2003年5月5日コミティア購入物件


2003年8月28日読了分

【同人誌】「TIACOCHAN」 白間タケヒデ

 とある同人作家のおねえちゃんが、即売会の日に出会った一風景。白黒のコントラストの利いた画風はなかなかオシャレ。大きなストーリーはないけど見てて気持ちのいい本ではあります。

【同人誌】「stecca2」 natsume

 2002年11月コミティアのときに買った「stecca1」のつづき。「nove」の5年後、家業をついでビジネスをしていたピエル没後の物語を描いている。手許に「stecca1」がない状態で読み始めたので、これまでのいきさつを思い出すのにちょっと時間がかかったが、ひとたび世界に入り込めれば、登場人物たちの人間ドラマがしっかりしててたいへん面白く読める。まあ今回は会話が中心で派手な展開はないけれども、続きはやはり楽しみ。

【同人誌】「ふるさと楽団」 宮田斉彬 <dismo>

 田舎に引きこもってなんにもしないでぼんやりしている男と、彼をいらだたしげに見つめる弟のお話。素朴な絵柄でスローペースな物語を構成。そんな中にちょっと寂しさが潜んでいるのが良い風味。

【同人誌】「parking? 20030505」 南研一

 この人の作品は言葉がいいですね。寂しげで詩的でロマンティック。ときどきその言葉のキレにはドキッとさせられる。ホームページを見てもその点はいつも印象的で、少女漫画についてのレビューも興味深く読んでます。

【同人誌】「鉄塔」

 シャレた感じの達者な作画の人が揃った本。man、ミウ、ユータ、友方=H・庄作、紺谷昭嘉が寄稿。絵としてはちょっとラフっぽい描線だけどスタイリッシュな紺谷昭嘉が好み。あとミウ、ユータあたりも個性的。なかなかカッコよくまとまった本であります。

【同人誌】「EU-BOOK 2」 <山本内燃機>

 山本マサユキ主催のヨーロッパ旧車本その2。山名沢湖、はかまだめら……とゲスト陣も多数参加。まあ自分は車については無知きわまる人間なのだけど、こういう趣味について語った漫画はなんとはなしに楽しそうでええなあと思う。

【同人誌】「海へ続く道」 大川大 <小金井市民>

 上品な作画は好感度が高い。絵を描く少女とそのボーイフレンドのお話。ただその物語の意味するところはどうも曖昧で、「うーん、なんじゃろな」という感じだった。爽やかな画風、一瞬の情景を描き出す力はあると思うので、ストーリーの牽引力が弱いのが目についてしまったかっこう。

【同人誌】「PRINCE」創刊号 小杉あや&EMI

 漫画ブリッコ卒業生の二人が再開を祝して作った本であるようです。絵は今風にトンガってるわけではないけれども、両人ともなんか少女でメルヘンなものをしっかり残している点は良いです。なんとなく「なるほどなあ」と思わせるものあり。

【同人誌】「パピリオ」 おがわさとし

 良い作品は何度読んでも良いなあ。というわけで「パピリオ」「帰郷」を1冊にまとめた作品集。まず「パピリオ」は、風が止まったことで石化していく世界に生きる少女パピリオが、風を取り戻すために造物主であるヘカトンケイレスの元へ向かうという物語。丁寧な描線は独自のファンタジー世界に説得力を持たせているし、着想、ストーリー展開とも素晴らしい。とくに後半の風の描写などは今読んでもゾクゾクするものがある。1989年発表なので15年近く経っている作品だが、その存在感はいささかも減じていない。それから「帰郷」は1996年に描かれたパピリオのその後の物語。自分の育った広大なガラクタ捨て場を守るべく、森林化計画を推し進めようとする役人に、パピリオが対峙する。こちらも感傷的、かつ読みごたえのある物語に仕上がっている。これも発表後7年になるのか……。どちらも、今読んでも素晴らしい作品なんで、機会があったらぜひどうぞ。

【同人誌】「カレシは占い師・2」 衣羅ハルキ <Hee-Haw>

【同人誌】「レターセット」 <かなり狐+Hee-Haw>

 「レターセット」はかなり狐とHee-Hawという、二つの女性3人による創作少女系同人サークルの合同本。いずれも手紙をテーマとした短編を寄稿。メンツはHee-Haw:百井葉月、衣羅ハルキ、藤ノ木いらか、かなり狐:星菜見栄春、藤井木芽、舟望由飛。Hee-Haw側の本はいつも買っていたけど、かなり狐側の作品も品が良くて読みやすく、総じてレベルの高い本になっている。Hee-Hawがらみの本は、お互いに原作を交換して漫画を描いてみたり、こうやって違うサークルと共作してみたりと、いつも何かしら新しいことやろうとしていて面白い。同人も長くやってるとマンネリになってしまいがちだろうから、こういう姿勢はいいと思う。あと「カレシは占い師」は衣羅ハルキによる4コマ漫画。ほのぼのしてて、ギャグのキレもけっこうあり楽しい1冊。


2003年8月17日読了分

【同人誌】「あすなひろし作品選集1 少年漫画(1)」 あすなひろし

【同人誌】「あすなひろし作品選集2 少女漫画(1)」 あすなひろし

 「青い空を白い雲がかけてった」などで知られる、今は亡きあすなひろしの単行本未収録作品を同人誌にて復刻しようというプロジェクト。すでにかなり時を経た作品群であるものの、叙情性は今にも通用するものだし、描画技術も大したもの。こういう絵柄の人は今は見かけないなあ。なお「少年漫画(1)」には「いつか見た遠い空」「源平じいさん」「八月のツトム」、「少女漫画(1)」には「白い霧の物語」「ビビディバビデ・ブー」「雪の花びら」が収録されている。

 なんでもあすなひろしという人の生原稿はものすごいものだそうで、通常はスミベタで済ますようなところが精密なカケアミや点描で埋め尽くされいて、白抜きの絵もスミベタの上にホワイトで描くのではなく紙の白い部分を残して描く……なんてことをやっていたそうだ。そのような緻密なタッチは、少年誌のザラザラの紙質や単行本で縮小されると軒並みつぶれてしまっていたらしいのだが、この同人誌ではそれをきちんと再現するべく印刷にもこだわっているそうだ。こういう試みは同人誌ならでは。続きが出たらまた買います。

【同人誌】「京晴美」 らいだゆず <HATAHATA>

【同人誌】「ほしはなんでもしっている」 らいだゆず <HATAHATA>

 現在コミックフラッパーで「地球防衛OLいちご」を描いている新居さとし=らいだゆずの本2冊。いつもながら下らなくて勢いがあって読んで楽しい。「ほしはなんでもしっている」には愉快な女の子3人組が登場するが、ここらへんは「地球防衛OLいちご」の女の子たちのプロトタイプとなっているのだそうな。

【同人誌】「Cotton」 紺野キタ <Sally Gardens>

【同人誌】「Cotton4」 紺野キタ <Sally Gardens>

 実は以前「Cotton2」だけ読んでいる。「Cotton」シリーズはとある雨の日に道端で出会った二人の女性の物語。片方はOLをやっている奈月、もう片方は女子高生の理子。奈月の姉と理子の兄が結婚したことで再会した二人だが、周囲に対して心を閉ざす理子の心を、奈月の体当たりな真心が解きほぐしていくという物語。女性同士の心の触れ合いの物語を、キラキラと美しいタッチで丹念に描いていて読みごたえはしっかり。端整な作りでまとまりもある良い作品。「Cotton3」もそのうち入手しなきゃ……。


2003年8月15日読了分

【同人誌】「ホモヨロン5」 <ドリー夢2003>

 ラフではあっても味がある、もっさりしつつもキュートなアニュウリズムの絵に心惹かれるものを感じる。今回は7ページ描いているけど、なんだか「今までで最長」なんだそうな。そういえばそうだったっけか。

【同人誌】「ネア!」 守安啓行 <ドクキノコ>

【同人誌】「漫研」 守安啓行 <ドクキノコ>

【同人誌】「フィギュアモリヤス」 守安啓行 <ドクキノコ>

 コミックフラッパーで読切をときどき描いていた守安啓行の本3冊。どれも面白かった。この人は、絵自体は商業誌的な洗練はされていない。技量的にはまだまだな部分もあるけれど、個人的には「いい絵」だと思う。シンプルで元気が良くて、なんかすごく楽しそうに描いている。こういうのは見てるほうもワクワクしてくるし、テクニック面だけでは測れないものがある。お話のほうも元気いっぱい。体力あまりまくりな少女と妖精ネアのドタバタ喜劇「ネア!」、とある漫研の部室を巡って繰り広げられるバトルをおもしろおかしく描いた「漫研」、フィギュア好きの少年とその彼女のほのぼのラブコメ「フィギュアモリヤス」、どれも楽しく読めた。今すぐ商業誌でバリバリ……というタイプではないと思うけど、この味は大切にしていってもらいたい。

【同人誌】「Night-Marcheの幻想雑誌 2003.5.5版 〜チッペの物語VII〜」 村山慶

 この巻で完結予定だったけど果たせず次号に持ち越し。殺し屋として育てられた少女チッペの道程を描いたお話。この作品の前までは4コマベースだったが、回を重ねるごとに通常のコマ漫画にも慣れてきた印象。ただ4コマベースだったときの言葉の使い方がけっこう好きだったので、次回作ではその味も出していってほしいような。

【同人誌】「ピストン江古田」 <地味頁>

 生活にちょっと疲れ気味で最近おっさんっぽさが増して来ている男の脳裏に、最近少年時代の同級生少女との想い出がちょくちょく蘇る。追憶と、そこから踏み出す一歩という感じで読み口は心地よい。安倍吉俊チックな作画も雰囲気あり。ただ今回は最後の〆のあたりとか回想シーンの入り方に唐突なところがあり、違和感はあった。

【同人誌】「暴走セーラー服」 <ひまわりデザイン事務所>

 藤井ひまわりとおかもとふじおによるせーラー服本。エロなしでセーラー服という縛りはあるけど、両方とも気楽なノリで描いてるなーという印象。個人的には藤井ひまわりのセーラー服めがね少女のカラッと明るいノリが良かった。おかもとふじおのほうは、ベタで下らない展開が愉快。

【同人誌】「堰堤とプール」 粟岳高弘 <あわたけ>

 今回はSFテイストはあんまりなくて、のどかで爽やかほのぼの、ちょっぴりH。川に入ってスクール水着姿で泳ぐ女の子、彼女に好意を抱いている友達の弟たちはそれをドキドキ見つめる……という感じ。とても健康的であっけらかんとしている。でもフツーの娘さんが野外で脱いでいるというHさは、この本でも健在。なんか妙にHに感じるんだよね。

【同人誌】「アフロOK?」 上原昭人 <ち>

 「ち」のオフセット本を買うのはひょっとして初めてかも。ちゃんと製本されているのだが、内容はいつものごとく脳内世界だだもれ。思いついたことがずらずらと落書きと化して流れ出てくるような感覚に呑み込まれるのは、奇妙な気持ち良さがある。物語や漫画文法という枠にとらわれず、なんかもうすごく自由にやってるってのが伝わってくる。すごいなー。

【同人誌】「標識の街」 金子木村

 表題作の「標識の街」が印象に残った。猫や魚、眼医者など、対象ごとに違った指示を与える標識がズラズラと立ち並ぶ不思議な交差点。そこを通りかかった青年が、そこで見た不思議な光景。標識の無機的な記号と、それが指し示す状態の実際のギャップがなかなか面白い。ファンタジー心をちとくすぐられた。

【同人誌】「ぶっとびマンガ大作戦 Vol.7」 新田五郎 <WAIWAIスタジオ>

 冒頭の『ベッカム!(「コマネチ!」のポーズで』という言葉でいきなり爆笑してしまった。ふぬけ共和国・マンガのゆかいなぶっとび漫画レビュー本。今回は「らーめんロボット対決」「スカトロ理想社会」「スロット+カードゲーム」「ちんつぶ」「ムーンWORLD」を散発的に批評。漫画に関する文章で人を楽しませよう、笑わせようという意図が伝わってくるし、実際に楽しいし笑う。こういう文章にはいつも憧れるが、マネをしても芸がないので自分ならではの何かをやっていこうと決意を新たにさせられる。そういう意味で刺激的な存在でもあります。

【同人誌】「応接間」 三五千波 <つくりもの>

 映像作品のコンテ用紙みたいなものをコマとして利用した構成がユニーク。といってもコンテ用紙的な枠が書いてあるだけで、絵はそこからはみ出してたり、複数のコマにまたがってたりと使い方は自由奔放。読みやすいとはいえないけれど、枠を意識させつつその境界をはみ出しながらお話が展開するという面白みがすごくあって面白い1冊となっている。

【同人誌】「つゆくさ 10号」 <つゆくさ>

 三島芳治はやっぱりいいなあ。今回は主人公の少女と、同じクラスの無口な女の子との間で、日常会話のごとく延々と続けられるしりとりの物語。「いつか私たち二人でよの中の全部の言葉を言い終ってしまうのではないだろうか。」というセリフが実に素敵でツボにハマった。この人の言葉遣い、せりふ回しは実に印象的で、漫画における文字の力というものを新鮮に思い起こさせてくれる。絵柄のほうも、ぽつねんと紙面に浮かんでいるような不思議な感触がストーリーによくマッチしている。珍しい感覚の持ち主で、オリジナリティをビシビシ感じさせる。

【同人誌】「ちなつのシュート!」 青木俊直

 なんか「ウゴウゴルーガ」内で描かれていた漫画らしいっすね。当時テレビはほとんど見てなかったので知らなかったんだけど、AMIGAとマウスを使って描かれたものだとか。ストーリーのほうは、女子サッカー部を作ってみんなで頑張ろうと張り切る元気娘なちなつが、その熱意で周囲を巻き込んでいく……というもの。幼なじみのしんじ、それから恋のライバルでもある西園寺さんとのからみもあって、ドタバタと日常生活は展開。1993年当時のCGだし「ウゴウゴルーガ」だし、解像度的には粗いんだけど、ほんわかした雰囲気があって面白かった。またテレビでやってたってこともあって、ものすごくテンポがいいし読みやすい。ヘンにひねくれたところがなくてまっすぐで、こういうのは好きだなー。

【同人誌】「夏の魔物」 袴田めら <逆ギレ刑事>

 ちょっとおどろおどろしげなタイトルとは裏腹にファンタジーテイストなお話。天文部所属の少年と憧れの先輩女子、そしてその二人にちょっとやきもちやき気味なおさななじみ女子の3人を中心とした、ミステリアスな青春ストーリー。どこか超然として、男の子をドキドキさせる先輩女子の想いがほんのり切ない良い味。あっさりした作画よくマッチして、不思議な物語ではあるけど読後感は爽やか。感情表現がちと控えめなところがおくゆかしくてよろしいです。

【同人誌】「SHORT HOPE LIGHTS」 <ぴこぴこ。>

 いつもながらにいい絵だなあ。シンプルながらもメルヘンチックで独自の味がある。ひとりぼっちの少女ネリの旅路を描いた「月光荘」は童話的な心優しい雰囲気があるし、よりラフな絵柄で酒飲んでいる男女のとりとめもない会話を見せる「ベランダのせんたく物」もなんだかほのぼの。何描いても味の出そうな絵柄なんで強いなーと思います。

【同人誌】「ひとりぼっちのお姫様」 果竜 <竜の子太郎>

 今回収録されたのは前編。同じクラスの図書委員、学校のウサギの世話もしているがイジメられがちな女の子・香鳥さんを、同情しつつもどこか冷めた目で見てしまうヒロインの美姫。とある事件がきっかけでその想いがなぜか全部意図せず言葉に出てしまうようになり美姫は混乱する……というところで後編に続く。この人特有のキラキラした少女絵は健在。きれいだけれども、おんなのこの内面の葛藤を鋭く描き出してもいて緊張感あります。ヒキの強い展開で続きが気になるところ。

【同人誌】「もののけアワー2」 <胡蝶社>

 掲載作品の中で注目は、ビッグコミックオリジナルやアフタヌーンで重めな短編がまれに掲載される武富健治の「右馬之佐東行日記」。7ページと短いながら、民話テイストな怪異の物語をしっかりまとめている。作画、構成とも非常に達者。一般受けするタイプではないとは思うけどすごく好きだー。どんなお話であろうと不吉なテイストを漂わせてしまう登場人物たちの陰鬱な目つきが特徴的。

【同人誌】「彼女の願いと僕の我が儘」 川津典昭 <空飛ぶ河童>

【同人誌】「雛鳥と女の子」 川津典昭 <空飛ぶ河童>

 どちらも面白かった。「彼女の願いと僕の我が儘」は、身体が植物化していってしまう業病にかかってしまった妻と、その最後を看取ることになってしまった主治医である夫の愛の物語。二人の姿は悲痛ではあるけれども、お互いを想う気持ちがストレートに出ていて美しい。「雛鳥と女の子」は失踪してしまった父だけを心の拠り所にして他に心を開こうとしない少女と、彼女を心配する幼なじみの男の子のお話。こちらもまっすぐな作風で小細工はなし。後味の爽やかな物語に仕上がっている。端整で生真面目な作画としっかりしたストーリー構成で読ませる。


▼未読物

【同人誌】「thursday glam maid avant-garde 1」 box-man <trash style>

【同人誌】「friday(unfinshed version) glam maid avant-garde 2」 box-man <trash style>


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