラブなところもちょいとあり。現在7話で最終回は近そうなのだが、単行本1巻がすでに来月13日発売予定となっている。普通はこのくらいの話数なら全1巻でまとめちゃうところだと思うが、ヒット出版社の単行本はわりと薄めなので2冊に分けたってところか。この作品もそうだけどヒット出版社は売れセンの作品については、雑誌掲載からあんまり時間を置かずに単行本を投入しますな。商売上手と申しますか。おきた51「10海里≠20Km」。洋上で良家のおぜうさまとむくつけき執事の男が過ごすエロエロな時間を描いた作品。阿ウンでは新人賞受賞作家だが、2000年後半くらいからばんがいちにも何回か載っていたのを読んだことがある。垢抜けない暖かみのある画風はけっこう好き。

【アンソロジー】アイラDELUXE VOLUME.14 三和出版 A5平 [Amzn]

 掘骨砕三「便所虫」がやっぱすごいなあ……。下水の街で暮らす少年・屈と少女・匂の愛の日々を描く物語。というとなんか健気で美しそうだし、実際健気でもあり、美しくもあり可愛くもあるのだが、刺激も強烈。ヘンな毒虫に刺されて身体がかさぶたに覆われていく匂の姿には強烈なインパクトがあるし、そこからの変化もまたすげー。人間と足がいっぱいな虫を融合させたようなキャラを、恐ろし可愛く描かせたらもう抜群。その後のむしむし大集合なカットとかも、ダメな人は本当にダメだろうなあ。個人的には「うひー」といいつつも「うひょひょひょ」という感じで大喜びなんだけど。氏賀Y太「まいちゃんの日常」。不死身メイド娘まいちゃんに弟キャラ登場。今回はまいちゃんが内臓をぶちまけることも目ん玉を抉り出されることもなく、この作品にしてはソフトな展開といえましょうか。


8/27(水)……妊婦王朝

▼久々に朝までコースの飲み。漫画話ができていい感じでございました。しかしその後の電車で豪快に寝過ごしてしまったり。そんなこんなで更新が遅れてしもうたわけです。

▼未読物
【雑誌】モーニング 9/11 No.39 講談社 B5中
【雑誌】ヤングサンデー 9/11 No.39 小学館 B5中
【雑誌】ヤングジャンプ 9/22 No.39 集英社 B5中
【雑誌】週刊少年チャンピオン 9/11 No.39 秋田書店 B5平
【雑誌】フラワーズ 10月号 小学館 B5平
【雑誌】コーラス 10月号 集英社 B5平
【雑誌】メロディ 10月号 白泉社 B5平
【雑誌】COMIC LO Vol.03 茜新社 B5平
【雑誌】阿ウン 10月号 ヒット出版社 B5平
【アンソロジー】アイラDELUXE VOL.14 三和出版 A5平 [Amzn]
【単行本】「プラレスラーVAN」1巻 作:牛次郎+画:神矢みのる 秋田書店 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「恋愛ジャンキー」11巻 葉月京 秋田書店 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「夢使い」5巻 植芝理一 講談社 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「宇宙賃貸サルガッ荘」3巻 TAGRO スクウェアエニックス A5 [bk1][Amzn]
【単行本】「Landreaall」2巻 おがきちか 一賽舎/スタジオDNA B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「おさんぽ大王」7巻 須藤真澄 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]
【単行本】「よみきりもの」5巻 竹本泉 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]
【単行本】「ハイスコア」2巻 アルコ 集英社 新書判 [bk1][Amzn]
【単行本】「トラや」1巻 南Q太 太田出版 A5 [bk1][Amzn]
【単行本】「一騎当千」6巻 塩崎雄二 ワニブックス A5 [bk1][Amzn]
【単行本】「怪奇大盛!!肉子ちゃん」2巻 児嶋都 マガジン・ファイブ [bk1][Amzn]

▼9月購入予定
9/1 「のはらのはらの」 雁須磨子 大洋図書
9/5 「かみちゃまかりん」1巻 コゲどんぼ 講談社
9/5 「アゴなしゲンとオレ物語」13巻 平本アキラ 講談社
9/5 「ガタピシ車でいこう! 迷走編」1巻 山本マサユキ 講談社
9/5 「サプリビンターズ」1巻 寺沢大介 講談社
9/5 「映画に毛が3本」 黒田硫黄 講談社
9/5 「賭博破戒録カイジ」10巻 福本伸行 講談社
9/5 「LOVE SOLE」 佐野タカシ 大都社
9/9 「サムライダー」1巻 すぎむらしんいち 講談社
9/9 「全日本妹選手権」5巻 堂高しげる 講談社
9/9 「鼻兎」3巻 小林賢太郎 講談社
9/9 「プルンギル −青の道−」5巻 作:江戸川啓視+画:クォン・カヤ 新潮社
9/11 「樹海少年ZOO1」11巻 作:ピエール瀧+画:漫$画太郎 秋田書店
9/11 「無敵看板娘」5巻 佐渡川準 秋田書店
9/12 「ライジング」1巻 わたべ淳 双葉社
9/13 「lose」 大井はに丸 ヒット出版社
9/13 「精装追男姐」 師走の翁 ヒット出版社
9/18 「制服ぬいだら♪」2巻 渡辺航 秋田書店
9/18 「からくりサーカス」29巻 藤田和日郎 小学館
9/18 「雷句誠短編集」 雷句誠 小学館
9/19 「Milk maid」 RaTe コアマガジン
9/19 「モーティブ −原動機−」1巻 一色登希彦 集英社
9/19 「●Rec 夢の記憶」 花見沢Q太郎 小学館
9/19 「ラバーズ7」1巻 犬上すくね 小学館
9/20 「UK アンモラルキッズ」 ひぢりれい 茜新社
9/22 「BLAME!」10巻 弐瓶勉 講談社
9/22 「Forget me not」 鶴田謙二 講談社
9/22 「えの素」9巻 榎本俊二 講談社
9/22 「てんでフリーズ!」3巻 ISUTOSHI 講談社
9/22 「サトラレ」5巻 佐藤マコト 講談社
9/22 「仮面ライダーSPIRITS」5巻 村枝賢一 講談社
9/22 「ラブロマ」1巻 とよ田みのる 講談社
9/22 「クロ號」6巻 杉作 講談社
9/22 「二十面相の娘」1巻 小原愼司 メディアファクトリー
9/24 「秘密の叛乱」 柿ノ本歌麿 桜桃書房
9/25 「いばらの王」2巻 岩原裕二 エンターブレイン
9/25 「堀田(仮)」 山本直樹 太田出版
9/27 「媚女爛漫」 海明寺裕 桜桃書房
9/27 「お手々つないで」 西炯子 小学館
9/29 「怪盗ブルマー」 北河トウタ 少年画報社
9/29 「ホーリーランド」6巻 森恒二 白泉社
9/29 「マウス」11巻 作:あかほりさとる+画:板場広志 白泉社
9/29 「まねきん」 リイド社 まだ子
9/30 「探偵玄居煉太郎(仮)」 山田章博 幻冬舎コミックス
9/30 「つゆダク」5巻 朔ユキ蔵 小学館
9/30 「最強伝説黒沢」2巻 福本伸行 小学館
9/30 「ペット」4巻 三宅乱丈 小学館
9/30 「ボールパークへようこそ」2巻 高田靖彦 小学館

【雑誌】スーパージャンプ 9/10 No.18 集英社 B5中

 作:愛英史+画:里見桂「ゼロ」。今回はけっこう電波系だ……。なぜか人口数百人の孤島で過ごす豪家クルーズの旅にやってきたゼロ。そこで彼は、米軍に捕らわれて一悶着あった後、生物テロで使われる細菌の特効薬を見つけろと依頼される。そして、なんか研究して1週間で特効薬を見つけてしまう。いやー、凄すぎるぜゼロ。平松伸二「マーダーライセンス&ブラックエンジェルス」。平松先生は破綻銀行への血税投入がどうにも許せないご様子。「カス銀行」「ボケ銀行」「市中引き回しの上獄門はりつけさらし首」と容赦なし。終盤の展開は思わぬ方向へ行って、オチはけっこうグダグダに。いい味出してます。

【雑誌】週刊少年サンデー 9/10 No.39 小学館 B5平

 万乗大智「ふうたろう忍法帖」。現代に生きる忍者少年の活躍を描くアクションアドベンチャー。コメディタッチでドタバタ楽しく展開。さっそくおトイレでズボン下ろしたシーンが出てきたり、上半身裸になってみたり、煩悩描写を忘れないところはこの人らしい。

【雑誌】週刊少年マガジン 9/10 No.39 講談社 B5平

 菊池としを「鎮魂退魔記ハジャト」が再登場。今号と次号で前後編が掲載。今回は破邪人兄弟が、カルト教団的な施設で育った子供のころのエピソードを描いていく。いつもながら濃い口。森川ジョージ「はじめの一歩」。板垣vs.今井の試合は最終局面。力強く、緊迫感があって相変わらず面白い。

【雑誌】コミックミニモン 10月号 東京三世社 A5中

 ほしのふうた「もっと!!ノリちゃんと私」は、8月号に掲載された「ノリちゃんと私」のつづき。近所の歳下の男の子ノリちゃんと、なし崩し的にHにふけっちゃう女の子のお話。今回は二人がおうちで海水浴ゴッコをして、水着姿でたわむれるという展開。いつものことながら男子女子ともにかわいくてええですのう。

【同人誌】「大人になる呪文 1.5 なつやすみ」 パニックアタック FOX出版

 単行本2巻発売まではまだまだ時間がかかりそうであるっつーことで、同人誌形式での発売が決まった1.5巻(FOX出版のおしらせページ)。まあ雑誌のほうで全部読んでるし、どうせ2巻が出たら収録される内容だから買わんでもええかのうとか思ってWeb通販の申し込みはしなかったのだが、アキバのとらのあなに行ったら売ってたもんで購入。この巻には9〜14話、100ページ分が収録。1巻のときと変わらず、かわいすぎるロリプニ妹と、その姿にはうっドッキューン萌え萌え〜となっている煩悩おにいちゃんの平和な日常を楽しくかわいく描く物語。最初のころよりも直接的なエロシーンは減っているけれども、この作品の場合はそのほうがいい。狙っているかのようにピンポイントでお兄ちゃんを萌えさせてしまう妹・未由たんの生態を目の当たりにして、ニヤニヤしまくるのがよろしいです。幼女という小動物を観察してる感覚。


8/26(火)……嘆じとらんねん

【雑誌】イブニング 9/9 No.13 講談社 B5中

 吉田基已「恋風」。お兄ちゃんとのお別れから半年。七夏は「かわいい」から「きれい」に変化。ずいぶん大人っぽくなってる。丸顔の七夏にまだ慣れてないので違和感はなくもなかったけれども、これはこれでまたドキッとさせられるものが。佐藤マコト「サトラレ」は、サトラレという存在を軸にまた違った立場の人間を描写。中心となる「サトラレ」という設定が優れているので、そこから派生してくるキャラ、思考シミュレーションも興味深く読める。毎回「なるほど、こういうアプローチでくるのか」と感心する。寺沢大介「喰いタン」は連載再開。やっぱ面白いね。メシを大量に、かつうまそうに食う人ってなんか見ててうれしい。

【雑誌】ヤングチャンピオン 9/9 No.18 秋田書店 B5中

 後に残らずスルッと読めちゃう雑誌ではあるのだが、コレという作品が今はあんまりないかなあ。丸尾末広「ハライソ〜笑う吸血鬼2〜」は、いつもながらに耽美で注目の存在ではあるが、この人の場合豪家単行本を出してもらって、しっかり読むのはその時点でいいやって気もするし。

【雑誌】少年エース 10月号 角川書店 B5平

 作:富野由悠紀+画:長谷川裕一「起動戦士クロスボーンガンダム」の番外編がこちらにも掲載。単行本の普及版が、9月2日に上下巻同時発売されるとのこと。桂明日香の読切「螺子とランタン」は、端整で英国感あふれる読切。10歳にして公爵家を継ぐことになってしまった少女ココと、彼女の専属講師、というか家庭教師につけられることになった青年の日常を描くという作品。まだ幼いながらも公爵という立場になってしまったココは心中に寂しさを抱えており、最初は栄達が目的で講師になったニデルも情にほだされていくという感じ。二人の関係には心温まるものがあって、気持ち良く読めた。華やかで整った画風はすでに即戦力の域。うまい人であります。意外と裾野は広い、のかもしれない英国漫画界のニュースターになれるといいですな。

【雑誌】ガンダムエース 10月号 角川書店 B5平

 安彦良和「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」は今回カラー16ページを含む56ページが掲載。いつものことではあるけど本当に精力的だなあ。頭が下がります。トニーたけざき「トニーたけざきのガンダム漫画」。デギンかっこいー。こんなにすごい人だと思わなかった。いい人だとは思っていたけれども。

【雑誌】漫画アクション 9/9 No.34 双葉社 B5中

 さそうあきら「マエストロ」。やっぱり面白い。今回はこれまで目立っていなかったサブキャラだけでほぼお話は展開するが、しっかり読ませる。オーケストラという集団の中で、音と音とがうまく響き合ったときの気持ち良さってものがリアルに感じられるのが素晴らしい。さそうあきらの作品は地味ながらも、読んでてゾクゾクさせられる機会が多い。わたべ淳「ライジング」。いつも熱血しててコンスタントに面白い。ソフトボールもけっこう燃えるもんですな。

【雑誌】漫画サンデー 9/9 No.34 実業之日本社 B5中

 新田たつお「静かなるドン」。ロシアン・マフィアの刺客であるラスプーチンが、どんどん馬鹿っぽくなってきてて楽しい。なんだかんだで読めるなあ、この手の漫画は。新田たつおとかはトンガったエッジの部分にはいない人かもしれないけど、作家としての地力は感じる。

【単行本】「琉伽といた夏」1〜3巻 外薗昌也 集英社 B6 [bk1][Amzn:1巻/2巻/3巻

 うん。いけるいける。外薗昌也については、以前は短編か中編、あるいは読切シリーズものの人という印象を勝手に持っていたんだけど、「犬神」以来、長い話もしっかり支えられるようになってきたなと思う。この作品の語り手は弥衣という妹を持つ少年、遠野貴士。この兄妹はそれまでは平凡な高校生だったが、突然の落雷によってその運命は一変。弥衣の身体に31年後の未来から犯罪者を追って来たという女戦士・琉伽が宿り、彼女の戦いに貴士たちも否応なく巻き込まれていく。というわけで設定としては「ターミネーター」っぽく、テンポ良くどんどん進んでいく。SF系の物語としてしっかり読めるというのがまず一点。それから兄妹漫画としても良かったりする。貴士と琉伽がだんだん惹かれ合っていく過程、それから弥衣のほうもお兄ちゃんにノボせてしまうくだりには思わずニヤニヤしてしまう。「犬神」もそうだったけど外薗昌也は最近、赤面少女を描くのがすごくうまくなった。そのあふれるラブラブ波動にどうにもやられてしまう。チューの一つもするわけじゃないけれども、その赤面の威力は十分。といってもまあ萌え的な要素ばかりじゃなくてしっかりお話は進んでいるので、先の展開も気になります。


8/25(月)……笛に尽くす線と運

▼先日注文しておいた串田アキラのベスト盤CD「I am the ONE」[Amzn]が到着。さっそく聴いてみたけどいい。やっぱり串田声は燃える。できればこんな感じでMIOのベスト盤も出してほしい。ここらへんのアニメ・特撮などの主題歌がらみは版権問題が面倒なので、なかなかベスト盤を出せないとか聞いたけど……。

【雑誌】アックス Vol.34 青林工藝舎 A5平 [bk1][Amzn]

 今号は「福満しげゆきの小規模な特集」が掲載。もちろん漫画家を目指すけれどもどうも成功しそうに見えない、寂しがりやの青年の物語である「僕の小規模な失敗」も掲載。インタビューも載っている。たいへんこの人らしい、おくゆかしい受け答えに好感を持ったが、福満しげゆきが既婚者だというのは(失礼だけど)意外だった。堀道広「青春うるはし! うるし部」。よくありそうなヘタウマ系の作品ではあるが、けっこうヒネりは利いてて面白く読めた。意外と普通に織り込まれている漆塗りに関する知識に味あり。Q.B.B「新・中学生日記」。山の中で遭難した中学校の先生が帰還して、学校のヒーローに。ほのぼのしててええですなあ。先生、生徒の頭悪そうな振る舞いがしみじみと面白くて良い。

 清水おさむ「紅桜生首地獄変」前編。今号ではこれが一番面白かったと思う。徳川幕府のもと、代々首切り役人をしてきた家の三男である吉亮の一代記。妹との禁断の愛に実を焦がす吉亮だが、その愛欲を断つため、首切り人としての生をまっとうするため彰義隊に志願し、新政府の兵士たちを切り刻んでいく。物語は彼が執着を捨てて人をバッサバッサ切りまくる血しぶきのうちに次回に続く。逆柱いみり「競技会」は、ブリーフと白靴下といういでたちでなにやらよく分からん競技会に出る少年がふらふら歩く道のりを追う。いつもながら心地よい奇妙さ。主人公のブリーフが不思議に色っぽい。みうらじゅん「アイデン&ティティ32」。うーん泣かせますなあ。

【雑誌】ヤングキング 9/15 No.18 少年画報社 B5中

 塩崎雄二の新連載「バトルクラブ」は、美少女二人のレスリング部に、強くなりたいと切望する高校デビュー志望の男子が弟子入り……という感じ。この人らしく、女の子がパンツをもりもり出しつつ戦います。松浦聡彦は初登場「応援団無宿 純情キャストアウェイ!」が掲載。転校を重ねながら、一生懸命頑張っている人たちを応援し続けていく「流しの応援団長」の物語。後味爽やかでまとまってると思う。あと読み切りではひのき一志も登場。何を描くのかなあと思ってたら「ファミレス戦士プリン」だった。「BE SEXUAL!BE FOOLISH!!」というキャッチがついているけど、本当に馬鹿馬鹿しい〜。このバカエロスっぷりとラストのダイナミックでしょうもないオチは一見に値する。思わず笑っちゃったよ。佐野タカシ「イケてる2人」は50ページ掲載。空手部夏合宿編がおしまい。きっちり盛り上がってて楽しかった。お色気はいつもどおりちゃんとからめながらも、カラッと爽やかな男の友情モノにもなっていて良かった。

【雑誌】月刊IKKI 10月号 小学館 B5平

 小野塚カホリの新連載「小町風伝」。子供のころ友達二人と一緒に変態男によって監禁された経験を持つ美人さんが主人公。この人の作品はパッと見いつも同じことをやっているように見えるのだが、意外と作品ごとに手を変えて来ていたりする。ちゃんと読めばしっかり面白いと思うのだが、「ああいつもの小野塚カホリね」と思われてしまいがちなような気がするのは惜しくもあり。松田洋子も新連載「まほおつかいミミッチ」。魔法は使えるんだけど、ものすごいみみっちい使い方しかできない少女の日常。地味ながらほのぼの。加藤伸吉「少女マンガ」。放置されたバスの中で一人たくましく暮らす少女が、泥棒に入った老婆のすみかで出会った少女マンガ。すさんだ生活を送っていた彼女だが、オトメチックすぎるその物語世界に心惹かれてしまう。わりとラブリーな小品。稲光伸二「フェニックスセントーン」は「フランケンシュタイナー」の続編。IKKIには2年ぶりの登場とか。

【雑誌】アフタヌーン 10月号 講談社 B5平

 二宮ひかるの新連載「犬姫様」がスタート。ボンデージファッションに憧れて彼女にそーゆー服を着せようとするも嫌がられている主人公のところに、得体のしれない素っ裸の女が出現。彼女は自分のことを「犬」であると語るが、彼女の正体は実は……。いきなりドタバタと、ちょいエロチックにお話は始まった。「理性と煩悩が溶け合う新連載!」というキャッチがつけられているけど、なんかまたしてもメロメロな気分にさせられてしまいそうな予感。読切、秋山はる「妄想小説」。藤野さんという女の子が学校の机の中に忘れていってしまった、妄想たっぷりのオリジナル小説を書きためたノートが縁となって、水谷さんという女の子との友情物語が始まるというお話。ゆったりとしたムードが気持ち良く、甘味も適度にあって好感触。すっきりしていつつ暖かみのある絵柄もいい感じ。主人公の名前が「藤野美奈子」なのは、漫画家の藤野美奈子とは関係ないよね……。なお、秋山はるは昨年の12月号で四季大賞受賞作「あおぞら」が掲載されている(そのときの感想は2002年12月25日の日記参照)。

 田丸浩史「ラブやん」。カズフサには幼なじみの女の子という凄いモノがいていいなあと思った。実は意外とモテの素養はある……わけねえか。連載モノではこのほか、とよ田みのる「ラブロマ」、漆原友紀「蟲師」あたりがいい感じです。あと芦奈野ひとし「ヨコハマ買い出し紀行」も、タカヒロが巣立ちのときを迎えようという段になってちょいと切ない感じになっている。木村紺「神戸在住」。今回はカラーページで、外枠が全部黒塗りという画面作り。……だったのだが、その直後のページの「セラフィックフェザー」の1ページめも枠が黒塗りでそのまま続きかなという状態になっており、「つまらねえ」とデカデカした白抜き文字で始まったりしたのでちょっとビビった。

【雑誌】手塚治虫マガジン 10月号 KKベストセラーズ B5平

 今号からB5平とじに判型変更。いつもながらしみじみ面白い。たまには再読するというのも大事なことだなあと思い起こさせてくれる。今号には手塚治虫の単行本未収録読切「暗い穴」が収録されているのもお買い得感が高い。週刊ポスト 1969年9/5号に掲載された読切で、アザを見ると異様な反応を示す妻にまつわる因縁を、その夫が追うというお話。ラストは若干あっけないような気もするけどやはり読ませる。

【雑誌】ビッグコミック 9/10 No.17 小学館 B5中

 細野不二彦「ダブルフェイス」。少年による万引き禍に苦悩し、ついにはノイローゼになってしまった小さな書店主の恨みをDr.WHOOが晴らすというお話になる模様。今回はその前編。さすがに漫画業界に近い領域のことだけあって、最近は漫画によくこのネタが登場するなあ。この前「コミックマスターJ」でもやっていたけど、あちらは書店主が万引き少年たちを殺害する殺人鬼になるという描き方だったが、「ダブルフェイス」ではDr.WHOOというワンクッションを挟んでいる。やはり本当の事件に関わった人たちへ配慮するなら、こういうふうにしたほうが良かろうなと思う。

【雑誌】ヤングマガジン 9/8 No.39 講談社 B5中

 作:永井豪+画:湊青樹+脚本:原田重光「けっこう仮面P」が新連載。初代けっこう仮面の時代から30年後、再び進学校化したスパルタ学園を舞台に、新たなけっこう仮面がけっこうな活躍をするというお色気ギャグもの。作画は湊青樹となっているが、脚本の原田重光とは絵も似てるし、なんかまんま原田重光ノリだな〜という気がした。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 9/8 No.34 小学館 B5中

 山本英夫「ホムンクルス」。とても面白い〜。トレパネーション(頭蓋穿孔手術)により特殊能力が芽生えた名越が、ヤクザの組長と対峙し、彼の抱えていた心の傷を探り当てる。とにかく登場人物たちの表情がみんないい。顔のインパクトというのはすごくデカいってことをとても強く感じさせてくれる。ヒキも強いし読ませるなー。それから三宅乱丈「ペット」も相変わらず怪しい雰囲気に満ちていていい。精神世界の感触が、ぬるぬるとリアルに体感できる。あと息の詰まるような緊迫感の演出もお見事。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 9/8 No.39 集英社 B5平

 森田まさのり「ROOKIES」は最終回。なかなかスカッと爽やかに終わった。もう少しやるという手もあったとは思うけど、ここで幕を引くという選択も悪くない。最後の最後に地味に頑張っていた人が報われて、良い締めくくり方だったと思う。「クサい」といわれる類の作品ではあろうが、真っ正面からしっかり青春を語っていたのは気持ち良かった。河下水希「いちご100%」。今回は掲載順がラス前(ジャガーの前)に。まあここのところちょっともたつき気味かなあという感はある。


8/24(日)……お兄ちゃん統一仕様

放映直後にDVD化、アニプレックスが映像ソフト商品化で新手法(日本工業新聞)
 あー、こりゃいいんじゃないですかねえ。別に放映から時間を置いて出す意味なんて今さらあんまりないような気がするし。それよりは放映されてネットで話題になってるうちに買えるってほうがユーザーにとってはありがたいし、売上も伸びるんじゃなかろうか。作品によっては、最終回が放映されて「がっかりした」という評が出回る前に売れるだけ売りきっちゃうってのも手だとは思う。逆、つまりDVDを先に出しちゃうなんて手もありかも。無理にテレビ放送に間に合わせようとするよりは、そっちのほうが安定した品質で作品を供給できるかもしれないし。

▼ところで個人的には、漫画についても雑誌の発売と間をあまりおかずに、できれば同時くらいのタイミングでネット配信しちゃっていいんじゃないかと最近では思うようになってきた。つまりネットとかで話題になった作品があったときに、興味を持ったユーザーが即座にダウンロードして、立ち読み感覚で読めるようにしておくという具合。うまく行けば現在雑誌を買っている層とは別の需要を掘り起こせる可能性があると思う。

 もちろんそれをやることによって雑誌や単行本の売上を損なうことになったら困るので、ダウンロード販売では「1冊分を全部ダウンロードするなら雑誌、もしくは単行本を買ったほうが安い」というくらいに価格を設定しておく。少年誌なら単行本1冊につき10話くらいが収録されてるから、だいたい1作品50円くらいが妥当か。漫画の場合はとくに、デジタル配信と紙の印刷の場合で解像度の差が激しいので、配信時の解像度を下げておけば単行本需要はキープしておけるんじゃないかと思う。例えばコミコインで配信されたきづきあきら「モン・スール」なんかは、COMIC SEED!で読めばタダだったのに、けっこうな数の読者が紙の単行本を買ってそこで初めて読んでいる。これはまだまだ紙で読みたいというニーズがけっこう多いということを示した一例だった。ネットでタダで配信されてても、読者は買うときは紙の本も買うってことだ。うまくやれば、デジタル配信することによって紙媒体の利益を損なうことなく、紙プラスアルファの利益を発掘できる可能性だってあると思う。

 どのジャンルでもたぶんそうだろうけど、紙の雑誌はこれからますます売れなくなっていくのは確実だと思う。これに歯止めを利かすのは難しいが、かといって雑誌というメディアを完全に放棄しちゃうのは惜しい。それならば今雑誌用に作っているコンテンツを再利用して、よりたくさんの利益を出す方向を模索していくのは現実的な選択といえる。そういう意味で、既存のコンテンツを使って新たな利益ルートを作れるという意味では、ダウンロード販売って有望な分野だと思う。マイナー雑誌となると入手できる書店も限られちゃうので、この手のダウンロード販売ができるようになるとありがたいってユーザーも多いはず。まあ素人考えなんで、見通しが甘いってところはあると思うけれども、でもゆくゆくはそういったことをやってったほうがいいんだろうなーと思う。

▼毎月このくらいの時期は忙しゅうございましてのう……。というわけで本日は1冊しか読んでないです。……というのはウソで、早売り分の本も読んでたりするのだけど、それは発売日になってからということで。

【雑誌】LaLa 9月号 白泉社 B5平

 時計野はり「お兄ちゃんと一緒」がかわいくていいね。読切だけど再登場。これはこのまま連載までいくかもしらんですな。ある日突然お兄ちゃんが4人できちゃったという逆シスプリ、つまりブラプリ状態なお話。説明するのが面倒くさいが、3歳のときに父母が死んでから離れ離れになっていた、義父方の連れ子4人が、14歳になって身寄りがなくなった女の子・桜と一緒に暮らし始めるというお話。絵柄もお話もほのぼのとしてて読後感良好。フツーにかわいいので男子にも読みやすい。津田雅美「彼氏彼女の事情」は有馬パパがかっこいーい。美少年&美青年の組み合わせで萌え萌えという感じでしょうか。この場合、そういう人たち的にはどっちが受けでどっちが攻めとなるんでしょうか、とかいうことがほのかに気になったりした。


8/23(土)……コミック雀鬼出ず

▼ここ数日、はてなアンテナでウチのページの更新時刻取得がうまくいってなかったのだが、ちょっと設定を変えたらいちおう回復したみたい。これまでチェックするURLが「http://picnic.to/~ohp/」、リンクURLが「http://picnic.to/~ohp/index.html」になっていたのを両方とも「http://picnic.to/~ohp/」にしたら引っかかるようになった模様。

【雑誌】近代麻雀ゴールド 10月号 竹書房 B5中

雀鬼様の爽やかな笑顔  エキサイトブックスのニューススズキトモユさんが書いておられるように、いつもにも増して桜井章一濃度が高い。なんといっても特集からして「桜井章一が表に出た日」。19年前のことを詳しくレポート。20年間無敗でその後にまた19年。なんだかんだいって桜井章一漫画および記事は人気あるんでしょうな。これだけ長い間人気を集め続けるカリスマ性はたしかにスゴい。なお、この号で最も印象に残ったのは、中村毅士の描くこの爽やかすぎる笑顔。惚れるぜ。

 桜井章一がらみの漫画以外はあまり印象に残らない号ではあるが、せきやてつじ「おうどうもん」はその中でもしっかり読ませるあたりさすが。濃い絵と強烈なハッタリでキラリと光る。秋月めぐるの読切「りーち!」は後編が掲載。とある女の子のフリー雀荘デビュー物語をきれいにまとめた。

【雑誌】別冊ヤングマガジン 9/3 No.047 講談社 B5中

 連載陣で楽しみにしているのは、壮絶な恋愛バトルロワイアル森繁拓真「学園恋獄ゾンビメイト」と、ちんこに魅せられた女の子の求道っぷりを描く押見修造「アバンギャルド夢子」。「学園恋獄ゾンビメイト」は脳味噌を食うか食われるかというハードで緊張感のある展開だが、それに負けないくらいにしっかり恋愛要素を折り込んで来る演出がうまい。森繁拓真はやっぱり読ませる力を持ってる。あと今号には永野カズマ「中野ブロッケンマン」が久々に掲載。バカであまり強くないストリートファイト野郎・石丸の青春を描く。この人の作品はたいへんに青臭いが、気合いの入った青臭さなので清々しく感じる。

【単行本】「禁断の林檎」 おがわ甘藍 松文館 A5 [Amzn]

 最近の少女ロリ系ではとてもよろしいのではないかと。あどけない顔つきの少女たちがとてもかわいい。この人の描く女の子は、腰が細くて手足がすらりとながく、お尻も小さくい。なんかすごく可憐なんだよね。それが穢されるにせよ、興味津々でHしたがったりするにせよ、普段の様子との落差がたいへんいやらしい。胴回りの細さ、胸からお腹にかけての曲線のしなやかさなどソソられる要素は十分。今回の作品の中ではイギリスだかなんだかの貴族の子女が通う学校にやってきたJAPANESEの少女が、差別意識満タンの教師によって衆人監視の中で犯される「絵麻・ネルソンと禁断の林檎」がいいと思った。キリスト教的なワードを織り交ぜ、ちょいと冒涜的な雰囲気を出しているところが、少女の可憐さを引き立てている。あと、エロ外人のスティーブン・エドウィンが日本の少女たちに悪戯をしかける「妖精ハンター」が、なんかギャグタッチでけっこう笑えてしまった。絵柄は全般的にやわらかくなって、こなれてきているような気がいたします。内容も以前よりは若干マイルドになってるかな。


8/22(金)……詐欺呪う爺に

▼おがわ甘藍の新刊「禁断の林檎」のAmazon.co.jpへのリンクをクリックしたら、なぜか「風の谷のナウシカ」のDVDが「関連度:高」で出てきてちょっと笑った(あとCLAMP「ツバサ」1巻も)。やはり「いけない少女」[Amzn]に収録された宮崎監督もどき漫画の影響だろうか……。Amazon、なかなかやるな。

【雑誌】ヤングアニマル 9/12 No.17 白泉社 B5中

 関崎俊三「あぁ探偵事務所」。現金を配りまくる仕事ってなんか楽しそうだ。金が無尽蔵にあったら一度やってみたい。タニマチ、パトロンって楽しいのだろうなあ。たぶんやる機会はないだろうけど。というのは置いといて、この作品、探偵モノとしてはいっぷう変わったことをいつもやっててコンスタントに楽しい。宮野ともちか「ゆびさきミルクティー」。やはりこの男はクセモノだ。常に両方の女の子に気を持たせ続けてなかなか結論を出さぬ。女二人を生殺しにし続ける美少年。女装能力などのアビリティに磨きをかけると、ひとかどの人物になると思う。そして後ろから刺されたりとかすると思う。

【雑誌】ビッグコミックスペリオール 9/5 No.18 小学館 B5中

 作:山田ゴメス+画:IKARING「パラダイスなヤツら」。特別読切前後編の前編が掲載。エロ専門のマイナーCS局に入社した女の子・言問さんが主人公。その会社に、高橋がなり的なことをやろうとするメジャー局出身のディレクターがやってきて言問さんは刺激を受けるも、エセがなりーは低予算でにっちもさっちもいかない状況に打ちひしがれていく……といった感じで以下次号。IKARINGを登用したのはなかなか面白いが、原作付きのせいか、この人ならではの天然な勢いはあんまり出てなくて、きっちりまとまっちゃってる感じは受ける。

 乃木坂太郎「医龍」(原案:永井明)。バチスタ手術は予期せぬトラブルが続出。しかし朝田は豊富な経験に基づいた、冷静、かつ現実的な判断によりそのトラブルに立ち向かっていく。物語にメリハリがあって面白い。医療を人道、倫理的な側面から斬る「ブラックジャックによろしく」とかとはまた違ったアプローチ。正統派な外科手術アクションという感じで燃える展開。強力なドラマ作りとキレのいい作画が光る。高橋のぼる「警視正大門寺さくら子」(原作:大西祥平)。なんかまたしても濃いキャラが……。マカマカスッポンドリンクを愛飲する、天下り先案内人的なマッチョマン警察OBが登場。彼が盛り場でボコボコにされたことを理由に、通報があってから警察が到着するまでの時間=レスポンスの改善をさくら子に要求。きっと「レスポンス→レ、スッポンス→スッポン→精力絶倫」という発想なのだろうなあ。

【雑誌】コミックバンチ 9/5 No.38 新潮社 B5中

 新連載、山口育孝「虹色のウサギ」がスタート。少年時代の体験がきっかけで動物の守護霊と話すことができる能力を持った絵本作家の青年が主人公。彼が自分の絵本のモデルともなったウサギの霊に導かれて、運命の女性と出会うという第一話。泣かせありのヒューマンドラマという感じで手堅い内容。作画的には、完成されていて技術的にはうまい部類だと思う。だたイマ風とはいいがたく、80年代テイストを残しつつブラッシュアップした絵柄という感じ。全体に整ってはいるが、決め手には欠けるかな。こせきこうじ「株式会社大山田出版仮編集部員 山下たろ〜くん」は連載100回め。引き続き山下たろ〜がモテ気味だ。どうでもいいことだが、たろ〜のことを気に入っている女性漫画家の犬井さんと編集部の女の子は、髪の色を変えたほうが良かったように思う。いちおう恋のライバルという位置づけになるんだろうから、見分けはつきやすいほうが良いのではないかと。

【雑誌】ドルフィン 10月号 司書房 B5中

 くどうひさし「おもいでキッス」。幼なじみの少年少女のラブラブ初体験物語だが、甘酸っぱくていいねえ。うーん微笑ましい。くどうひさしならではの伸びやかな作画で描かれた登場人物たちは、いずれも素直そうで好感が持てる。顔の赤らめっぷりがいい感じ。いやー恋って素晴らしいね。コンチクショウ〜♪

【単行本】「はじらいピンク」 星逢ひろ 晋遊舎 A5 [Amzn]

 まとまりが良く、クセのない絵がとってもキュート。ボーイズラブ系の作品も描く人だけに、女の子よりもむしろ男の子のほうがかわいいってくらい。一見普通にかわいらしい絵柄なんだけど、意外と女の子のおっぱいも大きめで、実用的にもピピッとくるものはある。ラブラブHものもちょいと鬼畜系なものも描ける人だが、今回はわりとラブラブ系、もしくはセンチメンタルなお話が多め。たいへん完成度が高いと思います。毎度いい仕事。


8/21(木)……隔靴掻痒な部分を掻かそうよー

▼未読物
【単行本】「琉伽といた夏」1〜3巻 外薗昌也 集英社 B6 [bk1][Amzn:1巻/2巻/3巻
▼22日売り
【雑誌】ドルフィン 10月号 司書房 B5中
【単行本】「はじらいピンク」 星逢ひろ 晋遊舎 A5 [Amzn]
▼23日売り
【単行本】「禁断の林檎」 おがわ甘藍 松文館 A5 [Amzn]

【雑誌】マンガ・エロティクス2003 太田出版 A5平 [Amzn]

 エフでないほうのエロティクスは久しぶり。こっちもエフ同様、判型がA5平とじになった。実力のある人が揃っていてレベルは高いし安定感もあるが、ちょっと意外性には欠けるかなと思った。ここで描いている作家さんたちは、それぞれ独自の作風の持ち主でそれを安定して発揮できる人揃い。それだけに「ああ、いつものこの人だなあ」とか思ってしまうきらいはある。もう少し「次はどんな作品が出てくるんだろう?」というワクワク感があってくれると良いのだけれど。

 で、今号で一番スゴかったのは久々登場の卯月妙子「実録閉鎖病棟」。なんだか人を殺したくなる衝動に駆られる精神病になって、精神病院に入っていたのだとか。相変わらずこの人の人生は波瀾万丈。ベギラマあたりとは格が違うなーと正直思った。よくこういうのをギャグ漫画にして淡々と描いちゃうもんです。圧倒された。なお卯月妙子は現在「実録閉鎖病棟」の単行本の描き下ろし作業中らしい。駕籠真太郎「隔靴掻痒」。皮膚の下に虫が潜り込んで、うぞうぞ蠢く感覚に魅せられてしまった女性のお話。これはかなり身体感覚に訴えかけてくるモノがあって刺激的だった。こういう作品は好き。怖いものみたさというかなんというか。

【執筆陣】古屋兎丸、山本直樹、やまだないと、町田ひらく、南Q太、和泉慎、駕籠真太郎、渡辺やよい、卯月妙子、高浜寛、水月マヨ

【雑誌】モーニング 9/4 No.38 講談社 B5中

 須賀原洋行の新連載「新釈うああ哲学事典」は、タイトルどおり哲学をある程度ガチンコで入れながらショートギャグをやるという作品らしい。この人はご家庭ものよりも、こういううんちくを振り撒くタイプのお話のほうが面白いと思うので、このコンセプトは歓迎。すでに旬を過ぎたサッカー選手の再起を描いていく作:綱本将也+画:吉原基貴「U-31」は、スポーツ漫画としてはかなりシブくて毎回楽しみにしている。今回はかつて「千葉のマラドーナ」と呼ばれた主人公・河野の再出発を、TVのドキュメンタリー形式で描くというちょっと面白い構成。いかにもNumber的な作りがそれっぽい。うめ「ちゃぶだいケンタ」。今回はケンタとサワのプチ家出。いやー微笑ましいですなあ。辛酸なめ子はモーニング初登場。「合コン2003」というショートギャグを描いている。この人はちょっと気になりはするんだけど、ギャグセンス的にちと合わない。目立つけれども、すごく面白ってほどではないと思うんだけど……。

【雑誌】ヤングサンデー 9/4 No.38 小学館 B5中

 山田玲司の新連載「ONE ON ONE」がスタート。キャッチは「絶望に効くクスリ」。「オンリーワンな人に訊く、悪夢な時代の歩き方」とあるけれども、要するに有名人を取材して下積み時代のお話を伺うみたいな感じの作品になる模様。とかいいつつ第1回はまず「Bバージン」がヒットする前の山田玲司自身の話から。いきなり自分から始めちゃうってのがなんだか凄いが、赤裸々に恥ずかしい自分の姿をさらしていく様子はなかなか興味深かった。次回はみうらじゅんのお話を聞く予定とのこと。

【雑誌】ヤングジャンプ 9/4 No.38 集英社 B5中

 井上雄彦「REAL」。うーん、いい話だなあ。なんか今回も読んでてほろっと来ちゃったよ。交通事故で下半身不随になった高橋は、これまで当たり前のように享受していたものを失ってみて、初めていろいろなことに気づく。不定期掲載で急ぐことなく進めているこの作品からは、何か包容力のようなものを感じる。高橋、野宮、戸川。みんな応援したくなる。

【雑誌】週刊少年チャンピオン 9/4 No.38 秋田書店 B5平

 おおひなたごう「フェイスガード虜」。最近出てきた不条理スポーツ「アンビリーバボー体操」への個人的な期待がすごく高まってます。「おやつ」に出てきた「パワーホライズン」を彷彿とさせるものがある。イッツシュール。アーンドダイナミーック。

【単行本】「警視総監アサミ」10巻 作:近藤雅之+画:有賀照人 集英社 B6 [bk1][Amzn]

 刑事ドラマ的部分は本当にどうでもいいままに、ついに10巻まで到達。この巻もアサミたちは盗聴・盗撮をしたり小学生コスプレをしたり、果てはアイドルデビューをしたりとしょうもない展開の連続。ここまで馬鹿馬鹿しいとなんだかスカッとする。意外と女性キャラが色っぽくなくて、なんだか怖かったりするのも味だ。なお帯によれば、復活「セーラー服騎士」のEPISODE2が9月中旬発売のBJ魂に掲載予定とのこと。これは見逃せない!……こともないかな。

【単行本】「ハチミツとクローバー」5巻 羽海野チカ 集英社 新書判 [bk1][Amzn]

 途中CUTiE comicの休刊も挟まったけど、講談社漫画賞受賞まで登り詰めて勢いあります。実際毎度コンスタントに面白い。今回は森田もようやく復活して楽しい日常が描かれる中で、その間に移りゆくそれぞれの気持ちが細やかに描かれていて読ます。ただ何回か書いたけど、この巻での森田の行動により俺内森田株が急落した。すでに学生としては反則なくらい格上の存在になってしまったにも関わらず、まだモラトリアムり続けるつもりであるらしい。いつものお仲間さんたちが卒業していってもなお、彼は学校に残るのだろうか。若者たちは巣立っていき、青春の幻影であるモーリタは、美大という名の銀河鉄道にいつまでも乗り続けていくというのかー。

【単行本】「てるてる×少年」6巻 高尾滋 白泉社 新書判 [bk1][Amzn]

 いやー、ここのところの高尾滋はキレてる。それまで姫として才蔵に接してきたしのぶが、自分の彼に対する恋心をハッキリ自覚するようになって、愛しさと切なさがいや増す。でも主従の間柄にある二人にとっては、それは本来禁じられた恋でもあり。なんかもう、ふとした拍子にしの姫が洩らすセリフ、愛しさのあふれる表情にドギューンとくる。これは破壊力デカい。最初のうちはメガネ美少年萌え漫画なのかなとか思ってたけど、ここに来てラブストーリーとしてもすごく盛り上がってきた。ただこの人も、基本的には叙情はうまいけど叙事は苦手というタイプだと思う。御城家関係のゴタゴタで、しのの許に刺客が送られてくるが、そのあたりのアクションとかが始まるととたんに読みにくくなる。いまいち何が起こっているのかつかみづらい。だけどこのところの叙情の質の高さは、そのアンバランスさをも呑み込んでしまうくらいの域に達している。


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